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掲載: 2008/01/17
ソース:『bounce』誌 294号(2007/12/25) |
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文/吾郎 メモ I パブ・ロックの成り立ちと特徴
皆さん、こんにちは。今日のテーマは〈パブ・ロック〉です。その言葉からなんとなく想像できると思いますが、パブ・ロックとはもともとUKの大衆酒場(パブ)で演奏されるロックのことを指していました。労働者たちが仕事帰りに楽しむ場所で鳴らされていたロック──ということになります。パブ・ロックが台頭したのは70年代に入ってからで、それ以前のパブではトラッドやカントリー、ジャズなどが演奏されていました。ジャズを中心にしていたロンドンの〈タリー・ホー〉という店で、空き日の月曜にUSのバンドであるエッグス・オーヴァー・イージーがロックをプレイするようになり、瞬く間に評判を呼んでパブでもロックをやるスタイルが広がった……というのが起源とされています。そして、彼らに刺激を受けたバンドが徐々に増え、シーンが形成されていくのです。大仕掛けで会場も巨大化していったプログレやハード・ロックなどのメジャー・シーンとは対極にあるような、リズム&ブルースを下敷きにしたシンプルなロックンロールとカントリーなどを混ぜ合わせた演奏で、飲みに来たお客さんを踊らせるサウンド、それがパブ・ロックだと言えますね。
70年代中盤になると、全英No.1ヒットを生み出したドクター・フィールグッドを筆頭に大きな人気を得るバンドが出現し、バンドはパブからホールへと舞台を移していきます。しかし彼らの音楽そのものは、パブ・ロックという名称で親しまれました。途中にパンク・ロックへとその流れの一部は引き継がれつつ、シーンの盛り上がりは80年代初頭まで続きます。かつての爆発的な勢いはないですが、その音楽性は現在でも世界中のロッカーたちに愛され、きっと今夜もどこかの酒場ではゴキゲンなパブ・ロックが繰り広げられていることでしょう。 |
II それでは実際に聴いてみよう! その1
BRINSLEY SCHWARZ 『Nervous On The Road』 United Artists/Repertoire(1972) 彼らは〈UKのザ・バンド〉と言われ、USのルーツ・ミュージックに根差した音楽性をウリにしています。独自の軽快なポップさがあり、そこがメンバーであるニック・ロウやイアン・ゴムのソロ作へと繋がっていくわけですね。
DUCKS DELUXE 『Taxi To The Terminal Zone』 RCA/Mau Mau(1974) ブームの中核を担っていくタイラ・ギャング、モーターズ、ルーモアのメンバーを輩出した、ブリンズリー・シュウォーツと並ぶパブ・ロックの起源みたいなバンド。コクのある演奏とキャッチーな楽曲は、大衆音楽としてのシーンを象徴していました。
DR. FEELGOOD 『Down By The Jetty』 Grand/EMI(1975) これぞパブ・ロック!な一枚で、これを聴かなきゃ始まりません。ウィルコ・ジョンソンのマシンガン・ギターが炸裂する男のロック。先達のようなポップな親しみやすさではなく、ゴリゴリとしたソリッドなR&Bスタイルにこだわり、絶大な人気を得ることとなります。
GRAHAM PARKER & THE RUMOUR 『Howlin' Wind』 Vertigo/Polydor(1976) 現在も精力的に活動を続けるロッカーが、シーンから名うてのプレイヤーを集めて録音したデビュー作。のちに独立するバックの演奏に負けない、グレアム・パーカーのソウルフルで熱いヴォーカルが素晴らしい。粋が詰まってます!
EDDIE AND THE HOT RODS 『Teenage Depression』 Island/Captain Oi!(1976) パブ・ロックとパンクの架け橋的な役目を担ったバンド。パブ・ロックの持つストレートなロックンロールの側面を押し進めたサウンドと、若者の気持ちを代弁した歌詞はパンク誕生前夜を飾るに相応しい。初期にはルー・ルイスも在籍。
FLAMIN' GROOVIES 『Shake Some Action』 Aim/DBK(1976) 60年代から活動しているUS西海岸のバンドですが、この時期に渡英し、デイヴ・エドモンズをプロデューサーに迎えて本作を完成させます。パブ・ロック〜パンク/パワー・ポップの流れとリンクして支持を獲得した、最高のロックンロール・バンドですね。
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II それでは実際に聴いてみよう! その2
THE COUNT BISHOPS 『The Count Bishops』 Chiswick/Big Beat(1976) R&Bを基調としたハードなロックンロールで、パブを沸かせていたバンドの初作。カヴァー曲も多いのですが、その直球カヴァーと繊細な面を持ち合わせたオリジナル曲とのバランスが絶妙で、とてもカッコイイのです。ライヴ盤もオススメ!
