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第98回 ─ 吾妻光良 & The Swinging Boppersによる特別講座が開講!!


掲載: 2006/09/07

ソース:『bounce』誌 279号(2006/8/25)

文/桑原 シロー




ビッグバンド・スタイルで、めっぽう愉快なジャンプやジャイヴやブルースを聴かせるバンド、吾妻光良 & The Swinging Boppers。79年に活動を開始し、これまでに4枚の名作アルバムをリリースしてきた彼ら。たまに集合し、ライヴやレコーディングを行うというマイペースを貫いてきたのだが、近年、EGO-WRAPPIN'やカセットコンロスなど後進のバンドからのリスペクトがあったり、〈フジロック〉などのフェスやイヴェントに招聘されたりと、若いリスナーの目に触れる機会が増え、そのフレッシュで豊かな音楽性と溢れるエンターテイメント性に対しての評価が著しく高まっている。歌詞のおもしろさも彼らの音楽の魅力のひとつであり、フロントマンの吾妻が描く何気ない日常から生まれる可笑しい景色の数々も、また若者たちに支持されている。
そんな彼らが4年ぶりとなるニュー・アルバム『Seven & Bi-decade』をリリースすると聞き、ヤング・リスナー代表として編集部の新人スタッフが、彼らがベースとしているさまざまなジャンルの音楽の魅力を教えてもらおうと、吾妻のもとへと向かった。真夏の夜の特別講義(宴?)が開かれたのは、新宿三丁目の怪しい路地裏にある某居酒屋であった――。
吾妻光良 & The Swinging Boppersのニュー・アルバム『Seven & Bi-decade』(ビクター)


楽しい音楽の魅力をいろいろと教えてくださいねァ

荒木「荒木と申します」

吾妻「吾妻と申します。普段はやっぱロミオロメンとか聴いてんの?」

荒木「〈レ〉です(笑)。新作を聴かせていただいて、率直な意見として、すごく楽に聴けるアルバムだな、と思いました」

吾妻「ありがとうございます。ま、枝豆でもどうぞ。今作が5枚目で、1枚目は83年に出しまして」

荒木「あ、私の生まれた年です!」

吾妻「ガ〜ン! 話は以上!!」

荒木「まぁ、そう言わずに(笑)。どの歌詞もスッと入ってくるし、まったく小難しいところがなくて」

吾妻「〈IT〉のこととか歌ってるよ(笑)」

1時間目――ジャズ

荒木「『Seven & Bi-decade』を聴かせていただいて〈ジャズ〉がベースになってるのかなぁと。ジャズっていうと大人の音楽ってイメージで」

吾妻「古いからね、音楽自体が。俺らの先輩の団塊の世代には、すごい人気があったんだから。ジュディマリかアート・ブレイキーかってもんだよ(笑)。ただそういうジャズは俺がバッパーズでやっているものよりはるかに後のものだけどね……(しばらく日本での世代別のジャズ観の違いについてのお話が続く)」

荒木「でもお話を伺ってると、どこかで〈ジャズでありたい〉というこだわりを感じるんですが」

吾妻「ホントは心の奥底にちょっとあるのかも……恐ろしいことを訊くね、矢野ちゃんは」

荒木「荒木です。でも、ジャズなのかなぁと思いつつも、大人の音楽って感じはしませんでした」

吾妻「それは子供の音楽だって言いたいのか!(机をひっくり返そうとする)。よし、ジャズだな。この一枚、ということでナット・キング・コールを挙げよう。最初トリオをやっててね、ハーレムの大スターだったわけ。彼の良さはね、歌、サウンド、歌詞が洒落ている。それでいて熱いんだな(歌を交えつつ歌詞の講釈が続く……)」
ナット・キング・コール・トリオの編集盤『The Best Of Nat King Cole Trio -The Vocal Classics(1942-46)』(Blue Note)


2時間目――ブルース

吾妻「あえてこの人を選んだ。ゲイトマウス・ブラウン! まず、BB・キングを代表とするブルースの王道がある。そこと比べると亜流の人。ただし、それは横山やすしと西川きよし、どっちが好きかって話みたいなもんで」

