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……そして、ゲームは続いていく

掲載: 2002/01/24
更新: 2002/09/13
ソース: 『bounce』誌 228号(2001/12/25)

紆余曲折を経て、ひとつの頂点に辿り着いたヒップホップ・ミュージック。が、その到達点は、成熟ではなく、新たなる道の始まりだった……。もはや一極集中はなくなり、細分化を進めながら、より多岐に渡る姿へ変貌していくヒップホップ。そんなふうに、これからも未知なる道は続いていくのだ。

文/古川 耕



95年から加速度的に成長し続けた日本語ラップ・シーンは、99年〜2000年初頭をもって質量ともにひとつの頂点を迎える。 98年末、円熟しきったファンキー・サウンドを手に入れたスチャダラパー『Fun-Key LP』を皮切りに、99年にはSOUL SCREAM『Thepositive gravity〜案とヒント』、SHAKKAZOMBIE『JOURNEY OF FORESIGHT』、(YOU THE ROCK改め) YOU THE ROCK★『THE PROFESSIONAL ENTERTAINER』、リアル・スタイラ『爆弾発言』と、立て続けにアルバム・リリースが続く。年が明けてもその勢いは止まらず、2000年初頭にはBUDDHA BRANDの2枚組大作『病める無限のブッダの世界〜BEST OF THE BEST(金字塔)』、TWIGYの新機軸『SEVEN DIMENSIONS』、妄走族『君臨』などがリリース。日本語ラップの盛り上がりを支えたアーティストたちの集大成、あるいは新たな挑戦が、ここに一挙に出揃ったのである。なかでも象徴的なのは、99年夏にリリースされたRhymesterのアルバム『リスペクト』だろう。95年以降、“マイクの刺客”“耳ヲ貸スベキ”などのシングルで日本語ラップ・シーンの精神面を体現してきた彼らは、98年初夏にその決定打と言うべき“B-BOYイズム”を発表し、その地位を不動のものにした。そして、それらのシングルを中心に構成された『リスペクト』は、彼ら自身の軌跡とともに、あたかも日本語ラップ全体の盛り上がりを総括するような役割も担ったのである。

ヒップホップのなかのラップ

また“B-BOYイズム”がもうひとつ重要な意味を持っていたのは、それはラップを〈ヒップホップの一構成要素〉として立ち返らせたことにある。折しも98年、ヒップホップの4大要素(MC/DJ/グラフティ/ブレイキング)をここ日本で再統合する試みとして、ロック・ステディ・クルー・ジャパンのCRAZY-Aが〈BBOY PARK〉を開催していた。そして、そうした場所で、あきらかにB・ボーイ(そもそもはブレイクダンサーを指す)をターゲットに見据えた“B-BOYイズム”は極めて座りがよく、事実、その翌年の〈BBOY PARK '99〉では、代々木公園野外ステージのクライマックスにこの曲が鳴り響いたのである。“B-BOYイズム”はプロモ・クリップにも大々的にブレイカーをフィーチャーしており、ラップがヒップホップに属する一要素だということを広く世に啓蒙する役目を果たした。

 また〈BBOY PARK〉と言えば、99年からMCバトルが開始されている。日本語による完全即興のフリースタイルがどれほどのレベルにあるのか。まったく未知数の状況でおこなわれた第1回だが、結果は想像を遙かに上回る高水準、かつ白熱ぶり。ここでチャンピオンとなったKICK THE CAN CREWのKREVAは、その後3大会連続優勝という偉業を成し遂げ、フリースタイル・キングの称号を手にしている。また、このMCバトルからは、 ILLMURA、MOTOY、KENSHIN(RUFF RHYMERS)といった逸材が輩出されている。

 こうして〈拡大〉と〈原点回帰〉の動きを両立しつつ、理想的な成長を遂げていったかに見えた日本語ラップ・シーンだが、しかしその水面下では、激流の中からこぼれ落ち、黙殺されていた者達の声がジワジワと浸透し始めていた。

多様化の道へ

遡って98年10月、ひっそりとリリースされた『Stilling, Still Dreaming』というダブル・ヴァイナルのアルバムが、メディアの力を借りずに少しずつ支持者(その代表例がDJ KRUSH)を増やしていた。また99年の夏、それまでシングルでのみ知られていたバイリンガルMCのCD2枚組アルバム『緑黄色人種』が、インターネットなどを中心に急速に支持者を集めていた。

