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第9回 ─ 月刊太田・ダンディ食堂〈特別編-第4回〉 ゲスト:田島貴男(オリジナル・ラヴ)


掲載: 2006/12/28

bounce.comは2006年12月で5周年を迎えました! その記念企画として、年末年始の4週間、スペシャル・コンテンツを連日更新していきます。第2週は、音楽に限らずオール・ジャンルを渡り歩くトークでお馴染みとなっている〈月刊太田・ダンディ食堂〉の特別編! 12月25日より28日まで4日間連続で更新いたします。今回のゲストは、ダンディズムの代名詞=オリジナル・ラヴこと田島貴男さん。ニュー・アルバム『東京 飛行』をはじめ、2006年をあらゆる面から総括していただく……どころか、話題は現在〜過去と時空を自由に旅しております。田島さんのマシンガン・トークと応戦する太田店長のやりとりを、とくとご覧ください!!

文/羽切 学



向かって左から田島貴男(オリジナル・ラヴ)、太田店長

太田店長(以下、太田) “明日の神話”は岡本太郎さんに関連してますが、岡本さんには前から興味があったんですか(注 : ニュー・アルバム『東京 飛行』に収録のシングル“明日の神話”のイントロには、岡本氏が某CM内で披露したピアノがサンプリングされています)?
10月にリリースされた、オリジナル・ラヴのシングル“明日の神話”

田島貴男(以下、田島) 4、5年ぐらい前に美術館に行って、本を読んで衝撃を受けて、それから僕の心の師匠です。太郎さんのタッチもね、太いっていうか、踊ってるよね。太郎さんの本を読んでると、自分の中の自然な部分が元気になってくるんだよね。魂が燃え始める。俺、行ったるぞ、っていう。太郎さんってさ、本来はすごい屈折してて、考え抜いた挙げ句、結局はものすごいストレートなことを言う人になっちゃったんだと思うんだけど、ああいうふうにストレートにものを言ってくれる人ってなかなかいないよね。特に90年代ってそうだったように思うんだよ。ひねるひねるひねる。で、隠すっていうさ。でも岡本太郎さんはまっとうなこと、筋が通ったことをズバーッと言ってくれる。
太田店長

太田 それが昭和40年代っていう感じもある?

田島 あの人は、ある時代に限られた作品を作ってたのではないし、あの人の物言いは時代に左右されないと僕は思ってる。万博の時に作られた太陽の塔も、ほかにもいろんな作品がありましたけど、全部なくなってあれだけ残ってるでしょ? あれを現代の遺跡っていう人がいるけれど、僕もそう思うね。太郎さんも遺跡になるよう意識して作ったんじゃないのかな? っていう気がしますね。僕も理想はね、淘汰されない音楽を作っていたいと思って、90年代の頃からやってたわけですよ。特に90年代の最初の頃っていうのはさ、金のにおいのする物は手当り次第喰い尽くしてやるぞ、みたいなムードがすごいあって。
バブルの時代だったから。でも僕はずっと居心地悪く感じててさ、時代の流れのど真ん中にいながら、そうじゃない音楽を作るにはどうしたらいいんだろうって思って。じゃあ、せめてセクシーな曲を書こうっていう。ラヴソングとかセクシーな曲っていうのは本質的なものじゃない? 時代に左右されないものだから。みんながそれをやってるし、すごく難しいだろうけど、やっぱりそこを僕はやらなきゃ、って思った。時代的なものとして自分が括られて、葬り去られるかもしれないっていう危機感が、あの頃からあったからね。僕がラヴソングを書くことにずっと固執してるっていうのは、そういうところからなのかもしれない。そこが僕の音楽のカッコ悪いとこだね。ラヴソングってカッコ悪いから。

太田 反面的に、っていうことですね。

田島 うん。それがさ、〈その時代だから〉っていうカッコ良さだと、その時代が過ぎたあとに全然違うものになってしまったりするわけですよ。それはどんなアーティストであれ関わっている問題でさ。時代、カッコ良さっていうのは本当に軽薄で、作家本人とは違うところで動いてゆく社会の流れだからね。いつも自分で気をつけようとしてるんですけどね。

太田 ポップって言う以上は、ユーザーの顔が見えてないと、ポップにはなり得ないですよね。
セックス・ピストルズの77年作『Never Mind Bollocks/Spunk』

