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第57回 ─ ハンサム・ボーイ・モデリング・スクール、秘密の手帖を発見


掲載: 2005/02/10

文/出嶌 孝次




 99年の開講と同時に大きな話題を撒いたハンサム・ボーイ・モデリング・スクール。数多くのムサ苦しいラッパーやモテないロック・ミュージシャンたちが受講した結果、その多くがハンサムへと見事に変身したことで、私たち男性の間ではもう本当に大変な騒ぎだったものです。次の定員募集を心待ちにしているアーティストを何人も知っていますよ、ええ。そんななか、待望の再開講が行われると知り、話を訊いて参りました。

――ニュー・アルバム『White People』はハンサムですね。久々の開講ですが。

ナサニエル・メリウェザー ああ。前回の『So...How's Your Girl?』の時にはトミー・ボーイに所属していたわけだよ。それが消滅して次はエレクトラと契約した。そのエレクトラも今度はアトランティックに吸収されてしまったんだからね。そのつど新しい担当者と話をしなきゃいけないし、音楽業界っていつもそんな感じでハンサムじゃないな。結局制作自体は8か月くらいかな。5年ぶりの開講だけれども、そのうちの3年ほどはそういうゴタゴタに費やしたからね。

――ハンサムな話ではないですね。でも、そもそも期間限定スクールだと捉えていた人も多かったようです。

ナサニエル いや、2度目の開講は漠然とながら考えていたよ。今回のカリキュラムも基本的には前と同じだけど、私にしてもチェスト(・ロックウェル)にしても個人的な成長による違いは出てきているね。今回は楽器演奏者の参加も多くて、気分的にもリラックスしてやれた。前回はもっとサンプリングが多かったよね

――タイトル『White People』の由来は?

チェスト みんな〈白人〉というタイトルを大袈裟に捉えるけど、そんな一元的な人種的偏見の話じゃないからね、キミ。もっと次元の違うさまざまな要素を含めた意味の〈ホワイト・ピープル〉なのさ。もともと、このタイトルを思いついてアルバム制作が始まったんだ。まず、〈何がハンサムか〉ってことが焦点になった。そして〈マネキンってハンサムだよな〉ってことになってアルバムの方向性が決まったわけ。ジャケットの撮影はテリー・リチャードソンだよ。
ハンサム・ボーイ・モデリング・スクールのセカンド・アルバム『White People』(Elektra/Atlantic/ワーナー)

――今回の講座はどういう内容なのですか?

ナサニエル お互いに盛り込みたいアイデアを出し合って、録音する際にアドリブや思いつきを採用したりしてる。前回よりもっと我が校の教育に則ったアルバムなのさ。つまり、各人のいいところを伸ばすための変身術を身につけることを学ぶ学校だよ。

――わかりました! それでは資料のほうを頂いて帰ります。ありがとうございました。

充実の講師陣が貴方の変身をお約束

Prince Paul

 我が校が誇るべき名物講師のひとり、チェスト・ロックウェルは、一般的にはプリンス・ポールという名前で御存知の方が多いかもしれません。80年代半ばにはステッツァソニックでDJを務め、89年にデ・ラ・ソウル『3 Feet High And Rising』(Tommy Boy)にて教鞭を執り、ニュー・スクール(学校ではありません)の扉を開いたという経歴の持ち主です。

 80年代には独特のハンサム審美眼を活かして、ビッグ・ダディ・ケイン、クイーン・ラティファなどを鍛え直しています。片や94年にはRZAやトゥー・ポエティックらと共にグレイヴディガズなるハンサムらしからぬグループを結成したこともありました。97年には初めてのソロ・アルバム『Psychoanalysis: What Is It?』(Tommy Boy)を発表、これはインストゥルメンタル中心の実験作品でしたが、99年に放った2作目『Prince Among Thieves』(Tommy Boy)ではラッパーたちを迎えたドラマ仕立ての娯楽作品に仕上げています。2003年には似た雰囲気の3作目『Politics Of The Business』(Antidote)もリリースしています。当人いわく「未発表トラックをまとめて出したら、プリンス・ポールとしての作品はおしまい」だそう。

 最近は気まぐれで悠々自適のハンサムぶりを展開している彼だけに、今回の講義は貴重な直接指導となります。この機会をどうぞお見逃しなく。なお、このパンフレットで彼があまり喋っていないのは、友人であるオール・ダーティ・バスタード氏の葬儀に出席した後だったからのようです。冠婚葬祭……というか信義に厚いのもハンサムの必須条件なのですね。

▼文中に登場した作品を紹介
De La Soul『3 Feet High And Rising』
prince paul『Psychoanalysis:What Is It?』
Prince Paul『Prince Among Thieves』
Prince Paul『Politics Of The Business』



