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Lesson3 EMO-GRE

掲載: 2007/07/05
更新: 2008/05/20
ソース: 『bounce』誌 288号(2007/6/25)

文/編集部



〈エモの分際でグレてどうする!?〉と思ったら、実は〈エモ+プログレッシヴ・ロック〉だった。はぁ……。そんじゃ、〈プロエモ〉じゃダメ!?
気を取り直して、もともとコヒード・アンド・カンブリアやブラッド・ブラザーズ、マーズ・ヴォルタみたいに、〈カオティック・エモ〉だとか、〈激情エモ〉〈変態系エモ〉なんて呼ばれ方をしていたもの。彼らを筆頭に、エモの要素を含みつつもそれだけには囚われない分類不能なサウンドを、改めて強引に一括りにしちゃったのが〈エモグレ〉である。変拍子やストップ&ゴーを多用したリズム、絶叫&咆哮からすすり泣くようなウィスパーまで自由自在に声を操るヴォーカル、いわゆるコードやリフだけでなくフリーキーに音色を奏でるギター、果てはキーボードやピアノ、弦楽器を導入したりと、その懐の深さは無限大! コンセプトに基づいたアルバムを制作し、あるバンドはオーケストレーションを率いてオペラとも呼べるライヴを行うなど、まさに現代のプログレとも言えるのだ。
(塀戸門家)

 

DAMIERA 『M(US)IC』 Equal Vision(2007)
自主EPを発表後、イコール・ヴィジョンからリリースとなった待望のファースト・アルバム。〈CDが飛んでるのか?〉と勘繰りたくなるるほど変則的なリズム・チェンジを多用しつつも、アップテンポに乗せて明るくキャッチーな歌メロを聴かせる手腕は随一。今後の活動に期待されていたが、残念ながら解散した。
(塀戸)



CHIODOS 『All's We That Ends Well』 Equal Vision(2006)
同じくイコール・ヴィジョンからのリリース。プログレッシヴかつキャッチーなサウンドを聴かせるミシガンの変態6人組、チオドス。日本語で〈アラスカにペンギンなし〉など曲名も変態だが、ルックスはイケメンというギャップが◎。
(塀戸)



PROTEST THE HERO 『Kezia』 Vagrant(2007)
〈PUNKSPRING〉で初来日を果たした彼らは、スライスやルフィオあたりのエモ・メタルをさらに複雑にした楽曲と、様式美メタルおじさんにもウケるであろうメロスピっぷりがウリ。ヒューマン・アブストラクトと並んで次世代の理系メタルの将来を担う逸材だ。
(塀戸)



KADDISFLY 『Set Sail The Prairie』 Sub City/Hopeless(2007)
ポートランド出身の5人組による3作目。叙情的なピアノ、スペイシーなギター、ファルセットも交えた表現力豊かなヴォーカルで聴く者を自分たちの世界にグイグイと引き込む。ドラマティックな曲展開はコヒード・アンド・カンブリア以上? これからの〈エモグレ〉をリードする注目バンドだ。
(粟野)


文/粟野 竜二

BOYS NIGHT OUT
俺らはただ、楽しくてクールなサウンドを演奏するだけさ!



カナダ出身のボーイズ・ナイト・アウトは不思議なバンドだ。2003年のファースト・アルバム『Make Youself Sick』ではメロディック・パンクとニュー・スクール・ハードコア、そしてスクリーモを絶妙にミックスし、キャッチーなシンガロングの後に突如スクリームを挿入するなど、意表を突く曲展開で一躍注目を集めた。続く2005年のセカンド・アルバム『Trainwreck』は、前作から一変してダークな雰囲気を打ち出し、複雑な構成でプログレッシヴ・ロックの要素を強く感じさせる作品だった。そしてこのたびリリースされるサード・アルバム『Boys Night Out』は、成熟したメロディーがオトナの雰囲気を感じさせ、過去2作のどちらとも違う色合いになっている。メンバー・チェンジが多いバンドなのでその影響もあるかもしれないが、それにしたってこの振り幅の大きさには驚かされる。

  「前とは違うことをやろうとか、〈こんなタイプの曲を作ろう〉って特に意識しているわけではないんだ。まず集まって曲を書きはじめて、良さそうなものが出てくればそのまま進める。演奏していて楽しい、かつクールな曲だったらやるだけさ」(ジェフ・デイヴィス、ギター:以下同)。

 今作に収録されている楽曲は、リフやリズムの組み立て方が一風変わっていて、曲の構成もいわゆる〈Aメロ→Bメロ→サビ〉というフォーマットに則っていないものが多い。しかし難解な印象は受けず、メロディーには一本筋がとおっていて、確実に聴き手の感情に訴えるものに仕上がっている。メンバーの音楽の好みは「カントリーやヒップホップを好んで聴いてるヤツもいれば、コンヴァージやペドロ・ザ・ライオン好きもいる」といった具合にバラバラで、そういったところもこの一筋縄ではいかないサウンドを生み出す要因なのかもしれない。〈エモグレ〉の代表選手であり、いっしょにツアーをしたこともあるコヒード・アンド・カンブリアについて質問したところ、次のような答えが返ってきた。

  「俺たちはどちらもプログレからの影響を受けているけど、彼らのほうがその傾向が強いかもしれないね」。

 緻密に物語を作り上げていくコヒードと違い、ボーイズ・ナイト・アウトに対して〈プログレッシヴ〉と言う場合、それはジャンルとしてのプログレではなく、文字どおりの進化/成長を指す意味合いになる。計算ずくの変化ではなく、自分たちから湧き出てくる自然な進化なのだ。

  「俺たちにとっては演奏していて楽しいか、それから自分たちがその音楽と繋がることができるかどうかが大事なんだ。ホントにそれだけなんだよ」。

 ボーイズ・ナイト・アウトのサウンドには、〈エモグレ〉よりも〈天然進化系エモ〉という呼び名を与えたい。
6月27日にリリースされるボーイズ・ナイト・アウトのニュー・アルバム『Boys Night Out』(Ferret/HOWLING BULL)


▼ボーイズ・ナイト・アウトのアルバムを紹介。
2003年作『Make Youself Sick』(Ferret)
2005年作『Trainwreck』(Ferret)

文/塀戸門家

FALL OF TROY


独自のセンスと先見の明で、コヒード・アンド・カンブリアやアーマー・フォー・スリープ、サーカ・サヴァイヴなどを輩出し、時代の一歩先を行くインディー・レーベルとなったイコール・ヴィジョンからフォール・オブ・トロイの新作『Manipulator』が到着した。グランジの聖地=シアトルで育ち、オルタナやハードコア、メタル、エモなどを自由に吸収してきた21歳の3人組が奏でるそのサウンドは、常にアット・ザ・ドライヴ・インやディリンジャー・エスケイプ・プランなどと比較されてきた。2006年作『Doppelganger』で聴かせてくれた、色気溢れる歌と鳥獣系の絶叫とのコントラストはそのままに、本作ではソウルフルな歌い回しや、カントリー/ブルース調の楽曲なども積極的に採り入れて、そのすべてを嫌味なく自分たちの持ち味に消化することに成功! 知性と感情が複雑に入り乱れたそのカオティック・サウンドは、まるで万華鏡のような煌めきを放ちながら、ますますボーダレスに加速していく。デフトーンズの前座を務め、全米をツアー中ということからも、彼らがどれだけ大きな期待を寄せられている存在かがわかるハズだ。
フォール・オブ・トロイのニュー・アルバム『Manipulator』(Equal Vision)
フォール・オブ・トロイの2006年作『Doppelganger』(Equal Vision)

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