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掲載: 2006/02/09
ソース:『bounce』誌 272号(2005/12/25) |
いまから10年前に誕生したレーベル、flower。粋なヴァイブに満ちたクォリティーの高い作品を次々にリリースし、一方では新しいアーティストを世に送り出し、クラブ・ミュージックの裾野を広げることに貢献してきた信頼すべきブランドが、とうとう節目の10周年を迎えた!! ゆかりのあるアーティストたちからの祝電も届いていますよ!!
文/高橋 玲子、出嶌 孝次、堀内 幸江 色とりどりのグルーヴが鮮やかに咲き乱れるflower、その歩みとは
| | flowerの設立10周年を記念したリミックス・コンピ『10R -Flower Records 10th anniversary selection』(flower)。こちらは全曲が初CD化!! |
そのことをもってどう捉えられるのかはさておき、人気のレーベルには何かしら一定のカラーがあるものです。そのカラーが保たれたうえで支持を獲得できれば、やがてそのレーベルは信用に値するレーベルとして認知されていくわけですね。その〈カラー〉を〈センス〉と置き換えてもいいですが、flowerが10年かけてやってきたことは、まさにそれでした。クラブ・ミュージックの範疇からスタートしたflowerは流行に流されず、それでいて時代とリンクしながらリリースの幅をどんどん拡げ、2005年で活動10周年を迎えたのです。
そんなflowerは、それ以前からDJとしてのキャリアを積み上げてきていた高宮永徹によって95年に設立されています。最初のリリースは、高宮自身が率いるLittle Big Beeのシングル“Only Happens”。当初はまだ整った会社組織ではなく、高宮の個人事業という形だったそうですが、別のレコード会社を通じて松竹谷清、Reggae Disco Rockers、Soul Rebel、さらにはNaked Artzの作品をリリースしました。
97年になるとflowerは正式に会社化して再始動し、メジャー・レーベルのセクションを通じて、Toshiyuki Gotoやbayaka、Su-Paka-Pooh、Sunaga t ExperienceなどDJ/クリエイターの作品を次々に送り出していくことに。99年には後にシリーズ化されるコンピ『F.E.E.L.』(=Far East Easy Listening)をリリース(2001年にリイシュー)。そのタイトルこそがレーベルの理念をある一面で体現するものだったこともあって、以降の作品群は彩りを増しながら、柔軟で大きなひとつのカラーを形作っていくようになっていきました。そして、2000年からは完全なインディー・レーベルとして歩きはじめ、現在に至っているわけですね。このページでは2001年以降にリリースされたflower作品の一部を紹介しています。満開のサウンド・ガーデンへようこそ!!(編集部)
| | flowerの設立10周年記念コンピ『10 -Flower Records 10th anniversary selection』(flower)。代表曲から現在は入手不可能な曲までギッシリ収めた3枚組!! |
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bayaka 『Irradiation』(2001) 記念すべき製造番号〈FLRC-001〉に選ばれたのは、bayakaのファースト・フル・アルバム。この後で目覚ましく飛躍することになる彼らにとっても本格的なスタート地点でした。ジェフテ・ギオムのフェンダー・ローズも麗しい人気シングル“mande lanme ya”など、深みのあるオーガニック性はいまも有効。(高橋)
Su-Paka-Pooh 『Sunny Side Garden』(2001) 日本のクロスオーヴァー・シーンの先駆け的存在だった、石原チカシと村尾英彦によるSu-Paka-Poohのファースト・アルバム。初シングル“くらげ”が海外の大物DJにプレイされるなど、リリース前から注目を集めていただけあって、“aya”収録の本作は海外でもライセンス・リリースされた。(堀内)
『TOSHIYUKI GOTO presents Sunday Afternoon : behind the jazz groove』(2001) この時点ではNYをベースに活動していたToshiyuki Gotoが、〈YELLOW〉にて行っていたパーティー名を冠にしたコンピ。アブストラクト・トゥルース、ファータイル・グラウンドなど、ハウス〜ガラージをメインにNY仕込みのセンスが光る内容に。(堀内)
