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第12回 ─ ROCKSTEADY


掲載: 2007/03/29

ソース:『bounce』誌 285号(2007/3/25)

さまざまな音楽ジャンルを丁寧に教えてくれる誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!

文/宮内 健

1 ロックステディの成り立ちと特徴

 今回のテーマは〈ロックステディ〉ということですが、実に謎な部分の多い音楽なんですよ。ジャマイカ音楽がスカからレゲエへと移行していく66年〜69年頃にかけて流行したあるスタイルを〈ロックステディ〉と呼んでいるワケですが、スカとの境界線は?と問われると、これが非常に曖昧なものでして……。一般的にスカの性急な裏打ちのリズムをゆったりとスロウにしたものがロックステディと思われがちですが、音楽的に解析してみると、1拍ごとに裏打ちのリズムを刻んでいたスカに対して、ロックステディはそれを1つおきにしたもの。つまり、テンポでいうとロックステディのほうが早いのです。〈66年に熱波が襲い、あまりの暑さに人々が早すぎるスカからゆったりとしたロックステディを好むようになった〉という説もありますが、テンポに焦点を絞ると、それも辻褄が合わなくなっていきます。

 ここで重要なのは、ジャマイカ音楽がアメリカ音楽の変遷と密接な関係にあるということ。ジャイヴやジャンプ・ブルースの時代から、リズム&ブルース〜ソウルに移っていくのと呼応して、ジャマイカでもビート重視の指向から歌心に満ちたメロディーが求められるようになり、そこから生まれたのがロックステディという音楽だった、と。とはいえ、単なる猿真似に終わらないのがおもしろいところで、例えばジャイヴのシャッフル・ビートから裏拍を強調したスカが生まれたように、リズム&ブルースの歌うようなベースラインが、ロックステディでは細かく刻まれるようになり、それが1つのリズム・パターンとして成立するぐらいの主張を持ちはじめる。そんなジャマイカ人ならではの解釈から生まれた個性溢れるロックステディ期のリズム・トラックは、その後も幾度となくリメイクされ、現在までしっかりと息づいているのです。

2 それでは実際に聴いてみよう! その1


ALTON ELLIS 『Mr. Soul Of Jamaica』 Tresure Isle(1968)
甘く伸びやかな歌声が魅力の、ジャマイカン・ソウルの帝王。〈ロックステディ〉という言葉は、彼のヒット曲“Rock Steady”(本作未収録)で歌われたダンスのスタイルに由来するとか。トレジャー・アイルより発表された本作には、代表曲“Willow Tree”などを収録。



LYN TAITT & THE JETS 『Hold Me Tight:Anthology 65-73』 Trojan 
アーネスト・ラングリンと並んで初期ジャマイカ音楽のサウンドを支えた、トリニダード生まれのギター・プレイヤー。本作は彼が自身のグループを率いて録音したナンバーを集めた2枚組で、“Napoleon Solo”など名曲を満載している。



JACKIE MITTOO & THE SOUL VEN-DORS 『Evening Time』 Studio One(1967)
4歳にしてスカタライツに参加。解散後はスタジオ・ワンのサウンドを一手に担った鍵盤奏者。本作は自身のバンドを従えて制作したインスト名盤。なお、60年代末に彼がカナダへ移住したことで、ロックステディは終わりを迎えたとされる。



DERRICK MORGAN 『Moon Hop:Best Of The Early Years 1960-1969』 Trojan 
スカの時代から活躍したシンガー。スキンヘッド・レゲエのアンセム“Moon Hop”が有名だが、ロックステディ期にも艶のある歌声で名唱をいくつも残している。男が普段は見せないセンチな横顔を歌わせたらピカイチ!?



