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掲載: 2008/08/21
ソース:『bounce』誌 301号(2008/7/25) |
オイ、夏だろ? 休みじゃねえの? 天気はどうなんだよ? 晴れてんじゃん! じゃあ、今日はスムースなウェッサイ・チューンをクルマに積み込んで、クルージングと洒落込むとするか! ナニ? ウェッサイって何なのか、実際のところよくわかんないって? そんなのオレに任せとけよ! 今日はオレのナヴィゲートでウェッサイがっさい紹介してやるぜ!!
文/DGノックアウト
そもそも〈ウェッサイ〉とは〈Westside〉のことさ。LAを中心としたUS西海岸の、Gファンクが確立されて以降のある種のヒップホップ・アクトを指してそう呼ぶわけだね。ただ、直訳すると〈西側〉になるってことだから、USでは普通に〈West Coast〉とか言われることが多い。それが何に対する〈西側〉なのかというと……そいつは言うまでもなくイーストコースト〜NYに対する〈西側〉という強い意志表明だったんだよな。この言葉が明確に用いられるようになったのは、西海岸のヒップホップが独自の発展を遂げて巨大化し、東海岸との対立構造ができあがった90年代半ばのことだね。結局のところ在NYのレーベルやメディアが多いヒップホップ界はNY贔屓だから、そんな状況に対してフラストレーションを感じるアーティストも多かったってわけさ。ドクター・ドレーらが確立したメロディアスなGファンクのフォーミュラは〈崇高なサンプリング・アートと詩情に溢れたラップを合致させたNYのヒップホップより程度が低い〉とか、当時は本気で言われてたんだぜ……リリックが直接理解できてない人が多いはずの日本でも。
で、もっとも怒っていたのがコモンと抗争したりしていたアイス・キューブだったんだ。彼が結成したウェストサイド・コネクションで執拗に〈ウェッサイィ〜〉とアピールしていたのが他のアーティストにも飛び火し、日本ではカタカナ化したわけさ。
そんなふうに加熱しすぎた東西抗争の結果、96〜97年に2パックとビギーが亡くなると、ギャングスタなスタイルをウリにしていたウェッサイ系のアーティストは停滞期に入っていく。99年にドクター・ドレーが歴史的なクラシック『2001』をリリースしてふたたび西の連中が盛り返すんだけど、その頃から日本でもウェッサイ独特のメロディアスな心地良さやクルージング感のあるグルーヴが普通に愛されるようになり、言葉としても〈西側〉という意味を離れてサウンドの傾向を伝える言葉として定着していき……現在に至るわけだ。とまあ、こんなムダ知識よりもさっさと全部聴いてくれよ! ウェッサイを知らないオマエらは夏の楽しみをひとつ失ってるようなモンなんだからな!
| | DJ FILLMOREのミックスCD『V.I.P. Presents WESTSIDE CRUISIN' BEST』(EMI Music Japan)。定番曲が山盛りだぜ!! |
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DR. DRE 『The Chronic』 Death Row(1992) 本作がなかったらウェッサイも何もねえ! 歌心のあるベースを敷き詰めた重心の低いビートを満載してGファンクのフォーマットを完成させた、音楽史上に残るクラシック! “Let Me Ride”などの名曲だらけだし、スヌープやDPGの面々ら無名の才能ばかりを集めて作ったという事実にも驚くね。
COMPTONS MOST WANTED 『Music To Driveby』 Orpheus/Epic(1992) ドレーのいたNWAと並ぶコンプトンの2大勢力だったCMWの傑作だ。片割れのMCエイトはこの後でソロに転向してシーンに多大な影響力を発揮。ゲームやヤング・ジーズィと聴き間違える奴もいるかもな。ジャケどおりクルマで楽しんでくれ!
KID FROST 『East Side Story』 Virgin(1992) ローライディンなジャケを見りゃ、格好イイってわかるだろ? チカーノ・ラッパーの首領、フロストがキッド・フロストと名乗っていた時期の2作目にしてブレイク作だ。まだ速射チューンも多いけど流石にソウル系のネタ曲は美味。パースエイダーズ使いの“Thin Line”なんてサイコーに甘いぜ!