 札幌のTHA BLUE HERBと、サンフランシスコ在住のSHING02。音楽性に共通点はなく、お互いに面識もない彼らが、しばしば同列に語られるのはなぜか? まず、彼らの音楽性とスタンスが、それまでの日本語ラップの文脈からまったく逸脱していたことにある。いや、正確に言うのなら、既存の文脈でも十分に評価可能なものでありながら、同時に日本語ラップから距離を置いていた人々にもアピールする力を備えていた、とでも言うべきか。THA BLUE HERBの荒涼としたサウンド・プロダクションと文学的で攻撃的なリリックは、これまでのどんな日本語ラップより力強く、オリジナルだった。同じく、SHING02のベイエリア・サウンドとコンセプチュアルな視点は、彼がまったく独自の活動を続けてきたことを意味していた。そしてこれらは、従来の日本語ラップに抵抗感があった者すら虜にした。つまりは、アーティスト自身ではなく、彼らのファンたちの側に共通点があったのである。ここにきて、日本語ラップは多様化の道を歩み始めた。2000年はこうした動きに加え、 ZEEBRA『BASED ON A TRUE STORY』やラッパ我リヤ『ラッパ我リヤ伝説』が好調なセールスを記録し、それこそ〈ヒップホップ〉という背景を必要としないファンも急増し、シーンはより混沌とし始めたのである。

新世代が活躍した2001年、そして……

こうした状況のもと、2001年に入ってからは、これまで第一線のアーティストの下に隠れていた新世代たちが次々と充実作を発表し始める。前年末のNITRO MICROPHONEUNDERGROUNDのアルバムを筆頭に、そのニトロの中でも一際スキルフルなDABOの『PLATINUM TONGUE』。そして、熊本の餓鬼レンジャーが放った『UPPER JAM』。これまでの歴史と断絶するかのような高い基礎能力を有している彼らが、シーンに歓迎されたことは興味深い。さらには、仙台のGAGGLE、名古屋のTOKONA-X、京都のイルリメ、そして瘋癲。2001年に入って頭角を現わしてきた彼らにしても、過去の誰とも似ていないという意味では同様だ。

 こうした素晴らしい才能たちの多くが、それぞれ東京と無縁のシーンで育まれてきたことは注目に値する。なぜならそれは、 99年の時点でTHA BLUE HERBとSHING02が暗示していたことでもあるからだ。これまで日本語ラップのスタンダードとされていたものは、実は単なる東京のスタンダードに過ぎなかった、ということだ。こうしている現在も、大阪のアメリカ村では韻踏合組合が、名古屋ではホーム・メイド・家族が、東京・新宿〜高田馬場ではMSクルーが、独自のコミュニティーの中で〈上〉を脅かす牙を研いでいる。対するベテラン〜中堅勢も、LITTLEのソロ・アルバム『Mr.Compac t』、(RINO改め)RINO LATINA IIのファースト・アルバム『Carnival ofRin o』、水戸のLUNCH TIME SPEAX『B:COMPOSE』、そしてRhymester『ウワサの真相』など、それぞれがこのアートフォームを前進させる充実作をリリースしている。さまざまな目くらましや定説、歴史を乗り越えて、今後日本語ラップ・シーンはさらなる再編成の波を迎えるだろう。

 そして、最後のトピックは、2001年末のヒット・チャートの中にある。RIP SLYMEの“One”、KICK THE CAN CREWの“クリスマス・イヴRap”、Steady & Co.の“春夏秋冬”、ケツメイシの“手紙”、そして、Rhymesterの“ロイヤル・ストレート・フラッシュ”。これらが同時期にチャート上位に並んでいる状況については、これからそう遠くない将来、なんらかの意味を帯びてくるに違いない。

文/狛犬

バトルのBを体現する祭典<B BOY PARK>

ラッパーである以前から類い希なダンサーとしてロック・ステディ・クルーの日本支部を主宰するCRAZY-A。彼が率いる東京B-BOYSの活動15周年をきっかけに開始したイヴェント、それが〈BBOY PARK〉だ。

 初回の98年はその名のとおり、B・ボーイ・バトルを主体としたブレイカーが主役のイヴェントだったが(テーマ曲はKICK THE CAN CREWとCRAZY-Aの“DOWN BY LAW”)、99年の第2回目からMCバトルと DJバトルを要項に加え、拡大していく。そのスゴさが喧伝された結果、いわゆるヒップホップの四大要素のすべてを体現した〈BBOY PARK 2000〉は前年の3 倍以上を集客する大盛況となった。この年から豪華な面々が参加したサントラもリリースされていく。そしてこのたび、2001年大会を振り返る『BBOY PARK 2001 新たなる道へ…』がリリースされたばかりだ。これを聴きながら、〈2002〉へ心を向けるのが正しいでしょう。

 
2000年大会の記念サウンドトラック『B-BOY PARK 2000 9/3 約束の土地で …』(デジキューブ)
2001年大会の記念サントラ『BBOY PARK 2001 新たなる道へ…』(デジキューブ)
CRAZY-Aの97年作『COLLECTION』(クラウン)

文/高橋 荒太郎

もっと出てこい!女性MC!