 
・Dan the Automator
さて、もうひとりの名物講師となるのがナサニエル・メリウェザーです。ダン・ナカムラ、あるいはダン・ジ・オートメイターとして御存知の方もいらっしゃるかもしれません。彼は伝説の天才教師であるクール・キース氏がDrオクタゴンの名で出した96年作『Dr. Octagonecologyst』(Bulk)でカリキュラム設定に携わっていたのですが、その後キース氏とは決裂してしまいます。同年にEP教材『A Better Tomorrow』(2000年にアルバム・サイズの『A Much Better Tomorrow』として再リリースされました)を出した彼はロック・アクトを中心にプロデュース業に手を広げていき、ハンサム・ボーイ養成講座の開講に至ります。

 一方で2000年にはデル・ザ・ファンキー・ホモサピエン&キッド・コアラと組んだデルトロン3030として『Deltron 3030』(75 Ark)を、翌2001年にはデーモン・アルバーン(ブラー)らとの覆面バンド=ゴリラズで『Gorillaz』(EMI)をリリースするなど百面相ぶりを発揮。同2001年にはナサニエルが贈るハンサムード音楽プロジェクト=ラヴェイジの『Music To Make Love To Your Old Lady By』(75 Ark)もコンダクト。この頃にはギャラクティックやブルース・エクスプロージョンの改造計画を練ったり、ウィリー・ボボやチャーリー・パーカーといった過去のハンサムたちに関する論文も発表しています。

 2002年にはそんな多趣味ぶりを窺わせるカラフルなミックスCD『Wanna Buy A Monkey?』(Sequence)をリリース。ゴリラズの新作や、MCA消滅によって宙に浮いてしまったソロ名義作品『Omakase』の完成も待たれる人気講師です。

▼文中に登場した作品を紹介
Dr. Octagon『Dr. Octagonecologyst』
Automator『A Much Better Tomorrow』
Deltron 3030『Deltron 3030』
Gorillaz『Gorillaz』


Lovage『Music To Make Love To Your Old Lady By』
V.A.『Wanna Buy A Monkey?』


こんなにハンサムな受講生の顔ぶれ


ALEX KAPRANOS:彗星のように登場して、デビュー・アルバム『Frantz Ferdinando』(Domino)をヒットさせたフランツ・フェルディナンドのヴォーカリスト。Drオクタゴンのファンだったそう。「彼は〈Elle〉誌が選ぶ〈2004年のハンサムな男〉の18位にランクインしてる。前の年は載ってなかったのに! 我が校に通ったおかげでこんなに脚光を浴びるようになったに違いないよ」(ナサニエル)。



 

CAT POWER:ショーン・マーシャルの独りユニット。近作は『You Are Free』(Matador)。ナサニエルとはいっしょにカラオケに行く仲だそう。「ショーンはすごくハンサムな女性。ヴォーカリストとしても一流で、性格もいいし素晴らしい女性だね」(ナサニエル)。



 

CHINO MORENO:ベイエリアのオルタナ・メタル番長、デフトーンズのメンバー。近作は2003年の『Deftones』(Maverick/Warner Bros.)。「チノは北カリフォルニアのノリがいいのさ。デフトーンズはフォロワーというよりティーチャーであって、自分たちで道を切り拓いていくところがハンサムだね」(ナサニエル)。



 

DE LA SOUL:プリンス・ポールとの絡みでも名高いニュー・スクール代表トリオ。久々の新作『The Grind Date』(Sanctuary)をリリースしたばかり。「デ・ラはデビューした時に〈D.A.I.S.Y.〉を提唱してカラフルな色を流行させただろ。ファッション界でトミー・ヒルフィガーが明るくカラフルなスタイルを打ち出す前からそれをキャッチしていたような先見の明がハンサムだ」(ナサニエル)。



 

EL-P:元カンパニー・フロウにして、デフィニティヴ・ジャックスを主宰するNYアンダーグラウンドの王者。先日『Collecting The Kid』(Definitive Jux)をリリースしたばかり。「バックパッカーにもハンサムはいるんだけど、まあ、エル・Pはエル・Pさ(笑)。彼が入学した時のエピソードを教えよう。〈ナサニエル、そっちのライヴには綺麗な女性ばかりなのに、俺たちのほうにはバックパッカー野郎ばかり。何とかしてよ〉って頼まれたんだ。それで、〈まず、風呂に入れ。身体をシャワーでよく洗えよ。それからもっと綺麗な格好をして……〉とか助言してやったわけ。そしたら彼らのライヴにも女の子が来たんだ!」(ナサニエル)。



 

THE MARS VOLTA:アット・ザ・ドライヴ・インの元メンバーによって結成されたバンド。『De-Loused In The Comatorium』(Universal)に続く新作も間近。「もともと〈Wu Wear〉のデザインをやってたけど、気に入らなくてRZAがクビにしちゃったんだ。いまはクールな関係だけどね」(ナサニエル)。



 

LINKIN PARK:ジェイ・Zと連名の『Collision Course』(Roc-A-Fella/Def Jam/Machine Shop/Warner Bros./ワーナー)が全米チャートを制したばかり。今回はマイク・シノダとチェスター・ベニントンが受講。「彼らはあんなにレコードを売ってもハッピーになれない。それはまだハンサムの域に達してないからさ。ウチの60ドル・コースを受講して、ハンサムになったらもっと大きなステージに立ってほしいな」(ナサニエル)。



 