DOMINO 『Domino』 Def Jam(1993) ほとんど鼻歌みたいなユルユル&ヘナヘナのフロウを引っ提げて現れたロングビーチ発のレイドバッカーで、高校時代は別掲のフォーサムやスヌープとつるんでいたそうだ。フックがキャッチーな大ヒット曲“Ghetto Jam”を筆頭に、聴いてるだけでトロントロンの良い気分になりそうなリラクシン盤さ。
SNOOP DOGGY DOGG 『Doggystyle』 Death Row(1993) ドレーが主演にスヌープを据えて作り上げた、これまたクラシック! よりメロディアスかつボトム・ヘヴィーなGファンクのスタイルがここで完成され、当時の西モノはGファンク一色に染め上げられるわけだ。クルージングの定番“AIn't No Fun”は何度聴いても褪せない爽快チューンさ!
LIGHTER SHADE OF BROWN 『Layin' In The Cut』 Mercury(1994) 本作に収録の、オールド・スクールの定番ネタを用いた“Hey, DJ”(マライア・キャリー“Honey”の元ネタだぜ)にて華々しくブレイクしたチカーノ・デュオ。ODMとDTTXの2人ともソロで活躍中だが、イキの良いファンクに乗って弾ける若さは本作だけの輝きだね。
THA DOGG POUND 『Dogg Food』 Death Row(1995) スヌープに続いてデス・ロウから送り出されたダズ&コラプトのファースト・アルバム。以降も喧嘩と仲直りを繰り返している仲良しデュオだな。ここではほぼ全曲をダズが手掛け、ドレーとは一味違うGファンク・マナーが施行されている。ネイト・ドッグの歌も最高に心地良いぜ〜。
2PAC 『All Eyez On Me』 Death Row(1996) 実はNY出身だったレジェンドが生前最後にリリースした2枚組の超大作だ。ウェッサイのレイドバックしたビートにここまで映えるフロウもそうはないな。ドレー製の“California Love”“Can't C Me”といった極太Gファンク、ダズ渾身の爽やか曲“All About U”など、ドライヴには欠かせねえ名曲ばかりさ!
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WESTSIDE CONNECTION 『Bow Down』 Priority(1996) 序文で触れたアイス・キューブの怒りユニットがこれ。仲間のWCとマック10も眉間に縦皺を寄せて吠えまくりさ! ただ、そんなコワモテでも音楽としては非常にスムースで楽しませてくれるのがウェッサイの良いところだね。こんなジャケでもメロウ曲はしっかり用意されてる!
SOUTH CENTRAL CARTEL 『All Day Everyday』 GWK/Def Jam(1997) 現在もサウス・セントラルで活動する20年選手チームだが、ひとつのピークが本作にあったのは誰もが認めざるを得ないだろうよ。贅沢にソウルのネタ使いを凝らし、ストリート感たっぷりのラップに甘〜いLVのヴォーカルをトッピング……いますぐ聴いてみな!
N2DEEP 『The Golden State』 40 Ounce(1997) ベイエリアのヴァレホから登場した大物チカーノ・デュオのヒット作だ。片割れのジェイ・ティーは現在も活躍中だが、ザップなどのファンク曲を楽しく引用する術はこの頃に培われたんだな。本作には準メンバー的な位置付けで、この後ブレイクするベイビー・バッシュも参加してるぜ!
TQ 『They Never Saw Me Coming』 Epic(1998) ウェッサイ・シーンではラッパーもシンガーも同じスタンスで活動することが多いんだが、TQはまさに〈歌うギャングスタ・ラッパー〉ってとこかな。この初作からは地元愛を情感たっぷりに歌い上げた“Westside”が大ヒット。狂おしいほどの哀愁に胸がギュッとなるね……。
WARREN G 『I Want It All』 G Funk/Restless(1999) 義兄のドレーとは違う方向から自己流のAOR的なGファンクを作り出した才人だ。この3作目はどこを切っても完成度の高いメロウ・チューンしか出てこない驚異の名盤で、ウェッサイ復権を印象付けたんだ。デバージ“I Like It”をこれ以上ないほどスムースに響かせた表題曲で悶死せよ!
DJ QUIK 『Balance & Options』 Profile/Arista(2000) スヌープの最新作でも腕を振るっていたグルーヴ・マスターの最高傑作がこちら。トニ・トニ・トニあたりにも通じる艶やかな生音使いに、エロくて柔和な高音のラップ、さらにはトークボックスまで使いこなすんだから……この甘味王ぶりには酔わされるしかないだろ!