田島 まあユーザーの顔ももちろんあるんだろうけど、やっぱりさ、作家の魂が燃えているかだよ。それを書く気持ちがあるかどうか。あいつをくどきたい! って本気で思っているか、みたいなさ(笑)。創作とリサーチとで何が違うかって言ったら、リサーチしても仕事のとっかかりにならないでしょ。曲を書こうとしない限り何も始まらない。歌を歌おうとしない限り何もね。そしてやっぱ、曲って何もないところから出来てくるものだと僕は思うんですよ。だから、もちろんいろいろ新しい音楽を聴いたり情報を得たりするけど、結局残るのは、例えば〈ある人がある女の子に惚れた〉みたいな気持ちの部分なんだ、って今でも思ってる。
カート・コバーンが在籍したニルヴァーナのベスト盤『Nirvana』
何か書く上では、そういう気持ちの純粋な部分を持っていないと、ポップな部分にタッチできないんじゃないのかなって思う。カッコ良さって、ほんと難しいなって思いますよ。なかなかカッコ良くなんないよ(笑)。だからセックス・ピストルズっていうのは、ド偉いな。あれ、ほんとカッコ良いもんな。セックス・ピストルズがなんでカッコ良いかっていうと、あの一瞬の輝きがパッケージとして残ってるからっていうのもあるよね。自分達本人の完璧な物語を完璧なアートとしてパッケージ化してしまった。

太田 あれこそ時代ですよね。

田島 うん。でも僕はずーっと続けちゃってるからさ。カート・コバーンもそうだけど、ある時点で時間を一回止めるっていう、それも手なんだよね。だけど、僕はそうじゃなかった。曲を書き続けて、アート=人生っていう方向にどんどん突き進んじゃった。だから〈岡本太郎〉に共感を持ったのかもしれないですね。太郎さんも、当時はカッコ悪いってされてたから。あの人がテレビに出たりすることに対して、インテリの人たちは「なんだあいつ」っていう反応だったんでしょ。

太田 芸能活動っていうかね。
岡本太郎の著書「壁を破る言葉」

田島 うん。そういうふうに捉えられてた人だから。でも僕は、そこが太郎さんの素晴らしさだったんだ、って思ってる。アート=人生だから、カッコ悪かった。インテリの人達はさ、カッコ良く見えることしかしてなかったのかもしれないじゃん。でも太郎さんはダサいと思われることも怖れなかった。そこがカッコ良い。「誤解される人は魅力的だ。誤解で自分を飾りなさい。誤解の満艦師となりなさい」っていうカッコ良さをね。そういうところは、僕の血の中に入ってくるね。生き様だね。本を読んでもけっこう忘れちゃうんだけど、太郎さんの書いた言葉は覚えようとしなくても覚えてるもんね。いい本っていうのは別に覚えようと思わなくても、血の中に残るって太郎さんも言ってて、曲もそうだと思うんだよね。覚えようとしなくても、血の中に残るような曲っていうかさ。それ究極の言葉ですけど、でもそんな曲が書けないもんかなって、そう思って毎日書いてるんです。

文/bounce.com編集部

〈田島さんデータ〉もいよいよ今回がラストです! 〈2006年の5冊〉を教えてください!!(書籍編)


町田 康「真実真正日記」
ミュージシャン・俳優・作家・詩人と、マルチな才能が溢れまくりの町田康。物語=嘘を書き続けることに疲れた作家の〈僕〉が、本当のことだけを書く〈真実真正日記〉をつけはじめるという本作。脱力感と滑稽さ、特異な文体と型破りな構成。そんな彼の持ち味は、自らのパロディ? ……などをはじめとした、読者のあらゆる〈読み〉をするりと抜ける。

 

アーシュラ・K・ル=グヴィン「ゲド戦記1巻」「ゲド戦記2巻」
スタジオジブリ制作、宮崎駿の長男・宮崎吾朗が監督・脚本で映画化されたことも記憶に新しい本作は、「指輪物語」や「ナルニア国物語」と並ぶ、人気ファンタジー小説。太古の言葉が魔法の力を発揮する世界を舞台とした、魔法使い・ゲドの物語で、現在19か国で翻訳出版されている。今回、田島氏が挙げたのはシリーズ中の1巻と2巻。

 

中沢新一「対称性人類学」
宗教学者、哲学者、評論家、文化人類学者として活動する著者による、中央大学などで行われた講義=カイエ・ソバージュを記録したシリーズの「人類最古の哲学」「熊から王へ」「愛と経済のロゴス」「神の発明」に続く最終回。圧倒的な〈非対称〉に支配された世界の根源を問う……という思考の冒険が、わかりやすい語り口で綴られている。

 

ミシェル・フーコー「言葉と物」
現代のニーチェやカントとも形容されるフランスの哲学者、ミシェル・フーコー。1984年にエイズで死去。発行当初は「バゲットのように売れた」と言われる本作は、文化人類学、言語学、精神分析学などを基盤として西洋における〈知〉の変容を語り、最終的には人類の消滅へと帰着する、歴史的大著。

 

アーサー・M. アーベル「我、汝に為すべきことを教えん 作曲家が霊感を得るとき」
優れた音楽が内包している、いわゆる〈聴き手をアゲるチカラ〉はどこからくるのか。作曲のインスピレーションはどのように現れるのか。本作は、創造をテーマにアメリカの音楽ジャーナリストがまとめあげた、貴重な対話集。ブラームス、R.シュトラウス、プッチーニ、グリーグ、ブルッフなど、6人の大作曲家が登場する。

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