日本のヒップホップ・シーンの中で感じるのは、女性ラッパーの少なさだ。ECDのアルバムへの参加を経て、〈さんピン CAMP〉にも参加したHACや、95年にDJ KENSEIプロデュースでいきなりメジャー・デビューを果たしたRIM以降、長らく女性ラッパーが目立たない時代が続いた。 RIMはその後もDJ BEATのアルバム2枚に続けて客演参加し(2作目ではSLRと名乗っている)、元気な声を聴かせてくれている。RIM以降は、名古屋のNOCTURN、最近では横浜を拠点にライヴも定評のある実力派、Miss Mondayがメジャーに上がって元気に登場。また、歌っぽいフレイヴァーも盛りこみ、勢いあるラップを聴かせるLIL' AIがデビュー・シングルをリリースしたりと、ここにきて女性ラッパーの進出も目立ってきた。地方にも多くの女性ラッパーは潜在している模様だ。また、某TV番組をきっかけにチャンスを掴んだHeartsdalesの登場も、全国の女性ラッパーを刺激する可能性は大、と言えそうだ。

 
NOCTURN『NOCTURN SPARK』(Pヴァイン)
Miss Monday“MONDAY FREAK”(エピック)
LIL' AI“IT'S SO”(D4P)
Heartsdales“So Tell Me”(espionage /cutting edge)

文/狛犬

ヒップホップを育んだ<コラボレーション>たち

ストリクトリーに〈B〉な輩も、2002年が始まってしばらく経てば、ギターの轟音に合わせて首を振らずにはいられまい……ハードコア・バンド、ETERNAL BとDABOが共演を果たすからだ(すでにステージでは共演済みだ)。また、RISING SUNとZEEBRAが共演した“TOKYO G.P.”の MASTERKEYによるリミックス新装盤(これすごいですよ)もリリースされ、これらの組み合わせの相性の良さがわかる。それは、ラッパ我リヤやYOU THE ROCK★、そしてZEEBRAらがヘヴィー・ロック勢と共演したコンピ『MAD-MAXX』でも証明済みだった。逆にラップ・スタイルのヴォーカリストたちがヒップホップのトラックメイカーと組むとどうなるかという興味深い例を集めたコンピが『CONNECTED』で、宇頭巻や麻波25らの豪快なヴォーカルに刃頭やDJ TOMOがタイトなビートを提供し、なかなかの相性をみせていた。また、ZEEBRAはDREAMS COME TRUEと、SHAKKAZOMBIEはnorthern brightと、YOU THE ROCK★はノーナ・リーヴスやピチカート・ファイヴ、SILVAらとコラボレートするなど、共演すること自体はもはや突飛なものではなくなっている。DEV LARGEがLOUDNESSの高崎晃と合体したときは驚いたけど。

 ほかにも、NIPPSはSILENT POETSとの共演でアブストラクトな言語世界の新しい可能性を見せつけてくれたし、SUIKENとNUMB のブッ飛んだ共演も異常にカッコ良かった。speedometer.とWORD SWINGAZのリミックス共演も新鮮だったし、FLICKのKASHIはSunaga 't Experienceに客演…… と、例を挙げていけばキリがない。いずれにせよ、これらのコラボレーションがヒップホップの支持基盤を拡げ、ヒップホップ・ミュージックにも深みを与えているのは確かだ。

異種格闘技的なコラボレート作品を紹介。
ETERNAL B×DABO、NUMB ×S-WORDという2組の共演を収めた『ESDN』(IMPAK MUZIK)
RISING SUN 『TOKYO G.P.REMIX』(Silver)
コンピレーション『MAD-MAXX』(走馬党/ POSITIVE)
コンピレーション『CONNECTED』(FLEXY NATION)


SHAKKAZOMBIE×NORTHERNBRIGHT“GET YOURSELF ARRESTED”(cutting edge)
ノーナ・リーヴス“DJ! DJ!”(ワーナー)
HIBAHIHI+SILENT POETS 『HIBAHIHI+SILENT POETS 001』(Idyllic)
Sunaga 't Experience『IT'S YOU - REMIXES plus』(Rhythm REPUBLIC)

文/萩谷 雄一

DABOインタビュー

プラチナのベロをもつ男

オレ個人的にはシーンの動向を総括して語ることにあまり興味はない。というか、東西南北360度あらゆる局面で&途轍もないスピードで進化し続ける、恐るべき道端音楽=ヒップホップ・ミュージック(←誰がなんと言おうと、ダブと並ぶ音楽史上最大の発明!)は、もはや総括して語れるようなモンじゃなくなってきてると思うのだ。今この瞬間にも何かが何処かで激しく蠢いてるんだから。けど、そんなオレでさえ、2001年が── 日本のヒップホップ・シーンが全方位的に/完全に新たなる次元に突入したことを示す事象がさまざまな形/さまざまな場所で大噴出しまくった──意味深い年であったことは痛烈に感じてる。

