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第36回 ─ スペシャル・エディション


掲載: 2004/11/04

 いまスペシャル・エディションがおもしろい──簡単に言えば、過去にリリースされた名作に焦点を当てて、デモや別テイク、あるいは当時のライヴや未発表曲などを大量に収録した発掘CDセットのこと。ユニバーサル系〈Deluxe Edition〉やソニー系〈Legacy Edition〉が先鞭を付けつつ、他社からも次々に登場し活況を見せている。一見マニア向けアイテムに思われがちだが、名盤誕生の裏に隠されたドラマが、オリジナル・アルバムをより魅力的なものにしていることは間違いない!! 今回はそんなスペシャル・エディションの世界に触れてみよう!!(北爪)

文/bounce編集部



THE BEACH BOYS
『The Pet Sounds Sessions』
Capitol(1966)

 

 大袈裟でもなんでもなく音楽史上屈指の傑作であり、今後も永久に淡い光を放ち続けるであろう孤高の名盤。ブライアン・ウィルソンという一人の男の心に蓄積した希望や憧憬や諦念や喪失感を、無数の楽器群やコーラス・ハーモニーによって異様に美しい13のポップソングに完全昇華。時代性も現世感も超越した比類なき〈彼岸のポップス〉。

 まずは目玉ともいうべき初のステレオ・ミックス版を収録。より奥行きと鮮明度が増した音像によって、違った〈ペット・サウンズ〉が楽しめる。続いて、さまざまな指示を出すブライアンの声や会話が随所に入った、制作過程を臨場感たっぷりに伝える無数のセッション。すべてのヴォーカル・トラックのみで構成したパート、さらにレアな別テイク集へと続く驚愕の3枚組に加え、ボーナス盤にオリジナル・モノ・ミックスも収めた究極のボックス・セット。単独の作品を徹底的に掘り下げてまとめたものとしては、先駆であり理想型でもある。(北爪)



THE VELVET UNDERGROUND & NICO
『The Velvet Underground & Nico(Deluxe Edition)』
Verve/ユニバーサル(1967)

 

 67年のNY──アンディ・ウォーホルの秘蔵っ子であったヴェルヴェット・アンダーグラウンドが日夜繰り広げていた狂気とアートのニヒルな饗宴に、ドイツ人モデル、ニコが加わって制作されたのがデビュー・アルバムである今作だ。現在にも脈々と受け継がれるNYアンダーグラウンド・ロック・シーンの源流にして、あらゆる前衛ロックの先駆けでもある。

 この〈デラックス・エディション〉にはオリジナルからの11曲(ステレオ)に加え、そのモノラル・ヴァージョン、シングル・ヴァージョンが4曲、ニコのソロ作品『Chelsea Girl』から5曲、未発表のリハーサル音源1曲の合計32曲が収められている。なかでも衝撃的だったのがDisc-2に収録されるモノラル音源で、スピーカーから流れてくる音圧、というよりも音像が尋常ではなく、ファーストと呼ぶにふさわしいネイキッドなものとなっている。また、珍しい写真がふんだんに使用されたスリーヴは、当時の彼らを知るうえでもたいへん貴重な資料となる。(冨田)


JAMES BROWN
『Live At The Apollo Volume II(Deluxe Edition)』
Polydor/ユニバーサル(1968)

 

 数多いJBのライヴ・アルバムのなかでも特に充実した内容を誇るのが、LP2枚組で発表されたNYアポロ・シアターでのライヴ実況盤の第2弾。67年6月のショウの一部をパッケージしたもので(リリースは68年)、“Cold Sweat”などのファンキー曲から“Try Me”のようなバラードまでをたっぷり楽しませる。マーヴァ・ホイットニーと歌った“Think”も収録。

 オリジナルLPは2枚組とはいえ、当然ステージの模様が完全に再現されていたわけではなく、曲順が変えられ、オミットされた曲も多い。そこで〈デラックス版〉では曲順もほぼ実際のステージ(67年6月24〜25日)どおりに戻し、未発表だった約30分のオミット音源をプラスして、当時の熱気をそのまま伝えた。ボビー・バードが熱唱する“Sweet Soul Music”やJBバンドが演奏した名スタンダード“Caravan”といった余興的な演目も完全収録されているとあって、実際のライヴを観ている(聴いている)感覚は強い。〈デラックス版〉ならではの復刻作業だ。(林)



THE KINKS
『Village Green Preservation Society(3CD Special Deluxe Edition)』
Sanctuary/BMGファンハウス(1968)

