ホームテキスト
第19回 ─ 幻惑されて、テンプテーションズ


掲載: 2006/11/30

ソース:『bounce』誌 282号(2006/11/25)

グループの栄光を支えた個性的な面々のソウルフルなビフォー/アフター

文/林 剛



 グループにメンバーの交替劇はつきもの。そしてそれはテンプテーションズ(公式の略称はテンプス)のような人気グループであればあるほど人々の関心を惹くものだ。先日DVDが邦盤化されたTV映画「ゲット・レディ! 栄光のテンプテーションズ物語」、またはパフォーマンス映像集「Get Ready -Definitive Performance 1965 To 1972」は、もうご覧になっただろうか。そこでも唯一の現役オリジナル・メンバーとなるオーティス・ウィリアムズの伝記や回想をもとにその事実が伝えられていたが、テンプスの歴史はさまざまな才能の出入りの歴史でもあった。

 もっとも、上記のDVDで話題にされるのは、オーティス・ウィリアムズやメルヴィン・フランクリン、後にモータウンなどでソロ活動するデイヴィッド・ラフィンとエディ・ケンドリックス、ポール・ウィリアムズの5人がいた頃。“My Girl”などのヒットを飛ばした黄金期(64〜68年)のテンプスだ。その前後、ラフィンの加入/脱退がグループに転換をもたらしたのは有名な話だが、ラフィン加入前にいたのが後にドラマティックスに籍を置くエルブリッジ・ブライアント、一方、ラフィンの後釜となったのが元コントゥアーズのデニス・エドワーズである。

 デニス加入後は、71年に物故したポールの代わりにテンプスの前身ディスタンツのリチャード・ストリートが、エディの代役にデイモン・ハリスが就き、75年にはデイモンとグレン・レオナードが交替。デニスの一時脱退期(77〜79年)には、後にモータウンからソロ作を出すルイス・プライスが在籍した。以降、83年にロン・タイソンが、84年にはデニスの後継者として熱血シャウターのアリ・オリ・ウッドソンが加入。94年からはリチャードの代わりにセオ・ピープルズ(現フォー・トップス)を迎え、その直後に他界したメルヴィンの後継者(ベース・ヴォイス担当)としてPファンク軍団のレイ・デイヴィスや元フューチャーズのハリー・マッギルベリーも名を連ねた。またアリ・オリ脱退後はオーティスの肝煎りで登場したフォー・ラヴァーズ・オンリーのテリー・ウィークスを迎え、セオ脱退後も元レイクサイドのバーリントン・スコット(現在は脱退)やスピナーズのリードだったGC・キャメロンなど、かつて名門グループに籍を置いた面々が加入している。その陰には歌唱力がありながらも(グループの加入規定である)身長が満たずに涙を呑んだ実力派もいたが、それにしてもここまで豪華な面々が出入りしたのも名門テンプスならでは。今回はその華やかな紳士録の一部を開いてみたい。
▼テンプテーションズのDVD。
オーティス・ウィリアムズの伝記を元にしたTV映画「ゲット・レディ! 栄光のテンプテーションズ物語」(IVC)
パフォーマンス映像を集めた「Get Ready -Definitive Performances 1965 To 1972」(USM/ユニバーサル)


文/出嶌 孝次、林 剛

ESSENTIALS
永遠の誘惑盤たち


DAVID RUFFIN 『So Soon We Change』 Warner Bros./ヴィヴィド(1979)

エゴを暴走させすぎてグループを去ったデヴィッド・ラフィンは、モータウンにソロ・アルバムを7枚残しているが、このたび紙ジャケでリイシューされたのはワーナーでの2タイトル。素晴らしいスロウの表題曲で知られるこちらは移籍第1弾で、ジワジワ昂揚していくこれまたスロウの“Break My Heart”が絶品! ディスコ調のアップにおける身のこなしの軽さも案外聴きモノだ。
(出嶌)


DAVID RUFFIN 『Gentleman Ruffin』 Warner Bros./ヴィヴィド(1980)

ワーナーでの2作目。テンプス時代の無遠慮とも言えた豪快な歌いっぷりはやや影を潜めるも、熱のこもったラフィン節は健在。前作に続きプロデュースはドン・デイヴィスだが、さらにアーバンなムードを高めた本作でラフィンはジェントル&スタイリッシュに振る舞う。バック・コーラスにはリオン・ウェアやロニー・マクネアといったモータウン/デトロイトと縁の深い面々も参加。
(林)


EDDIE KENDRICKS 『The Ultimate Collection』 Motown 

印象的なファルセットでノーザン・ビートからサイケ味ファンクまでを華麗に乗りこなし、71年にソロに転じたオリジナル・メンバー。ディアンジェロのカヴァーでも知られる“Girl You Need A Change Of Mind”や豪奢なファンク“Keep On Truckin'”、性急なガラージ“Goin' Up On Smoke”など代表曲はこのベストで一応チェック可能。オリジナル作の一般向けリイシューが望まれるところだ。
(出嶌)