KEN BOOTHE 『Mr. Rocksteady』 Studio One(1968)
ストレンジャー・コールとのデュオでヒットを飛ばした後、ソロ・シンガーとしてコクソン・ドッド主宰のスタジオ・ワンからリリースしたファースト・アルバム。〈ミスター・ロックステディ〉の名のとおり、コブシの効いた歌声に悲哀漂う独特の味わいが。



PHYLLIS DILLON 『One Life To Live』 Tresure Isle(1969)
ロックステディ期の女性シンガーといえばこの人。ややハスキーで哀愁を帯びた歌声が魅力の彼女は、デューク・リードのもとで“Perfidia”“Don't Stay Away”など多くのヒットを生んだ。ビートルズやカーペンターズの直球カヴァーもイナタくてグー。


2 それでは実際に聴いてみよう! その2


THE HEPTONES 『On Top』 Studio One(1968)
リード・ヴォーカルのリロイ・シブルスのソウルフルな歌声と美しく卓越したハーモニーで、数あるコーラス・グループの中でも多くのヒットを飛ばした代表格といえる彼らの2作目。なお、シブルスはスタジオ・ワンのサウンドを支えるベーシストとしても活躍した。



THE PARAGONS 『Riding High On The Beach』 Tresure Isle/Bastard Roots 
ヘプトーンズと並ぶ実力と人気を誇ったコーラス・グループ。本作は彼らの代表的なヒット曲“The Tide Is High”をはじめ、ロックステディ期の名演を集めたベスト・アルバム。解散後、ジョン・ホルトはソロとして大活躍。



BOB MARLEY AND THE WAILERS 『One Love』 Heartbeat 
コーラス・グループとしての彼らの実力が遺憾なく発揮されたスカ〜ロックステディ期の楽曲を40曲集めた2枚組で、未発表曲/別テイク曲も多数収録。後にメッセージ性を強めていくボブだが、この時代の歌声にもすでに人々を惹き付ける力強さと色気があった。



BOB ANDY 『Songbook』 Trojan(1972)
パラゴンズのオリジナル・メンバーで、67年に脱退し、その後はソロとして活躍。本作は66年〜68年に録音された楽曲を集めた初ソロ作で、“Too Experience”“My Time”“Unchained”など後のダンスホール期に入ってもたびたびカヴァーされ続けている名曲を多数収録している。必聴。



CARLTON & THE SHOES 『Love Me Forever』 Studio One(1978)
3兄弟によるヴォーカル・グループ。長兄カールトンの高い作曲センスが生んだ名曲“Love Me Forever”を筆頭とするスウィートな歌のバックには、タイトでグルーヴィーなバンド・サウンドが! 甘くてホロ苦いロックステディの魅力が詰まった大名盤!!



VARIOUS ARTISTS 『Get Ready Rock Rocksteady』 Studio One 
ロックステディ期に生まれたヒット曲を中心に54曲収録した67年リリースのコンピ。ロックステディがただスウィートなだけじゃなく、タフでラフな魅力もあってこそ胸に響く音楽だとわかる。すなわちジャマイカン・ソウル・ミュージック!


3 その後の流れと、現在のシーンに見るロックステディの影響力

 60年代末からはじまるレゲエ隆盛の波に呑まれて、ロックステディそのものの流行は短命に終わりました。しかし、この時期に生まれた〈Hevenless〉〈Real Rock〉に代表されるリズム・トラックはいまも〈ファウンデーション〉と呼ばれ、打ち込みのトラックに使われるなどジャマイカ音楽の過去と未来を繋ぐ財産として存在しています。 

 一方で、ロックステディはポップ・ミュージックとして愛されてきたことも付け加えておきましょう。例えば、80年代に入ってデボラ・ハリー率いるブロンディがパラゴンズ“The Tide Is High(夢見るNo.1)”をカヴァーし、見事チャート1位をマーク。世界的な大ヒットとなりました。その後も同曲はアトミック・キトゥンやマーレーズなど世界中のミュージシャンに取り上げられていますよね。

  そして、ここ日本でも幅広い層の人に愛される音楽ジャンルとして定着しつつあり、上のリイシュー盤なども好調なセールスを記録しています。さらにそれだけに留まらず、川上つよしと彼のムードメイカーズやReggae Disco Rockersなど日本ならではのロックステディを奏でるアーティストも人気を集めているので、未聴の受講者はこれを機にぜひチェックしてみてください。
▼関連盤を紹介。
〈Real Rock〉のリメイク・リディムを使用したワンウェイ・コンピ『Real Rock』(Stone Love)
ブロンディの80年作『Autoamerican』(Chrysalis)
川上つよしと彼のムードメイカーズのベスト盤『Singers Limited Golden Mood Hits!』(cutting edge)
Reggae Disco Rockersの2005年作『Morning Glory』(flower)


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