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第74回 ─ ダブ・ステップ


掲載: 2008/01/24

ソース:『bounce』誌 294号(2007/12/25)

宇宙の果てより、海の底より、もっとディープな地点で轟音を響かせる地下の音楽。凶悪なベースがフロアを這いずり回って全身を噛み砕き、ドープなブレイクビーツが脳髄に撃ち込まれる……いよいよ地上へも姿を現しはじめた危険極まりないサウンドを、旬のうちに味わってみよう

文/青木 正之、田中 直樹、出嶌 孝次



 ブリアルのニュー・アルバム『Untrue』などの注目作が連発され、ここにきて注目度を増しているのがダブ・ステップだ。南ロンドンのクロイドンで生まれたとされるダブ・ステップは、2000年頃にゼッド・バイアスやエル・B、ホースパワーらが生み出したUKガラージのダークサイドをそもそものルーツとしている。複雑なドラム・パターンと重厚なサブベース、マイナー・コードのメロディーで構築された、中毒性のあるダークでメランコリックなサウンドは、2003〜4年あたりから徐々にシーンへと浸透。2005年にクラシックとなるスクリームの“Midnight Request Line”が登場すると、シーンの勢いは一気に加速し、テンパやハイパーダブ、テクトニックのようなレーベルから入手しやすいCD作品が次々に登場したこともその動きに拍車を掛けた。以降も、ブリストル・シーンを牽引するピンチや、シャックルトン&アップルブリムなどシーンの外まで話題を広げるような顔ぶれの作品を続々と輩出して現在に至る。音楽的にも成熟を深めるダブ・ステップの大爆発はまだこれからだ!
(青木正之)
ブリアルのニュー・アルバム『Untrue』(Hyperdub/OCTAVE)





VEX'D 『Degenerate』 Planet Mu(2005)
ダブ・ステップのエクスペリメンタルな側面に焦点を当て、近年は映画「鉄コン筋クリート」サントラのリミックスにも加担したロンドンの2人組。金属的なビートとブニョブニョしたベースが暴れるトラックの好戦的なヤバさは、このファースト・アルバムで堪能すべし!
(出嶌)



Dubstep 『Allstars Vol. 2 : Mixed By Youngsta』 Tempa(2005)
ダブ・プレートを惜しげもなく使用したダブ・ステップの名物ミックス・シリーズ2作目。ダークに沈み込むベースラインを操りながら、起伏に富んだ展開をみせるヤングスタの手捌きが見事。終盤にジワッとアゲてくるあたりがニクイ!
(青木)



BURIAL 『Burial』 Hyperdub(2006)
ハイパーダブ初のCD作品でもあった、シーンの顔役によるファースト・アルバム。現場で人気の“Distant Lights”などディープな名曲揃いの聴きやすい内容だ。ブロック・パーティー“Where Is Home?”のリミックスを手掛けるなど、今後は地上仕事も増えていきそう?
(出嶌)



VIRUS SYNDICATE 『The Work Related Illness』 Planet Mu(2006)
マーク・ワン改めMRK1を中心にした4人組のグライム集団。本作は2005年のファースト・アルバムにトラック追加/ジャケ変更を施した新装盤となり、男臭い鬼太ダブ空間でJSDら荒くれMCがマイクを奪い合う展開が強烈だ!
(出嶌)



VARIOUS 『The World Is Gone』 XL(2006)
謎のユニットがダブやエレクトロニカ、フォークをディープながらもスタイリッシュにまとめた、ダブ・ステップ系作品のなかでも屈指の完成度を誇る一枚。ほぼ全曲で女性ヴォーカルが浮遊し、かつてのトリップ・ホップを思わせる気怠い空気感が心地良い。
(青木)



KODE 9 + THE SPACEAPE 『Memories Of The Future』 Hyperdub(2006)
ハイパーダブを主宰するコード9とMCのスペースエイプによるコラボ作。他と一線を画すミステリアスな個性を発揮して、アブストラクトな音像を終始貫いた暗黒盤だ。抑揚のない淡々としたMCの不気味さには背筋がゾクゾクしちゃうかも!?
(青木)



SKREAM 『Skream!』 Tempa(2007)
まだ20歳そこそこの超新星が放った衝撃のファースト・アルバム。フロアでの機能性を万全に保ちながら、音楽的な多様性も豊かに含んだ懐の深いサウンド・スタイルは唯一無二だろう。ダブ・ステップ・クラシックとなった大名曲“Midnight Request Line”ももちろん収録!
(青木)



『Mary Anne Hobbs - Warrior Dubz』 Planet Mu(2007)
地下世界のダークなダンス・ミュージックを積極的にサポートしている〈BBC Radio 1〉のDJ、メアリー・アン・ホブスが監修したコンピ。ダブ・ステップからグライムまで、2006年のクラシック的な名曲ばかりを14曲厳選収録。入門編としてどうぞ!
(青木)