DENNIS EDWARDS 『The Essential Collection』 Spectrum 

20人以上の男たちが出入りしたテンプス史上、3度も加入と脱退を繰り返した放蕩者はこのデニスひとりだ(在籍期間は68〜77年、80〜84年、87〜89年)。2度目の脱退後にモータウンに残したソロ作2枚をまとめたこの編集盤では、定番ネタとして知られる“Don't Look Any Further”など、持ち前のワイルドな歌声が楽しめる。現在はテンプテーションズ・レヴューなる〈分家〉を率いて活動中だ。
(出嶌)


DAMON HARRIS 『Silk』 Hot(1978)

“Papa Was A Rolling Stone”などでエディ・ケンドリックス似のファルセットを聴かせていたデイモン・ハリス。テンプスには71〜75年まで在籍し、その後インパクトというグループを経てフィリー勢のバックアップで吹き込んだのがこのソロ作だ。故ラリー・レヴァン御用達のパラダイス・ガラージ名曲“It's Music”を含み、同時期のエディのソロを意識したかのような作りが興味深い。
(林)


TRUE REFLECTION 『Where I'm Coming From』 Atco/ヴィヴィド(1973)

デイモン・ハリスの後釜として2年ほど在籍したグレン・レオナードがそれ以前にいた〈ワシントンDC版テンプス〉とも評される4人組。アルバムはMFSBの面々がバックアップした完全フィリー録音だが、冒頭の“Whisper”からしてサイケ期テンプスのスタイルに則ったようなヴォーカル・ワークを聴かせる。グレンのファルセットに絡むバリトンとのやり取りが何ともスリリング。
(林)


THE ETHICS 『Golden "Philly" Classics』 Collectables 

テンプス屈指のファルセッターとして83年以来グループの顔となっているロン・タイソン。そのロンがかつて在籍していたのが、後にサルソウル系列から登場するラヴ・コミッティの前身グループ、エシックスだ。60年代後期のフィリー・サウンドに乗せてスマートなヴォーカル・ワークを聴かせるが、きっと彼らもテンプスに憧れていたはず。ロンはその憧れを現実のものにしたのだった。
(林)


THE FUTURES 『Castles In The Sky』 Buddah/ヴィヴィド(1975)

フィラデルフィア出身の5人組によるデトロイト録音の名作。後にデイヴィッド・ラフィンを手掛けるドン・デイヴィスも関与するが、こちらも冒頭の長尺曲“Castles”からテンプス風ファンキー路線で迫る。よって、そんなグループの中心人物で低音ヴォイス担当のハリー・マッギルベリーが後にテンプスで活動(96〜2003年)したのは、ある意味必然だったのかも。ジャケ写、真ん中の彼だ。
(林)


G.C. CAMERON 『Love Songs & Other Tragedies』 Motown/ユニバーサル(1974)

2003年にテンプスに加入した最後輩メンバーではあるが、キャリアの華々しさでは歴代構成員でも最上位に位置するGC。スピナーズのリードを担当(67〜71年)した後、初のソロ・アルバムとなったのが今作だ。パワフルなノーザン調からニュー・ソウル風、スティーヴィー・ワンダー制作の幻惑ファンクまでをこなす唱法の柔軟さは、テンプス加入後にも活かされているものだ。
(出嶌)

文/出嶌 孝次

忘年会シーズンを悩ませるリイシューの山!


 今月も良作だらけ! まずはチャールズ&バーバラ・バートン夫妻が率いたオクラホマのバンド、メッセンジャーズ・インコーポレイテッドの70年作『Soulful Proclamation』(SMI/Pヴァイン)が世界初CD化!

ジャズマンのコンピに登場したりしてディープ・ファンク文脈で評価が高いけど、バーバラの優美な歌唱も最高! その発展型となるバートン・インクの『L.A. Will Make You Pay $$$』(Charli-Barbara/Pヴァイン)も世界初CD化で、こちらは洗練されたダンサブルな名品です!

で、オークランドの秘宝館=ヘヴン・セント&エクスタシーの『The Greatest Love Story』(Jamieko's/Pヴァイン)も世界初CD化! 明朗なダンサーと激甘なスロウ、そして胡散臭いジャケが三位一体となった謎の傑作よ。さらには自由ソウル派もAORファンも垂涎の名品を2枚。

デヴィッド・フォスター率いるスカイラークのメンバーだったカール・グレイヴスの76年作『Carl Graves』(A&M/ヴィヴィド)で極上の瀟洒なメロウネスに溺れるも良し、パズルのドラマーだったジョン・ヴァレンティの世界初CD化となる76年作『Anything You Want』(Ariola America/Pヴァイン)でブルーアイド・ソウルの粋を味わうも良し。

最後はUKのノーザン好きに愛されたオハイオのシンガー、ケニー・スミスの編集盤『One More Day』(Shake It)を推薦。ドゥワップから都会者ファンクまで、64〜75年という時代の変化に応じたスタイルでじっくり歌い込まれた佳曲群がキラリと光るのよ。

この記事をflogに追加
この記事をはてなブックマークに追加

テキストへ戻る


この記事にはトラックバックが可能です
この記事のトラックバックURL:
http://www.bounce.com/tb.php/69039

複数キーワードによる検索も使えます!