 |

掲載: 2008/03/27
ソース:『bounce』誌 297号(2008/3/25) |
文/久保田 泰平
いやあ、僕が言うのもなんですけど、メジャー・デビュー10周年とは早いもので。思えばキリンジっていうポップメイカーは、稀なセンスとプレイヤビリティーを備えているにも関わらず、メジャー・フィールドの〈ど真ん中〉からビミョーに道を外しながら輝きを放っていた存在だったように思います。そのセンスをもってすれば、新曲を出すたびにタモさんの横で苦笑トークもできるほど国民的知名度も獲得できたはずなんでしょうけど。
「〈狙い〉がないからでしょうね。次はコレ!だとか、いまはコレだけど来年はコッチだ!とか、いまコレをやるのはどうかと思うけどカッコイイよね、みたいなのもなかったですからね」(堀込高樹)。
「キリンジが辿ってきた場所っていうのは〈結果〉でしかないというか、アルバムの内容とかも、ピンポイントでこういうものを作ろうっていってそこに落とし込むっていうより、その時の僕と兄の〈気分〉っていうのがあって、それで出来ていくっていう感じでしかないから」(堀込泰行)。
大波には乗らなくとも、10年という決して短くはないキャリアのなかで、数多くの〈素敵〉をリスナーに焼き付けてきたキリンジ。では、彼らの10年間をざっとおさらいしてみましょうか。
| | 10周年記念リリースの第1弾として1月にリリースされたDVD『KIRINJI PREMIUM LIVE 2007 at 日比谷野外大音楽堂』(コロムビア) |
| | 10周年記念リリースの第2弾として2月にリリースされたシングル“朝焼けは雨のきざし”(コロムビア) |
|
キリンジと振り返ろう! キリンジとキリンジの課外活動(の一部)を辿る歴史年表! その1
1998
〈ワーナー暫定名盤セレクション〉と銘打たれたメジャー・デビュー・アルバム『ペーパードライヴァーズミュージック』(ワーナー)を発表したのは98年10月。 高樹「レコーディングっていうものをよくわかってなかった頃なので、プロのシステムに翻弄されていたところもあります」
1999
セカンド・アルバム『47' 45"』(ワーナー)リリース。 泰行「地味なんだけどかなりおもしろいことをやっていて、スティーリー・ダンっぽいコード使いの曲とかを書きはじめた頃ですね」 高樹「バンド・サウンドというより、アコースティックな印象がある作品だね」
この年にリリースされたインディー時代の楽曲の編集盤は『2 IN 1〜10TH ANNIVERSARY EDITION』 (おもちゃ工房)として新作『7-seven-』と同日にリイシュー。
| | 高樹作曲による“idea”収録のSMAP『BIRDMAN〜SMAP 013』(ビクター) |
2000
サード・アルバム『3』(ワーナー)からは、シングル“エイリアンズ”がスマッシュ・ヒット。 泰行「“エイリアンズ”がもっと異常に売れていたら、こればっかやらされてたでしょうね。そういう縛りがなかったから、これまで自由にできたのかもしれないですね」 高樹「ヴォリュームのある曲や重い曲が多いから、ライヴで演るごとに凄く消耗してました。演っててすり減っていく感じって初めて(苦笑)」
2001
スマッシュ・ヒットのあとは、ことのほか難産になったと語る4作目『Fine』(ワーナー)。 高樹「“エイリアンズ”みたいな曲で毎回泣かせなきゃいけないのかと気になり出しちゃった時期で」 泰行「ミドルテンポの曲が多い気がするんだけど、いま聴いてみると、そんなに悪くないアルバム。クォリティーは高いね」
初のリミックス盤『RMX』(ワーナー)も話題になりました。
| | コーラス参加した“BLACK DADA”収録のファンタスティック・プラスチック・マシーン『beautiful.』(avex trax) |
2002
セルフを含むカヴァー曲中心に構成された異色作『OMNIBUS』、リミックス盤第2弾『RMX II』(共にワーナー)をリリースしたほか、はっぴいえんど、ユーミン、ピチカート・ファイヴなどのトリビュート盤にも積極的に参加。 泰行「思い切って新しい方向に行きたいよなあっていう気持ちが強かった時期」
また、高樹が曲提供した藤井隆“代官山エレジー”ではこんなエピソードも。 泰行「初めて詞が先にある曲の依頼が来て、それまで自分たちでもやったことなかったからどうしようかって話してたら、〈これからこういう仕事をするんだったら詞先もやっておいたほうがいいよ〉と松本隆さんがおっしゃってたそうで」
| | はっぴいえんどのトリビュート盤『HAPPYEND PARADE』(スピードスター) |
| | “代官山エレジー”収録の藤井隆『ロミオ道中』(ソニー) |
|