MRK1 『Copyright Laws』 Planet Mu(2007)
グライム系のグループ、ヴィールス・シンジケートのメンバーとしても活躍するヴェテランのソロ2作目。レゲエ・マナーのベースラインや中近東っぽいメロディーを導入するなど、内容はエスニック・テイスト高し。シズラを迎えた“I Got Too”が最高だ! 
(田中)



『Tectonic Plates』 Tectonic(2007)
ピンチが主宰するブリストルの重要レーベル=テクトニックのカタログ第1弾となる2枚組コンピ。主宰者みずからが選んだレーベルのベスト・トラックを収録したDisc-1と、レーベルの枠を飛び越えた選曲で重量級のフロア・ミックスを聴かせるDisc-2という豪華な内容だ。
(田中)



THE DISTANCE 『My Demons』 Planet Mu(2007)
現場人気やアーティストからの支持も高く、アルバムが待たれていたディスタンスの初作。ギター・リフからトライバルなパーカッションまで、多彩な音素材をサイバー&メタリックな質感で包んだインダストリアル・ロック風のアプローチが持ち味の傑作だ。
(田中)



SHAKELTON/APPLEBLIM 『Soundboy Punishments』 Skull Disco(2007)
ダントツに奇天烈! 不気味な歌声やおどろおどろしい儀式を連想させるパーカッション、そこに深いエコーも加わってシャーマニックに響き渡るミステリアスなダブ・ステップ……というか、そんな分類すら拒む奇怪な音源集だ。
(青木)



CYRUS 『From The Shadows』 Tectonic(2007)
ランダム・トリオというユニットでも活躍するサイラスのソロ・アルバムで、テクトニックのCDリリース第2弾。ミステリアスで不穏なウワモノとスッカスカなリズムのコンビネーションだけでアルバムを丸々聴かせてしまう、ワビサビに溢れたコアな逸品です。
(田中)



『Box Of Dub 2』 Soul Jazz(2007)
いま最注目のピンチや、コード9、スクリーム、DMZらの常連組に加えて、まだ知名度のない新鋭アーティストらの極太チューンも積極的に紹介する、未発表曲オンリーの人気コンピ・シリーズ第2弾。ダブ・ステップ入門盤として前作共々オススメです!
(田中)



『Dubstep Drama』 Rinse(2007)
シャイスティらが出演する「Dubplate Drama Series 2」のサントラも兼ねたコンピで、スクリームの名曲“Midnight Request Line”を筆頭にベンガやジーニアスらの定盤チューンを収録。スクリームによるジンク“Flim”のヒプノティックなリミックスも聴きモノだ。
(出嶌)



PINCH 『Underwater Dancehall』 Tectonic(2007)
ブリストルの注目プロデューサー、ロブ・エリスことピンチ。リスニング向きに制作されたというこの初のアルバムは、ヴォーカル・トラックも多く、アクアティックでムーディーな聴きやすさが特徴だ。2004年の名曲“Qawwali”を“Brighter Day”の名で収録。
(青木)



『Fabriclive. 37 : Caspa & Rusko』 Fabric(2007) 注目の若手ユニットが〈Fabriclive〉シリーズに抜擢! ダブ〜ドラムンベース〜UKガラージの影響下にある彼ら自身の楽曲を軸にしたミックスで、ダークなメランコリーだけではなく、トリッピーでえげつない音も満載で刺激的! 終盤のメロウなノリも最高です!
(青木)


文/出嶌 孝次

ダブ・ステップと不可分なグライム

『Grime』がマーク・ワン+プラスティックマン+スローター・モブ、『Grime 2』ではコード9+デジタル・ミスティックス+ローファー……と、リフレックスのコンピ〈Grime〉シリーズが実際はダブ・ステップのトラック集だったことを例に挙げるまでもなく、ダークなガラージ・ブレイクスの影響下でそれぞれ生まれてきたグライムとダブ・ステップの関係は深い。ジンクが主宰するビンゴ・ビーツなどのブレイクス音源も含め、あえて分け隔てすることなく楽しむべき!ってことですな。
2004年のコンピ『Grime』(Rephlex)
DJスリムジーのミックスCD『Bingo Beats Vol. 3 Mixed By DJ Slimzee』(Dump Valve/Bingo Beats)

文/出嶌 孝次

日本でも盛り上がってきてるぞ!!

 まず、筆頭格はGOTH-TRAD……というか、彼が〈MAD RAVE〉を標榜して2005年に発表した“Back To Chill”は、UKでのリリースやコンピ収録などを経て、すでに本場でもダブ・ステップの名曲として評価されているのだ! そんな彼がSKEらと推進する日本随一のダブ・ステップ・パーティー〈BACK TO CHILL〉も1周年を迎えたばかり。そのGOTH-TRADとSKEはRUMIの傑作『Hell Me WHY??』にもダブ・ステップ調のビートを提供していた。今後はそうした動きの作品化にも期待!
GOTH-TRADの2005年作『MAD RAVER'S DANCE FLOOR』(POPGROUP)
RUMIの2007年作『Hell Me WHY??』(POPGROUP)

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