ホームテキスト
第1回 ─ ヤン富田が自身の音楽遺伝子(の一部)を覗く - Part.1 -


掲載: 2006/05/25

そのキャリアを通じてさまざまな音楽を実験的かつポップに発信し、国内外のファンを魅了してきた音楽家、ヤン富田。彼が書籍「フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム1」、CD『フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム2』のリリース(5月25日)を皮切りに関連作品を3ヶ月連続でリリースします。これを機にbounce.comではその多彩な音楽世界の謎を探るべく、ロング・インタビューを決行。彼の音楽を取り巻くキーワードについて語っていただきました。不思議とトキメキに溢れたヤン富田博士のミュージック・ミーム(音楽遺伝子)。ご自身の談話とともに三ヶ月連続で覗いてみましょう!!

→ヤン富田のキャリアについては、bounce誌記事〈3か月連続企画! ヤン富田の音楽意伝子の旅〉をチェック!

文/bounce.com編集部

ヤン富田が語る、ミーム(音楽遺伝子)たち その1
MEME(ミーム)、HIP HOP(ヒップホップ)、HUMOR(ユーモア)、HOUSE(ハウス)


■MEME(ミーム)

概念として螺旋状の遺伝子をもつ音楽。〈ミュージック・ミーム〉っていうのはすべてが螺旋状で繋がっているの。だから新しいも古いも距離感がないわけ。この螺旋の中のものだから、新しいとかノスタルジーとかそういうことでもない。つまり、普遍的で、永遠なわけ。深いんだよ。そういう打ち出し方は今まで誰もしてないんだけど。いちおうね、僕が創った造語でもあるの(笑)。

 今回の本とCDがあるじゃない。本はさ、昔の話とか、自分が17、8の頃の話も載ってる。〈そこから俺は変わってないぜ〉っていうのが〈フォーエバー・ヤン〉なんだよ、簡単に言っちゃえば。それは自分にとってはノスタルジーでもなんでもなくて、現在でもあるわけ。それはつまり、螺旋状になった遺伝子のなかのある点とある点がいつも螺旋のなかにある、っていうことだったりするの。
本:「フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム1」(アスペクト)
『フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム2』(ASL Reserch Service)



■HIP HOP(ヒップホップ)
『MUSIC FOR LIVING SOUND』(フォーライフ)
答えてほしいんだろうねぇ(笑)。……ヒップホップってさ、一般的にはラップのことだと思われてるじゃない。でも、ヒップホップって〈考え方〉だから。ラップはすべてじゃなくて、部分なんだよね。で、そういうふうに捉えるとヒップホップってすごく可能性が広がるんだ。つまり、突き詰めれば現代音楽だったり現代美術にぶちあたるしかないの。もともとそういう手法が起源だから。ヒップホップのルーツはクール・ハークのジャマイカのサウンドシステムじゃない、僕はそういう立場をとっている。だけど、今は商業音楽として成り立っちゃうからビジネスとして動いてるじゃない。本来はそういうものとは別のもの。本当はすごく可能性があるし、オモシロいことができる。グランドマスター・フラッシュの脳波を音に変換する(註:『MUSIC FOR LIVING SOUND』収録)なんていうことはさ、本来はヒップホップがやらないといけないことなわけ。それは僕なりのヒップホップ表現。バスキアだってヒップホップのところから出てきたでしょ。