Reggae Disco Rockers 『oasis』(2001) 80年代後期からDJ活動を行ってきた高宮紀徹を中心とするロックステディ・バンドが、満を持して放った初めてのフル・アルバム。奥山みなこをヴォーカルにフィーチャーし、DRY&HEAVYやRocking Timeなど当時の人気バンドから演奏陣を迎えた作りが絶品。親交の深いホレス・アンディも参加。(高橋)
『STIMULATION : DJ NORI's CLASSICS vol.1』 (2002) ラリー・レヴァンとも親交のあった日本のハウス・レジェンド=DJ NORI選曲のコンピ。ニッキー・シアーノ“Tiger Stripes(Remix)”などまさに〈ザッツ・ガラージ〉な濃い選曲。コレクターとしても有名な彼だけに、コアなファンもニンマリです。初CD化曲も多数!(堀内)
Izuru Utsumi 『UTSUMI』(2002) 世界のレーベルから作品をリリースし、『F.E.E.L.』からflowerにも関わっているDJ/クリエイター、内海イズルのファースト・アルバム。ミニマルなジャズから生音を前に出したラテン・トラックまで、多彩なサウンドを行き来しながら徐々に安らかな風景へと音の様相を導いていく、視覚効果に富んだ傑作。(高橋)
『DEEP ATMOSPHERE -the journey continues Mixed By Alex from Tokyo』 (2003) 日本とフランスのハウス・シーンを繋ぎ、DJとして確固たる地位を築いているAlex from TokyoのミックスCD。写真家の松田睦美によるアートワークも含めたコンセプトに基づく〈ヴァーチャルな東京案内〉盤になっている。モルガン・ガイストなどのチョイスも独特。(高橋)
Jazztronik 『SET FREE』(2003) flowerが世に送り出したビッグ・ボムこそ、Jazztronik。99年のコンピ『F.E.E.L.』に初登場し、その後も深くレーベルに関わってきた彼は、このセカンド・アルバムの大ヒット以降、人気を全国区に拡大していく。“Colors of Days”や“Livin' High Part 2”を収録した、いま聴いても時間の経過を感じさせない秀作!(堀内)
eico 『桃色』(2003) Reggae Disco Rockersのシングル“太陽の石”にフィーチャーされて話題を集めたeicoのファースト・ミニ・アルバム。ピュアネスと透明感を持ち合わせた歌声は、12インチで先行カットされていた“キミノカゼ”のようなインコグニート風の展開にも、高宮永徹による艶なハウスにもサラリと対応。flowerらしいカラフルな作品。(出嶌)
『Garelly』(2003) 東京・青山の〈CAY〉で行われていた日曜午後の人気パーティー〈Gallery〉から生まれたコンピ。同パーティーで愛されているA Hundred BirdsやDJ NORI、Su-Paka-Poohらによる〈スマイル印〉のトラックばかりを収録し、ピースフルな雰囲気が自然と伝わってくる。クルーと縁深いflowerからリリースされたのも必然。(堀内)
Reggae Disco Rockers 『REGGAE MAGIC』(2003) リミックス集を間に挿んでのセカンド・アルバム。ピアニカ前田や松竹谷清らの敏腕を演奏陣に迎え、シンガーにはMika ArisakaからAsa festoon、加藤ミリヤ、そして横山剣(クレイジーケンバンド)までが登場!! ハードなダンスホール・トラックの導入も含め、表題どおりに楽しさ溢れる一枚。(出嶌)
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『F.E.E.L. 3』 (2004) 新しい才能の登場をチェックする楽しみもある、定番コンピ・シリーズの第3弾。JazztronikやAstralfieldなどこのシリーズで輩出された面々をはじめ、STUDIO APARTMENTやDazai Yuri Sextetなど(当時の)新進アーティスト、さらにはSLOWLYや奥山みなこの初ソロ音源も収録した瑞々しい聴き心地。ハズレなしです。(出嶌)
『World Standard.03 A Tatsuo Sunaga Live Mix』 (2004) こちらで最新弾となる〈05〉を紹介している須永辰緒の人気ミックス・シリーズだが、奇数盤はflowerからのリリースとなる(偶然?)。この第3弾ではジャジーニョやサンドボーイらの人気トラックを良い意味でインテリア的な流れに落とし込んでいるのが巧み&匠。(出嶌)