 で、そんな2001年、もっとも輝きまくってた男の一人が、圧倒的完成度のソロ・デビュー・アルバム『PLATINUM TONGUE』& 怒濤の全国巡業で世のBな野郎女郎を魅了しまくったDABOであることに異論はないだろう。

 なワケで、白熱のライヴ模様&プロモ・クリップなどなどを収めた映像集『TONS OF SPITS〜PLATINUM TONGUE JAPAN TOUR 2001』をリリースしたミスター・フダツキーに話を訊いてみた。

 ──どうだった? この1年は……。

 いろんな意味で……目まぐるしかったな(笑)。(2000年の)11月30日に(Def Jam Japanと)契約して、12月1日から引っ越しを始めて(笑)。……早かったねえ。

 ──まだ感慨に浸る時期じゃないとは思うけど、なんか感慨深いモンはあるでしょ?

 うん。通帳とか見るとさ……〈ありえない〉って感じだし(笑)。このバブリーなライム長者っぷりったらナイね。

 ──8月8日の新宿・リキッドルームのRINOのパーティーん時にさ、DABOがステージに出てきて、〈いま横浜のOZROSAURUSのライヴからやって来たぜ!〉って言っててさ。なんつーのかな、ああいう……動いてる感覚? それがより一層強まってる気がするんだけど。

 昔、NITROの連中とさ──まだそう名乗ってないころだけど──3台くらいのバイクでみんな2ケツしていろんなライヴ会場ハシゴしててさ。招待なんかされてないのに無理矢理ゲストで入って(笑)。で、〈あれー? さっきもジブさん(ZEEBRA)いたのにコッチにもいるよー〉とか、〈RINOくん、ココにもいるぜ〉とかなってて。そういうの観ててスゴく楽しかったから……。いまはオレとかSUIKENやMACCHOとか新しい連中が引っかき回して、渦を作って……。

 ──そうそう、そういう感じ。で、2001年はその〈渦〉がまた急激にデカくなった気がする。単純にいいアルバムもいっぱい出たし。

 だね。で、今度は……オレとかRINOくんとか OZROSAURUSとかがオリコン10位の中に入ったらおもしろいなって感じ。とりあえず〈ラップ〉がそこに入れることはワカったから。世の中はもう準備できてる。レゲエにしろラップにしろ、そういうマイクでパフォーマンスする音楽が、かなり売れちゃいます、と(笑)。そういうことがいろんなトコで感じられた 1年だったかな。

 ──うん。

 べつに……501履くのが悪いとか誰がハードコアじゃないとか言うことじゃなく、アヴィレックスの皮ジャン着てこういうダボダボのパンツ履いてるような、ワカりやすくハードコアな人がすごく売れたりすると……もっとオモシロくなると思うんだよね。

 ──で、またそういうトコからスルッと抜けちゃうTWIGYみたいなのもいて……(笑)。

 うん(笑)。ナンバー・ナインとか着てるからねえ(笑)。おもしろいよ。

 ──そういうムキダシな連中がもっと売れて、世の中の人々の頭にインプットされてったら楽しいよなあ。

 でも、もうあきらかに誰にも止められない状況になってきてるのは確かだから。それはやっぱ全国廻ってライヴやってると身体で感じるコトでさ……。

 以前、DABOと話してるときに、「〈リラックス〉ってなにかなあ?」と訊いたら、彼は「それは……MACCHOも言ってることだけど、〈ココ〉ってコトじゃない?」と答えた。

 うん。なににも惑わされず、なにからも逃げず、自分自身として〈ココ〉にいること。それが本当の〈リラックス〉だとオレも思う。たぶん人は、そのとき最大にして最高のヴァイブを吐き出せるのだ。そして、ライヴが録音物以上に〈ココ〉を生々しく感じさせてくれる場であるのは間違いない。

 『TONS OF SPITS〜PLATINUM TONGUE JAPAN TOUR 2001』。

 そこには、DABOの〈ココ〉が詰まりまくってる。チェックせよ。

DABOのシングル
“拍手喝采”(Def Jam Japan)
“ZERO”(Def Jam Japan)
“PINKY〜だから、その手を離して”(Def Jam Japan)
“レクサスグッチ”(Def Jam Japan)




 
ビデオとDVDの両フォーマットでリリースされた、DABOの『TONS OF SPITS〜PLATINUM TONGUE JAPAN TOUR 2001』(Def Jam Japan)。ツアーの様子はもちろん、シングルのプロモ・クリップやインタヴューも収録!!