 
■HUMOR(ユーモア)
ユーモアはね、すごく大事なものなんですけど、あんまり言わない方がいい事だよね。ユーモアを語るってことは、〈ユーモア〉じゃないじゃん。

 
■HOUSE(ハウス)
アシッド・ハウスがすごく好きだった、昔。それで“Acid Tracks”とか出てて、いっぱい買ったりしてたな。電子音楽の方が奥は深いけど、お手軽な感じはすごくオモシロいと思う。(当時は)まだ誰も使ってる機材がTB-303だって気がつかなかったのね。僕は持っていたの。それでパッと聴いたときに〈これはTB-303だろうな〉っていうのはわかった。あ、これ(フューチャー“Acid Tracks”)はTB-303だよねーって。まだ909とか808とかも転がっていて、TB-303なんて2,000〜3,000円で転がってたの。〈こういう機材で黒人の人はやっちゃうんだなぁ〉って思った。阿川泰子さんのやつ(註:日本初のアシッド・ハウス作品『DANCING LOVERS NITE』)はアシッド・ハウスのムーヴメントが終わって2、3年経ってたんだけど、日本ではまだ誰も出してなかったね。

ヤン富田が語る、ミーム(音楽遺伝子)たち その2
EXIOTIC(エキゾチック)、POP(ポップ)、DUB(ダブ)、FUTURE(フューチャー)


■EXIOTIC(エキゾチック)
マーティン・デニーのカヴァーも収録した、ヤン富田参加のWATER MELON GROUP『COOL MUSIC』(ソニー)
エキゾティックはねぇ、すごくハマって。マーティン・デニーさんのエキゾティック・サウンド、本当にね、70年代に5年くらいかな、その音楽を聴いて催眠術をかけられたような状態になって、本当に研究した。物事ってさ、研究すると本質に出会うんだよ。最初ってなにもわかんないじゃない、スポーツでも学問でも何でも。その音楽がどういうものなのかとか、世の中にとってどういう位置づけなのかとかまったくわかんないじゃない。研究すればするほどその本質に向かっていくわけ。僕はヴァン・ダイク・パークスのレコードを聴いてドラム缶はじめたわけ、そうしたらヴァン・ダイク・パークスと共演したりね(註:88年の初来日公演に、ディスカヴァー・アメリカ・オーケストラの一員として参加)。マーティン・デニーを研究したら、90年にはマーティン・デニーさんのプロデュースをすることになったり(註:90年作『Exotica 90』)。それはつまり、本質に出会っていくことなわけ。だからね、謙虚にコツコツとやっていくと、そういう結果が出るわけ。半端にやっているとダメなの。

 
■POP(ポップ)
ポップとポップスっていうのは違うからね。自分はポップはやるけど、ポップスはやらないの。30年くらい前から言っているんだけど。〈素材〉と〈表現の仕方〉っていうのがあって、その両方ともその時代のものだとするじゃない。簡単に言っちゃうと、流行の表現と流行の素材を使ったものはポップスになるわけ。で、もっと言っちゃうと売れ線とかって言われちゃう。ポップっていうのは、表現の仕方か素材、どっちかがその人のこだわりであったり、まったく流行とは関係ないものであったらいいわけ。で、素材も表現の仕方も、両方とも時代とは関係のないものってあるじゃない? それをね、マニアックっていうの。マニアな世界。勝手にやってろ、っていう。(素材か表現方法の)どっちかが流行のものだとするじゃない。それはね、ポップになるスタート地点にまずは立つもの。ただ、ポップなものを作ったとして、それがすぐにポップスに追いつかれちゃうようなものだったら、それは大してポップじゃないんだな。ずっとポップスにはならないけど、ずっとポップである、そういうのが最高のポップだと思ってる。だから、ポップスとポップはまったく違うんだ。姿勢として180度違う。ジャンルとかは今となってはどうでもよくて、姿勢が一番大事なんだよね。でさ、今回TORUMAN君をプロデュースして『友情』ってタイトルをつけたのね(註:6月28日にリリースされる、ヤン富田のレーベル、ツナミ・サウンズからリリースされるTORUMANのデビュー・アルバム『友情』)。昔の不良の奴らって絶対に仲間を裏切らなかったじゃん。その感じがこれからの世の中には絶対いいと思うんだ。つまり、〈友情〉っていうタイトルをつけることって、すごくポップだと思ってるわけ。

