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第116回 ─ トリビュート盤登場! 細野晴臣、やはりアナタはすごかった!


掲載: 2007/05/02

ソース:『bounce』誌 286号(2007/4/25)

文/久保田 泰平




 細野晴臣。60年代後半にアーティストとしてのキャリアをス タートさせて以降、はっぴいえんど、ティン・パン・アレー、イエロー・マジック・オーケストラ、そしてソロでの作品などをとおして、これまで彼が実らせてきた果実――サウンド、メロディー、テクニック、スピリット諸々――は、今日に至るまで数多くのアーティストたちの滋養となり、あらゆる色合いを身につけた花となって、音楽シーンに彩りを添えてきた。それらは、オーヴァーグラウンドにもアンダーグラウンドにも、メジャーにもマイナーにも、ポップスにもロックにも、男にも女にも、ニッポン人にもガイジンにも……とにかく例を挙げればきりがないほど、広範囲に棲息している。このたびリリースされた『細野晴臣トリビュート・アルバム』には、ジョン・セバスチャンやジョン・サイモンらから成るウッドストック・ヴェッツのようなスペシャルな顔合わせをはじめ、国内外から総勢20組の個性的なアーティストが参加。細野晴臣が実らせてきた果実がいかに豊潤な味覚だったかを象徴するものと相成った。では、彼の音楽履歴をざっくりと振り返りながら、トリビュート参加アーティストをご紹介しよう。
CD2枚組という、トリビュート・アルバムとしては異例のヴォリュームとなった『細野晴臣トリビュート・アルバム』(commmons)


細野晴臣の偉大なる音楽履歴を再探訪!

細野のメジャー・デビューは、ブルース・ロック・グループのエイプリル・フール。メンバーは細野のほかに、小坂忠、柳田ヒロ、菊池英二、松本隆。
エイプリル・フールの69年作『THE APRYL FOOL』(コロムビア)



〈日本語ロック〉の礎を築いたはっぴいえんど
 大瀧詠一、鈴木茂、松本隆と共に、はっぴいえんどを結成。ウェストコーストの名バンド、バッファロー・スプリングフィールドからの影響が濃いとされる骨太で埃っぽいサウンドと、文学的センスを湛えた日本語詞で、わずかな活動期間のあいだに滋味深い名曲を次々と生み出した。その革新性は日本のロックの礎を築いたとされる。バンド解散直後には初のソロ・アルバム『HOSONO HOUSE』を発表。アメリカ南部の田舎臭さとハリウッド・ノスタルジー的世界観が入り交じったこの作品は、リズミカルな言葉とメロディーがチャーミング。はっぴいえんどに比べ、演奏のグルーヴ感もより力強いものとなった。

トリビュート・アルバムでは、はっぴいえんど『はっぴいえんど』収録の“風をあつめて”をたまきあや+谷口崇+ヤマサキテツヤがインストゥルメンタルでカヴァー。『風待ろまん』収録の“風来坊”をジム・オルーク+カヒミ・カリィがカヴァー。『HOSONO HOUSE』収録の“終わりの季節”を高野寛+原田郁子が、“恋は桃色”をヤノカミ(矢野顕子+レイ・ハラカミ)がカヴァー。
はっぴいえんどの71年作『風待ろまん』(URC/avex io)
細野晴臣の73年作『HOSONO HOUSE』(ベルウッド/キング)



日本のポップス・シーン、陰の立役者
 細野、鈴木茂、松任谷正隆、林立夫の4人から成る『HOSONO HOUSE』のレコーディング・メンバー=キャラメル・ママは、その後もセッション・バンドとして吉田美奈子、荒井由実、南佳孝、アグネス・チャン、変わり種としてはフィリーのヴォーカル・グループであるスリー・ディグリーズ……など、多くのシンガーを好サポート。細野個人がプロデューサーとして活躍しはじめたのもこの時期だ。キャラメル・ママはやがて、凄腕ミュージシャンの集合体=ティン・パン・アレーへと発展。オリジナル・アルバムも発表する。

トリビュート・アルバムでは、スリー・ディグリーズ“Midnight Train”を畠山美由紀+林夕紀子+Bophanaが、ティン・パン・アレー『キャラメル・ママ』収録の“イエロー・マジック・カーニバル”をヴァン・ダイク・パークスがカヴァー。
細野が作曲した“Midnight Train”が収録されたスリー・ディグリーズのシングル集『The Best In The First Degree』(ソニー)
ティン・パン・アレーの75年作『キャラメル・ママ』(クラウン)



世界中のリズムをゴッタ煮にして作り上げた純国産サウンド
 キーワードは〈チャンキー(ゴッタ煮)〉。マーティン・デニーにインスパイアを受け(彼の“Firecracker”は、のちにYMOでカヴァー)、世界中のリズムを採り入れながら、西洋から眺めた東洋を音像化してみせた。『トロピカル・ダンディー』『泰安洋行』『はらいそ』といった作品群は〈トロピカル三部作〉と呼ばれ、その先験的サウンドは、当時よりもむしろ現代のアーティストたちに大きな影響力を与えている。

