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TOWA TEI

掲載: 2005/04/07
更新: 2005/04/21
ソース: 『bounce』誌 263号(2005/3/25)

待たされること6年! これまでに増して閃きに満ちた人選、カラフルかつ豊富なアイデアが凝縮された新作『FLASH』は、完全無欠のポップ・アルバムだ!

文/岡本 俊浩




前作『Last Century Modern』からソロ名義としては6年ぶり。テイ・トウワが新作『FLASH』と共に帰ってきた。全10曲、合計約40分という内容は、キャリア史上もっとも研ぎ澄まされたポップセンスの結晶だ。あるゆるクラブ・ミュージックの流儀を通過しながら、誰にでも門戸が開かれたポップセンスはどこまでも軽く。しかし、その音楽的強度はちょっとやそっとのことではビクともしない。大きなターニング・ポイントになりそうなこの一枚、テイ・トウワはかく語る。

 
テイ・トウワのニュー・アルバム『FLASH』(V2)

楽しい時間はアッという間

「今時、生きていくうえで重いこと多いじゃないですか? それに対しての軽さもあるし、抜けの良さを求めたのはそこが大きかったかな。最近は詰め込み過ぎな音楽が多いんですよ。そう思いません? もう終わりかな……って思ったらまだ5曲目だったりさ(笑)。そういうなか、僕は腹八分目がいいなと。CD700MBの容量に何で全部詰め込む必要があるのかなって思うんですよ。楽しい時間って、アっという間じゃないですか。それが言いたかった。だから、実際に楽曲を短め少なめにしている部分はあるかな。1曲作るにしても、例えば2分40秒を超えるんだったら、もうひとつアイデアが必要なんじゃないかと。曲に強度を保つにはそのぐらいやらなきゃいけないと。詰め込み過ぎず、かつ希薄にならないという点でね。希薄に聴こえないとしたら、そこが効いているのかも」

 ――2分40秒を超えるにはもうひとつアイデアがいると。これはいつから意識されたことなんでしょうね。

 「この作品を作ろうと思い立った瞬間からだから、ここ2年とかの話じゃないかな。僕ね、デビューして15年なんですけど、これまでやってきたキャリアはやっぱり自信にはなっていて、それは〈自分が夢中にやっていることだったら、誰か楽しんでくれるだろう〉っていう確信を支えているんですよ。作り手としては、そこを追求していくことが大事なんじゃないかと。例えば〈音楽で世の中を変えてやろう〉とか、〈こういうメッセージを届けたい〉とかいろいろあるわけじゃないですか。ただ、僕の場合はそういう意識はまったくなくて、人が真剣におもしろがっていれば聴き手もインスパイアされてくれるだろうという確信でやっているから」

 ――勉強不足から来るのかもしれないけど、それは僕の中にある〈テイ・トウワ像〉からは相反するような人間臭さですね。

 「もうね、最近は買い物とかインターネットばっかりなんですよ。だからこそ、人の匂いを求めているっていうのかな……人と顔を突き合わせてやりたい感じは高まってきているんですよ。DJとかも楽しいし。日常のルーティンをインターネットに頼ることによって、人と会った時の感覚がフレッシュになってくるんです」
▼テイ・トウワが参加した作品のごく一部を紹介。
m-floの2001年作『EXPO EXPO』(rhythm zone
キリンジ『KIRINJI RMX 2』(ワーナー
唐沢美帆の2004年作『ID.』(ポニーキャニオン)



 ▼『FLASH』に参加したアーティストの作品の一部を紹介。
野宮真貴の2000年作『miss maki nomiya』(レディーメイド)
Buffalo Daughterの2003年作『Pshychic』(V2
アート・リンゼイの最新作『Salt Plus Two』(ビデオアーツ)


閃きを尊重したかった

 新作『FLASH』に顔を揃えたゲスト陣は、とにかくヴァラエティーに富む。クラブ系のバイロン・スティンギリーからルオモ、ポップどころでは森高千里、カイリー・ミノーグ、さらに坂本龍一などなど。しかしその人選には欺瞞がない。気負いなく、ごくごく自然に彼らは同居する。テイ自身がその秘密を明かす。

