ホームテキスト
第117回 ─ CAEDEの新作から透けて見える音楽遍歴とは?


掲載: 2007/05/10

ソース:『bounce』誌 286号(2007/4/25)

文/土屋 恵介




 数多のファッション誌で活躍するモデルの花楓。そんな彼女が、もうひとつの顔であるアーティスト=CAEDEとして、ファースト・アルバム『The Queen Of...』を発表した。プロデュースを手掛けたのは、CUBISMO GRAFICOこと松田“チャーベ”岳二。さらに作曲陣には、TGMX(FRONTIER BACKYARD)、そしてKIRI(Revolver)らが参加している。〈人気モデルの出すCD〉と聞くと、単なる企画モノで〈アレ?〉と思ってしまうものが少なくないのも事実。しかし本作は、そうしたステレオタイプなものからまったくかけ離れたアルバムだ。歌詞は彼女のライフスタイルのなかから生まれたものだし、参加メンツも彼女の普段の交流から繋がった仲間たち。本作はまさに〈CAEDEと彼女のクルー〉によって作られたアルバムなのです。

 「まず、チャーベと出会って、彼の持ってるサウンドの色やセンスを知って、それから〈いっしょにやろう〉って始まったんです。それがもう2年くらい前かな。〈チャーベの作る音に私の声が乗ったらどうなるんだろう〉って歌詞を書いて、トラックを何度も聴いて、何時間も歌を練習しましたね。1曲3分間のなかで、自分の声でどれくらい演技ができるか冒険しました」。
CAEDEのファースト・アルバム『The Queen Of...』(KIT/ESCALATOR)

 ブリブリなエレクトロではダウナーに呟くように歌い、倍速のエレクトロ・パンク(?)に展開すれば高音のシャウトをかます冒頭の“Blackkkitty”や、心地良い浮遊感に溢れたネオアコ風味の“Marigold”、涼しげなダウンテンポのオケに乗って、儚げなメロディーを丁寧に歌う“Wanna Bee?”など、ヴァラエティーに富んだトラックの上で、ワイルド、キュート、クールと多様な表情の歌を聴かせるCAEDE。本作は、単に〈モデルの副業〉といった先入観を排して、素直に彼女の音世界を楽しんでほしい一枚だ。

 「モデルは〈コンマ0.1秒の中で身体全部を使って服をどう見せるか〉ってもの。音楽は自分の声をずっと発して表現するもので、全然別の世界なんです。でも、いまの私にはどっちも欠かせないですね。アルバムは、チャーベたちとお互いの持ってるものを出し合って、いかに新しいものが出来るかを追求してた気がします。凄く楽しかったし、遊びの延長だけど本気って感じですね(笑)。エンジョイしてトライして、それがハッピーとピースに繋がったのかなと思ってます(笑)」。
▼文中に登場したアーティストの作品を一部紹介。
松田“チャーベ”岳二が率いるCUBISMO GRAFICO FIVEの2006年作『POP POLLUTION』(Niw!)
FRONTIER BACKYARDの2006年作『BASIS』(Niw!)


文/土屋 恵介

世界に跨るお気に入りのアーティストたちを、女王様がみずからご案内!!


LILY ALLEN
彗星の如く登場してUKチャートを席巻した才女。音楽に対する気負いのない姿勢や、そんな彼女に百面相のサウンドを提供したプロデューサーの手腕が発揮された2006年作『Alright, Still』(Regal)からは、CAEDEの姿が透けて見えてきそう。
「とにかくパーフェクト! 音の玉手箱みたい。彼女のいちばん好きなところは声かな。もう、どんな音でも歌ってほしい。それにキャラはカワイイのに、歌い方は大人って感じがするんですよね。毎日聴いてても、〈イイなぁ〉って黄昏ちゃいます」



CSS
今年初頭の来日でも話題を集めたブラジル出身のバンド。ガレージ・ロックとエレクトロをミックスした独自のサウンドが炸裂したデビュー・アルバム『Cansel De Ser Sexy』(Sub Pop)の音世界は、まさに『The Queen Of...』に通ずるところアリ。
「最初はプロモ・クリップで知ったんです。彼女たちの音って、日本の音楽から色が遠くないんですよ。どこか懐かしくて、ダサカッコ良いみたいな(笑)。でも、私もそこを求めてたりもするんですよ。歌も音も相当好きです。センスがメチャかわいい」



!!!
ディスコ・パンクを通過したダンサブルなサウンドにレッチリも一目置いた彼らの最新作『Myth Takes』(Warp)は、CAEDEにとってもお気に入りの一枚のようで……。
「最近KIRIくんとDJを始めたんですけど、!!!はかけます。私もちょっとダークなのが好きなんですよ。彼らにはいろんなサウンドがあって、お気に入りの曲が常にチェンジしちゃうんです。次々に新しい世界を作れるのって凄いですよね」



INTERNATIONAL PONY
コンパクトからのリリースでも知られるドイツのDJコッツェを擁するユニット。2006年作『Mit Dir Sind Wir Vier』(Columbia)で聴かせる、クリック・ハウスからエレクトロ・クラッシュ、そしてクールなエレクトロニカまでもが渾然一体となった音世界がCAEDEの音楽性に与えた影響は大きい!?
「センスのレヴェルが凄く高い。これ、毎日のように聴いてるかも。朝でも夜でも、雰囲気を選ばずかけてられるんですよ。〈10年後も聴いてるだろうな〉って思えるのも凄いな。墓場まで持って行きたいアルバムです(笑)」



ANNIE
ノルウェー出身のエレクトロ・ポップ・シンガー。ウィスパー・ヴォイス満載の2004年作『Anniemal』(679)は、彼女のキュートな魅力が全開の一枚。
「とにかくかわいい(笑)! チャーベと出会って初めてもらったCDなんです。最初、日曜の朝に爆音で聴いたらあまりに良くて、家でずっと聴いちゃったんです(笑)。アニーは、ずっとそのままでいてほしいって声の存在です。声と音の世界がバッチリ合ってるし、そこから宇宙や自然を感じるのは、彼女の力なのかなって」



M.I.A.
ピーチズからの影響や、アート界での活躍などがCAEDEともシンクロ!? 2005年作『Arular』(XL)を経た次作も待ち通しい!
「すべてにおいてのチョイスが、デザイナーって感じ。もともとフォトグラファーだし、歌も写真も自分の世界が崩れてない。本人の強さを感じますね。内戦中のスリランカからイギリスに亡命した彼女のバックボーンとかも関係あるんだろうな。ファッションも大好きだし、いつまでもクレイジーでいてほしい。誰がマネしても超えられない!」

この記事をflogに追加
この記事をはてなブックマークに追加

テキストへ戻る


この記事にはトラックバックが可能です
この記事のトラックバックURL:
http://www.bounce.com/tb.php/75740

複数キーワードによる検索も使えます!