文/狛犬

ニトロ軍団……次は誰だ?

SUIKENが、またまた劇的に〈オレ節〉を轟かせるシングル“DUB”をリリース、2002年1月には“道/未知2”も放つとのことで、早くもセカンド・ステージへの予感を抱かせてくれているけど、NITRO のMCたちはホントにひとりずつの地力が高い奇跡的な集団なので、誰がソロで出てきてもまったくおかしくはない。現時点ではDABOとSUIKEN、そしてDELIと MACKA-CHINの4人がアルバム・リリースにまで至っており、GORE-TEX、S-WORD がソロ・シングルをリリースしている。さて、次は誰だ?

 次はXBS!! 例の甘咬みするようなイイ声と滑らかなフロウがいよいよソロ曲で楽しめるというわけで、これは期待できそう。さらに、その後にはアノ巨人のソロ・デビュー曲が、さらにさらに、すでにシングルはリリース済みのあのMCがアルバムに向けて動き出しているという情報もあり、2002年もNITRO軍団がシーンを賑わせてくれることは間違いなさそうだ。

 しかし、こうなると本隊のアルバムなんてもう二度と登場しないのではないか、なんてことも思うのですが、予想が裏切られることを祈ってこのへんにしておきましょう。

 
SUIKEN“DUB”(ソニー)
DELI『AQUARIUS』(Reality)
GORE-TEX“ WATER PROOF”(Guntez)

文/一之木 裕之

LUNCH TIME SPEAXインタビュー

進み続ける男の一本道

 「みんながこういう音楽に腹減ってるところにちょうど刺さるものだと思うから、とにかく食ってもらいたいね。聴けば、俺たちから出てくるものの〈止められなさ具合〉がわかるから」(GOCCI)

 言わずと知れたDEV LARGEのレーベル、EL DORADOからの12インチ音源をまとめた『BLUE PRINT MANEUVER』を夏にリリースしたのに続き、ついにメジャーからのファースト・アルバムをリリースするLUNCH TIME SPEAX。GOCCI、TAD'S ACの2MCにDJ DENKAのメンバー3人、さらに第4のメンバーとも言うべきJUNIOR 1000(APOGEE MOTORSとしてGOCCIとともに音作りを担う実弟)を加えた4人で全体像を作り上げたというアルバムの濃さは、ほかならぬ彼ら自身がいちばんよくわかっている。

 「4年間で『BLUE PRINT MANEUVER』1枚ってペースだったから気付かないでいたんだけど、その4年をここ4か月で、しかも前の楽曲以上の曲を仕上げたってことになると、自分たちの濃度がわかる」(GOCCI)

 その言葉を裏付けるアルバムは全17曲。すでに「レコーディングを始める時点で決まっていた」(DJ DENKA)というタイトルは『B:COMPOSE』。

 「Bはブレイク(壊す)のB、BボーイのB。俺たちのヒップホップに対する情熱と、世の中のエネルギーや方向性が比例してない状況を、自分たちからおもしろくしていこう!ってところでマイク握ったわけだから。まず初期衝動として壊していく、自分の好きなように作り替えていくっていう基本的なことを言ってる。それと〈be composed〉は〈覚悟を決めろ〉って意味もある。これは構築していけ、好きなようにやっていけって、自分にも向けてるし、ほかに向けた意味合いも含めて言ってる。」(GOCCI)

 なにかを壊す、壊したいという衝動を彼らがもち続けてるのは、彼らが表現できるものやセンスが受け入れられずに、ほかの「もっとダメなものとか」(GOCCI)がウケたりすることに対する怒りをいまも抱え続けてるからだろう。彼らはまだまだ満足していないし、王道たる自分たちの道を手にしたわけでもないのだ、当然のことながら。

 「守りの音楽じゃなくて攻める音楽だから。ヒップホップの基本を踏まえてなきゃダメだとか、そういうことを言いたいわけじゃないし」(GOCCI)

 結果、できあがったアルバムは、4人のタイトなコネクションが太い軸となっている。いつもどおりに、APOGEE MOTORS (JUNIOR 1000+GOCCI)と、BEAT TOWNPRODUCTION(DJ DENKA/1曲のみDJ DAISUKEも参加)でほとんどの曲の制作クレジットを分け合っていながらも、統一感とも言うべき質感が全体を覆っているのだ。

 「プロダクションが分かれてるから、それぞれ路線が違うように見られがちだけど、結局はグループ全体で一個なんですよ」(TAD'S AC)

 「でも、どう聴いてもらっても大丈夫。聴けばわかるから」(DJ DENKA)

