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掲載: 2008/02/07
ソース:『bounce』誌 295号(2008/1/25) |
ソウルの遺産を新たな視座からリフォーマット。今回は昨年末に逝去したリズム・キングに注目!
文/林 剛 最初のロックンロール・ヒットを生んだ天才、アイク・ターナーを評価せよ!
暴君などと呼ばれ、〈恐い人〉というイメージが拭いきれなかったのが口惜しい。アイク・ターナーは、元妻ティナ・ターナーの自伝をもとにした映画「ティナ」(93年)でも冷酷非道な暴力夫として描かれ、完全に悪者扱いだった。確かにそういう事実があったことは後に本人も認めたし、麻薬問題や女性関係も凄まじかったと聞く。だが、それが彼のミュージシャンとしての類稀なセンスと力量を評価する妨げになっているのだとしたら、そんなに残念なことはない。2007年12月12日、76歳でこの世を去ったアイクは、そのちょうど1年前に他界したジェイムズ・ブラウンと同じぐらい、いや、JBに先んじて、プロデューサー、ソングライター、バンドの統率者として黒人音楽に革命をもたらした男だったのだ。
アイク(本名アイズィアー・ラスター・ターナー)は、出身がミシシッピ州クラークスデイルということもあってか、ブルースに囲まれて育った。40年代後半に結成した自身のバンド=キングズ・オブ・リズムもブルース〜ブギを基調とし、ジャッキー・ブレンストンが歌った“Rocket 88”(51年:最初のロックンロール・ヒットとされる)を皮切りにシンガーのバック演奏を担当、〈ロッキンR&B〉とでも言うようなスタイルを築き上げていく。当初はピアニストとして活躍したアイクだが、その後はギターを武器とし、あまり歌わない(歌唱力が弱い)反面、ソリッドかつブルージーなプレイで感情を伝えるかのようにギターを鳴らし、アイケッツらの面倒も見ながらレコーディングやレヴューを精力的に行った。
そんな活動の中核を成したのが、アンナ・メイ・ブロックとのコンビ=アイク&ティナ・ターナーとしての活動(60年代初頭〜70年代半ば)であることは衆知のとおりだろう。スー、ソニヤ、ケント、ロマ、A&Mなど数々のレーベルを渡り歩き、リバティに腰を落ち着けてからはロック・ファンにもアピールしたアイク&ティナ。表層的な部分では時流に乗ったアプローチも見えたが、彼らはどこまでも土臭く、根っからソウルしていた。もっとも、先述の映画で暴かれた実生活とは裏腹に、黙々とクールにギターを弾くアイクの姿は髪を振り乱して激唱するティナと比べれば地味に映ったが、あのエネルギッシュでダーティーな音は、抜群の統率力でバンドを指揮したアイクがいてこそのものだったことを忘れてはならない。リズムの帝王は、音符の上でも激しく暴れていたのである。
| | アイク・ターナーの初期音源集『Classics 1951-1954』(Classic) |
| | アイク&ティナ・ターナーのベスト盤『Proud Mary : The Best Of Ike & Tina Turner』(Capitol) |
| | ティナ・ターナーのベスト盤『All The Best : The Hits』(Capitol) |
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文/出嶌 孝次、林 剛 ESSENTIALS 永遠のリズム・キング盤
IKE TURNER'S KINGS OF RHYTHM 『Down And Out -The Cobra Sessions 1958-1959』 Pヴァイン シカゴのブルース・レーベル、コブラに残した録音をまとめた好編集盤。アイク軍団がバックを付けたバディ・ガイやオーティス・ラッシュの曲も収めており、特にベティ・エヴァレットとは好相性だ。のんびり系ブルースの“Walking Down The Aisle”やドゥワップ調の“Box Top”など、バンド名義曲の粋でプリミティヴな格好良さは言わずもがな。 (出嶌)
IKE & TINA TURNER 『Dynamite!』 Sue/Collectables(1963) ティナが歌い吠えるコンビ初期のヒット曲“A Fool In Love”“I Idolize You”を含むスー時代のアルバム(60〜61年の曲を収録)。アイケッツの前身であるアーテッツと掛け合う様子などは当時のレイ・チャールズにもよく似ていて、50年代R&Bの薫りを残している。ミッキー&シルヴィアが掛け合ったヒット曲“It's Gonna Work Out Fine”はやや異色だが、これも彼らの代表曲となった。 (林)
IKE & TINA TURNER 『The Soul Of Ike & Tina』 Kent/Pヴァイン 64年リリースの同名アルバムをベースに、65年前後に録音された楽曲を集めたケント/モダン時代の作品集。ハッキリ言って内容は抜群で、黒人音楽としてのダイナミズムはリバティ以降の作品よりこちらのほうが上かもしれない。スー時代の延長線上にある曲が目立つものの、この泥臭くヒップなR&Bこそ彼らの十八番なのだ。ブルース・マナーのスロウ・ナンバーもアイクならでは。 (林)
IKE & TINA TURNER 『Ike & Tina Turner Revue Live』 Kent/Pヴァイン(1964) JBのレヴューと双璧を成したアイク&ティナ・ターナー・レヴュー。それを音盤化したなかでも圧倒的支持を得るのが、ホームタウンとも言うべきセントルイスでのライヴを収めた本作。ティナが登場するのはJB“Please Please Please”のカヴァーなど3曲だけだが、一座のシンガーが次々登場するステージは熱気ムンムン。ゴスペルやブルースも薫る真っ黒なレヴューだ。 (林)