MIKE PATTON:ラヴェッジの作品でナサニエルとは合体済み、US音楽界が誇る奇才。パットン&カーダ名義での『Romances』(Ipecac)もリリースされたばかり。「フェイス・ノー・モアの頃からずっと好きなロックンロール・ハンサムさ。髪は切ったほうがいいからカットさせたけど(笑)」(ナサニエル)。



 

JACK JOHNSON:元プロ・サーファーで、レイドバックした作風が人気のシンガー・ソングライター。彼が監督した映画のサントラ『Thicker Than Water』(Universal)にはナサニエルも関与。「ハワイ独特のハンサムだね。ただ、アメリカ本土に来たらシャツくらい着なくちゃダメだよな。アロハでもいいから上半身裸はやめるよう指導した。まあ、いまでもサンダル履きだけど(笑)」(ナサニエル)。



RZA:もちろんウータン・クランの総帥。「金歯や少林寺拳法など、ひと味違うハンサムだと思う。ハンサムはカルチャーや環境によって表現が違うけど、それが本人に合っていてハンサムに見えればハンサムなんだ」(ナサニエル)。

身だしなみ上手な伝説のハンサムたち


JOHN OATES:ダリル・ホールとのデュオで〈あのヒゲのほう〉と呼ばれて一世を風靡した伝説のモダン・ハンサム。近作はホール&オーツとしての2004年作『Our Kind Of Soul』(U-Watch)となる。「私が積極的に組みたかったのはジョンだけなんだ。あのヒゲにはインパクトがあったからね。いまは剃っちゃってるけど関係ないんだ。また生えてくるだろうから! それに彼には素晴らしい才能があるよ」(チェスト)。「昔のジョンは全身黒でキメて、とてもファッショナブルだった。それでラヴソングを歌うんだから、ハンサム以外の何者でもないね」(ナサニエル)。



 

BARRINGTON LEVY:カナリアと評される絶品のノドを持つジャマイカのヴェテラン歌手。98年作『Living Dangerously』(ビクター)などでヒップホップ勢との絡みも経験済。「すごくおもしろい人だよ。ドレスアップしてスーツを着こなしたり、シャープなセンスを持ってる。立ち居振る舞いもスムーズな色男さ。私たちが彼に教わることのほうが多かったぐらいさ」(チェスト)。



GRAND WIZARD THEODORE:スクラッチなどの技術を確立したオールド・スクールDJ。「このスクールができる前からハンサムという要素を持っていた人だと思う。当時DJはファッションでも何でもなかったんだからね。それをクリエイトするなんて……それだけで十分ハンサムだと思うよ」(ナサニエル)。



 

LORD FINESSE:NYのネタ掘り師クルー、DITCきってのファンキー・テクニシャン。95年の『The Awakening』(Penalty)以来アルバム・リリースはないが、DJ/プロデュース業で活躍中。「フィネスはダントツにハンサムだよ。パンツには必ず折り目がついてるし、いまでも家を出る前は必ずシャツにアイロンをかけるって言ってたな」(ナサニエル)。「最近も何かの雑誌の撮影でいっしょになったんだ。彼は上から下までトータル・コーディネートでバチッと決めて、ヒゲも綺麗に手入れしてあった。さすが我が校の卒業生だけあるな……って感心したよ(笑)」(チェスト)。

では、お申し込みはこちらまで

――最後に、こういったマニュアルを映像化しようという予定はないのですか?

チェスト ふむ、なかなかいいアイデアだな。いろいろなハンサムが登場する作品だからね。よろしい。まだ手探りの段階だけど、〈Handsome Is A Steal〉というDVDの制作を予定してるから、そこでうまく映像化できたらいいね。ある種の入門書的な……。

ナサニエル そうそう、どうしたらもっとハンサムになれるかっていう秘訣を伝授するっていうガイドにできるといいな。

――受講資格のようなものはあるのですか?

ナサニエル 私たちはお互いの音楽スタイルをよく知っているとか、個人的に付き合いがあるとか、そういう人たちとしか基本的には組まないからね。だからコラボレートするのはウマが合うとか才能が豊かとかすでにわかっている人たちじゃないとね。

チェスト エゴの強い人はこちらからお断りだね。そんな奴がいたらこちらも仕事にならないし。スタジオではいっしょに笑ったり楽しくやりたいだろ。クリエイティヴかつお互いに楽しんで仕事するのがいちばんだよ。まあ、ハンサム・ボーイ受講生をスタジオに呼んだ場合は、みんなが人よりいいスーツを着てハンサム度に差を付けようとするから大変なんだけどね(笑)。まあ、皆がドレスアップできるように、我が校の受講料は60ドルでやっていくから、よろしく。

ナサニエル 60ドルなんてちっとも利益になってないんだよ! ほとんど奉仕活動なんだ。

――CDを買ったほうが安そうですね。

▼その他のカリキュラムをご紹介
ハンサム・ボーイ・モデリング・スクールの99年作『So...How's Your Girl?』(Tommy Boy)
新作と同時リリースされたインスト盤『White People Instrumentals』(Elektra/Atlantic)


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