 「グループだけで取り組んで、ここまで締まったアルバムができたことが嬉しい。どうやっても薄められない不器用さとか、ほかにない匂いを自分たちで再認識したね。いくらやってもこれだからおもしろい。これだからやめられないんだな。ほんとにどこまで行ってもファンク」(GOCCI)

 その強い絆はGOCCIのこんな言葉にも表れている。

 「いいトラックができたときに最初に浮かぶのはやっぱりグループのこと。そのクリエイティヴ魂があればグループとして相当やっていけると思う」(GOCCI)

 『B:COMPOSE』、それは彼らにとってスタート地点。まだまだ先は長いし、やれることも、やりたいこともまだまだたくさんあるはずだ。

 「表現としてもっとやれることがある」(GOCCI)

 「いまやってることよりさらに上に行こうって気持ち。アルバムを作って経験値が上がってるわけだから、いままでが1から5だとしたら、これからは6から10のことをやっていくだけ」(TAD'S AC)

 LUNCH TIME SPEAX待望のオリジナル・ファースト・アルバム『B:COMPOSE』(ソニー)

 EL DORADO時代にリリースしたシングルを集めたインディー・ベスト的な『BLUE PRINT MANEUVER』(EL DORADO)

「俺的にはまだ初期段階です。どこにも到達してないし、自分のやりたいことをやってる、ただそれだけ。方向性は考えて出来るものじゃないから。でも、アルバムを作ってみて、またすぐやりたいなって気持ちになったのは確かですね」(DJ DENKA)

 この後、彼らは全国20か所以上、3か月に渡るツアーを展開する予定。

 「レコードかけて楽しんでもらうのは当然だけど、マイク持つ人間として、リアルタイムで目の前にいる奴らとどう関係していくかってことにいちばん興味がある。レコーディングはライヴやるためのネタでしかないっていう面もあるから」(GOCCI)

 「レコード聴いて現場に来てくれて、そこで初めて繋がるっていう気持ちですね」(TAD'S AC)

 君の街にLUNCH TIME SPEAXが来たら、生の彼らを見るといい。そこにはレコードに刻まれている以上の〈なにか〉があるはずだから。

 
LUNCH TIME SPEAX待望のオリジナル・ファースト・アルバム『B:COMPOSE』(ソニー)
EL DORADO時代にリリースしたシングルを集めたインディー・ベスト的な『BLUE PRINT MANEUVER』(EL DORADO)

文/轟 ひろみ

「地方の時代」を予感?実感?させる傑作たちが登場中!!


LUNCH TIME SPEAXのニュー・アルバム『B:COMPOSE』には水戸のアクト、NATURALABILITYが参加していて、それはつまり、いままでほかのエリアから眺める程度ではわからなかったような動きが各地に存在していたのだ、っていうあたりまえのことを思ったりもするのだけれど、その動きはもうどんどん表に出てきている。2001年に顕著になってきたその流れは、恐らく2002年になんらかのデカい動きを見せるようなそんな予感すらある。ということで、現地に住んでる人にとっては〈知らなきゃモグリ〉的な存在がもう全国各地にいると思っていいんじゃないだろうか。

 その意味からすれば北海道の哲也a.k.a.マエストロがコンパイルした『J線上のエリアケースSP』なんかはまさに(全国区では)未知のメンツが詰まった興味深いものだった。ここからは駆け足で下っていこう。夜光虫やGAGGLEを輩出した仙台はやはり今後も注目ってことで、 2002年にはそれぞれのアルバムも届くはずだ。続く横浜はもう説明不要だろう。湘南からはコンピ『SHONAN UNDERGROUND STYLE』もあったし、水戸には双龍もいて、LUNCHとはまた別の流れを作っている。千葉を睨めば、誰もがノーマークだった2001年の目玉、MR.OMERI。浜松、KO-1のソロも出たBEATMASTERは、そろそろサード・アルバムが届く季節か。そして、名古屋も才能で溢れかえっている……アーティストの方向性に幅があるのも素晴らしい。長野には忘れちゃいけない1LOW、大阪では彼と密接なKENSAWの一派も相変わらず活躍中。大阪にはWORD SWINGAZやS.B.Sもいるし、関西というところでは、イルリメをはじめとするSPOTLIGHTの面々も京都の夜を賑わせているはずだ。さらに──かなり飛ぶが──餓鬼レンジャーのブレイクで福岡のシーンはどう変わっていくのだろう? なんてことを考えているあいだにも、いま挙げていないエリアから、またスゴいヤツらが出てくるのだ。

