 |

掲載: 2007/10/11
ソース:『bounce』誌 291号(2007/9/25) |
ソウルの遺産を新たな視座からリフォーマット。今回は設立40周年を迎えたNYのレーベルです!!
文/林 剛 リイシューも進行中! 時代に目配せしながら飛躍を続けたレーベル
今年はレーベル創立の節目に当たる年なのか? アトランティックが60周年、スタックスが50周年を迎えるなかで、ひっそりと40周年を迎えようとしているレーベルがあった。スプリング。ソウル史に燦然と名を残す……というほどの知名度はないものの、ミリー・ジャクソン、ジョー・サイモン、ファットバック・バンドといったスーパースターを抱えた忘れえぬ名門レーベルだ。
実際にレーベルが稼動しはじめたのは68年とされるが、設立は67年。NYを拠点に、ビル・スピタルスキー、ロイとジュリーのリフカインド兄弟という3人のレコード・ビジネス経験者によって、スプリングの歴史はスタートした。以前からビルはアトランティック/アトコで諸業務に携わり、リフカインド兄弟もレーベル運営などを経験。そこで培ったノウハウを活かし、彼らはロイが以前マネージャーをしていたリトル・エヴァ(・ハリス)や交流のあったジョー・サイモンらを抱え込み、ポリドールの配給を通じて幸先の良いスタートを切った。傘下では白人のティーン・ポップなどを扱うイヴェントもスタート。ただ、白人ながらR&B業界に身を置いてきた経営者3人が力を入れたのは、あくまでもソウルやファンクだった。
そうしたなか、スプリングの発展に大きく貢献したのが、同社からレイ・ゴドフリー名義でソロ曲を出してもいたレフォード・ジェラルドだ。彼がプロデュースしたジョー・サイモンやミリー・ジャクソンのヒットでレーベルの勢いは加速。ジョーやミリーのサザン/ディープ的なアプローチだけでなく、デトロイトやフィリーのサウンドにも目配せしながら良質な70年代ソウルを発信していく。また、ファンクやディスコが台頭してくると、その看板をファットバック・バンドに背負わせ、NYストリート・ミュージックの発信源としてもその一翼を担うことになった。80年代初頭にはメジャー配給に頼らないポッセを傘下に立ち上げ、ジョセリン・ブラウンらを輩出。その数年後、セールスの低迷でレーベルは幕を閉じてしまうが、〈飛躍〉という意味を込めて命名されたと思しきスプリングが、〈春〉のようにフレッシュで、〈バネ〉のように柔軟な発想を持ったレーベルであったことは、いまもリイシューが続く名盤群を聴けばおわかりいただけると思う。 ▼スプリングに所属した面々の別レーベル作品。
| | ジョーンジズの77年作『The Joneses』(Epic) |
| | ジョセリン・ブラウンの84年作『Somebody Else's Guy』(Vinyl Dreams) |
|
文/出嶌 孝次、林 剛 ESSENTIALS 永遠の春一盤たち
ACT 1 『Act 1』 Spring/Southbound(1972) スプリング・サウンドの中核を担ったレフォード・ジェラルドが在籍して指揮も執ったヴォーカル・グループ、唯一のアルバム。フォー・トップス“Still Water”のカヴァーもあり、デトロイトやフィリーの感覚をまぶしながらドラマティックな歌を聴かせるが、“Tom The Peeper”のようなファンクも彼らの持ち味だ。切なげな“Friends Or Lover”は定番ネタで、最近ではガヴァナーが使っていた。 (林)
THE FATBACK BAND 『Keep On Steppin'』 Spring/Ace(1974) 最近の編集盤かと思うほど今風のジャケだが……この通算4作目では彼らの持ち味がストレートに出た“Stuff”を筆頭にタイトで重たいドス黒ファンク・ナンバーが目白押し。トライブ・コールド・クエストのネタ使いでも知られる“Wicky Wacky”や表題曲などの渋いファンクネスも地力を感じさせる。“Can't Stop The Flame”などの、いいところで出てくるスロウも聴き応えアリ。 (出嶌)
『The Soul Of Spring』 Ace/Kent スプリングの(ファンクを除く)ソウル曲に焦点を当てたコンピの第1弾。アーティストの多くは別掲の〈The Spring Story〉とダブるものの、レフォード・ジェラルド絡みのアクト・ワンやデターミネイションズ、ジョー・サイモンが手掛けたインターナショナルズといったヴォーカル・グループを核に、ガーランド・グリーンやフィリップ・ミッチェルなどを交えながらソウルフルなミディアム〜スロウで迫る。ジョセリン・ブラウンのメロウ曲にも感じ入りたい。 (林)
FATBACK 『Hot Box』 Spring/Ace(1980) 名前をファットバックと短縮してからの6作目。ソリッドでヘヴィーなファンク名曲“Backstrokin'”を含む本作だが、どんなに激しくファンクしようが決して歌ゴコロを失わない、これが彼らのキモだ。メロウなバラードも収録し、ドゥワップの時代からNYの街角の音を刻んできたリーダーのビル・カーティスらしいセンスも随所に表出。斬新な音のなかで古き良き黒人音楽の伝統が薫る快作となった。 (林)
