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掲載: 2005/09/22
ソース:『bounce』誌 268号(2005/8/25) |
スポットライトを浴びた裏方たちが受け継いだモータウンのスピリット
文/林 剛
7月1日、ルーサー・ヴァンドロスと同じ日にソウル・グレイツがもうひとり、この世を去った。フォー・トップスのオービーことレナルド・ベンソン。享年69歳。オービーといえば同グループのメンバーとしてのみならず、マーヴィン・ゲイの名曲“What's Going On”のソングライターのひとりとしても記憶されるべき人物だ。ネルソン・ジョージの名著「モータウン・ミュージック」には、オービーが(共作者の)アル・クリーヴランドと60年代末の社会的大変動について話しているうちにギターで幻想的なメロディーを奏ではじめた……といった旨の記述があるが、仮に“What's Going On”を〈ニュー・ソウル〉の元祖的な曲と捉えるなら、オービーはそのオリジネイターとも言える。結果的に“What's Going On”は、映画「永遠のモータウン」でファンク・ブラザーズの最期と絡めて語られていたように、〈デトロイト・モータウン〉の終焉を告げる曲となった。しかし、そこに関わっていたミュージシャンたちの多くは、舞台がデトロイトであれ、新拠点となったLAであれ、ふたたび新しい道を歩みはじめ、数々の素晴らしい仕事を残してくれたのだ。そんな70年代初頭以降の前向きな動きを、今回は〈アフター・モータウン〉と称して再評価したい。
そこでまず筆頭に挙げたいのがモータウンの楽曲制作に携わってきたクリエイターたちのアルバム・リリース。70年代初頭にはメジャー・レーベルが独立レーベルからアーティストや専属作家を奪い取る動きが活発化、優秀な人材を数多く抱えていたモータウンも格好の標的となって、フォー・トップスらが籍を移している。そんななか、ラモン・ドジャー、ジョニー・ブリストル、リオン・ウェア、ウィリー・ハッチといったモータウンの作家たちがこぞって表舞台に登場してきたという事実……これは〈ニュー・ソウル〉云々とは別にもっと騒がれていい。彼らの作品の多くはLAのミュージシャンを起用していたが、それでもノーザン・ビートを捨て切れていなかったり、音そのもの以上にモータウンのスピリットを継承していたという点でも称えられるべきものだろう。一方、元ファンク・ブラザーズの面々は、メンバー全員が生き残ったわけではないが、ドラマティックスらの作品でダイナミックなプレイを聴かせ、デトロイト・サウンドの中核を担っていた。また、プロデューサーのノーマン・ホイットフィールドはLAに新天地を求めながらローズ・ロイスらの作品でデトロイト仕込みの重厚なファンクを展開した。
| | マーヴィン・ゲイの71年作『What's Going On』(Motown) |
モータウン関係者の〈その後〉は、過去の偉業に目を奪われ、時にソウル・ミュージックの歴史から切り捨てられてしまうこともある。けれど各方面に散らばりながらも、彼らはデトロイトのグルーヴを絶やすまいと尽力していた。そのことを、いま一度噛みしめてもらいたい。ちなみに〈アフター・モータウン〉の最大勢力といえば……そう、インヴィクタス/ホット・ワックス。この名門レーベルについても近いうちに本連載で語られる日がやってくるだろう。 |
文/出嶌 孝次、林 剛 評価されるべき名匠たち ESSENTIALS
THE DRAMATICS 『The Dramatic Jackpot』 ABC/MCA(1975)
ベリー・ゴーディJrの旧友である名プロデューサー、ドン・デイヴィスの後押しで成功を掴んだドラマティックス。本作はスタックスでの活動を経てABCからリリースされたもので、制作にはドンの友人であるトニー・へスターがあたっている。アール・ヴァン・ダイクら元ファンク・ブラザーズの面々が参加し、デトロイト・ムードもたっぷり。憧れのテンプテーションズに肉薄するコーラスも聴きモノだ。(林)
ENCHANTMENT 『Golden Classics』 Collectables
エマニュエル・ジョンソンのファルセット・リードを売りとするデトロイト出身のヴォーカル・グループ。これは後にジェシー・パウエルらがカヴァーした甘茶名曲“Gloria”“It's You That I Need”を含むロードショウ時代(76〜77年)の編集盤で、ここにもファンク・ブラザーズの一味が参加している。プロデュースを手掛けたマイケル・ストークスは80年代後半以降のブレーンとしても活躍。(林)
FOUR TOPS 『Essential Collection』 Hip-O