 
北海道のフレッシュな面々を集めたコンピ『J線上のエリアケースSP』( TONE CATZ)
仙台のGAGGLE『BUST THE FACTS』(Next Level)
水戸の双龍『FOE LOWRIDERZ』(Nothing Changed)
千葉のMR. OMERI『The Street of The Kingdom』(KINGDOM)


浜松のBEATMASTER『NIGHT KAHRIMAN』(Pヴァイン)
名古屋のシーモネーター& DJ TAKI-SHIT“OH! SEAMO”($TAX)
長野の1LOW『Live in da Ghetto...』(Pヴァイン)
大阪のヒップホップ〜ダンスホール・アクトを集めた『浪速FLAVOR』(KSR)


日本全国の知られざる面々が集まったコンピ『CHILL SIDE 1 』(ID)
『CHILL SIDE 2 : MELTING POT』(ID)
『RAP WARZ DONPACHI!』(東雲/ POSITIVE)

文/轟 ひろみ

GARBLEPOOR!インタビュー

飄々と舞うヒップホップ

 
GARBLEPOOR!のファースト・アルバム『page one』(GARBLEPOOR!)


 特定のものというよりは、「ヒップホップの手法、人のものをサンプリングして曲にするっていう部分」にもっとも惹かれたというHIDENKAがいて。「アブストラクト系が好きで、そこからジャズにいったり。昔はストリート・スライダーズの音の感じが好きでしたけど」という QUEMOがいて。ミックス・テープやDJセットで太いセンスを見せつけながらも「サザン(オールスターズ)はヒップホップより好きかも知れないなあ」と話すDJ ITAOがいる。もうひとり、IWASAに至っては、「長淵剛が好きで、最初はギター一本じゃなきゃ意味ナイって思ってた」という時期からレゲエやシカゴ・ハウスにハマッたりを繰り返したぐらいだというから、簡単じゃない。もちろん、各々の好む音楽の残像が見えるミクスチャーな音ですね、なんてアホなオチに着地させたいわけではない。ただ、そういう人たちが、まぎれもなくヒップホップを鳴らしていると知ったら、ちょっと胸が踊りはしないだろうか?ということだ。

 そもそも、涼しい美男系のDJ ITAOにCD-Rをもらったのは、10月ごろだった。で、聴いた→驚いた! その音を鳴らしていた4 人が、可愛くも胡散臭い響きのグループ名とキャラをもつGARBLEPOOR!だ。

 「〈garble〉っていうのは、〈実際にあるものをヒネる〉とか〈勝手に人のものに手をつける〉とか……サンプリングすることでもあるし。〈poor〉は基本的にオレら金がないから(笑)。ひねくれ者の貧乏人っていうか……ガーブルだけだったらカッコ良すぎねえか?って(笑)」(HIDENKA)

 「〈プー〉を足したのはオレです。プータローって言葉が好きなんですよ、自由な感じがして」(ITAO)

 4人には、なんともいえない絶(奇)妙な(アン)バランスがあるのだが、目の前にいる彼らは飄々と会話を楽しんでいる。というのも、全員が揃って顔を合わせたのが数えるほどだからか。

 「会うのは、ほとんどがこういう(取材の)場。4人揃って〈このメンバーでいっしょに頑張ろう!〉っていう機会があったわけじゃなくて」(HIDENKA)

 「オレ、最初は3人だと思ってた(笑)」(QUEMO)

 「だから、4人組って言われても変な感じ。だってオレがQUEMOと会うのって、今日で5回目とかだもんね(笑)」(IWASA)

 「グループっていうより、たまり場みたいなもんですね」(ITAO)

 そもそもグループ、というか〈たまり場〉の結成は、ITAOと組んで活動していたHIDENKAが、知り合いを通じてQUEMOとトラックの往復書簡をするようになり、HIDENKAいわく「仕事中にギターを弾いてたりする」バイト先の上司、IWASAに自分たちのデモ・テープを聴かせたことがきっかけになっている。

 「僕はCM音楽の制作とかもやってて、20年ぐらい卓録やってるから、テープを聴いたとき、音質に関しては難はあると思った。でもなぜか惹かれるものがあって、いっしょにやれば、おもしろいものになるっていう確信はありましたね。それに個人個人がそれぞれの作品性みたいなものをもっているのが上手く出てるんですよ」(IWASA )

 そう、音の話をしなければ。彼らのアルバム『page one』では、IWASAのギターがパーツとしても楽曲全体の骨子としても機能し、ITAOは重いボトムを敷いたうえで冷徹なコスリをキメる。QUEMOのビートが浮かぶ。そして、HIDENKAの男前な語り口が、自身も含めた四者が作るトラックを一本に繋ぐ。繋ぎ目に各人の個性が立ちこめ、それが結果的に GARBLEPOOR!の色となっている。枯れた日なたぼっこ感から、部屋の中での止まらない呑み話のようなグルーヴまで、その色味がものすごく眩しい……そんな音だ。すごく含みがあるようでもあり、シンプルに鳴っているままのようだったり。それはジャケットのありえない美しさ同様、とにかく、既存のヒップホップにはなかった。