JOE SIMON 『The Power Of Joe Simon』 Spring/Southbound(1973) ナッシュヴィルで〈カントリー・ソウル〉を歌っていたジョー・サイモン。本作は彼がスプリング移籍後に放った70年代初期のシングルを集めたアルバムで、レフォード・ジェラルドの制作曲のほか、ギャンブル&ハフと組んだフィリー録音曲“Drowning In The Sea Of Love”を収録。まろやかでコクのある歌は、オーティス・レディングの葬儀でゴスペルを披露したというだけの説得力を持つ。 (林)
『The Soul Of Spring Vol. 2』 Ace/Kent 創立40周年を前に(?)9年ぶりに編纂されたソウル・コンピの第2弾。ここではアップテンポの曲が増え、未発表だったフラワー・ショップの60'sメンフィス・ソウル風ナンバー、ジャッキー・ヴァーデルが82年に録音したモダンなゴスペルなど、内容は多彩だ。とはいえ、ハイライトはパトリック・アダムズ制作によるメイベリー・ムーヴメントやヴィンス・モンタナ制作によるロニー・ウォーカーらのバラード。ジョーンジズの甘茶名曲“Baby”もここに。 (林)
MILLIE JACKSON 『It Hurts So Good』 Spring/Southbound(1973) ヒップホップ世代の女性アクトたちの精神的支柱であり続ける大姐御、ミリー・ジャクソン。NYとマッスル・ショールズで録音されたこの2作目はレフォード・ジェラルドとブラッド・シャピロ制作で、南部マナーの演奏をバックにディープ&ハスキーな歌声で滋味深いソウルを聴かせる。表題曲は映画「Cleopatra Jones」への提供曲。翌年には泥沼の三角関係を描いた名盤『Caught Up』も控える。 (林)
MILLIE JACKSON 『Feeling Bitchy』 Spring/Southbound(1977) この表題からして当時は物議を醸したに違いない通算7作目。“All The Way Lover”や“If You're Not Back In Love By Monday”などのスロウでは情の深さを垣間見せ、ストリングスを纏ったファンキーな“Lovin' Your Good Thing Away”のようなアップではグリッティーで支配力の強いパワフルな歌い口を披露する。ジャケ買いした野郎どもも多かったため(?)ミリー屈指のヒットとなった。 (出嶌)
『The Spring Story - Essential 70s Soul』 Ace/Southbound レーベルの全体像を伝えるスプリングの名曲25選。ミリー・ジャクソン、ジョー・サイモン、ファットバック・バンドの御三家はもちろん、モータウン曲をカヴァーしたリトル・エヴァ・ハリスの初期イヴェント音源からダンサブルなジョセリン・ブラウンらのポッセ音源まで、実に70年代を中心としたソウル/ファンクのエッセンスを凝縮した内容だ。ジョーンジズのディスコ曲やMFSBのメンバーが関与したフィリー・ダンサーなども含め、とにかく逸品揃い。 (林)
|
|  |  |
文/出嶌 孝次 秋の夜長にソウル・リイシューをどうぞ
まずはマイティ・ライダーズの78年作『Help Us Spread The Message』(Sun-Glo/Pヴァイン)が待望の世界初CD化です。デ・ラ・ソウルがネタ使いしてリバースが歌った問答無用のクラシック“Evil Vibration”だけでもマストですが、EW&F風のコーラスとダイナミックな演奏は全曲最高! 続くテッド・コールマン・バンドの『Taking Care Of Business』(JCR/Pヴァイン)も世界初CD化で、ロイ・エアーズから神秘性を取り除いたような快楽ヴィブラフォン盤です。
で、次は何の脈絡もなくマリリン・マックー&ビリー・デイヴィスJrの76年作『I Hope We Got To Love In Tune』(ABC/Collector's Choice)も世界初CD化。元フィフス・ディメンションのカップルが溌溂と絡む爽快な一枚ですよ。
80年代モノなら、英ブルー・バードがドッと出したブラコン復刻の山からテルマ・ヒューストンの84年作『Qualifying Heat』(MCA/Blue Bird)をオススメ。ブレイク前夜のジャム&ルイスも関与した隠れ名盤です。
で、行ったり来たりながら……ダイアナ・ロスの73年作を2枚組で世界初CD化した『Last Time I Saw Him Expanded Edition』(Motown/Hip-O Select)は家宝級! ゴージャスな歌声もジーン・ペイジの劇的なアレンジも極上!
で、最後はデトロイトで活躍したナサニエル・メイヤーの61〜80年曲をまとめた編集盤『(I Want)Love And Affection(Not The House Of Correction)』(Vampisoul)を。古典的なドゥワップ調からノーザン・ソウルやJBノリまで、だんだん音がファンキーになってくるあたりも興味深いんです。
|
|  |  |
この記事を flogに追加
この記事をはてなブックマークに追加
|