 
■DUB(ダブ)
ヤン富田プロデュースによる、いとうせいこう“Country Living”(同曲のダブも)や山本リンダ“Smoke Gets In Your Eyes”収録のコンピ『RELAXIN' WITH JAPANESE LOVERS VOLUME 2』(ビクター)
ダブは随分研究した。どういう構造でこの音が出ているのかって調べていくと、道具の音だったりするわけ。でね、リミッターだったりとか、いろんな機種があるんだけど、多分これ使ってるんだろうなってすぐわかる。そういう研究をする人は世界でもあんまりいない。同業でも、そういうことをやってる奴はすぐわかるの。例えば何かさ、コトバの端にあるキーワードをぶつけるわけよ。それを知っているか知らないかで、すぐわかっちゃうんだよ。研究していくとさ、剣豪みたいに刀を抜かなくても〈おぬし、できるな〉ってわかる。とりあえずそういう域にはいかないといけないの、ものを研究するっていうことは。……ダブは専門領域の話になってくるんだよね。語りだしたらすっごくオモシロイ世界だったりするんだよ。

 
■FUTURE(フューチャー)
音楽を作るうえで〈フューチャー〉とかって全然考えたことない。そんな簡単じゃないし、作為的になっちゃうじゃん。ただ、想像はするけどね。どんなものでも、自分がタイトルつけたりとか、自分がやっていることとかも3年後とか5年後とか8年後とか10年後とか20年後とか……〈どうなってるんだろう〉っていうことは考える。そういう意味では〈未来〉っていうコトバじゃないんだけど、何年後とか何年先とかっていうものは考える。今の時代感でいったら、3年経っても、カッコ悪いものにはなってないだろうなとか。逆に3年経ったら輝き出すだろうな、っていう判断はする。ただ、〈未来モノ〉だからってそれを未来に向けて作っているわけじゃない。〈今出す〉っていうことが一番大事なの。

 ……次回につづく。

YANN TOMITA is.....!???

須永辰緒、田中知之、松浦俊夫、テイ・トウワ、EYE、Buffalo Daughter、小山田圭吾、カヒミ・カリイ、藤原ヒロシ、NIGO、こだま和文、ECD……彼らすべてからリスペクトされているのが、60年代末より音楽活動を続けるヤン富田。また、日本で初のヒップホップ・アルバムを作ったのも(いとうせいこう『MESS/AGE』)、日本で初の全編スティール・パン作品を作ったのも(ASTRO AGE ORCHESTRA『HAPPY LIVING』)、日本で初のアシッド・ハウス作品を作ったのも(阿川泰子『DANCING LOVERS NITE』)、すべて彼。数え切れないほどのプロデュース/リミックス/スティール・パン奏者としての客演などをこなし、いくつかの名義で未来を見据えた傑作を放ち続けてきたヤン富田だが、ここにきて突如リリースラッシュ!! まず届けられたのが書籍版「フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム1」とミニ・アルバム「フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム 2」。そして6/28にはヤン富田プロデュースによる、新人シンガー・ソングライター=TORUMANのファースト、そして7/28にはDOOPEESのセカンド・アルバム『DOOPEE TIME 2』が登場予定。この機会に、彼の膨大な音楽世界に触れてみては?

この記事をflogに追加
この記事をはてなブックマークに追加

テキストへ戻る


この記事にはトラックバックが可能です
この記事のトラックバックURL:
http://www.bounce.com/tb.php/60603
▼トラックバック一覧(2個)
ドゥーピーズ復活!!新曲「だいじ…  from 1日1曲!Happy音楽マガジン
オススメ度:★★★★☆ 遂に待ちに待ったドゥーピーズの復活!! 日本中でドゥー...
Tracked on 2006年6月25日 16時51分
高校生じゃあるまいし、あるミュージシャンが書いた本を貪るように一字一句逃さず読も...
Tracked on 2006年6月1日 0時8分

複数キーワードによる検索も使えます!!