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第130回 ─ 勝手にしやがれ


掲載: 2007/08/16

ソース:『bounce』誌 289号(2007/7/25)

勝手(流)にカヴァーした、勝手にしやがれのアルバムが登場だぜ!!

文/ダイサク・ジョビン




 結成10周年を記念して制作された、勝手にしやがれのカヴァー・アルバム『LET'S GET LOST』。このタイトルは、彼らが昨年スタートさせた〈対バン〉イヴェントと同じものでもある。

  「俺たちの大好きなバンドといっしょにイヴェントをやって、観て、〈じゃあ俺たちはどうなんだろう?〉っていうのを確認してるというか。確認しないと、〈じゃあどっかへ行こうぜ〉って言ってもどこにも行けないから」――武藤昭平(ドラムス/ヴォーカル、以下同)はこのタイトルを付けた理由についてそう語る。

 ジャズ・スタンダードでの中島美嘉とのコラボというトピックもある今作だが、そこは独自の美学を貫くこだわりの強い彼らのこと。非常にユニークな選曲にしろ、どの曲からもオリジナルに勝るとも劣らない濃厚で強烈な勝手にしやがれのカラーというか匂いが滲み出ている。また国や時代、ジャンルもバラバラだが、時の流れに風化されない強いメロディーを持った曲ばかりが並んでいるところも、彼らのセンスが窺えて興味深い。

  「〈いい曲はいい曲〉っていうだけで、あとはアレンジ力。それによって勝手にしやがれの音楽になっていれば、そして結局その曲を活かしたものになっていればいいわけだから」。

  「あらゆる楽曲を剥き出しにして、プレイヤー、プロデューサー、アレンジャーとしてただ挑戦してるだけ、って上手くできたかな」と言うように、巷に溢れる〈カヴァー企画〉とはひと味違う仕上がりにしてみせるこの個性派バンドは、やっぱりいちいちカッコいいぜ!!
勝手にしやがれのカヴァー・アルバム『LET'S GET LOST』(エピック)

文/武藤 昭平

武藤昭平による、『LET'S GET LOST』全曲解説 その1

1. IS YOU IS, OR IS YOU AIN'T MY BABY?
「〈トムとジェリー〉のなかでトムがウッドベースの弾き語りでこの曲をゴキゲンなヴァージョンで演ってて。もちろんルイ・ジョーダンのしっとりしたヴァージョンもカッコいいけど、こっちもカッコいいじゃん!って」。
DVD「トムとジェリー Vol.5」(ワーナーホームビデオ)
ルイ・ジョーダンの編集盤『Jumpin' & Jivin' At Jubilee』(Collectors' Choise)




 2. 愚か者
「ショーケンが好きだし、いい曲だし。メロディーはいじらずにコードワークでピアソラを意識してっていう、いいアレンジが閃いた。歌詞に〈愚か者〉〈酒場〉って言葉が出てきて、ピアソラのタンゴも〈酔いどれたち〉〈売春婦〉とかいうタイトルで、〈場末の音楽〉ってところでリンクしてる」。
萩原健一の編集盤『愚か者よ』(イーストウエスト)
アストル・ピアソラの86年作『Tango : Zero Hour』(American Clave)。




 3. 黒い瞳
「ジーン・クルーパも演ってるロシア民謡だけど、カヴァーしたのはフランキー堺とシティスリッカーズのヴァージョン。コミカルな音が入ってるんだけど、それを退けたら相当かっこよくない?って」。
ジーン・クルーパのDVD「Swing, Swing, Swing!」(Hudson)
フランキー堺とシティスリッカーズの編集盤『スパイク・ジョーンズ・スタイル』(コロムビア)。




 4. スローなブギにしてくれ(I WANT YOU)
「(81年)当時、この曲がヒットソングのなかでいちばんカッコいいと思ってた。出だしの響きはレイ・チャールズの〈こぼれる涙〉っぽいんで、ホーン・セクションの音の積みをレイ・チャールズ風にして、さらにブライアン・セッツァー・オーケストラの“Since I Don't Have You”みたいなリズムを効かせたノリにしたらイケるだろ!ってアイデアがずっと前からあった」。
南佳孝のベスト盤『30th Street South』(ソニー)
レイ・チャールズのベスト盤『The Very Best Of Ray Charles』(Rhino)
ブライアン・セッツァー・オーケストラの98年作『The Dirty Boogie』(Interscope)


