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掲載: 2007/08/30
ソース:『bounce』誌 290号(2007/8/25) |
ソウルの遺産を新たな視座からリフォーマット。今回は知られざる名盤揃いのジャズ銘柄に注目!!
文/林 剛
ソウル・ミュージックの歴史を振り返るなかで、このレーベルの名前を目にすることはほとんどなかった。メインストリーム。せいぜいテリー・ハフ&スペシャル・デリヴァリーの作品が出ていたという程度の認識で、ソウル・シーンではメインストリーム(主流)にはならなかった……というのは悪いシャレだが、それもそのはず、基本はジャズを扱うレーベルだったのだから無理もない。
レーベルを主宰したのはボブ・シャッド。40年代からサヴォイでジャズやリズム&ブルースのレコード制作に関わっていたボブは、50年代半ば、続いて入社したマーキュリーの内部にエマーシーを設立、モダン・ジャズの秀作を世に送り出して名を上げた。その後、マーキュリーを退社すると今度はタイムを設立し、そこでジャズを扱う部門として64年に立ち上げたのがメインストリームだったとされる。本拠地はNY。ボブはここで、自身がサヴォイ時代に手掛けた作品のリイシューを行いながらフランク・フォスターやブルー・ミッチェルらのジャズ・ファンク作品を送り出し、当時のブルー・ノートなどと同じく旧来のジャズ感に縛られない柔軟な発想でレーベルを進展させていく。ジャニス・ジョプリンのいたビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーのデビュー作(67年)を出していたのもメインストリームで、当時はこの雑食性が仇となったようだが、いまとなってはその多彩さをおもしろがることもできるだろう。
そして70年代、ジャズの様式を取り入れたソウルが台頭してくると、ソウルやファンクにも接近。主力商品のひとつだった女性ジャズ・ヴォーカルも、アリス・クラークやエレリン・ハーディングのようなソウル系シンガーの作品へと取って変わられていく。ただ、レーベル自体がソウルに取り組んだというより、当初は買い取りの形でソウル作品を配給し、次第にナイン・チェインズやブラウン・ドッグといった傍系レーベルがソウルに対応していった。楽曲の原産地は東海岸、中西部、南部など統一感はないが、ドラマティックス周辺のデトロイト勢に入れ込んでいたのはひとつのレーベル・カラーと見ていいかもしれない。シュガー・ビリーなどもその流れで獲得したという説が有力だ。その後、レーベルからのリリースは76年あたりで途絶えているが、本流にはならずとも当時の〈メインストリーム〉のソウル・サウンドを採り入れた作品がここには数多く残された。国内リイシューとコンピの編纂を機に、ようやく再評価の時が到来したというわけである。 |
ESSENTIALS 心のメインストリーム盤たち
TERRY HUFF AND SPECIAL DELIVERY 『The Lonely One』 Mainstream(1976) メインストリームを代表するソウル盤にして70'sスウィート・ソウル傑作としても名高いワシントンDC産ヴォーカル作品。スペシャル・デリヴァリーと歌うのはLPでは“I Destroyed Your Love”のみとされるが、アル・ジョンソンのドリーミーなアレンジとテリー・ハフのファルセットがあればそれで十分だろう。恋に傷付いた男の心情を切々と歌い上げるナマズひげの兄貴に心酔!(林)
『Gonna Have A Good Time』 Pヴァイン メインストリームとその傍系レーベルに残されたソウル音源をシングル中心に編集した日本制作のコンピ。この第1弾はディスコ一歩手前の70'sダンス・サウンドとソウルフルな歌に注目した内容で、バート・デコトーがアレンジしたセカンド・ヴァースやチョコレート・シロップによる開放感溢れるヴォーカル曲から、カルヴィン・アーノルドの南部系ファンキー・チューンまで傑作揃い。ステップトーンズのグレイトなダンサー、アルメタ・ラティモアの心地良いミディアムにも心躍る。 (林)
ALICE CLARK 『Alice Clark』 Mainstream/Pヴァイン(1972) ジャズというよりゴスペル色が濃厚な情熱ヴォイスの持ち主。アリス唯一のアルバムは、ボビー・ヘブ作の数曲をはじめポップス曲のカヴァーが中心ながら、NYの腕利きプレイヤーたちだとされる面々のグルーヴィーな演奏をバックに、70年代らしい昂揚感を煽りながら力強くソウルフルに歌い上げる。ダニー・ハサウェイも歌った“Hey Girl”が粋にラストを飾る、メインストリーム屈指の歌姫盤だ。(林)
ELLERINE HARDING 『Ellerine』 Mainstream/Pヴァイン(1972) 女優〜コメディエンヌとしても活躍したというマルチなシンガーの名作。愛を込めて〈下町のミニー・リパートン〉と呼びたいハイトーン・ヴォイスが最大の魅力なのは疑いないが、グルーヴィーなアップだとパワフルで気さくな歌いっぷりが顔を出す。演奏陣にバーナード・パーディやコーネル・デュプリーらを迎えたこともあって、同時期のアレサ作品に似たエレガンスも見え隠れ。(出嶌)