IAN DURY & THE BLOCKHEADS 『New Boots And Panties』 Stiff/Edsel(1977) キルバーン&ザ・ハイローズのイアン・デューリーが結成したバンドの初作。ソウルやファンクなどブラック・ミュージックのリズムを大胆に採り入れた楽曲と、ちょっとクセのあるメンバーのキャラクターで人気を博しました。
ELVIS COSTELLO 『My Aim Is True』 Stiff/Edsel(1977) いまや超大御所のエルヴィス・コステロも、出発点はパブ・ロッカーでした。これはクローヴァーのメンバーをバックに従えた初作。若々しい勢いと迫力に溢れた演奏はいまよりもロックンロール色の濃いものですが、“Alison”みたいな名バラードもアリ!
THE PIRATES 『Happy Birtday Rock' N'Roll』 Cube(1979) 60年代のジョニー・キッド&ザ・パイレーツから発展したバンド。〈カミソリ・ギター〉と呼ばれるミック・グリーンのザクザクと切り込むギター・リフが彼らの持ち味であり、最高な部分です。本作は熱さもあって、非常に楽しいアルバムですよ。
ROCKPILE 『Seconds Of Pleasure』 F-Beats/Columbia(1980) ニック・ロウ、デイヴ・エドモンズを中心としたスーパー・バンド。とにかくキレが良くってポップでゴキゲンな曲が盛りだくさん! オールディーズを愛情溢れる新しい解釈で取り込んだ、センス抜群のアレンジが素晴らしいです。“Heart”はクラブでも大人気。
THE 101ERS 『Elgin Avenue Breakdown』 EMI あのジョー・ストラマー(クラッシュ)が在籍していた!――ということで知られているバンドです。彼がパンク・ロックによって大きく才能を開花させたことは衆知の事実ですが、この編集盤には歴史的価値という側面以上に、輝いたロックが収められています。
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III その後の流れと、現在のシーンにおけるパブ・ロックの影響力
パブ・ロックの持っていたシンプルなロックンロール・サウンドと観客との近い距離感は、そのままパンク・ロックへと引き継がれます。例えばダムドのプロデュースをニック・ロウが手掛けた……というような具体的な接点もありますが、ジョー・ストラマーが元パブ・ロッカーだったり、もしくはジャムの初期音源などを聴いてもダイレクトな繋がりを感じることができるはず。また、マッドネスやスペシャルズのような2トーン勢、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ、ポーグスなどにも〈ルーツ音楽を新たなカタチで楽しもう〉というアティテュードは継承されました。それに、パブ・ロックをポップに昇華したコステロやスクイーズにも、ルーツ感は常に存在していますしね! 現在のシーンに目を移すと、ストレートなロックンロールにトラディショナルな要素を加えて新鮮さを生み出したリバティーンズ、ランブル・ストリップスらテムズ・ビート界隈のバンドにその幻影を見ることができるでしょう。日本ではミッシェル・ガン・エレファントがパブ・ロックからの影響を公言し、パイレーツのミック・グリーンと共演シングルも出していました。また、Theピーズ、クロマニヨンズなどからもパブ・ロックの影響を強く感じますよね。このように、パブ・ロックはいまも世界中のミュージシャンたちの心を熱くし続けているのです。 ▼関連盤を紹介。
| | ダムドの77年作『Damned Damned Damned』(Frontier/Castle) |
| | リバティーンズのベスト盤『Best Of The Libertines』(Rough Trade) |
| | ランブル・ストリップスの2007年作『Girl And Weather』(Island) |
| | ミッシェル・ガン・エレファントの95年作『wonder style』(トライアド) |
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