キリンジと振り返ろう! キリンジとキリンジの課外活動(の一部)を辿る歴史年表! その2
2003
5作目『For Beautiful Human Life』(EMI Music Japan)は、どことなくアダルトな仕上がり。 高樹「わりと打ち込みが増えてきてたんで、もう一回バンドっぽいもの、良い意味で揺らぎのあるグルーヴみたいなものを考えて作りましたね」
楽曲提供では、恩師・冨田ラボに贈った高樹作詞の“香りと影”など。
| | “香りと影”収録の冨田ラボ『Shipbuilding』(EMI Music Japan) |
2004
前年に成功させた初の武道館公演を、『KIRINJI TOUR 2003 LIVE at BUDOKAN』(EMI Music Japan)として翌年にCDとDVDでリリース。
| | 高樹作曲“髪をほどいて”収録のbird『vacation』(ソニー) |
 | | 堀込泰行・ハナレグミ・畠山美由紀“真冬物語”(EMI Music Japan) |
| |
2005
禁断の封印を解禁! 9月に泰行のソロ・プロジェクト=馬の骨のデビュー・アルバム『馬の骨』を、11月に高樹のソロ・アルバム『Home Ground』(共にコロムビア)を発表し、各々の個性をより露わに。
泰行「自分たちでプロデュースしたいっていう欲求も強くなってたし、前の年あたりから何とかしたいなあって気分があって。でまあ、お互いソロでやってみて、アルバム単位で自分の好みを反映させるというか、いままで積み上げてきたものを一度ガラガラガラッと崩してもう一度組み直すみたいなことをやってみようってことになって。結果、ソロをやったことで閉塞感がなくなりましたね。とにかく、自分でアルバムを作ってみて、自分のできることもできないこともより明確になりました」
| | 高樹作曲による“ロマンチック”収録の土岐麻子『Debut』(Pacific/LD&K) |
2006
キリンジとしては実に3年ぶりとなったアルバム『DODECAGON』(コロムビア)。 高樹「それまで散々アナログっぽい音でやってきてたんで、ここではわりと〈時代〉のほうに寄っていくというか、思いっきり振り切ったものにしようって」 泰行「シンセ率が高いんですけど、大体何やってもキリンジになるなって。苦労したけど、結構イイものができたんじゃないかと思ってます」
2007
| | 高樹作詞/泰行作曲による“それもきっとしあわせ”収録の鈴木亜美『CONNETTA』(avex trax) |
2008
| | キリンジのニュー・アルバム『7-seven-』(コロムビア) |
「取り掛かる前は、デモっぽいものを出してアルバムで完成形、っていうことも考えてたんですけど、そうもいかないらしいと。単純に(限定盤を除けば)盤にならないだけで、一曲一曲のクォリティーをいつもどおり求められてる感じがわかったんで、まあ、そういうものになりました」(泰行)と振り返る7か月連続配信シングル、さらに続いたCDシングル“朝焼けは雨のきざし”(カップリングには昨年の野音ライヴ音源を10曲収録!)を含む通算7作目のニュー・アルバム『7-seven-』。全12曲中8曲がシングルって、こりゃ25周年記念盤が巷で話題の『Thriller』か!?って話なのですが、それだけにキリンジのチャームが1時間弱でわかるような、キャッチーでありながら聴き応えのある出来映えとなったようで。
「連続でシングルを配信するっていうのもあって、気分的に長い曲とか暗い曲とかを書くモードに2人ともなってなかったんですよね。なので、アルバム用の曲も、配信曲とあんまり変わらない〈シングル感〉というか〈粒揃い感〉のある曲が自然に集まって。実はこういう感じのアルバムは初めてかな?」(泰行)。
「最終的にアルバムを作るために曲を集めたっていうわけじゃないんですよね。それこそオールディーズのアルバムって、シングル曲がいっぱい入ってるじゃないですか。ああいうノリに近いと思います。あと、わりと生音の比率が『DODECAGON』に比べたら増えてる。以前の音に戻ったっていうことなんでしょうけど、生っぽい音を一度置いといて作った『DODECAGON』の後だから、生楽器のアンサンブルなんだけど、ちょっと変わった感じにはなってるんですよね。まあ、それ以上にコンセプチュアルなものは今回のアルバムにはないです。コンセプチュアルって言うと聞こえはいいですけど、わりと言い訳がましいところがあるじゃないですか(笑)。今回は純粋に、質の高いポップソングだっていうこと以上の批評を必要としない音楽がいっぱい集まってるアルバム。だからタイトルもこんな感じでいいんじゃないかと思って」(高樹)。 |
この記事を flogに追加
この記事をはてなブックマークに追加
|