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第61回 ─ 新時代の到来を予感させるソロ・ビューティーが大集合!!


掲載: 2005/05/06

ソース:『bounce』誌 264号(2005/4/25)

文/bounce編集部



 ここ最近、特に2000年以降のポップ・フィールドにおける女性ソロ・シンガーの活躍ぶりを振り返ってみると、やはりアヴリル・ラヴィーンとノラ・ジョーンズの存在を外すことはできない。90年代のトレンドだった、簡素なサウンド・プロダクションや一人称的なストーリーで展開される詞世界などのメソッドは、現在もなお進化し続けているが、それ以外のアプローチで大ブレイクしシーンの流れを大きく変えているからだ。前者はパンク・ファッションとロックをカジュアルなかたちでパッケージングし、かたや後者はリラクゼーション・アイテムとしてジャズをスマートなかたちでパッケージ。新たな女性ソロ・シンガーの方向性をミュージック・シーンを越えて世間一般にまでアピールした。しかしここで重要なのは、両者のようにしっかりとしたキャラクターと高い完成度を備えた作品をリリースすれば、どんなアプローチを取ろうが現在のシーンはしっかりと受け止めてくれるということ。要はトレンドの意味合いがますます薄くなり個々の音楽そのものが問われる時代になったのである。ここでは、そんな〈いま〉にニュー・アルバムをリリースするソロ・ビューティーたちを紹介していこう。キャリア、サウンド・スタイル、キャラクター、いずれもがヴァラエティーに富み、作品も完成度の高いものばかりだ。
アヴリル・ラヴィーンの2004年作『Under My Skin』(Arista)
ノラ・ジョーンズの2002年作『Come Away With Me』(Blue Note)


文/五十嵐正

AIMEE MANN

サウンド・スタイル、キャラクター、いずれも個性的な春の新作をご案内


豊かなキャリアとクリエイティヴィティーで作品に生命を吹き込むクール・ビューティー
エイミー・マンの約3年ぶりとなる新作『The Forgotten Arm』のカヴァーには殴り合うボクサーのイラストが使われている。これはヴェトナム戦争帰りで麻薬中毒のボクサーとその恋人の物語というコンセプト・アルバムの内容に即したもので、ボクシングは彼らの苦闘のメタファーでもあるわけだが、女性歌手のアルバムにはあまり見かけない種類のカヴァーといえる。思えば、2000年に自分のレーベル、スーパーエゴを設立してから、本人のルックスの良さにも関わらず、表ジャケにエイミー自身は登場しなくなった。

  「アートワークとの共同作業によって、物語を語るのを継続させたり、雰囲気を提供したりしたい。それを歌っている人間の写真よりもずっと興味深いわ。だって、私には曲がパフォーマンスよりも重要だし、曲の語る物語が私の見かけよりも、それこそ歌唱よりも重要なの。曲がもっとも重要なのよ」と彼女は言う。
ソロとしては5作目となるエイミー・マンのニュー・アルバム『The Forgotten Arm』(V2)

多くの女性アーティストがそのヴィジュアルで過度なまでのセクシーさを競って売りものにしている昨今だから、あくまで「曲がもっとも重要」というエイミーのソングライティングを第一にする姿勢は際立つ。彼女は、ポップ音楽の歌手にありがちな自己顕示は、曲の語る物語にかえって邪魔になることを知っているのだ。

 MTVで流されるプロモ・クリップがヒット曲を続々と生み出していた85年にティル・チューズデイの一員としてデビューし、アルバム『Voices Carry』の大ヒットで一躍人気者になったエイミーだから、ヴィジュアルが音楽を売ることは体験済みである。だが、彼女は音楽業界の女性歌手の売り出し方の型にはめられることとずっと戦い続け、エルヴィス・コステロと共作するなど、ソングライティングの技巧を磨くことを最優先にしてきた。

 新作『The Forgotten Arm』はそんな彼女の曲の人物描写や語り口の上手さをじっくり味わえるアルバムで、本人いわく「存在しない映画のサウンドトラック」である。70年代に米国を横断して旅するという物語の設定から、スタジオ・ライヴ的に制作されたサウンドもあの時代を意識したものになっている。
ティル・チューズデイの88年作『Voices Carry』(Epic)

文/冨田 明宏

TORI AMOS

〈エデンの園〉をテーマにした不思議な世界観を提示するニュー・アルバム『The Beekeeper』


 トーリ・エイモスのニュー・アルバム『The Beekeeper』は、トーリ自身の独創的な母性観から創造された作品だ。それは今作のテーマに顕著である。すなわち彼女の倫理観やキリスト教的概念と彼女独自の神秘的な哲学によって生み出された〈6つの庭園〉に添ってさまざまなドラマが展開されているのだ。