 「音楽を作るうえで、僕の場合は戦略的じゃないですよ。バイロンとはね、もうここ10年はいっしょにやりたいと思っていたんです。ただ、まったく面識もないし、ひょっとしたら掴まんないかもしんないと。で、そうなった時のことも考えて、第2希望まで考えていたんです。ただね、その第2希望的な考え方って〈左脳的(=論理的)〉なのかなと。ブッキングにはいろんな事情もあるから一概には言えないんだけどさ、今回は『FLASH』と銘打ったこともあって、僕は右脳的(=直感的)な閃きをなるべく尊重したかったの。若い時はその閃きに自信が持てない時もあったよ。〈え? これでいいの?〉みたいな躊躇が出てきて、結果余計なことをやっちゃう。でもね、リスナーにはわかるんですよ。作り手のブレっていうのは。確かに若い時はガツガツ考えるんですよ。それは仕方がないし、それもひとつの魅力。ただ、今の僕は〈どうしよう?〉ってなった時に、〈何とかなるでしょ!〉って考えるんだよ。老人力なのかもしれないけど(笑)」

 ――そういう老人力をクラブ・ミュージックのフィルターをとおしつつ、ポップスとして成立させているっていうのは稀有ですよ。

 「(笑)。まあ、僕なりの〈イエーイ!〉っていうか〈俺最高じゃん!〉みたいな感覚が凝縮された40分(=収録分数)なんですよ、今回は。僕の〈イエーイ!〉はORANGE RANGEの〈イエーイ!〉とは全然別モノなんだろうけど」

 ――内容面に関してもうひとつ。ソロ名義の間に挟まっているSWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE
(SRATM)での活動。今作がポップスとしての高みをめざしているのは、それへの反動とおっしゃっていましたね。

 「うん。自分にとって作品を作るっていうことはやっぱり反動の繰り返しなんですよ。SRATMに関して言えば、当時聴いていたエレクトロニカの流れを自分なりに採り込みたくて、それへの呼応だったんです。でもね……やっているうちにPowerBookに向かいながら1日を潰していく感じが嫌になったんですよ。〈これじゃメール書いているんだか、曲作っているんだかわかんねえや〉って。結局、その時使っていたプログラムとか捨てました。それで今回、シンプルに基本に立ち返った部分はあるかな。やり方としては90年代頭に戻ったっていうか、ディー・ライトのLP作ってた感覚に近いんだけど、〈ああ、これが僕のやり方だったんだな〉と噛み締めていますね」
▼『FLASH』に参加したアーティストの作品の一部を紹介。
ルオモことヴラディスラヴ・ディレイの2004年作『Demo(n)Tracks』(Humme
森高千里のベスト盤『the best selection of first moritaka 1987-1993』(ワーナー)
カイリー・ミノーグのベスト盤『Ultimate Kylie』(Parlophone)



 
3月28日に出版されるテイ・トウワによるヴィジュアル・ブック「LOOK」(リットーミュージック)。これまで発表されたレコード/CDジャケット、フライヤーやポスターのアートワークに加え、本人撮影による各界の著名人や風景写真などを掲載

文/出嶌 孝次

キャリア15周年を迎えたテイ・トウワの、一筋縄ではいかない鮮鋭な才が記された過去作をプレイバック!


DEEE-LITE 『World Clique』 Elektra(1990) ファンクやハウス、ヒップホップ、ダブなどをポップに融和するメルティング・ポットのようなトリオだったディー・ライト。86年にNYで結成されたグループにジャングルDJトウワ・トウワが加入したのはその2年後。この初アルバムからの“Groove Is In The Heart”が全米ポップ・チャートで4位まで上昇して世界的にブレイクした。なお、この時期のトウワはネイティヴ・タン周辺でも名を馳せ、ジャングル・ブラザーズのロゴ・デザインを手掛けたり、〈自然の力が大地を駆ける〜〉とかラップ(?)したり。
ディー・ライトのベスト盤『The Very Best Of Deee-Lite』(Rhino)
ジャングル・ブラザーズの89年作『Done By The Force Of Nature』(Warner Bros.)



