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掲載: 2008/05/01
ソース:『bounce』誌 298号(2008/4/25) |
野菜も食べようぜ!
文/出嶌 孝次
ショウではスーザフォン奏者も従えて大所帯のダイナミズムを見せるルーツのように、多くのヒップホップ・バンドはライヴとスタジオ録音で方法論を使い分けている。一方で、リズム・ルーツ・オールスターズを迎えたゴーストフェイス・キラーのように、ヒップホップのスタジオ録音にジャズ〜ファンク・バンドが起用される逆の例も増えてきた。ダップ・キングスを従えたマーク・ロンソンの成功も踏まえて、コニー・プライス&キーストーンズやオルゴンなどの構成員が重宝されているようだ。
しかし! そんな状況とは無関係に、ソウライヴやジョン・スコフィールド・バンドなどで活躍するジャズ〜ジャム畑の敏腕プレイヤーたちが、ファイアー・デプトの名で多くのヒップホップ作品を手掛けてきていることはさほど知られていないようだ。今回はそのメンバーを中心としたファンク・バンド、レタスの新作リリースに合わせて、彼らの多面的な魅力を分断することなく紹介してみよう。
| | ソウライヴの2007年作『No Piace Like Soul』(Stax /Concord) |
| | レタスの2002年作『Outta Here』(Velour) |
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ファイアー・デプトって何?という人は、彼らの知られざる仕事歴をどうぞ〜↓
JEAN GRAE 『This Week』 Babygrande(2004) リリカルな新世代の女性MCとして期待を集めていた彼女のデビュー作にて、アダム・ダイチ主導のビート・コンシャスな“Fyre Blazer”を制作。エリック・クラズノーいわく「ファイアー・デプトとしていっしょに仕事をした最初のアーティスト」だって。
THE BEATNUTS 『Milk Me』 Penalty(2004) ダンスホール・レゲエも導入したお下品なぶっかけ盤として記憶される一枚だが、半数以上の曲でクラズノーがギターや鍵盤を演奏しているから驚き。なかでもホーンが轟く“Buggin”はライアン・ゾイディスとラショーン・ロスも大活躍のレタス状態!
O.C. 『Smoke And Mirrors』 Next Mill/Hiero Imperium(2005) NYを代表するリリシストの意欲作にて、“I'm Da Boss”をクラズノー&ダイチ主導でプロデュース。ダークな極太ビートが力強いマイク捌きにシリアスな雰囲気を加味するなか、緊迫感を煽るラショーンの鋭いトランペットがカッコイイ。
DJ QUIK 『Trauma』 Mad Science(2006) 昔から生音の艶やかなスムースネスを追求してきたクイックらしく、ここではエリック・クームスをギター&ベースに全面起用。ファイアー・デプト名義ではないものの、ダイチやアダム・スミルノフが馳せ参じて活き活きとセッションを聴かせる局面も。
TALIB KWELI 『Eardrum』 Blacksmith/Warner Bros.(2007) ソロ・デビュー時からクラズノーと組んでいた彼だが、この最新作でファイアー・デプト絡みは5曲に急増。ジャスティン・ティンバーレイクやマッドリブのアイデアにオーガニックで音楽的な側面を付加したのはクラズノー&ダイチだ。
REDMAN 『Red Gone Wild: Thee Album』 Def Squad/Def Jam(2007) ここではダイチが“Sumtn 4 Urrbody”など3曲で手堅く腕を振るっている。もともと強烈なファンカデリック・フロウを武器にする主役だけに、ファイアー・デプト周辺のダイナミックなサウンドとは相性が良くて当然だろう。
50 CENT 『Curtis』 G Unit/Shady/Aftermath/Interscope(2007) クラズノーいわく「友達のD・プロスパーがGユニットのA&Rで、50にビートを聴かせたら気に入った」ことで、幕開けを迫力たっぷりに飾る“My Gun Go Off”をプロデュース。動きの激しいエミネム風のビートが走り、独特のウネリを耳に残す。