  「アルバムを聴くと、どの曲がどの庭園を表現したものかがわかるはず。庭園は〈エデンの園〉であり、それぞれ違う形をしているわ。いわば〈音の形〉。だから誰でも入ることができるの」。
トーリ・エイモスのニュー・アルバム『The Beekeeper』(Epic/ソニー)

トーリといえば92年のデビュー以来〈詩的・知的・官能的〉といった評され方をしてきたシンガー・ソングライターである。しかし近年はあきらかに楽曲へ神秘的な思想が色濃く反映され、より一層女性の持つ脆さ、儚さ、激しい感情の発露などを生々しく表現し、鮮烈な説得力で独自の世界観を提示してきた。ここでキーになるのもやはり〈母性〉である。

  「ええ、自分が母へと変身したことが大きいのでしょう。私たちはよく話し、調和し、母と娘としての均衡を保っているわ。私が幼かった頃から歌が教えてくれようとしていた音とのダンスを、娘と共に踊っているかのようで。そしていま、娘が音楽への愛を通して私に教えようとしてくれているの」。

  『The Beekeeper』とは〈蜂の巣の守護者〉という意味である。無数の規則的なヘクサグラムの中で秩序と生命を維持する蜂たちを、トーリは人類の営みに重ね合わせ、問題を提示してみせる。

  「生命を世代から世代へとたゆまず継続させるため、大衆は次世代の声に耳を傾けようとしなかったのではないかしら。母親たちは選択を迫られるわ。息子を戦争に送り込み、息子の生命を危機にさらしても平気なの?とね」。
トーリ・エイモスのベスト・アルバム『Tales Of A Liberian:Tori Amos Collection』(Atlantic)

文/加賀 龍一

LISA MARIE PRESLEY

ついに〈ロック〉を手に入れたサラブレッド


 かのエルヴィス・プレスリーを父に持ち、かつてはニコラス・ケイジやマイケル・ジャクソンを夫にしていたという、その浮名だけで豪邸が建ってしまいそうな〈リアル・セレブレッド〉とは彼女のこと。強靭なサウンドと深い年輪を刻んだ分厚いヴォーカルによって作られた、大人のオンナによる豪快なロックが敷き詰められたセカンド・アルバム『Now What』が先ごろリリースされた。〈キング〉がロックンロールで黒人と白人の壁を打ち破ったように、金持ちの道楽なんかじゃ到底辿り着けない今作の完成度は、世間の偏見を打ち破ってもっと評価されてもいい。リサ・マリー・プレスリー、37歳。いまが絶頂期だ。
リサ・マーリー・プレスリーのセカンド・アルバム『Now What』(Capitol/東芝EMI)

文/冨田 明宏

NATALIE IMBRUGLIA

少女期から始まったナタリー・インブルーリアの物語は、このニュー・アルバムで新たな展開を迎えている!!



ナタリー・インブルーリアの場合、ファンの男女比率はほぼ同数、もしくは若干女性ファンのほうが多いのではなかろうか。なんて、まったく根拠のないことを書いてしまったが、私にはそんな気がしてならない。97年にシングル“Torn”で全英チャート初登場2位という素晴らしい成績でデビューを果たし、ラジオのエアプレイを席巻しはじめた頃は圧倒的に女性ファンが多かった。これは間違いない。しかし98年のファースト・アルバム『Left Of The Middle』がCDショップの店頭に並んだとき、事態はもう笑っちゃうほどに一変した。ショート・ヘアの少女が不安げな表情で正面を見つめている──それだけのジャケットなのだが、彼女の純一な水晶のように輝く瞳があまりにも美しかったために、世の男どもは完全に魅入られてしまったのだ。もし〈部屋に飾っておきたいジャケット大賞〉があれば、恐らく金賞は堅かったはずだ。ともかく、同作は元キュアーのフィル・ソーナリーやアンディ・ライトほか豪華プロデューサー陣に支えられ、ナタリーの切なくも愛らしく透き通るような歌声と相まって、なんと600万枚を超えるセールスを記録したのだった。
ナタリー・インブルーリアのサード・アルバム『Counting Down The Days』(Brightside/RCA/BMGファンハウス)

だが、デビュー当時の彼女は深刻な心の病を抱えていたようである。彼女が生まれたのはオーストラリアのパークレイヴェールという町。世界中からサーファーが集まる絶好のサーフ・ポイントとして有名な町ではあったが、それ以外は何もない、いわゆる田舎である。17歳で故郷を離れ、メルボルンで世界的人気を持つ超長寿ドラマ〈Neighbors〉の脇役として女優デビューを果たした彼女だったが2年でドラマを降板。歌手になるという夢を抱えて単身ロンドンへと旅立った。そして彼女は、ロンドンに住み始めるなりすぐに重いホームシックになってしまったのである。しかし、そのときの経験が色濃く反映された歌詞や楽曲に多くの女性ファンが共感したことは事実だし、幸か不幸か彼女のパーソナルな部分にも光が当たることになり、同性異性を問わずファンは急増した。その後、元スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンとの共作で話題となった“Identify”を映画「Stigmata」に提供したり、チャリティー活動への参加などを経てミュージシャンとしてのスキルはより高度なものになっていく。