 

テイ・トウワ 『Future Listening!』 GUT/フォーライフ(1994) 坂本龍一や立花ハジメらとの共演を経ての初ソロ作。ベベウ・ジルベルトやアート・リンゼイら豪華な面々が参加。自然さと人工美が折り重なる“Technova”や“Batucada”のカヴァーなど、ベベウの爽快な歌唱を活かした曲が出色だが、“Son Of Bumbi”がビートルズ“Tomorrow Never Knows”風(某ケミカル兄弟より1年早かった)だったり、ララージのカリンバが秀麗に響いたり、異国情緒と未来感覚の同居はこの頃から手慣れたものだった。リミックス盤『Future Recall!』にはマスターズ・アット・ワークらを起用。
ベベウ・ジルベルトの2004年作『Bebel Gilberto』(Ziriguiboom/Crammed
リミックス盤『Future Recall!』(GUT/フォーライフ)



 

SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE 『SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE』 イーストウエスト(1997) 前作で開けていない引き出しを開陳する意図があったのか、全体的な風情はヒップホップ・ベース。ストレッチ・アームストロングをDJに据えたファット・ビーツで始まり、パトリース・ラッシェン“Forget Me Nots”のボトム太めなカヴァー(トウワ+森俊彦=SP 1200によるDJプレミア風のリミックスも格好いい)やランDMCなどの断片も聴こえるドリルンエレクトロ“Hyp”など、小粋で空疎なジャケが皮肉に思える仕上がりだ。Disc-2にはバリの自然音が60分!
パトリース・ラッシェンのベスト盤『Best』(Elektra)
Toshihiko Moriの99年作『PLA-NETALY FOLKLORE』(イーストウエスト)



 

テイ・トウワ 『SOUND MUSEUM』 イーストウエスト(1997) バハマディアのラップも聴ける歌モノの最高峰“Happy”(コーラスにはケリー・プライスも!)をはじめ、無名時代のモス・デフをビズ・マーキーと共に迎えた“BMT”、さらにはカイリー・ミノーグやアメール・ラリューらも登場し、ホール&オーツ“Private Eyes”のカヴァーで結ぶなど、適度にソリッドながらもキャッチーな聴き心地。漫☆画太郎の脱力アートワークも秀逸なリミックス盤『Stupid Fresh』では、DJダイ、クラスト、さらにドリーム・ティーム(!)とエッジーな人選で次作を予告。
モス・デフの2004年作『The New Danger』(Rawkus/Geffen)
リミックス盤『Stupid Fresh』(イーストウエスト)

文/出嶌 孝次

キャリア15周年を迎えたテイ・トウワの、一筋縄ではいかない鮮鋭な才が記された過去作をプレイバック! その2


テイ・トウワ 『Last Century Modern』 イーストウエスト(1999) 前世紀のモッド=新世紀のスタンダード、ってことか? 全体的にヨーロピアンな雰囲気が増し、電化度数もアップ。相性抜群なCharaとの“Let Me Know”、〈ミシェル・ルグランmeetsドラムンベース〉的な“Butterfly”(歌は田辺あゆみ)、ダイ作の“Contact”などキャッチーさも全開だ。レ・ニュビアンが歌うトム・ブラウンのカヴァー“Funkin' For Jamaica”がユーロ圏でヒット。スパークスるリミックス盤『Lost Control Mix』には、コーネリアスやセニョール・ココナッツらが参陣。
Charaの2004年作『A Scenery Like Me』(エピック)
リミックス盤『Lost Control Mix』(イーストウエスト)



 

テイ・トウワ 『TOWA TEI BEST』 イーストウエスト(2001) アートワークにはデザイナーズ・リパブリックを初起用した初のベスト・アルバム。既発曲も含めてキャッチーな歌モノの多さに改めて気付かされ、なかでも白眉は原田郁子の声をアトモスフェリックにあしらった2ステップ・チューン“火星”。前年にリリースしたコンピ『ar』では、同曲のバンプ&フレックスによるリミックスや“Spiegel”などの自曲と共に、ソー・ソリッド・クルー“Oh No”(早い!)やフューチャリスティックス、モルガン・ガイストも並べるなど目利きぶりも見せた。
原田郁子の2004年作『ピアノ』(コロムビア
レーベル・コンピ『ar』(イーストウエスト)



 

SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE 『TOWA TEI』 cutting edge(2002) いい意味で取っ散らかった雰囲気は多重人格的ですらある(それでこのタイトルなのか?)。デニース・ウィリアムスを爽快に2ステップ化した“FREE”のような曲もあるが、多くの曲はIDM/エレクトロニカへの皮肉のような、機能美に優れた電子リゾート音楽の趣き。曲名そのままの“HAWAIIAN TABLA CHAPA”やガムランの響きに和む“PITAMAHA BAMBOO”などが楽しい。リミックス盤『RE : TOWA TEI』は、一転してMJコールやリクルース、DJマーキーらジャストな人選のフロア向け。
リミックス盤『RE:TO-WA TEI』(cutting edge)
MJコールの2003年作『Cut To The Chase』(Talkin' Loud)

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