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掲載: 2006/09/28
ソース:『bounce』誌 279号(2006/8/25) |
ソウルの遺産を新たな視座からリフォーマット。今回はあの巨大レーベルをほんの入口までご紹介!
文/林 剛 アリフ・マーディンがいた時代……アトランティックにソウルの花が咲いた
創立60周年を目前に控えた老舗レーベル、アトランティックの周辺がふたたび騒がしい。ライノやコレクタブルズなどから怒涛の勢いで登場している旧作リイシューをはじめ、アトランティックの名物エンジニア/プロデューサーの伝記映画「トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男」の公開、そして最近のニュー・リリースには昔懐かしい同社のレーベル・ロゴが復活するなど、〈名門アトランティック〉を印象づけるトピックが増えてきているのだ。そんななか残念な話題ではあるが、アトランティックのハウス・プロデューサー/アレンジャーとして名を馳せたアリフ・マーディンが、6月末に他界した。享年74歳。アトランティックの創設者であるアーメット・アーティガンと同じトルコ出身のアリフは、トルコで知り合ったクインシー・ジョーンズの誘いで渡米。バークリー音楽院を経た後、63年にアトランティックに入社し、アーメットの兄であるネスヒのサポートをしながら裏方の仕事を習得した。当初はジャズの仕事が中心だったが、67年にアトランティックに移ってきたアレサ・フランクリンの作品にエンジニアとして関わり、以後ソウル系ではアレサやダニー・ハサウェイ、マージー・ジョセフ、アヴェレージ・ホワイト・バンドらの作品でプロデュースを担当。こうした実績から、70年前後のアトランティック=アリフ・マーディンというイメージさえ出来上がった。もっとも社内的には、67年にレーベルをワーナー・セヴン・アーツ・コーポレーションに身売りし、68年にはスタックスの配給を止め、この頃からロックやポップスの作品に積極的に手を伸ばしはじめるなど、黒人音楽を主軸とした創立以来のレーベル・カラーを失いつつあった。だが、そんな状況を逆手に取るかのようにアリフはトム・ダウドやジェリー・ウェクスラーと共に異種交配を試みながらソウル・ミュージックを次のステップへと導き、名盤と語り継がれるような作品を数多く生み出したのだ。ただ、これもアトランティックの長い歴史のホンの一部。今後は時機を見てR&B/ソウルにおける同社の歴史を数期に分けて紹介していく予定だが、まずは手始めにアリフ追悼の意も込めて、彼の関連作にスポットを当ててみたい。 |
文/出嶌 孝次 アトランティック以降のアリフ
アトランティック在籍時から外部制作も盛んだったアリフだが……この文字数で何を語れるよ? ともかく彼の全キャリアを通じても外せないのが、80'sモードにも対応したチャカ・カーンの諸作、アニタ・ベイカーらとの仕事なのは確かだ。で、アトランティックを辞した2000年代のアリフ作品として、ノラ・ジョーンズのブレイクは確かに重要だが、忘れちゃいけないのはリッキー・ファンテやラウル・ミドンらを世に出したこと。彼は最期まで現役だった! ▼アリフ・マーディンが手掛けた重要な非アトランティック作品を紹介。
| | チャカ・カーンの81年作『What Cha' Gonna Do For Me』(Warner Bros.) |
| | ノラ・ジョーンズの2002年作『Come Away With Me』(Blue Note) |
| | ラウル・ミドンの2005年作『State Of Mind』(Manhattan/EMI) |
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文/林 剛 ESSENTIALS 永遠に熱い名盤たち
THE SWEET INSPIRATIONS 『The Sweet Inspirations』(1967)
ホイットニー・ヒューストンの母シシーが在籍していた女性ヴォーカル・グループの処女作。南部録音で、スタックス産ヒットなどのカヴァーを中心に、アレサ・フランクリン版との競作とも言うべき“Do Right Woman-Do Right Man”も披露。馴染み深い楽曲をゴスペル上がりならではの神聖さとドス黒いフィーリングで歌い上げた秀作だ。アリフ・マーディンは管弦アレンジを担当。
WILSON PICKETT 『The Midnight Mover』(1968)
全体を指揮したトム・ダウドの下、アリフ・マーディンがアレンジで参加した故ウィルソン・ピケットの豪快ソウル盤。ボビー・ウォマック作のナンバーも多く含み、ふたたび〈真夜中〉に動き出したピケットが、オーティス・レディング亡き後は俺だぜ!と言わんばかりのシャウトで激唱しまくる。それと同時にバラードもしみじみと歌い上げ、当時のアトランティックの雄としての存在感を見せつける。
DUSTY SPRINGFIELD 『Dusty In Memphis』(1969)
白人アーティストに黒いフィーリングを加えることを得意としたアリフ・マーディンが、トム・ダウドやジェリー・ウェクスラーと共同制作。英国出身の女性ポップ歌手をメンフィスのアメリカン・スタジオに赴かせ、サザン・ソウル・マナーで仕上げた一枚だ。スウィート・インスピレーションズを従えて歌うダスティは実にソウルフル。泥臭さのなかに洗練を感じさせるアリフの手腕も見事だ。