奥山みなこ 『MUCH LOVE』(2004) Reggae Disco Rockersで活躍し、Sunaga t ExperienceやS-WORDの諸作で雰囲気のあるいい歌を聴かせてきた彼女のファースト・ミニ・アルバム。シンプルなアレンジが奏功して声の魅力が開花した印象もアリ。スティーヴィー・ワンダー曲もいいが、自作の“Too Much Love”が素晴らしい!!(出嶌)
Reggae Disco Rockers』 『Rainbow(2004) Mika Arisakaを正式メンバーに加えてのサード・アルバムは、サマー・ムードに満ち溢れた内容に。YOYO-Cをフィーチャーした表題曲、フィリス・ディロンの追悼カヴァー“Perfidia”や、MIGHTY MASSAによるダブ・ミックスなどなど、まさに七色のヴァラエティーを備えた快作だ。(出嶌)
Travels with Flowers Plus+ : Mixed By Toshiyuki Goto』(2004) いままでのflower音源からセレクトされた楽曲に加え、彼のDJセットの常連曲をミックスした一枚。レーベル・クラシック的な曲も多く、同時リリースの福富幸宏ヴァージョンと2タイトル合わせて、レーベル10周年の前夜祭企画のような内容でした。(堀内)
『The Crossing : Mixed By Yukihiro Fukutomi』(2004) Toshiyuki Gotoヴァージョンと同時リリース。ちなみにタイトルは自身が〈THE ROOM〉にて主催しているイヴェント名から。流石は日本のお洒落ハウスDJ代表(?)だけあって、ここでのセレクトも女の子ウケ必至! Little Big Beeやいま話題のRSLらのトラックを収録。(堀内)
奥山みなこ 『ONE by ONE』(2005) 高宮永徹のトータル・プロデュースによる初のフル・アルバム。前作以上に磨かれたメロディー作りの才にも注目すべきだし、ジャジーな“雨音”など、アレンジの方向性によって多彩になった歌の表情が魅力的だ。ケリー・パターソン“Magic Wand Of Love”のカヴァーで終わる構成も見事。傑作。(出嶌)
eico 『月夜のギター』(2005) メジャー発のフル・アルバムを経てリリースしたアコースティック・カヴァー集。気心の知れたバンド仲間とのトリオ編成で、ハマリすぎな山口百恵の“夢先案内人”を筆頭に、鈴木茂“砂の女”、RCサクセション“けむり”などなど冴えた選曲の好カヴァーをユル〜く披露。夜明け前に聴きたくなる好盤。(出嶌)
Reggae Disco Rockers 『Morning Glory』(2005) ミニ・アルバム『蜃気楼の街』に続いて登場した通算4作目はもはやスタンダードに認定したい夏盤!! PAPA-Bを迎えてダンスホール化した“No Limit”も強力だし、お得意のカヴァーでは、エア・サプライの“Lost In Love”をラヴァーズに改編するなど、硬軟自在に美技を連発。最高傑作です。(出嶌)
『STIMULATION : Bond of Friends -compiled by DJ NORI』(2005) DJ NORIが長いキャリアのなかで培ってきた、多くのアーティストとの繋がり??題して〈Bond Of Friends〉。今作ではそのなかから日本人アーティストに焦点を絞って選曲。音もジャンルもさまざまなのに、統一感を持たせてしまう作りがヴェテランの技。(堀内)
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野崎良太(Jazztronik) 「初めてコンピに参加した時に僕が〈野崎良太バンド〉みたいな名前にしたいと言ったのを頑に拒否したのが高宮さんでした。そして考えた末に生まれた名前が〈Jazztronik〉……あの時の僕を止めてくれてありがとうございます。おかげさまでこんなに育ちました。20周年めざして呑みすぎ注意!!」
DJ NORI 「高宮くんと知り合って早12年、本当に時の経つのは早いですね。この10年で日本のクラブ・シーンにボス・高宮くんが残した足跡・功績は測りしれません。これからも日本、いや世界に良い音/素晴らしい音楽を広めてください」
須永辰緒(Sunaga t Experience) 「おめでとう! スタジオも予算もなく、6畳の和室の布団を片付けて生楽器の録音をしていたことが、つい最近のような気がします。継続は力。これからも世界に誇れるレーベルをめざしていきましょう!」