CHICO & COOLWADDA 『Wild 'N Tha West』 MCA(2001) ドレーの弟子だったグローヴが見い出したデュオ。イヴリン“シャンペン”キング使いでネイト・ドッグが歌いまくる軽快な“High Come Down”、ミニー・リパートンを声ごとベタ使いした反則悶絶メロウな“Inside My Love”などの名曲揃いだし、クルマに標準装備すべきだね。
DAZ DILLINGER 『This Is The Life I Lead』 DPG(2002) クラシック! スヌープやコラプトらの仲間から距離を置かれていた時期のダズがほぼ独力で作り上げた別格の逸品だぞ。ボトムを現代的にアップデートしながら、Gファンクとしての快楽性を格段にアップさせる手腕の凄さといったら……まずは“Keep It Gangsta”を流して街へ出ろ!
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MR. CAPONE-E 『Dedicated 2 The Oldies』 Hi Power(2003) もはや定着した感すらある日本のチカーノ・ラップ熱は、本作をきっかけに始まったんじゃねえか? ドゥワップやチカーノ・ソウルなどへの敬意をGマナーの楽曲と具体的に融合する大胆なアイデアも素晴らしく、甘く切なくやるせない大名曲の連打で骨抜きにされちまうぜ。
KNOC-TURN'AL 『The Way I Am』 Elektra(2004) ドレーがエミネムの次にブレイクさせるはずだった(?)超リラクシン・フロウのラッパーだ。不幸な音源流出を経て登場した本作は、大ヒットには至らなかったものの、新世代ならではの歌うようなマイク捌きが病みつきになる! いま聴けばチンギーあたりとの共振性も感じられるな。
FINGAZZ 『Classics For The O.G.'s Volume 1』 Eastside(2005) チカーノ・ラップに軸足を置きつつ、プロデューサー/トークボクサーとして幅広いフィールドに進出しているフィンガズ。これはアル・グリーンらのソウル名曲を全編トークボックスでカヴァーしたヤバすぎる一枚で、夕暮れ時が似合うエロい風情が醸されているね。
THE GAME 『The Documentary』 G Unit/Aftermath/Interscope(2005) ウェッサイに新時代到来を告げたエースのメジャー・デビュー作だ。東海岸モノからも巧みにアイデアを採り入れ、ドレーの手掛けたハイブリッド・ビートとガッチリ融合。当時は〈西っぽくねえな〜〉と思ったけど、やっぱりウェッサイの薫りは濃厚だよな。
ROSCOE 『I Luv Cali』 Streetlight/SMC(2006) コラプトの弟で、ウェッサイ・アンセムとなった“I Love Cali(In The Summertime)”で知られるロスコー。このソロ2作目では全編のプロデュースをフィンガズに委ね、甘酸っぱさが込み上げてくるようなビートに乗せて色気のある語り口を聴かせる。曲名はアレだが、“Sex Buddy”が最高!
『COAST II COAST 02』 HOOD SOUND /ユニバーサル(2008) 日本全国に存在するご当地ウェッサイ(?)アーティストをDS455がピックする形で作り上げたコンピ。今後の青田買いにも参考になるな。いまや本場のウェッサイ以上に多様なカラーを備えたアクトが各々の活動を繰り広げている……そんな状況はオレらも誇るべきものだぜ!
NORTH COAST BAD BOYZ 『ANALOG』 DIG DA GOOD I.M.C.(2008) 最後はウェッサイ流儀を個性的に発展させている札幌の彼らを挙げておくぜ。定番のメロウものも男気ファンクもガッチリ披露し、トークボックス・レゲエなんて独自色まで見せてくるんだから凄いよ。これは劇的な曲を選りすぐった一枚で初心者にもオススメだね。
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文/DGノックアウト Dix-T レイドバック・フロウがクセになるぜ!!
序文で話したように、いまや日本中のあちこちにウェッサイ志向のヒップホップ・アクトはいるわけだが、これまではやはり横浜や名古屋、札幌、水戸といった〈先進地〉がランドマーク的なアーティストを輩出する例が多かったんだ。で、ここで紹介するDix-Tは埼玉をレペゼンする新進ラッパーさ、ってオレも知らなかったんだけどな。ファースト・アルバム『Rut Sheep』で聴けるヌキを弁えた超レイドバ〜ックな語り口は、日本だとなかなか求められなかったもので心地良いぜ! そんなラップを支えるバックの連中も腕利き揃いなんだが、オレ的にはメロウな“Loosen up & Slow down”や80'sファンク風の“You jus my HOMIE”などを仕立てたMoss.keyというトラックメイカーが凄く気になる。今後にも期待だな!
| | Dix-Tのファースト・アルバム『Rut Sheep』(KSR) |
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