 

 〈英国を代表する〉という言葉がもっとも似合うキンクスによる68年の名作。ディラン・トマスの詩集に影響を受けて制作されたという、イギリスの田園風景をテーマにしたコンセプト・アルバムが持つ牧歌的なサウンドは、ギター・ポップの原型と受け留めることもできる。噛めば噛むほど滲み出る若草のごとき甘さ。本作をキンクスの最高傑作と呼ぶマニアは多い。

 ボーナス・トラックを含むアルバムのステレオ/モノラル両ヴァージョン、レア・トラック集の3枚で構成されるバンド結成40周年〈デラックス版〉。当然キモは未発表&初CD化がおびただしいほどに詰まったDisc-3! 正規盤では聴くことができない未発表曲や〈BBCセッションズ〉音源などを網羅した今作は、ミックスやヴァージョン違いという点においても貴重であるけど、とにかく当時絶頂にあったレイ・デイヴィスの作曲レヴェルが尋常じゃない。このとき、確かに彼はレノン/マッカートニーやブライアン・ウィルソンと肩を並べていた。(加賀)



THE ALLMAN BROTHERS BAND
『At Fillmore East(2CD Deluxe Edition)』
Mercury/ユニバーサル(1971)

 

 ヒゲ/長髪/ベルボトム! リラックスしたなかにも濃厚な男の香りを放ちまくるジャケそのままの、ジャム/サザン・ロック史上最強のライヴ・アルバム。ツイン・リード・ギター&ツイン・ドラムのブッとい編成から繰り出される、豪快を通り越して爽快の境地に達した超絶グルーヴ。そして天才デュアン・オールマンの宙を駆けるスライド・ギター。男汁全開。

 オリジナル・アルバムの7曲に加え、ボックス・セットやデュアン・オールマンのアンソロジーでしか聴くことのできなかった曲など(もちろんすべて71年のフィルモア・イーストでの公演)を収録時間目一杯に詰め込んだ、男の度量を見せつける豪華盤。 33分強というあまりの長さゆえか、次作『Eat A Peach』に繰り越し収録された世界三大ジャム・ナンバーの一つ(なんて言われたこともあった)“Mountain Jam”も、ようやく本来あるべき場所にスッポリ収まって感無量。若いジャム・バンド・ファンはここから宝の山に踏み込んでみては?(北爪)



MARVIN GAYE
『What's Going On(Deluxe Edition)』
Motown/ユニバーサル(1971)

 

 モータウンからセルフ・プロデュース権を獲得して作り上げた、71年発表のソウル史上屈指の名作。弟のヴェトナム戦争体験談に触発された表題曲を筆頭に、環境破壊や貧困など当時のアメリカ社会の現状を鋭く見つめたメッセージ・ソングが並び、いわゆるニュー・ソウルの代表作としても知られる。組曲的な展開の仕方も含め、恐ろしいほど高揚感に満ちた一枚。

 この〈デラックス版〉でとにかく驚かされたのは、LAで制作されたオリジナル版以外に、〈Original Detroit Mix〉という録音地デトロイトでの別ミックス版が存在していたという事実だった。スムースなオリジナル版に比べ、別ミックス版では楽器の音色や声のざわめきがより前面に押し出され、演奏を担当したファンク・ブラザーズの面々の存在も浮き彫りに。映画「永遠のモータウン」観劇後なら感慨もひとしおだろう。表題曲の未公開インストなども聴けて、楽曲の制作過程に踏み込めるのも楽しい。72年5月のワシントンDCでのライヴも初収録された。(林)



THE WHO
『Who's Next(Deluxe Edition)』
MCA/ユニバーサル(1971)

 

 ザ・フーが残したスタジオ作品のなかでの最高傑作である。もっとも実験精神に溢れた内容で、当時の最新テクノロジーだったシンセサイザーを大胆に導入した革新的な名曲で構成されている。しかし本来は『Tommy』に続くロック・オペラ作品になるはずだった未完の大作『Lifehouse』用に作られた曲たちであり、その完成は現在もファンの夢となっている。

 ロック史最大の未完成作品『Lifehouse』の全貌、とまではいかないが、輪郭やコンセプト、楽曲に込められたメッセージなどを理解し、楽しむことができるのがこの〈デラックス・エディション〉である。アルバム収録曲のオリジナル・テイクをはじめ、数々の興味深い未発表音源が満載! 特にロンドンのヤングヴィック劇場で行われた連続ライヴの音源は圧巻で、オーディエンスとのスピリチュアルな一体感と緊張感は、ザ・フーのハードな演奏と相まってまさに壮絶の一言。今作を聴いて、幻の大作に想いを馳せるのもまた一興ではないだろうか?(冨田)