リードを務めたリーヴァイ・スタッブスが表の顔なら、ソングライターとしても活躍したレナルド“オービー”ベンソンは陰の実力者といったところか。モータウン時代は当然として、ダンヒル/ABC移籍以降の彼らも西海岸ポップなサウンドのなかにノーザン・ビートを持ち込み、重厚なコーラスを伴って聴かせた。どんな時も心は常にデトロイトにあった4人のベスト・パフォーマンスがここに。(林)
JOHNNY BRISTOL 『Feeling The Magic』 MGM/ユニバーサル(1975)
ジョニー&ジャッキーとしての活動以上にソングライターとしてモータウンに貢献してきたジョニー・ブリストル。このソロ2作目は、昂揚感に満ちた“Leave My World”での幕開けから泣かせ、メロウな“Love Takes Tears”、男臭いファンクの“Lusty Lady”など、情熱的なノーザン・ムードを70年代マナーに置換した名曲だらけ。ポール・ライザーの壮麗なストリングスが果たした役割も重要。(出嶌)
LAMONT DOZIER 『Bittersweet』 Warner Bros./Castle(1979)
言うまでもなくホランド=ドジャー=ホランドの一員。これはワーナー時代の最終アルバムで、普段はセルフ・プロデュース作がメインとなるラモンが旧知のフランク・ウィルソン(ノーマン・ホイットフィールドの弟子でもある)の制作で吹き込んでいる。ディスコ時代の産物であるとはいえ、その下地にあるのは骨太なノーザン・グルーヴ。リネー&アンジェラの提供曲が特に強力だ。(林)
LEON WARE 『Leon Ware』 UA/東芝EMI(1972)
60年代初頭からモータウンの契約ライターとして活動していたリオン・ウェア。76年のソロ2作目ではふたたびモータウンとの縁を取り戻すが、このデビュー作は70年代初頭に契約を結んだUAからリリースされている。LAスワンプ・ロック人脈と交流を図った作品ながら、T・ボーイ・ロスとの共作曲などは後にマーヴィン・ゲイが虜になった〈あの〉メロディーを予感させる。デトロイトの血が静かに騒いだ好盤。(林)
RONNIE McNEIR 『The Best Of Ronnie McNeir』 Expansion
70年代初頭にキム・ウェストンの音楽ディレクターを務め、キムの旦那であるミッキー・スティーヴンソンの制作でソロ作を発表するなどモータウンとも縁深かったシンガー/鍵盤奏者。その彼が80〜90年代に吹き込んだモダンなソウル曲を集めたのがこの編集盤なのだが、その多くはオービーとの共作だった(後にフォー・トップスのツアーにも同行)。ノーザン・ソウルの現代風解釈はなかなかのもの。(林)
WILLIE HUTCH 『Try It You'll Like It : The Best Of Willie Hutch』 Expansion
最初はソングライターとしてLA時代のモータウンに関与していたウィリー・ハッチ。このベストには、サム・クックの薫りを纏った歌とノーザン・ビートが好相性のRCA時代、サウンド・クリエイターとして開花したモータウン時代、離脱後の“Easy Does It”などを収録。瑞々しい歌とグルーヴ・スタイリストとしての手練手管が一望できる。いつまでも〈『Foxy Brown』の〜〉と評して済む人じゃない。(出嶌)
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文/出嶌 孝次 つい手が出るノーマン・フィールズ
自身がモータウンに在籍していたわけではなくとも、〈アフター・モータウン〉のファンク・ブラザーズと関係が深いという点で忘れちゃいけないのが、このノーマン・フィールズ。デトロイト出身で、リオン・ウェアにも通じる内省的な作風と独特の甘く危険なヴォーカルが人気を博してきた存在だ。
そんなノーマンがジャスト・サンシャインに残したアルバム2枚がこのたび世界初CD化と相成った。まずデビュー作の『Norman Feels』はファンク・ブラザーズ構成員などモータウン人脈が大挙参加した〈ニュー・ソウル〉ムード満点の逸品。憂鬱で甘い空気が全編を支配するなか、ノーザン系の“Today”が鮮やかな印象を残す。一方、アール・ヴァン・ダイクらが参加した2作目『Where Or When』は、一転して60年代のモータウンを彷佛とさせるノーザン・ビート主体の作品に。アレサ・フランクリン“Until You Come Back To Me”のカヴァーも聴きモノだろう。タイプは異なるが、どちらも極上の〈アフター・モータウン〉作品なのは確かだ!
▼このたびCD化されたノーマン・フィールズの作品
| | 73年作『Norman Feels』(Just Sunshine/Pヴァイン) |
| | 74年作『Where Or When』(Just Sunshine/Pヴァイン) |
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