奥山みなこ 「flower10周年おめでとうございます! これからもこの勢いで成長し続けていってくださいね」
eico 「10周年おめでとうございます。flowerとの出逢いは“太陽の石”という曲がきっかけです。その時からいろんな石をいただき続けております。こんなにも心を自由にして、前を向いて歌えるのは、そのおかげです」
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文/駒井 憲嗣 Little Big Bee
新しい年、新しい物語のスタート
flowerを主宰する高宮永徹がレーベルとほぼ歩みを同じくするように続けてきたユニット=Little Big Beeが、結成12年にして初のフル・アルバムをリリースする。このたびリリースされる『WATERMAN』は、ジャパニーズ・ハウスのイノヴェイターとしてディケイドの活動を続けてきたキャリアをことさらに誇示するわけでもなく、一方では音の快楽と色気を知り尽くした者にしか出せない、狂おしいほどの美しさに満ちている。これまでジャンルを超えたアーティストの数々の名リミックスを手掛けてきたことから、〈有能なプロデューサー集団〉というイメージの強かった彼らだが、今作はクロスオーヴァーな感性と実験的精神をもって、高宮(プログラミング)と“PLAZA”藤崎(キーボード)、神宮寺謙次(ベース)の3人がバンドとしてのポテンシャルをあらためて注ぎ込んだ作品ということができるだろう。
「3人で集まって音を出しながら、おいしいフレーズが出てきたら拾っていく、そういう感じで作っていきました。70年代のソウル・ミュージックを聴いて育ったので、コンセプチュアルというか、アルバムだからこそできるような、1枚を通じてトータルとしての物語が聴こえるものを作りたいとずっと思っていた。だから曲順も含めてアルバム全体の聴かせ方というのを相当話し合いましたね」(高宮:以下同)。
ドラマティックなアルバムのタイトル曲“WATERMAN”、深みのあるトラックとMika Arisakaの麗しい歌声が素晴らしい相性の良さを見せる“Solitude”など、水面から深い海の底を覗き込んでいるような、透明度の高い世界がうねりを持って続いていく。かつてマーヴィン・ゲイも取り上げたソウルフルな“Calypso Blues”の、韓国のヴォーカリスト=キム・パンジャンの「日本人でもアメリカ人でもない独特のエスニック感、なんともいえない色合い」という印象からインスパイアされた解釈、リル・ルイスへのオマージュと形容するピークタイム・チューン“Story Still Continues”など、中盤の畳み掛けるようなダンサブルな展開もあるが、流麗なピアノや浮遊感溢れるトラックと、音使いや空気感には不思議な清涼感が色濃く漂っている。しかしいわゆる〈チルアウト〉といったムードを決してダウンテンポで表現しないところに、日本のダンス・シーンを牽引してきたLittle Big Beeの静かな真面目さを感じてやまない。
「リミックスでも自分たちの作品でも、僕らは何か方法論を定めているわけではなくて、けっこう無意識でやっている。周りの人の話を訊くとそこが僕たちらしいところみたいなんですよ。自分たちが得意なパターンが出てきて、それをずっと続けてると、だんだんおもしろくなくなってくる。そうするとその手法はNGにしてしまうんです。メンバー同士で違う〈縛り〉を作ることで、スキルを追究していくっていうことをずっとやってきていますね」。
移り変わりが激しく、かつトレンドに流されやすいダンス・ミュージックなら、なおさらそうしたセオリーを打ち破って活動を続けていくことは至難の業に違いない。しかし、それまでその多くを外国産に頼っていたハウス・ミュージック・シーンにおいて、先陣を切って作品をリリースし続けてきた彼らにとっては「自分のやりたいことを正直にやる」と至極ナチュラルなことだったようだ。クールでスムーズなアルバムを流れる、ダンス・ミュージックのエピキュリアンとしての情熱、そして包まれるような温かいヴァイブは高宮永徹の人柄やDJプレイを確かに映し出している。
「クラブではもちろんですけど、家とか車のなかでも、一遍の小説みたいな感覚で、ひとりで対峙して聴いてもらえたら嬉しいですね」。
| | 2006年1月25日にリリースされるLittle Big Beeのファースト・フル・アルバム『WATERMAN』(flower) |
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