BOB MARLEY & THE WAILERS
『Catch A Fire(Deluxe Edition)』
Tuff Gong/Island(1973)

 

 ジャマイカの風雲児、ボブ・マーリーを世に知らしめたメジャー・デビュー作であり、同時にレゲエという音楽スタイルを世界中に認知させることにもなった歴史的名盤。ボブ、ピーター・トッシュ、バニー・ウェイラーの3人ヴォーカル&バレット兄弟のリズム隊という、ウェイラーズ史上最強の編成による強靱な楽曲が聴く者の心に熱い炎を灯す。

 従来の『Catch A Fire』は、英国人プロデューサー、クリス・ブラックウェルの手によって〈世界のマーケット〉向けにギターやキーボードなどを過剰にオーヴァーダビングさせたものだったが、このDisc-2には無装飾の未発表オリジナル・ヴァージョンが丸ごと収録されている。しかもこれが凄い! 剥き出しのルーディーな感覚とジャマイカの土着性が濃密にトグロを巻いた音塊は真に衝撃的。〈世界進出するには粗野すぎる〉と、クリスが判断したのもわからなくはないが、いま聴くとコチラのほうが圧倒的に〈ロック〉を感じさせてくれる! 必聴!!(北爪)



MARVIN GAYE
『Let's Get It On(Deluxe Edition)』
Motown/ユニバーサル(1973)

 

 社会派な前作『What's Going On』とはうって変わって、カラッとした表情で性愛の悦びを説いた73年のアルバム。マーヴィン本人とエド・タウンゼントのプロデュースで、デトロイトで作ったベーシック・トラックをもとにLAの腕利きミュージシャンを起用して録音された。表題曲や“Distant Lover”などの名曲を収めた、マーヴィン入魂の〈性典〉である。

 全37曲中、実に27曲が未発表音源という恐るべき〈デラックス版〉。2枚のCDは大きく4パートに分けられ、当時の彼の、いい意味での試行錯誤ぶりを伝える内容となっている。細かい部分でいろいろ違う本編収録曲のデモや別ミックスなども話題だが、凄いのはさまざまなミュージシャンとの共同作業から生まれていた幻の楽曲たち。デヴィッド・ヴァン・デピットと作っていたハービー・ハンコック参加のセッション曲や、フレディ・ペレン&フォンス・ミゼル、ウィリー・ハッチらが制作した激グルーヴィーな楽曲の完成度の高さは並じゃない。(林)



THE AVERAGE WHITE BAND
『AWB』
Columbia UK(1974)

 

 グループ名こそ〈平均的白人バンド〉という自嘲(謙遜?)を含んだネーミングながら、黒人のようにソウルフルでファンキーな音を叩き出すスコットランド出身のファンク・バンド。これはアトランティック移籍第1弾アルバム(通算2作目)で、“Pick Up The Pieces”や“Work To Do”といった人気曲を含む。通称〈White Album〉とも呼ばれている。

 英コロムビア発の〈White Album〉特別盤(2枚組)。1枚はオリジナル作品のリマスターだが、もう1枚が未発表音源集となっている。アトランティック移籍前に英MCAでデモ録音した楽曲がそれで、これらは俗に〈The Clover Sessions〉として知られていた。全10曲中8曲は〈White Album〉制作時に再録音されたが、メンバーのアラン・ゴーリーいわく、未発表だったデモ版がLAの開放的なムードをイメージしていたのに対し、アリフ・マーディンが手掛けた〈White Album〉収録曲ではNYのエッジ感が出たという。これは聴き比べる価値あり。(林)



THE CLASH
『London Calling(Legacy Edition)』
Epic/ソニー(1979)

 

 70'sパンクの代名詞=クラッシュのサード・アルバムにして、ジャケットの素晴らしさ、アルバムの完成度、どれを取っても誰がなんと言おうと間違いなく彼らの最高傑作。さまざまな音楽を採り入れパンクから逸脱したサウンドではあるが、溢れ出る血潮と魂はパンクそのもの。彼らがただの遺物にならなかったのは、この作品があったからこそ。