 「人と同じことはやりたくなくて。逆に既存のものがあるから、オレらがこういうことをやれるっていうのもありますね」(ITAO)

 さて、アルバムを聴いて下さい。そうすれば次が聴きたくなるに決まっているから。

 「次のこと考えてトラックを作ってますよ。オレだけかも知れないけど(笑)」(QUEMO)

 「いやいや、みんなバッチリですよ(笑)。さっきもIWASAのギターとラップだけで1曲録ったんですけど、もうオレ、ハンパないですよ。そのムードに自分たちで酔いつぶれる感じで(笑)」(HIDENKA)。

 「次はビートルズの〈White Album〉みたいに、 4人が各々アイデアを出して、死ぬほどたくさんの曲が入ったものにしたいんです。いまは気楽に〈今日やる?〉っていう感じで作れてて、言いたいことも言い合えるし、束縛とかもない。上下関係もいらないしね。いちばん下には HIDENKAがいるから(笑)」(IWASA)。

 音と音じゃなく個と個のミクスチャー……っていう言葉は陳腐だが、間違いじゃない。だから、以下のような発言も飛び出す。

 「オレは、曲の背景とかを気にしないで音だけを楽しんでほしいんです」(ITAO)。

 「いまは音楽をボーダレスに聴いてる人が多いと思うから、〈その調子でいろいろ聴いてよ〉って思いますね」(QUEMO)。

 了解。そっちこそ、その調子で頼むよ。

文/bounce編集部

ヒップホップにアウトサイダーは存在しない……のか?

この特集をやるにあたって、これこれこういうことをやりたいんですけど、という話をいろんな人にしたときに、みんな口裏を合わせたかのように、こう言った。

 「それは、どこまでを含むんですか?」。

 確かに、なにがヒップホップ・ミュージックでなにがそうでないのか、というのは、もう線引きができないほど難しくなっているし、そもそも線を引く必要なんてない、線を引かないのがヒップホップなんだ、という人もいるかも知れない。たとえば、根本的な音作りのメソッドがブレイクビーツであればヒップホップなのか。じゃあ、打ち込みや生バンドの連中はどうなる? ほかにも、ループの上にラップが乗っていればヒップホップなのか、ヒップホップの文脈から登場した人がやることならすべてヒップホップなのか、とか。もう誰かが正解を出せるものじゃないし、結局のところ、個人的にも答えは出ない。人によって考え方は違うだろうし、そういうさまざまな考え方を受け容れるのが、ヒップホップなんだ、というのはオチにもならないが、送り手と受け手の側にさまざまな見解や考え方があって、それらすべてに正解も不正解もない、というのがいちばん近い考え方だろう、と思う。

 で、ここで紹介しているものは、さまざまな文脈から(へ)アプローチしうる、さまざまなフォルムをもつヒップホップ(を感じさせる)作品だ。ヒップホップなのか、もっと広い意味でのブレイクビーツなのか、エレクトロニカなのか、ジャズ・ファンクなのか、ロックなのか、ラップ・ヴォーカルを用いたポップスなのか、そのどれもが正しく、どれもがヒップホップなのだ(とあえて言っておきます)。もう、そういうウザいことを深く考えないで、単純に聴こえてくる音楽を自分の基準で楽しめばいい、ということなのではないだろうか。まあ、正解のないゲームのなかでのんびり揺られているのも、なかなか悪くない気がしていたりして。読者のみなさんも考えてみてください。いや、考えないでいろいろなものを聴いてみてください。

 
DJ KRUSH『覚醒』(ソニー)
THA BLUE HERB周辺のコンピレーション『 ONLY FOR THE MINDSTRONG』(THA BLUE HERB RECORDINGS)
DJ KENSEI & DJ QUIETSTORM『In Time, Like This』(中目黒薬局)
餓鬼レンジャーのPOCYOMKINが放ったソロ・マキシ“ゲンゴJETCOASTER”(東雲/POSITIVE)


DJ DOLBEEが参加したKAZAKAMI『Si-kou e.p.』(KSR)
DJ BAKU『DJ BAKU対GOTH-TRAD, SAIDRUM, Bleeder』(DNA KALACTA)
コンピレーション『響現』(スピードスター)
韻シスト『ONE DAY』(RD)


RETRO G-STYLE“Life”(rhythm zone)
GAKU MC『WORD MUSIC 2』(アンティノス)
Steady & Co.『CHAMBERS』(ワーナー)

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