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掲載: 2006/12/14
ソース:『bounce』誌 282号(2006/11/25) |
さまざまな音楽ジャンルを丁寧に教えてくれる誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!
文/桑原 シロー 1. スワンプ・ロックの成り立ちと特徴
60年代の終わりから70年代の前半にかけて、〈スワンプ・ロック〉と呼ばれるジャンルが隆盛を誇りました。スワンプとは、すなわちアメリカ南部の湿地帯を指す言葉です。じめじめした沼を表現したのがスワンプ・ロック? イメージとしては○。サウンドの特徴を一言で説明すると、さまざまな南部の音楽をミックスしたロックということになります。ゴスペルやブルース、それにカントリーやリズム&ブルースといった南部産の音楽に愛情を抱く白人青年たちが、ロックという鍋を用いて作ったゴッタ煮音楽というわけです。そのスワンプは、サイケデリック・ミュージックの嵐が吹き荒れる季節に登場し、ポジションを入れ替わるようにしてシーンの主流となりました。嵐の日々に疲れた人々の間に、ルーツ(田舎)志向みたいなものが芽生えはじめたことも、支持された理由の一つと言えますね。
ねちっこくてファンキーなビートに泥臭くって湿り気のある演奏が絡まり合って、ソウルフルでワイルドなサウンドを生み出すあたりがスワンプ・ロックの醍醐味。それを体現していた音楽家が、デラニー&ボニー・ブラムレット夫婦であり、彼らの友人でもあるレオン・ラッセルという南部出身者でした。彼らのルーツ音楽に注ぐ眼差しの輝き、そして奏でられるダイナミックな音楽に、イギリスのルーツ探求者たちもヴィヴィッドに反応します。それがエリック・クラプトンやジョージ・ハリソン。彼らの支持(スタイルの導入)もあって、スワンプ・ロックはより広い範囲で聴かれることになるのです。
一つのスタイルにこだわることはない、大好きなものを全部やっちまえ──そんな姿勢をこれらの音楽に見ることができます。素朴だけど底なし沼的に奥深くもあるスワンプ・ロック。さぁ、首まで浸かって温まろう! |
2. それでは実際に聴いてみよう! その1
DELANEY & BONNIE 『Home』 Stax(1969)
本物の黒さを持つ2人の声が絶品。黒人音楽の名門=スタックスからリリースされた本作は、まったりとしたサザン・ソウルやハートウォームなカントリーなどが混在する南部音楽標本といった趣の名作だ。彼らの活躍によって、音楽シーンの目はルーツの方角へとシフトしていった。
CREEDENCE CLEARWATER RE-VIVAL 『Bayou Country』 Fantasy(1969)
揺らめくようなギターの響きに導かれて、鬱蒼とした森の中へ……。冒頭曲“Born On The Bayou”の響きはいつ聴いてもサイケデリックだ。夜空を見上げながら南部幻想を大きく膨らませつつ、青白い電気を放出する4人の若者たちの記録。傑作!
LEON RUSSELL 『Leon Russell』 Shel-ter/EMI(1970)
名曲“A Song For You”が終わると、畳み掛けるように泥臭いサウンドの攻撃がはじまる。LAスワンプのドンによる初のソロ作は、熱い南部サウンドとキャッチーなメロディーを融合させるテクが見事に発揮されていて、彼の才人ぶりを伝えるに十分な仕上がりだ。
JOE COCKER 『Mad Dogs & English-men』 A&M(1970)
レオン・ラッセル率いる11人バンド+コーラス隊をバックにしゃがれ声で吼えまくる若き日のコッカー。映画にもなったこの伝説のレヴューは、レオンによる一大スワンプ・キャンペーンである。レイ・チャールズやビートルズなどの名曲がどれも汗まみれに。
GEORGE HARRISON 『All Things Must Pass』 Apple/EMI(1970)
ビートルズ解散後に発表したLP3枚組のソロ作。この時期デラニー&ボニーらとの交流を通じて南部ロックに傾倒していた彼は、ここでフィル・スペクターの音の壁とアーシーなサウンドの折衷を実践。パワフルでスケールのデカイ世界を描くことに成功した。
ERIC CLAPTON 『Eric Clapton』 Polydor(1970)
クリーム〜ブラインド・フェイスといったスーパー・グループでの活動後、彼は〈南部が俺を呼んでいる!〉と言わんばかりの勢いでそちら方面の要人たちに接近。この初ソロ作やデレク&ザ・ドミノスの作品では、心地良さげにアーシーでルーツ色の濃い音作りに励んでいる。