 そして、まさに歴史的発見といえるのが、こちらのDisc-2に収録された未発表デモ音源である。これはミック・ジョーンズ宅の倉庫から発見されたもので、アルバム『London Calling』が生まれようとしている当時の空気やバンドの雰囲気を生々しいサウンドで楽しめる、たいへん貴重な超一級の歴史資料である。Disc-3の45分にも渡る映像を収めたDVDには、各メンバーのインタヴューや未発表のライヴ映像、さらには物を投げ暴れるメンバーやジョー・ストラマーを叱りつけるプロデューサーのガイ・スティーヴンスなど、笑劇的衝撃映像も満載!(冨田)




DONNA SUMMER
『Bad Girls(Deluxe Edition)』
Mercury/ユニバーサル(1979)

 

 70年代のディスコ・クイーン、ドナ・サマーが79年に発表したディスコ超大作(オリジナルLPは2枚組)。プロデュースはジョルジオ・モロダーとピート・ベロッテ。ユーロビートの先駆けのような“Hot Stuff”を筆頭に、表題曲の“Bad Girls”や“Dim All The Lights”といったアッパーなダンス・チューンが数曲のバラードを伴いながら連発される。

 ドナの〈デラックス版〉は、いわゆる未発表テイクはなく、どちらかといえばレア度を追求した作り。Disc-1にはリマスターされたオリジナル本編と、ドナ本人がプロデュースした“Bad Girls”のソウルフルなデモ・ヴァージョンを収録。一方、〈12" Singles & More〉と題されたDisc-2は、“Last Dance”や17分を超える一大組曲“Mac Arthur Park Suite”など70年代にリリースされた12インチ・シングル(DJ用のプロモ盤含む)を中心に構成され、高音質でまとめて聴けるのが嬉しい。80年発表のサントラ『Foxes』から“On The Radio”の長尺版も収録された。(林)


DIANA ROSS
『Diana(Deluxe Edition)』
Motown/ユニバーサル(1980)

 

 80年、当時絶頂にあったシックのバーナード・エドワーズとナイル・ロジャースがプロデュースしたダイアナ・ロスの代表作。小気味よいギター・カッティングがリズムをキープする“Upside Down”“I'm Coming Out”など100%シック印のダンス・チューンを中心に、陽気なディスコ・モードで乗り切った快作だ。晴々としたダイアナの歌もいい。

 この〈デラックス版〉の目玉は、以前からその存在が伝えられていた、アルバムのシック公認ミックス〈Original Unreleased Chic Mix〉。公式リリースされたのは、実はダイアナらしさを意識してスッキリと整理されたシック非公認のミックス(@LA)のほうだったのだ。一方、オリジナルとされるミックス(@NY)は楽器やヴォーカルなど音の粒立ちが鮮やかで、よりシックらしいタイトな仕上がり(楽曲の尺も総じて長い)。〈Dance〉と題されたDisc-2には70年代後半のダンス・チューンの12インチなどが収録され、同時期のお蔵入り曲も初披露された。(林)

 
RICK JAMES
『Street Songs(Deluxe Edition)』
Motown/ユニバーサル(1981)

 

 先日惜しくも他界した故リック・ジェイムズ最大のヒット作(81年発表)。“Give It To Me Baby”“Super Freak”といったストリート・ファンクを中心に、ティーナ・マリーとデュエットしたバラード“Fire And Desire”など珠玉の名曲が並ぶ。バック演奏はリックお抱えのストーン・シティ・バンド。テンプテーションズの面々もコーラスで参加した。

 リックの〈デラックス版〉は、スタジオ録音の未発表テイクは含まれていない。オリジナル本編を収録したDisc-1には“Give It To Me Baby”と“Super Freak”のそれぞれ12インチ(A、B面)を収録。一方、Disc-2はまるごとライヴ盤となっており、こちらは初公開のもの。81年7月にカリフォルニアのロングビーチで行われた白熱のライヴで、ストーン・シティ・バンドらレコーディング・メンバーたちとデビュー以降のヒット曲をカッ飛ばす。当時恋仲にあったティーナ・マリーも参加し、ソロ曲“Square Biz”も披露。実はリック初の公式ライヴ盤でもある。(林)

 
LIONEL RICHIE
『Can't Slow Down(Deluxe Edition)』
Motown/ユニバーサル(1983)

 

 コモドアーズからソロとして再出発したライオネル・リッチーのセカンド(83年発表)。ポップ/R&Bの両チャートで首位となったミディアム・ダンス・チューン“All Night Long(All Night)”や同じく大ヒットしたバラード“Hello”を含み、持ち前のテンダー・ヴォイスでスムースな歌を聴かせる。制作は本人とジェイムズ・アンソニー・カーマイケル。

