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Senor Coconut


掲載: 2006/05/18

ソース:『bounce』誌 275号(2006/4/25)
第88回 ─ セニョール・ココナッツと浮気なぼくら。今度の標的は……

文/石田 靖博

そりゃアトム・ハートでしょ!とかいうツッコミは禁止 


 本人も把握不可能なほど数多くの名義〜スタイルで活動してきた異才、アトム・ハート。そのなかでもっとも著名なセニョール・ココナッツ(以下SC)名義での新作『Yellow Fever!』は、SCの名を知らしめたクラフトワーク・カヴァーに続き、何とYMOのカヴァー盤という、納得というか首尾一貫しているというか……まあ、そうなのである。

 「前の『Fiesta Songs』から今作までの2年間、SCのライヴ・ツアーに明け暮れていた。そしたらおもしろいことに、その間に知り合ったさまざまな人たちがSCについてのアイデアを提供してくれたんだ。だから、自分でも企画を立てて、それに対する彼らのリアクションを見てみようと思ったんだ。そこでいちばん反響が大きかったYMOのカヴァー、つまり今作の方向に進むことを決めたんだ」。
多くのアーティストにとっていまなお偉大な指針であり続けるYMOだが、それはアトムにとっても同様であったようだ。

 「初めて聴いたのは86年ぐらいで、友人のくれたテープに入っていたんだ。YMOはそれまで僕が聴いてた音楽とはかなり異なっていた。彼らの非ヨーロッパ的アプローチ、音楽に対する異なった視点に非常に感銘を受けた。つまり、僕の音楽嗜好に大きな影響を与えたってことさ」。

 今回の『Yellow Fever!』には当の〈3人〉がゲスト参加しているというビッグ・サプライズもある。

 「ホソノさんは過去に2枚のアルバムで共作もしていて、彼のdaisyworldからも何枚かリリースしてたし、サカモトさんとは2年くらい前から交流があった。ユキヒロさんとは今回が初のコンタクトだったけど、3人ともこのプロジェクトを楽しんでくれる予感はあったし、実際にレコーディングを楽しんでくれたと思う。だから、今作はYMOからの直接的な遺産を受けて生まれたわけで、音楽的にはYMOの単なるカヴァー・アルバムよりも、ずっとYMOと関係のあるアルバムだと思うよ」。

 ただ、YMOのカヴァーという話題性を抜きにしても、アトムにとってSCは特別なペルソナだという。

  「SCの音楽的アプローチとは、基本的に〈ラテンmeetsエレクトロニカ〉なんだ。 96年に僕はSCというペルソナを作って、その音楽的なアプローチを擬人化した。あるキャラクターを持った人物を想像して、その人に音楽を作らせようとしたのさ。そしたら、おもしろいことにSCはいろんな音楽的アプローチを可能にしたんだ。今回の『Yellow Fever!』はSCの総決算的作品だね。SCという名前がこんなに長く〈生き残っている〉ことは僕にとって大きな驚きなんだよね。こんなにたくさんの異なるアプローチができるうえに、それが成功しているなんて、まったく変なコンセプトだよ」。

 結果的に、『Yellow Fever!』は非常にコンセプチュアルなプロジェクトから生まれた作品でありながら、単純に〈YMOがこんなラテン調になってるよ! 楽しい〜!〉という聴き方も可能な一大娯楽作に仕上がっている。それこそがアトムの凄いところではないかとも思うのだが。

 「そうだね。今作はYMOの曲をもう一度音楽の文脈に組み込み直したことより、アルバムの音楽性そのものを印象付けるような、純粋に娯楽的な作品だという気がしているよ」。
セニョール・ココナッツのニュー・アルバム『Yellow Fever!』(Third-Ear)

細野晴臣

99年の時点でSCの推薦文に〈今度はYMOをラテンでやってください!?〉と記している彼こそが無意識の発起人か!? 同名映画のサントラ『メゾン・ド・ヒミコ』(ワーナー)を手掛けたり、半野喜弘“サヨナラ、はらいそ”で歌ったり、大忙し!


坂本龍一

最近は電気用品安全法への抗議運動などでも脚光を浴びている教授。ソロ作のリイシューなども相次ぎましたが、新録の最新アルバムは、みずからの楽曲をピアノでセルフ・カヴァーした『/05』(ワーナー)。〈癒し系〉を超えた癒しの逸品ですよ。


高橋幸宏

細野とはSKETCH SHOWで活動を共にし、他にも多彩なユニットで活動しているユキヒロ。先日リリースした久々のソロ・アルバム『BLUE MOON BLUE』(東芝EMI)では、エレクトロニカ的なアプローチをポップな歌に昇華して聴かせました。


文/出嶌 孝次

300字では語れないYMO

 細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一の三氏によって78年2月19日に……おだまり! それは歴史書のどこかに載ってるので、そちらをどうぞ! TR-808を用いた『BGM』(81年)などを残していることで〈テクノの元祖〉と呼ばれ、テクノ系のリミックスも量産されてきたYMOですが、ディスコとエキゾチカをコンピュータとシンセサイザーに投げ込んだチャンキーなテクノ(ロジー)音楽こそがその本質であって、実体はテクニカルなフュージョン・バンドだったはずです。つまり、人肌トロニカを聴かせるSKETCH SHOWはYMOの真逆を行ってるわけですね。そんなYMOだからして、LOW-IQ-01らによるバンド・サウンド主体だった『TRIBUTE TO YMO』や、といぼっくす(細野も客演)などのカヴァー解釈はまったく正しいんです。そして、またひとりカヴァー挑戦者が……。
リミックス盤『YMO REMIXES 99-00 THE BEST』(ビクター)
SKETCH SHOWの2002年作『AUDIO SPONGE』(daisyworld)
2005年のトリビュート盤『TRIBUTE TO YMO』(ミュージックマイン)
といぼっくすの2005年作『Acoustic YMO』(Wavemaster)

文/石田 靖博

近年のアトム盤はこんな感じ


SENOR COCONUT 『Fiesta Songs』 Third-Ear(2003)
セニョール! クラフトワークで世間をニヤつかせたラテン・カヴァーの魔手は定番ポップスへ! ディープ・パープル“Smoke On The Water”、マイケル・ジャクソン“Beat It”など悪意か敬意か不明のラウンジ無礼講!



ATOMTM 『Acid : Evolution 1988-2003』 daisyworld(2004)
セニョール(クドい)! 悪意か批評か憧れか、多様なスタイルを乱発したアトム氏の黒ユーモアセンス炸裂! 88年〜2003年までのアシッド・ハウスを1年1曲ずつ収録……という設定で全曲を自作自演した無礼講嘘コンピ!



『Senor Coconut Presents Coconut FM』 Essay(2005)
セニョール! 贋作王がヘヴィー・リスナーであることを思わず証明してしまった、バイリ・ファンキ、レゲトン、クンビアなどなどラテンの珍味ダンス・ミュージックが入り乱れた無礼講選曲コンピ! 世界は広いぞ!



ATOMTM & PINK ELLN 『Live Volumes 2&3』 Logistic(2006)
セニ(略)! 手間暇かけて嘘コンピを作るほどアシッド・ハウスに思い入れのある(たぶん)アトムのアシッド愛がストレートに表現された、ピンク・エリンとの約60分2本勝負の直球王道アシッド・ハウス無礼講ライヴ!

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