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掲載: 2006/05/04
ソース:『bounce』誌 275号(2006/4/25) |
キレイなものに目がないの
文/村尾 泰郎
ありとあらゆる奇妙なサンプリングで、「ピンクフラミンゴ」的な狂ったエレクトロ・ワールドを展開してきたドゥルー・ダニエルとMC・シュミット。このマトモじゃない2人組、マトモスのニュー・アルバム『The Rose Has Teeth In The Mouth Of A Beast』は、やっぱりマトモじゃない。今回は10人の有名人に捧げた10曲を収録するという仕掛けで、ビョークからクロノス・クァルテットまでゲストも豪華! お喋り好きな2人が、ラップトップ片手に語ってくれたよ〜。
| | マトモスのニュー・アルバム『The Rose Has Teeth In The Mouth Of A Beast』(Matador/Pヴァイン) |
──曲ごとに捧げた人選の基準は何ですか?
ドゥルー「〈僕らが日頃から尊敬している人たち〉ってことだね。みんな一癖も二癖もある。例えばヴァレリー・ソラナスは政治活動をしていたのに売春婦になり、最後には路上で野垂れ死んだ。彼らの人生はとってもジューシーで、音で表現するには最適なんだ。彼女に捧げた曲“Tact For Valerie Solanas”では、牛の消化器官で音を作ったよ」
MC「4〜5人選んだところで〈みんなゲイだ〉って気付いた。で、結局全員ゲイになったんだけど(笑)、これはゲイ・アルバムじゃないからね!」
──ラリー・レヴァンに曲を捧げていますが、クラブに行ったりすることは?
MC「私はハウスが好きじゃないからラリーを入れるのには反対したけど、ドリューがすごく悲しんだから、やむなく入れたよ」
ドゥルー「だって、僕は18歳のころにゲイ・バーでダンサーをしてて、そこでMCに出会ったんだもん。ゲイ・バーやクラブがなかったらマトモスだって存在してなかった。ほら、これがその時の写真(ラップトップ上に、股間に魚を挟んで全裸で踊る若き日のドリューの姿が……)」
──えー、ジョー・ミークについては……。
ドゥルー「ちょっと僕に似てるんだよね。彼は死の直前にパラノイアになって、音や光を遮断した部屋に籠もって音楽制作をしてたんだ。その熱中ぶりは他人事じゃない」
MC「ドリューがミーク状態になったら、私が外に連れ出すのさ。〈ごらん、こんなに良い天気だよ〉ってね(ニッコリ)」
──ダービー・クラッシュ(ジャームス)は唯一ロックからのエントリーですね。
ドゥルー「ジャームスは最高にハードコアで、僕の大好きなバンドさ。彼はひどいシンガーだって言われているけど、彼が書く詞は本当に素晴らしいんだ」
MC「私はサウンド的には興味はないが、やはり歌詞の美しさは感動的だね」
──そういえば2人とも文学教師でもあるんですよね。そういった意味で、ウィリアム・バロウズはもちろん、パトリシア・ハイスミスを選んだのは興味深いです。
ドゥルー「彼女の作品は授業でもテキストとして使ってるよ。日常をテーマにしながら、その裏に隠された恐ろしさを見せる作家だ。だから僕らも、普通の音が不快に聴こえるような音に挑戦したんだ」
MC「テルミンの上にカタツムリを這わせたりね!」
──ハイスミスといえば映画「太陽がいっぱい」の原作者として有名です。2度映画化されて、犯罪者のトム・リプリー役をアラン・ドロンとマット・デイモンが演じてますが、どちらが好みですか?
ドゥルー「マットはセクシーだけどリプリー役じゃないよね。ジュード・ロウのほうが合ってると思う」
MC「だね。私は断然ドロン派だ(以下、キャストの話で延々盛り上がる……)」
そのほかにも、哲学者であるヴィトゲンシュタインの著作をビョークに朗読させたり、肥料を薔薇にかけた音をサンプリングしたり。やりたい放題の本作はマトモス版〈世界偉人トロニカ〉だ。ぜひ一家に一枚!