 アルバム・リリース20周年を記念して発表されたリッチーの名作〈デラックス版〉は、既発のシングル(7インチ/12インチ・ミックス)の一部に加え、初公開となる本編収録曲のデモや別テイク(Disc-2)で構成。もちろん貴重なのはDisc-2のほうで、デモ以前の仕上がりながらグレッグ・フィリンゲインズと作った“Ain't No Sayin' No”やデヴィッド・フォスターとの共作曲“Tell Me”など、未完成に終わった結構ファンクな曲が聴けるのが嬉しい。インストのジャム・セッションやスタジオでのやりとりも少し収録。制作段階の試行錯誤が窺えるのが興味深い。(林)

 
ERIC B. & RAKIM
『Paid In Full(Deluxe Edition)』
4th & Broadway/Island(1987)

 

 DJ/トラックメイカーのエリックBとMCのラキムからなる2人組のラップ・チームによる87年のデビュー作。ヒップホップ史上に残る名作として高い評価を得ている本作は、ボビー・バード曲を使った“I Know You Got Soul”など、ソウル/ファンク曲の大ネタ使いを基本に組み立てられたトラックとラキムの中毒性のあるラップが聴き手の耳を奪う。

 ヒップホップ関連ではいち早く豪華盤が登場していた作品で、〈The Platinum Edition〉として98年にリリースされていたものが5年後にリニューアルされた(内容はほぼ同じ)。アルバム本編を収めたCDに加え、もう一枚のCDには本編曲のリミックス〜ダブなどを収録。半分はUKでリリースされたDJリミックスの12インチで、コールドカットやリッシ・リッチらによる切れ味鋭い技に心地良く飛ばされる。一方、USリミックスはパトリック・アダムズらの仕事を収録。特にマーリー・マールとMCシャンが乗っ取った“Eric B. Is President”がカッコいい。(林)

 
PAVEMENT
『Slanted & Enchanted(Deluxe Edition)』
Matador/Pヴァイン(1992)

 

 グランジが終息しはじめたUSをブチ抜いた、ローファイ・シーンの立役者による92年発表のデビュー・アルバム。どこかしらポップなんだがどこかしらがヘン、というか変態そのもののヘロヘロかつアヴァンギャルドなノイズ・サウンドは、聴き終えた瞬間に得もいわれぬ虚脱感と麻薬的な中毒症状に苛まれること請け合いな奇跡的芸術作品。

 アルバム・リリース10周年に際して発表されたリイシュー盤には、〈ボーナス・トラック〉という概念からも逸脱したヤンチャな未収録曲をギュウギュウに詰め込んだ2枚組仕様! ニワトリのジャケでお馴染みの“Watery, Domestic”の全曲やB面曲、貴重なアウトテイクにライヴ・セッションを網羅した全34曲という豪華な内容。特にスタジオ・ヴァージョンの数倍ダウナーでカオティックなライヴ・ヴァージョンの数々は、いつ聴いても鳥肌モノ!! さらにはセカンド『Crooked Rain』のデラックス化も控えており、嬉しい悪夢はまだまだ続くのである。(加賀)

 
SONIC YOUTH
『Dirty(Deluxe Edition)』
Geffen/ユニバーサル(1992)

 

 92年発表のメジャー2作目で、前作『Goo』と共に時代の潮流(グランジ)と見事にシンクロした傑作。楽曲はインディー期に比べると輪郭がかなり明確になり、いわゆる〈ロック的〉ダイナミズムが倍増。彼らの破壊嗜好とポップ趣味が絶妙なバランスで均衡している、という意味でも入門編には最適? 個人的にも浴びるほど聴きまくったブツです。

 アリス・クーパー“Is It My Body”のカヴァーを含めたシングルのB面やカップリング・ナンバーを8曲、さらに貴重なリハーサル・テイクを12曲も追加した特盛2枚組。とにかく、曲名も仮題でヴォーカルも入っていない初期ヴァージョン大量投下のリハ・テイクにゃ失禁必至! 手探り状態のプリミティヴで生々しい音像に、彼らの本質が凝縮されている。ブッチ・ヴィグをプロデューサーに、アンディ・ウォレスをミキサーに迎えて(つまり、ニルヴァーナ『Nevermind』コンビですな)、緻密に構築された最終テイクと聴き比べるとかなりおもしろい。(北爪)

 
JEFF BUCKLEY
『Grace(Legacy Edition)』
Columbia/ソニー(1994)

