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第123回 ─ NYダウンタウン・シーンで生まれる、新たなコスモポリタン・ミュージック


掲載: 2007/06/14

ソース:『bounce』誌 287号(2007/5/25)

文/ダイサク・ジョビン



 ベベウ・ジルベルトやオットーといったブラジル新世代アーティストがフィーチャーされたワックス・ポエティックの新作『Brasil』がおもしろい。ベベウの最新作『Moment』にも共通する独特の浮遊感がある、ダウンテンポ〜チルアウト、エレクトロニカにブラジリアン、ジャズなどさまざまな音楽的要素が融合した、先鋭的でクロスオーヴァーなサウンドが実にNYらしいのだ。また、今作は彼らが最初に契約したアトランティック(祝60周年!)の創立者である故アーメット・アーティガン(トルコ出身)に捧げられているところも興味深いが、リリースしたのはヌーブルという新進レーベルで、NYダウンタウンにある同名のクラブと共に最近、その動きが世界的な注目を集めはじめている。

 その首謀者はトルコとスウェーデンのハーフであるサックス・プレイヤー、イルハン・エルサヒン。スウェーデンで育った彼は、90年代にNYへ移住するとダウンタウンのアンダーグラウンド・ジャズ・シーンで活動を始め、やがてテキサスからNYへ遊びに来ていた大学生のノラ・ジョーンズも名を連ねた、ワックス・ポエティックという不定形バンドを結成する(ちなみにノラの最新作『Not Too Late』に収録された“Thinking About You”は彼とノラの共作)。その後、上記のヌーブルをオープンするとノラをはじめ、ブランニュー・ヘヴィーズのエンディア・ダヴェンポート、レゲエDJのU・ロイ、詩人/ラッパーのソウル・ウィリアムス、ベベウ・ジルベルト、彼女のバックも務めるラウンジ・リザーズのパーカッショニストであるマウロ・レフォスコ、イタリアやアルゼンチン出身のメンバーを擁するブラジリアン・ガールズ、パンク・ファンク・バンドのクードゥー、トルコの先鋭レーベルであるダブルムーン周辺のアーティスト(イルハンは同レーベルからも作品をリリースしている)など、国籍も音楽性も違うミュージシャンたちが夜な夜な集ってセッションを重ねているのだ(最近ではマーク・ド・クライヴローやベンベ・セグエなどクロスオーヴァー・シーンのアーティストもライヴやセッションを行っている)。ということで、70年代ロフト・ジャズ的なこの小さなスペースから、NYらしいクロス・カルチュラルな新しい音楽が生まれてきているのである。
ワックス・ポエティックのニュー・アルバム『Brasil』(Nublu)
ノラ・ジョーンズの2007年作『Not Too Late』(Blue Note)
ベベウ・ジルベルトの2007年作『Moment』(Ziriguiboom/Crammed)
オットーの2003年作『Sem Gravidade』(Trama)


文/ダイサク・ジョビン

ヌーブル発のコスモポリタンな新しい音楽たち


WAX POETIC 『Nublu Sessions』 Ultra(2003)
ダブ処理されたオリエンタルな旋律が絡むアシッド・ジャズやトリップ・ホップといった作品でノラ・ジョーンズ、エンディア・ダヴェンポート、ソウル・ウィリアムズなどをフィーチャー。大都会の真夜中の幻惑的で濃密な空気感をパッケージした、浮遊感のあるサウンドが激クール。



OUR THEORY 『Ersahin Truffaz Madsen Rueckert Penman』 Nublu(2006)
フランスの先鋭的なトランペッター、エリック・トラファズとイルハンらによるユニットによる作品。漆黒の真夜中を疾走するかのごときブレイクビーツの上で、2本のホーンが浮遊しながらアグレッシヴに泳ぎ、舞うサマがイジョーにかっこいい。



LOVE TRIO IN DUB FEATURING U-ROY 『Love Trio In Dub Featuring U-Roy』 Nublu(2006)
少年時代のアイドルだったジャマイカン・レジェンドと邂逅したイルハンが、自身のジャズ・トリオと共に作り上げた一枚。ダブ、ラヴァーズにエレクトロニカ、ジャズ、トルコ音楽(!)が融合した斬新なサウンドが最高!!



KUDU 『Death Of The Party』 Nublu(2006)
スーサイドやESGなどによるノーウェイヴの殺伐さと80'sの人工的なキラキラ感に、エレクトロやハウスの要素を混ぜ込んだサウンドでNYを騒がしている男女2人組のバンドによるデビュー作。チープでぶっ壊れた音作りとポップなメロディーの組み合わせがやたらフレッシュ!!



BRAZILIAN GIRLS 『Talk To La Bomb』 Verve Forecast(2006)
ヌーブルでのセッションから生まれた紅一点ヴォーカルを擁するバンドの2枚目。ニューウェイヴ、ジャズ、エレクトロ、フレンチ・ポップ、タンゴなどをラウンジ感覚でスタイリッシュにまとめたクールなサウンドと、メランコリックで官能的なヴォーカルが激オシャレ!!



FORRO IN THE DARK 『Bonfires Of Sao Joao』 Nublu(2007)
ブラジル出身のマウロ・レフォスコが結成したバンドのデビュー作。ベベウ、デヴィッド・バーン、Miho Hatoriといった仲間たちをゲストに迎え、フォホーやカリプソといった古いダンス音楽をストレンジなアレンジで陽気&呑気に奏でているのが楽しすぎ!!

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