文/武藤 昭平

武藤昭平による、『LET'S GET LOST』全曲解説 その2

5. YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO
「これはモダン・ジャズを聴くきっかけになった曲。勝手にしやがれをやる前から、この曲を女性ヴォーカルで、ドラムはブラシでサラッとじゃなくて俺がガンガンに叩いて演りたいっていうアイデアがあった。かなり昔に〈コラボしたい人っています?〉ってスタッフに訊かれたときに、〈濱マイク〉の印象で〈中島美嘉ちゃんがジャズ歌ったりしたらカッコいいじゃん〉って言ってたんだけど、今回それが実現した」。
ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウンの54年作『Helen Merrill With Clifford Brown』(Emarcy)
中島美嘉の2007年作『YES』(ソニー)




 6. TOPSY
「結成当初にカヴァーしてたんだけど、この曲を演ってるバンドもそうそういなかったし、勝手にしやがれらしさが溢れていた。いまなら当時よりも演奏をオリジナルに近づけつつ、さらにそこに勝手にしやがれらしさを加えられるかもしれないって思って。DJでもよくかけるコージー・コールのヴァージョンはジャズなんだけど、俺が叩くことによって勝手にしやがれ流のアンサンブルになる」。
コージー・コールの編集盤『Cozy Cole And All That Big Band Jazz』(Orchard)




 7. SHONER GIGOLO〜JUST A GIGOLO〜
「ルイ・プリマのジャンプ・ナンバー・ヴァージョンで知られているけど、あえて“Just A Gigolo”っていうのはマニアックなものも入れたいなあと思ったから」。
ビング・クロスビーの編集盤『Ol Man River』(RCA)




 8. 出航 SASURAI
「寺尾聰さんの当時ヒットしていた曲のなかでも、なぜかこの曲がいちばん好きだった。メロディーは残したうえで、ちょっとモード(・ジャズ)系の雰囲気にしながらも、ソニー・ロリンズあたりが演りそうなアレンジのジャズ・ワルツでっていうアイデアが閃いたから」。
寺尾聰の81年作『Reflections』(東芝EMI)
ソニー・ロリンズの56年作『Saxophone Colossus』(Prestige)




 9. ドナウ河の漣
「クラシックなんだけどスウィンギーなアレンジにして、イントロはピアソラ風というか現代音楽風に。それでメロディーが始まっちゃえばルーマニア――(作曲家の)イヴァノヴィッチは東ヨーロッパの人だからファンファーレ・チョカリーアなどのバルカン・ジプシー・ブラスバンドの根本の人だと思ってるし、勝手にしやがれ風に取り上げるのは全然アリだと思った」。
“ドナウ河の漣”を収録したウィーン交響楽団の編集盤『Danube Waves Waltz -Favorite Waltzes』(Philips)
ファンファーレ・チョカリーアの2007年作『Queens And Kings』(Asphalt Tango)




 10. FIESTA
「トロンボーンの福島(忍)に〈歌いたいものある?〉って訊いたらこの曲を挙げてきて。じゃあ、ストレートにやってみたらいいんじゃないかなあ、と。東ヨーロッパのトラッドの次がアイリッシュ・トラッドっていう流れは違和感ないでしょっ、て」。
ポーグスの87年作『If I Should Fall From Grace with God』(Island)




 11. LET'S GET LOST
「モダン・ジャズでヘレン・メリルの次にハマッたのがチェット・ベイカー。〈Let's Get Lost〉……どっかへ行こうとしているっていうのが確かにある。でもまずは、足元をしっかりと固めてからどっか行こうかなって……そういう意思表示」。
チェット・ベイカーの編集盤『Complete Original Sings Sessions』(Pacific Jazz/Gambit)


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