『A Man Needs A Woman』 Pヴァイン コンピ第2弾は男女のソロ・シンガーにスポットを当てた内容。ノーザン・スタイルのモダンな70'sソウル曲を含みつつ60年代後半の〈買い取り音源〉も含む選曲は、ジャッキー・ビーヴァーズ・ショウのサム&デイヴ曲カヴァーに代表されるようにサザン〜ディープ色が強く、痛快なファンキー・ナンバーも飛び出す。JBばりの激唱を聴かせるLJ・レイノルズや、その姉であるジーニー、またドリス・デューク、ロジャー・ハッチャーといった著名シンガーのシングルも貴重だろう。(林)
SUGAR BILLY 『Super Duper Love』 Fast Track/Pヴァイン(1975) ブルース畑のシンガー兼ギタリスト、ビリー“シュガー・ビリー”ガーナーが傍系レーベルのファスト・トラックに残したファンキーな快作だ。女性にサトウキビを握らせるというジャケにも通じる、濃厚でいやらしい男汁サウンドの下世話な格好良さが痛快そのもの。コクのあるディープな歌いっぷりも冴え渡っている。なお、ヒットした表題曲は後にジョス・ストーンがカヴァー。(出嶌)
『Talk To The Rain』 Pヴァイン セクシーなジャケで内容が想像できそうなコンピ第3弾は、ハーモニーの美しいスウィート・ソウル曲で構成された悶絶の甘茶ソウル盤。テリー・ハフ及びスペシャル・デリヴァリーはもちろん、第1弾でも他曲が紹介されたスペクトラムやチョコレート・シロップらの激甘バラードが続々登場し、レーベルの奥深さを思い知らされる。圧巻はウィー・ジーが本家脱退後に率いた分家ドラマティックス(〜ドラマティック・エクスペリエンス)の4曲。有名とはいえ、これは本盤の目玉だろう。(林) |
文/出嶌 孝次 メインストリームのメインストリーム
本文にもあるようにメインストリームのソウル作品はレーベルの〈脇道〉であり、そのカタログのほとんどはいわゆるジャズ作品となる。ただ、主に70年代前半にはブルー・ノートやアトランティックのようにジャズとソウルが裏表の関係にあったわけで、特にニュー・ソウルやファンク好きなら楽しめる作品が多いことに留意されたい。ちょうど〈RETURN OF JAZZ FUNK〉と銘打たれたシリーズで30枚近くの〈本筋〉がリイシューされているので、そちらを掘ってみるのもいいだろう。30枚!?という人には、ダニー・ハサウェイらのカヴァーを多数収めたチャールス・カイナードの爽快作『Woga』をまずオススメします。
| | チャールス・カイナードの72年作『Woga』(Mainstream/Pヴァイン) |
| | メインストリームのジャズ・ファンクを集めたコンピ『Killer Jazz Funk From Mainstream Vault』(Pヴァイン) |
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文/出嶌 孝次 夏にやり残したことはないか!?
前号の連載をお休みしたので、紹介すべきリイシューが大盛りです! まずはグループ名からしてヤバい、バラッズの69年作『The Gift Of Love』(Venture/Pヴァイン)がそれ以前のシングル曲を多数追加して登場! ジャケとは裏腹にノーザンなノリも楽しめます。激甘攻めがお好みなド変態の人は、70年代以降の音源を集めた『Confessing The Feeling』(Pヴァイン)で悶死しちゃいなよ! お次は毛色を変えて……アトランタの巨熊ディープ歌手、リー・モーゼスの71年作『Time And Place』(Maple/Castle)の世界初CD化! しかもシングル音源など14曲がボーナス収録されているので、残暑に効く“California Dreaming”などで燃えまくる熱唱を堪能できます。で、クァンティックを従えた昨年の復活作も記憶に新しいスパンキー・ウィルソンのアンソロジー『The Westbound Years』(Ace)も聴きモノ。ダイアナ・ロスばりに気位の高そうな歌いっぷりがたまらんわ。そして、最後はアーバンなディスコ寄りの2品を……まずは79年の青春映画「Sunnyside」のサントラ用にNYのセッション・ミュージシャンが集まったニューヨーク・シティ・バンドの『New York City Band』(Douglas)が危険! スタイリッシュなリードはソロ・デビュー直前の故ルーサー・ヴァンドロスよ! もう1作は再評価も定着したレッド・グレッグの2枚組コンピ『P&P Records Presents Red Greg The Sound Of Gregory Carmichael』(Pヴァイン)。オブスキュアなディスコ若年寄からリエディット愛好家まで必携です。
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