SNOOP DOGG 『Sensual Seduction』 Doggystyle/Geffen(2008) ファイアー・デプト名義の最新仕事がこちら。やっとCD化されたスヌープのヒット曲にリミックスを提供! オリジナルよりもブリブリ度を増強した鬼太なライヴ・グルーヴに、新たに加えられたロビンの奇矯な歌がマッチしている。
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エリック・クラズノーが語るレタスとファイアー・デプト
「だって、ヒップホップはジャズやファンク、それにソウルに由来してるだろ? だからその繋がりはごく自然なことだよ」。
そう語るのはソウライヴのギタリストでもあるエリック・クラズノー。以前からヒップホップ作品に関わってきた彼は、ファイアー・デプトの始まりをこう話す。
「2002年頃かな、最初はアダム・ダイチ、エリック&タイラー・クームスと始めたんだ。全員がその頃トラックメイクに取り組んでいてね。俺とアダムはNYにいるからよくいっしょにやるようになった。ニール・エヴァンスを加えてライヴもやったけど、現時点ではほとんどアダムと俺だね」。
いま名前の出たアダム・ダイチはジョン・スコフィールドらのバックを支えるドラマー、エリック・クームスは「ブリトニーの曲とか、毎日ラジオでアイツの演奏を聴けるよ!」とクラズノーが語るほどの売れっ子セッション・ベーシスト、鍵盤奏者のニール・エヴァンスはソウライヴの同僚となる。で、いま挙げた面々にアダム・スミルノフ(ギター)とライアン・ゾイディス(サックス)、ソロ作も発表したばかりのサム・キニンジャ−(サックス)を加えた7人組こそ、今回6年ぶりにセカンド・アルバム『Rage!』を発表したレタスだ。なお、第8のメンバーとしてデイヴ・マシューズ・バンドのラショーン・ロス(トランペット)もほぼ全曲に参加。いずれも名のあるプレイヤーばかりだが、メンバーのそれぞれにとってレタスは特別なものだという。
「そもそもは15、16歳くらいの時にバークレー音楽院のサマー・プログラムで出会ってすぐに仲良くなった連中なんだ。結局みんなバークレーに進んだから入学後すぐに結成したのがレタスさ。こんなに大勢のメンバーがいるから、どんなファンク・ミュージックだってプレイできるし。とにかく楽しんで、好きな音楽に忠実でいようっていうのが基本姿勢さ」。
今回の『Rage!』では、ワッツ110番街バンドの定番カヴァー“Express Yourself”をはじめ、ヴォーカルにドゥウェレを迎えたカーティス・メイフィールド“Move On Up”のカヴァー、さらにジャズ・ファンク好きならあっさり昇天しそうな爆裂ブロウ系のナンバーも満載。が、話の流れ的に注目すべきは故J・ディラの姓を冠した“Mr. Yancey”だろう。
「そう、ディラに捧げた曲だよ。採用はされなかったけど、タリブ・クウェリ用の曲を共同で制作したことがあるんだ。実際には会えなかったけど、ディラから送ってきたトラックに俺たちが演奏を合わせてね。“Mr.Yancey”ではファンクとヒップホップの繋がりも表現したかった。レタスの連中はいつもヒップホップを聴いているから、他の曲にもヒップホップの感性があると思ってるよ」。
現在クラズノーは初のソロ作を制作中で、ソウライヴも次作を企画中、二ールは映画のスコアを書き、アダム・ダイチはリーダー作を録音……と各人が多忙を極めているようだが、クラズノーは「レタスはずっと続くよ」とキッパリ。
「USのフェスもいくつか決まってて、日本の〈フジロック〉にも出るよ。今後もできるだけライヴをしていきたい。とにかくみんなこのバンドが大好きだからね!」。
| | レタスのニュー・アルバム『Rage!』(Velour/Pヴァイン) |
▼関連盤を紹介。
| | サム・キニンジャーの2008年作『Anthem』(BMG JAPAN) |
| | ドゥウェレの2005年作『Some Kinda...』(Virgin) |
| | J・ディラの2006年作『Donuts』(Stones Throw) |
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