荒木「すみません、誰かわかんないです」

吾妻「この例えが駄目!? 何がいいか……じゃあサッカーとか詳しい?」

荒木「ハイ、観ます!」

吾妻「俺、全然詳しくない(笑)。そうだ! ビッグマックとフィレオフィッシュ! この関係なんだな。俺はフィレオが好きなんだ! 異様にスピード感あるプレイでね、テクニシャンで、器用な人でもある。この人のギターは世界でいちばん好き。俺が一生弾けないというようなギターなんだな。ブルースの歌詞って、ロバート・ジョンソンとか聴くとわかるけど、すごくシュール。だから俺はジャンプとかジャイヴの世界のほうがもっとわかりやすいだろうと思って、そっちをやってるんだよね。もっと具体的だから」
クラレンス“ゲイトマウス”ブラウンの編集盤『The Original Peacock Recordings』(Rounder)


3時間目――ジャンプ/ジャイヴ

吾妻「よ〜し、来た来た(笑)。あえて言っちゃえば、ブルースとジャズがぶつかった音楽だね。ジャンプといえばルイ・ジョーダンを出すと見せかけて……ワイノニー・ハリスだよ! あんまり好きなもので、トリビュート・ソングを作っちゃったんだけどね(“ワイノニーを聞きながら”)。まぁ、一言で言うと、男の中の男だね。ものすごい売れちゃってね、一晩に一台キャディラック買っちゃうようなぐらいって話もある。大邸宅建てて、外にネオンサインで〈Mr.Blues Is Here〉って書いちゃうんだよ。女の子と浮気しまくってさ、浪費が過ぎて最後はガス代も払えなくなっちゃうんだけどね、最悪だねぇ。そうはなりたくないねぇ、天野ちゃん」

荒木「荒木です。じゃ、ジャイヴは?」

吾妻「ジャイヴって言うのは〈おふざけ〉という意味もあって、そう聴こえるんだけど、そうじゃない。これまた王道からちょっと反れたところにキャッツ&ザ・フィドルってグループがあって、ジャイヴのプログレと言われてる(笑)。ちょっとラップみたいな歌もあってね。ウクレレみたいな楽器を2本使って、やたらリズミカルなサウンドを聴かせるんだ。ものすごいビートで踊りたくなる。一時期、これに合わせて家の玄関でタップを踏んでたね(笑)。スウィートだしハードだし、いろんなものが入ってる。3,000円の幕の内弁当みたいなもんだ。ジャイヴのサウンドを知りたきゃこれを聴け!」
ワイノニー・ハリスの編集盤『Bloodshot Eyes -The Essential Wynonie Harris』(Indigo)
キャッツ&ザ・フィドルの編集盤『Killin' Jive -Complete Recordings Vol.1(1939-1940)』(Dee Jay)


4時間目――カリプソ

吾妻「1920年代ぐらいからあるトリニダード・トバゴのすごい古い音楽。カリプソの良さは歌詞、すごく日常的な話が歌われててさ。誰にでもわかる世界なんだよ」

荒木「吾妻さんの歌詞もそうじゃないですか!」

吾妻「俺はあそこまでいけない。あまりに身近で聴いてると泣きそうになるんだよ」

荒木「吾妻さんの歌詞も、聴いてて平和な気持ちになりますよね」

吾妻「日常を歌えているってのは、平和だからだよねぇ。そうそう、マイティ・テラーって人の“No Carnival In Britain”って曲が好きでね。ダァダァダァ〜(ハミングする)、あ〜チクショウ! 泣いちゃいそうになるね。〈ロンドンに来たけどカーニヴァルがないんだなぁ〉ってとくとくと歌うわけ。最高の郷愁があるんだ。すっごい身近なことを綺麗なメロディーで歌うんだよ。ところで、矢野ちゃんは天野ちゃんだっけ?」

荒木「もうわけわかんないですよ(苦笑)。私、新作に入ってた“しかしまぁ何だなぁ”が好きなんです。さらっと何気ない日常が歌われてるところが。最初重くなりそうな話だったのが、〈俺のメガネ知らないか?〉ってのどかな歌詞が来て」

吾妻「パーシー・メイフィールドの世界をわかってくれる人がここにいた! あれは俺の“Please Send Me Someone To Love”なんだよ。この人はブルースの詩人だね。〈神様お願いです/全人類に理解と心の平和を送ってください/そしてもしよければ俺に愛する人をください〉って歌詞なんだ。どうだい、これ? かっこいい〜! 言いてぇ〜!(……そして曲の2番の歌詞解説に入り、楽しい講義は夜中まで続くのでした……)」
マイティ・テラー“No Carnival In Britain”を収録したコンピ『London Is The Place For Me -Trinidadian Calypso In London, 1950-1956』(Honest Jon's)
パーシー・メイフィールドの編集盤『Classics 1947-1951』(Classics)


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