トリビュート・アルバムでは、『トロピカル・ダンディー』収録の“北京ダック”を口ロロが、“ハニー・ムーン”をテイ・トウワ+NATURAL CALAMITYが、“三時の子守歌”をWORLD STAN-DARD+小池光子がカヴァー。『泰安洋行』収録の“蝶々・San”をウッドストック・ヴェッツが、“ブラック・ピーナッツ”をヴァガボンド+片寄明人がカヴァー。
細野晴臣の75年作『トロピカル・ダンディー』(クラウン)
76年作『泰安洋行』(クラウン)
78年作『はらいそ』(クラウン)



テクノ・カットもお似合いです
 坂本龍一、高橋幸宏と共にイエロー・マジック・オーケストラを結成。コンピュータ・ミュージックとディスコを融合させたナウなサウンドと斬新なイメージ戦略によって、世界的な成功を収める。YMOのサウンドはまもなく〈テクノ・ポップ〉と呼ばれるようになり、同時期に起こっていた海外のニューウェイヴ・シーン、さらにはハウス、テクノといった、のちのダンス・ミュージックにも影響を与えていく。

トリビュート・アルバムでは、『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』収録の“アブソリュート・エゴ・ダンス”を東京スカパラダイスオーケストラがカヴァー。
イエロー・マジック・オーケストラの79年作『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』(ソニー)



お茶の間にHOSONOサウンド
 YMOでの成功がきっかけにもなり、作家としての依頼が急増した80年代初頭の細野。YMO“ライディーン”のイントロをそのまま流用したイモ欽トリオ“ハイスクールララバイ”、山下久美子“赤道小町ドキッ”、中森明菜“禁区”、松田聖子“天国のキッス”などのヒット曲をお茶の間に提供。メロディーメイカーとしての才を改めて世に知らしめながら、80年代のポップス・シーンを彩った。

トリビュート・アルバムでは、イモ欽トリオ“ハイスクールララバイ”をLITTLE CREATURESが、松田聖子『Touch Me, Seiko』収録の“わがままな片想い”をコシミハルがカヴァー。
イモ欽トリオの81年作『ポテトボーイズNo.1』(フォーライフ)
松田聖子のシングルB面集『Touch Me, Seiko』(ソニー)



YMOを離れて……
 音楽的欲求は果てなく、82年にはソロ・アルバム『PHILHARMONY』を発表。YMOを散開させた83年には自身のレーベル、ノン・スタンダードを立ち上げ、より先鋭的な作品を発表していく。

トリビュート・アルバムでは、『PHILHARMONY』収録の“スポーツマン”を高橋幸宏がカヴァー。
細野晴臣の82年作『PHILHARMONY』(ソニー)




銀幕のなかのHOSONOサウンド
 映画界にも広がっていった細野サウンド。宮崎駿監督の84年作「風の谷のナウシカ」のようにイメージ・ソング(歌・安田成美)のみを手掛けたものから、沖縄を舞台にした85年の「パラダイスビュー」、同年の長編アニメ「銀河鉄道の夜」、87年の「源氏物語」など全編を手掛けたものまで。これまでのキャリアをベースに、聴き手の想像力を掻き立てる独特の音世界をスクリーンのなかでも響かせた。

トリビュート・アルバムでは、“風の谷のナウシカ”を坂本龍一+嶺川貴子が、“銀河鉄道の夜”をといぼっくすがカヴァー。
サントラ『風の谷のナウシカ』(徳間ジャパン)
『銀河鉄道の夜』(ソニー)



日本人のうたごころ
 80年代中盤〜後半には、アンビエントやワールド・ミュージックなどにも着手した細野が、91年に忌野清志郎、坂本冬美との異色ユニット、HISを結成。日本人の〈うたごころ〉にフォーカスしてみせた。

トリビュート・アルバムでは、HIS“日本の人”をサケロックオールスターズ+寺尾紗穂がカヴァー。
HISの91年作『日本の人』(東芝EMI)



 90年代に入ってもコンスタントに刺激的な作品を送り続けた細野。ビ ル・ラズウェルとのコラボ、コシミハルとのユニット=swing slow、アトム・ハートらとのHAT……その多くがCD入手困難って!? 乞う復刻!
細野晴臣の95年作『NAGA』(FOA)



 手塚治虫生誕70周年を記念したトリビュート・アルバムにひょっこり参加。ストーリーとは関係なく手塚マンガにたびたび登場する〈ひょうたんつぎ〉を取り上げるとは、いかにも細野らしい。

トリビュート・アルバムでは、『ATOM KIDS Tribute to the king“O.T.”』収録の“omukae De Gonsu”をmiroqueがカヴァー。
98年にリリースされた『ATOM KIDS Tribute to the king“O.T.”』(ワーナー)。現在廃盤(涙)



同志ふたたび
 2002年には高橋幸宏とのユニット、SKETCH SHOWを結成。エレクトロニカへの接近を図った芸術的サウンドは、国内外で高い評価を得た。坂本龍一を加えてHuman Audio Sponge名義でのパフォーマンスも披露。

トリビュート・アルバムでは、『audio sponge』収録の“Turn Turn”をコーネリアス+坂本龍一がカヴァー。
SKETCH SHOWの2002年作『audio sponge』(daisyworld)



 下は、近年のソロ・ライヴの模様を収めたDVD『東京シャイネス』(スピードスター)。細野晴臣、いまだヤバし! そして……。



12年ぶりとなるソロ・アルバムも今年中に登場か……!?
2007年もモア・ベターよ!

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