 2001年には2作目『White Lilies Island』を発表。男性ファンはジャケットのナタリーがとてつもなく美しい大人の女性に成長しているのにまず驚いた。前作との違いは、“That Day”に代表されるようにナタリーの声と歌詞に顕著で、脆さを剥き出しにして訴えかける力強さと凛とした説得力が備わり、悩み苦しむ多くのファンに勇気を与えた。言うなれば〈がんばれナタリー!〉から〈ナタリー、私がんばるよ!〉への変化である。その後、映画出演やキャンペーン・モデルの仕事が多くなり、歌のファンには少々寂しい状況のなか、ついにこの日がやってきてしまった。ナタリー、結婚しちゃいました……。お相手はオーストラリアのロック・バンド、シルヴァーチェアのヴォーカリスト、ダニエル・ジョンズさん。その報せが駆け巡った日、世の男どもは悔し泣き、女性ファンは人気絶頂のなか結婚した彼女を祝福した。

 そしてこのたび、待ちに待ったニュー・アルバム『Counting Down The Days』がリリースされた。透明度の高いナチュラルな楽曲と、母性を感じさせるような彼女のいまを伝える歌と歌詞に納得するとともに新しい魅力に心打たれた。アルバム3枚を聴き返して感じたのは、少女→女性→母性というように彼女のそのときのリアルな状況が、気取らずにありのまま表現されているということ。なんだかんだ言っても、彼女のいちばんの魅力ってやっぱりそこなんだよね。
▼ナタリー・インブルーリアのアルバムを紹介。
98年作『Left Of The Middle』(RCA)
2001年作『White Lilies Island』(RCA)

文/冨田 明宏

KATIE MELUE

エリザベス女王も太鼓判のアーバン・シンガー


 ノラ・ジョーンズの登場以来、雨後の竹の子のように一斉に現れ、育てば刈られ、刈られれば育ちしてきた2000年代型〈しっとり〉女性シンガー・ソングライターも〈UKをたった一曲で虜にしてしまった〉と激賞されたケイティ・メルアの登場で、またまたおもしろくなってきた! 彼女の魅力は誰がなんと言おうとその歌声。ジャジーでアコースティックな楽曲を歌うには少々幼く聴こえるかもしれないが、よく聴けばあえて無邪気な少女性を残したまま、残り香のように大人の色香を漂わせる歌い方をしていることがわかる。その素晴らしき計算高さにやられちゃいました。さらにランディ・ニューマンやジョン・メイオールの楽曲まで歌いこなしてしまうんだからビックリ!!
ケイティ・メルアのファースト・アルバム『Call Off The Search』(Dramatico/PLATIA)

文/冨田 明宏

JEM

ビーツ&ベースを愛するウェールズの歌姫


 UKはウェールズの出身。ビョークやマドンナとの共作で話題を呼び、USのカレッジ・チャートから火が着いた途端にデビュー・アルバム『Finally Woken』で20万枚以上のセールスを記録した、いまもっとも注目を集める女性アーティスト、ジェム。本作で驚かされるのはその高度な作曲能力で、〈陰と陽〉の狭間を巧みに泳ぎながらフレンチ・ポップ、ロック、フォーク、ディスコ、ヒップホップをごくごく自然に、そして自由に織り上げ、極上のポップスに仕立て上げていく。この極めてナチュラルな柔軟性は、2000年代の女性アーティストならではの特性でもある。
ジェムのファースト・アルバム『Finally Woken』(ATO/RCA/BMGファンハウス)

文/加賀 龍一

ELENA

清々しさいっぱいの才女はなんと17歳!!


 女性シンガーの低年齢デビューがズンズン進み、多少のことでは驚かなくなった俺でも、この17歳には思いっきり脳天をブチ抜かれました! スロヴァキア生まれフランス育ちのエレナ嬢による、〈いまここにある輝かしい未来〉を感じさせるデビュー・アルバムです! 友達のカワイイ妹的ルックス(?)や、5歳でギターを覚えて10歳で作曲を始めたという早熟っぷりもさることながら、地に足が着いたアコースティックな曲調と、ちょっと物憂げなロリータ・ヴォイスが切なくてグッとくるのだ。ズバリ言って、ジュエル以来のエヴァーグリーンな才能の登場でしょう、これは!
エレナのファースト・アルバム『Future's Come Today』(TRIDENT STYLE)

文/



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