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2. それでは実際に聴いてみよう! その2
DAVE MASON 『Alone Together』 Har-vest(1970)
イギリスの名バンド、トラフィックにスワンプを持ち込んだ男。方向性の違いでバンドを離れてからは、誠実に泥臭い道を歩んでいくことに。とはいえ、ほんのりと漂う英国臭が彼の音楽の魅力であり、その絶妙なバランスがうまく絡んだ結果がこの名作を生んだのである。
DON NIX 『In God We Trust』 Shelter/EMI(1971)
若き頃にスティーヴ・クロッパーらとマーキーズを結成。スタックスの門をくぐって、やがてスワンプ道へ。本作はレオン・ラッセルが主宰するシェルターからのリリースで、〈南部サウンドかくあるべし〉といった内容に。スワンプの決定版としても知られる一枚。
DR. JOHN 『The Sun, Moon & Herbs』 A&M(1971)
『Gumbo』前夜のドクター・ジョンは、英国にてミック・ジャガーやクラプトンら米ルーツ音楽に憧憬を抱いて止まないミュージシャンを多数集めて本盤を制作。ニューオーリンズ・ビートなど南部音楽の材料をズラリと並べて、自由気ままなセッションを試みている。
ETHRIDGE, BARBATA, HILL 『L.A. Getaway』 Atco/Water(1971)
フライング・ブリトゥ・ブラザーズやタートルズのメンバーらが集まったグループで、南部臭く黒っぽい音楽を作っていた。本作にはドクター・ジョンやスプーナー・オールダムなど大物らも参加。どの演奏からもじわりと熱気が漂ってくる。
TONY JOE WHITE 『The Train I'm On』 Warner Bros.(1972)
陽炎のようなハープの音色、夜の熱気を染み込ませたギターと声──彼こそがミスター・スワンプ。ビリー・スワンのプロデュースでファンキーな名作を量産し、そのカッコ良さはクラブ・シーンでも再評価された。ソングライターとしての才能も豊かな人である。
THE ROLLING STONES 『Exile On Main St.』 Rolling Stones/Virgin(1972)
彼らの南部探求の決定版にして終着点とも呼べる傑作で、ストーンズという生命体の美しい運動を見事に捉えた一枚。ブルース、ゴスペル、カントリー、それにブードゥー趣味をワイルドに混ぜて、不純物だらけの魅惑的な濁り世界を創出した。
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3. その後の流れと、現在の音楽シーンに見るスワンプ・ロックの影響力
70年代半ばになると、急速に勢力を衰退させていくスワンプ・ロック。その後、正面切って〈僕たちスワンプをやってます!〉って人にはなかなか出会わないけれど、その音楽からふとスワンプ臭を嗅いでしまうことはよくある。ということで、本講の最後にスワンプを採り入れた最近のミュージシャンを紹介しておきましょう。
スワンプ・ロックというジャンルは70年代の遺産であるけれども、その遺産を掘り出して〈いま風〉にやっちゃおうと、メンフィスに乗り込んじゃった好き者たちがいました。それがプライマル・スクリーム。94年作『Give Out But Don't Give Up』はストーンズ趣味全開の一枚ですが、プロデューサーにサザン・ソウル/ロック史を語る上で欠かせないトム・ダウドまで招き入れて、泥臭いサウンドをクリエイトしています。まったく好奇心旺盛な連中ですね。お次はモロにザ・バンド・チルドレンなジェブ・ロイ・ニコルズ。デビュー作『Lovers Knot』で聴ける泥臭くて温かいサウンドは、当時のスワンプ・ロックに似た手触りを感じますよ。また、彼はスワンプ系の渋い曲を集めたコンピ〈Country Got Soul〉シリーズの選曲も行っているので、そちらもチェックしてみてください。
日本のアーティストでいえば、ウルフルズや奥田民生。彼らのサザン志向の強い曲にスワンプ的なものを見つけることもしばしば。どちらも泥臭いものが似合う人たちで、〈沼〉がよく似合う人たちでもありますよね。 ▼関連盤を紹介。
| | プライマル・スクリームの94年作『Give Out But Don't Give Up』(Creation) |
 | | ジェブ・ロイ・ニコルズの97年作『Lovers Knot』(Capitol) |
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| | ウルフルズのベスト盤『ベストだぜ!!』(東芝EMI) |
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