 

 ティム・バックリーを父に持つ、孤高のシンガー・ソングライターが94年に発表した唯一のオリジナル・アルバム。力強く、そして儚い楽曲と神懸り的な美声には目眩すら覚える。昨今のシンガー・ソングライターはもとより、レディオヘッドやコールドプレイにまで彼の存在が影を落としている。ティム同様に若くしてこの世を去ったジェフの、まさに一瞬の奇跡。

 ボーナス・ディスクはアルバム未収録曲やライヴ・トラックで構成されている。アルバム・デビューまでの下積み期間が長かった彼だけに、ハンク・ウィリアムスやMC5のカヴァーを含むライヴ・パフォーマンスの出来がとにかく素晴らしい。そしてさらに特筆すべきは、インタヴューとライヴ映像が収められたドキュメンタリー仕立てのボーナスDVD。奇跡としか形容できない“Hallelujah”の美しき歌声と、〈とにかくシンガーになりたかったんだ〉と言ってはにかむ天使のような笑顔にただただ涙。まさに〈レガシー(遺産)〉の名に恥じない内容。(加賀)

 
WEEZER
『Weezer(Deluxe Edition)』
Geffen/ユニバーサル(1994)

 

 現代パワー・ポップの礎となったウィーザーによる〈青き記念碑〉。轟音と疾走感、そしてリヴァース・クオモの天才的なメロディーセンスと煮え切らない歌詞、すべてが後続のバンドはおろか世のヤングを総決起させることに。名曲“No One Elese”“Buddy Holly”を含む、アタマからシッポまで嬉し泣きのアンコがタップリ詰まった捨て曲ナシの大名盤!!

 〈ウィーザーはB面でも名曲の嵐〉を証明する、リリース10周年記念盤。Disc-2には名曲“Susanne”などのアルバム未収録曲や、メロディーの純度が尋常じゃないくらいに増したアコースティック・ライヴや貴重なデモ・トラックなど、いまでは入手困難なレア曲がザックザク! さらにはアルバム収録曲に匹敵する“Jamie”のおかげで、すでにオリジナル・アルバムを持っていても買ってしまう人が多いことでしょう。リヴァースの底なし沼的才能がギュウギュウに詰まった、参考書を買わないでも手に入れるべき重要文化財。(加賀)

 
JIMMY EAT WORLD
『Bleed American(Deluxe Edition)』
Dreamworks/Interscope/ユニバーサル(2001)

 

 エモの可能性を一気に押し広げ、名実共にシーンを代表する存在となったジミー・イート・ワールド。彼らの評価を決定的なものにしたのが大ヒット・シングル“Sweetness”などを収録したこの2001年作である。キャッチーで最高に泣ける奇跡のような楽曲に彩られた本作は、インディーというハンデを抱えながらも全世界で220万枚のセールスを記録した。

 そしてその〈デラックス・エディション〉は、なんと日本限定でリリースなのです! 気になるボーナスCDの内容なんですが……ライヴ/ラジオ・セッションを含むライヴ音源が4曲、ワム!“Last Christmas”(意外!)やプロディジー“Firestarter”(ハマリすぎ!!)のカヴァー、エンハンストのライヴ映像とプロモ・クリップ、というファンなら神棚にでも供えたくなるような超強力な楽曲群で固められております。リリースされたばかりのニュー・アルバム『Futures』もこれまた傑作なので、併せてゲットしておきましょう。(冨田)

今後の〈スペシャル〉リリースをご案内!!

 今後も続々とお宝リリースが予定されているスペシャル・エディションだが、ここではそのいくつかを紹介しておこう。まずは11月。ペイヴメントを、いや90'sオルタナ界を代表する名作『Crooked Rain, Crooked Rain』、ジャニス・ジョプリンの遺作にして最高傑作『Pearl』、サンタナのラテン・グルーヴ爆発のデビュー作『Santana』、ブルース・ギター・バカ一代=ジョニー・ウィンターの『Second Winter』と目白押し! さらに12月。ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの超名盤『Burnin'』、エリック・クラプトン『461 Ocean Boulevard』と続々と登場予定!! う〜、チビる〜!!(北爪)

 ▼文中に登場する作品を一部紹介
ペイヴメント『Crooked Rain, Crooked Rain(Deluxe Edition)』(Matador/Pヴァイン)
ジャニス・ジョプリン『Pearl(Legacy Edition)』
ジョニー・ウィンター『Second Winter(Legacy Edition)』(共にColumbia/ソニー)

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