ARETHA FRANKLIN 『This Girl's In Love With You』(1970)
アレサの作品にアレンジャーとして関わってきたアリフ・マーディンは、本作からプロデューサーとしても参加。ビートルズ曲のカヴァーなどを含み、この頃からややポップ化していくアレサだが、当時のアトランティックの顔役らしく、歌いっぷりも堂々としたもの。スラム・ヴィレッジ“Selfish”のネタとしても再注目された名バラード“Call Me”はアリフによる美しい弦アレンジが効いている。
DONNY HATHAWAY 『Donny Hathaway』(1971)
クラシックやジャズにも造詣が深い学究肌のダニーとアリフ・マーディンの結びつきは必然だったのだろう。〈ダニー・ハサウェイ版〉がいまもカヴァーされ続ける“A Song For You”を含むソロ2作目。ゴスペル・フィーリングを〈静〉で表現したような楽曲群は、アリフの緻密なアレンジも相まって、聴くほどに震えがくる。ここでのふたりのコラボは73年の『Extension Of A Man』で実を結ぶ。
KING CURTIS 『Live At Fillmore West』(1971)
アレサ・フランクリンの同名(同日)ライヴ盤と共にアリフ・マーディンがプロデュースに関与。だが、こちらはキング・カーティス本人との共同作業で、フィルモアでのファンキー&グルーヴィーな演奏を熱気ムンムンのままパッケージ。ホーン・アレンジに長けたアリフだけにサックス奏者の魅力を引き出すのはお手のものか。なお、最新リイシュー盤にはビリー・プレストンとの共演なども収録。
ROBERTA FLACK 『Quiet Fire』(1971)
アトランティックを代表する女流シンガー・ソングライター、ロバータ・フラックの3作目。彼女とダニー・ハサウェイの共演盤(72年)ではプロデュースにも関与するアリフ・マーディンが、ここでは“See You Then”にて隠し味的なストリングス&フルートのアレンジを担当。ファンキーなメッセージ曲“Go Up Moses”ではバックの〈男声〉に参加するアリフの姿も。甘くビターな味わいの静かなソウル盤。
AVERAGE WHITE BAND 『AWB』(1974)
アリフ・マーディンのプロデュースで傑作を連発したスコットランド発の白人バンド。名曲“Pick Up The Pieces”を含むアトランティックでの初作で、リスナーの人種を選ばないライト・ファンキーな楽曲群は、黒人音楽を都会(NY)的に仕上げるアリフ仕事の真骨頂だろう。後に世に出された、アリフの手が加わる前のデモ集(AOR風)と聴き比べると、本作のほうがモア・ソウルフル。
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文/出嶌 孝次 厳選! ソウル・リイシューの宝石箱
夏が終わろうが何だろうが、過去に残されたソウルの素晴らしさがそこに在り続けるのは当然! ということで今月も自信を持ってオススメできるリイシュー作品を紹介しよう。まず、ジュウェル〜ポーラ〜ワンドの世界初CD化音源をまとめたロスコー・ロビンソンの編集盤『Heavenly Soul Of Music -The Jewel/Paula Recordings』(Pヴァイン)はマスト!
ゴスペル出身らしいスケールの大きな歌いっぷりと弾けるようなノリの良さに感動を押さえきれない、濃密なソウル汁迸るドス黒盤だ。続いてはシカゴ産、キティ・アンド・ザ・ヘイウッズの81年作『Excuse Me, I've Got A Life To Catch』(Mercury/ヴィヴィド)。マイク&ブレンダ・サットンが手掛けた表題曲のミディアム路線もいいし、キリッとした歌声で聴かせるスロウも絶品なのだ。お次はドラマティックスのウィリアム・ハワード=ウィー・ジーが79年に残した唯一のソロ作『Hold On(To Your Dreams)』(Cotillion/ヴィヴィド)で、オーソドックスなバラードの良さには素直に打たれるはず。
さらにデトロイトものだと、ラ・ビートや周辺レーベルに残された音源をまとめた名編集盤『Lou Beatty's Detroit Soul』(Grapevine)も出ている。60'sらしいホットでモダンなノーザンの宝庫だよ!!
最後は、70'sのシュープリームスでセンターを務めたジーン・テレルの78年作『I Had To Fall In Love』(A&M/Soul Brother)。“Rising Cost Of Love”など、80年代を目前に控えた時期らしいキラーなアーバン・メロウ曲が最高! レアかどうかより、自分の耳で確かめろ!!
▼文中に登場した作品を紹介
| | ロスコー・ロビンソンの編集盤『Heavenly Soul Of Music -The Jewel/Paula Recordings』 |
| | キティ・アンド・ザ・ヘイウッズが81年にリリースしたアルバム『Excuse Me, I've Got A Life To Catch』 |
| | ウィリアム・ハワード=ウィー・ジーが79年にリリースしたアルバム『Hold On(To Your Dreams)』 |
| | ラ・ビート周辺レーベルの音源の編集盤『Lou Beatty's Detroit Soul』 |
| | ジーン・テレルが78年にリリースしたアルバム『I Had To Fall In Love』 |
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