▼マトモスの作品を紹介
| | 2001年作『A Chance To Cut Is A Chance To Cure』(Matador) |
| | 2003年作『The Civil War』(Matador) |
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LARRY LEVAN
| | ラリー・レヴァンのミックスCD『Larry Levan's Paradise Garage』(Salsoul) |
ガラージからハウスへの過度期において、重要な役割を果たしたDJ、ラリー・レヴァン。NYのクラブ〈パラダイス・ガラージ〉でのプレイは、いまなお伝説だ。「あそこに行ったことがある仲間から、〈凄かった!〉っていう話をよく聞くよ。グレイトなゲイ・バーだったってね」(MC)。
VALERIE SOLANAS
 | | サントラ『I Shot Andy Warhol』(Atlantic) |
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過激なフェミニズム活動の果てに、アンディ・ウォーホルを撃ったヴァレリー・ソラナス。その生涯を描いた映画「アンディー・ウォーホルを撃った女」では、ヨ・ラ・テンゴがヴェルヴェット・アンダーグラウンド役で登場している。サントラには彼らのほかに、ウィルコやペイヴメントも参加。
JOE MEEK
 | | ジョー・ミークのボックス・セット『Portrait Of A Genius』(Castle) |
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〈イギリスのフィル・スペクター〉とも評される鬼才プロデューサー。実際は楽譜もろくに読めず、音痴だったらしい。にも関わらず、特異な音響センスを駆使して、トルネードス“Telstar”など数々のヒット曲を生み出した。最後はアパートの管理人を射殺、拳銃自殺を遂げる。
GERMS
US西海岸パンクの永久定番として、大きな影響を与え続けるジャームス。その後、ニルヴァーナ〜フー・ファイターズへと渡り歩くパット・スミアや、ゴー・ゴーズを結成するベリンダ・カーライルもメンバーだった。本作は、ダービー・クラッシュの熱い叫び、グダグダな演奏がたっぷり詰まった編集盤。
太陽がいっぱい
こちらはニーノ・ロータのテーマ曲も有名な60年作。貧しい青年トム・リプリーが、富豪の友人を殺害して彼になりすます。2人の同性愛的なニュアンスも匂わされ、死と官能に満ちた演出が素晴らしい。ハイスミスは、このリプリーを主人公にした長編をシリーズ化していて、どれもが傑作!
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文/久保 正樹 奇人・マトモスに群がる愉快な仲間たち!
〈マトモスは狂っているのがマトモっス!〉ということで、新作も相変わらずの奇天烈猟奇エレクトロニカを展開し、僕らの常識にズブリとメスを入れてくれました。そんなマトモスだからして当然ゲストも多彩と言いましょうか、まさに個性派揃いの超人集会。ここではそんな錚々たるメンツを一気にご紹介します。
まずは冒頭で詩の朗読を披露しているビョーク。彼らの存在に一早く注目し、2001年作『Vespertine』に起用して以来、ツアー・メンバーにも抜擢するなど、お互い切っても切れない良い関係を築いているわけです。続いてはアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズのアントニー。ルー・リードも絶賛する猥雑で悲しみまみれの歌声が、マトモス・ワールドに場末の暗黒美をもたらすことに成功。そして現代音楽界から顔を覗かせた弦楽4重奏団=クロノス・クァルテットは、ジャンルレスかつ挑戦的な演奏でバツグンの相性の良さを見せつけてくれました。そのほか、女性ハープ奏者=ジーナ・パーキンスやエレクトロ・ファンクを聴かせてくれるセーフティ・シザーズ、さらにジャームスの元メンバーも集まったんだからもう大変! 類は友を確実に呼び込むんですね。
▼関連盤を紹介
| | ビョークの2001年作『Vespertine』(Polydor) |
| | アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズの2006年作『I Am A Bird Now』(Secretly Canadian) |
| | クロノス・クァルテットの97年作『Happy Partch:U.S. Highball』(Nonesuch) |
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