IKE & TINA TURNER 『Festival Of Live Performance』 Kent/Pヴァイン(1967) 64年のライヴ盤に続く、ケントからは2作目となるライヴ・アルバム。こちらは全編をとおしてティナ・ターナーが荒いシャウトで歌いまくる。その啖呵を切るようなティナの歌いっぷりにただもう圧倒されるばかりで、アイクがグァングァンと鳴らすギターもかなりの迫力だ。オリジナル曲に加え、エタ・ジェイムズやJB、レイ・チャールズのカヴァーも披露。 (林)
IKE & TINA TURNER 『The Soul Anthology』 Master Classics 68〜69年に残した4枚のアルバムをほぼ丸ごと収めた2枚組アンソロジー。ポンペイ時代の音源を中心としたDisc-1は当時のソウル・マナーに則ったタイトな作りでアイクの制作手腕が窺える逸曲揃いだ。ブルース・レーベルのブルー・サム音源をまとめたDisc-2では、オーティス・レディングのカヴァー“I've Been Loving You Too Long”や妖しくもファンキーな“Bold Soul Sister”が光る。 (出嶌)
IKE TURNER 『A Black Man's Soul』 Pompeii/Funky Delicacies(1969) このリイシュー・ジャケではバンド名義ながら、元はアイクのソロ作扱いだったファンキーなインスト・アルバム。ビリー・プレストンやバーナード・パーディを従えたグルーヴィーな演奏のヤバさは、バンド統率者としてのアイクの面目躍如といったところか。彼がJB流儀のファンキー・ソウルや後のニュー・ソウルをも包括したセンスの持ち主だったことを証明する逸品だ。 (出嶌)
IKE & TINA TURNER 『Nutbush City Limits/Feel Good』 United Artists ユナイテッド・アーティスツ時代の73/72年録音作を2in1で収めたCD。ティナのペンによる楽曲が増えてきていたこの頃の作品では、スライが始めたサイケ・ファンクに乗っかるような形で、新しい時代に向けて十八番のロッキンR&Bスタイルを鳴らしている。“River Deep, Mountain High”の再演などはその好例。ジミ・ヘンドリックス亡き後の黒人ギター・ロック快作とも言えるか。 (林)
THE IKETTES 『Soul The Hits』 Modern/Pヴァイン レイ・チャールズのコーラス隊だったレイレッツに倣ってアイクが面倒を見たのが、このアイケッツ。メンバーの変遷が複雑で謎の多い彼女たちだが、ヴェネッタ・フィールズがいたこのモダン時代の編集盤(65年の同名作にその前後の曲や別テイクを追加)では、ゴスペルっぽさを匂わせながら可憐かつディープに振る舞うグループ黄金期の歌が聴ける。当時のいわゆるガール・グループ然とした曲に加え、“Camel Walk”などアイク謹製のダンス・ナンバーも登場する名盤だ。 (林)
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文/出嶌 孝次 アイクは最後まで暴れん坊だったぜ!
91年には〈ロックの殿堂入り〉を果たすものの、〈暴力夫〉というイメージもあってか、必ずしも相応のリスペクトを得てはいなかったアイク。そんな彼も2000年代には完全復活を果たしていた。2002年の『Here And Now』がグラミー賞の〈最優秀トラディショナル・ブルース部門〉にノミネートされて、久々に高い評価を得たのだ。ゴリラズの曲にピアノでフィーチャーされるという華やかなトピックを経て、2006年の『Risin' With The Blues』では円熟した歌声とソウルフルな演奏を悠々と披露し、今度は見事にオスカーを獲得! 結果的にはそれが遺作となったものの、鬼才は最後まで燻し銀の輝きを見せつけてくれたのである。
| | ゴリラズの2005年作『Demon Days』(Parlophone) |
| | アイク・ターナーの2006年作『Risin' With The Blues』(Zoho) |
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文/出嶌 孝次 お年玉の残りを投入すべきリイシュー群!
今年も懐は寒いぞ! まずは80年代初頭に活躍したロイヤル・フラッシュの前身となるシカゴの女性グループ、ジャーリン&フレンズが70年代半ばに録音しつつもオクラ入りしていた『Best Of Friends』(Streetsoul/Pヴァイン)の公式リリース! 字数の都合で説明は省くけど……ミニー・リパートンがヴァン・マッコイと組んだような(?)清涼感と躍動感たっぷりのピュア・シカゴ・ソウル名品です。
続いてはデトロイト・ソウルの宝石、ロン・マトロックの79年作『Love City』(Atlantic/Rhino UK)で、こちらはグッとアーバンでアダルトな歌声がやるせなく迫ってきます。クールなアーバン・ファンクから大甘なアーバン・バラードまで、マイケル・ストークスのアーバン(しつこいって)なプロデューシングが最高!
最後はジャズマンが送るファンク名所巡りコンピの最新版『Carolina Funk』(Jazzman)。かのJBを育んだ土地だけあって、熱いディープ・ファンクのお宝も大盛り!という感じですにゃあ。 |
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