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第5回 ─ 「音楽配信」はいまどうなっているのか?


掲載: 2002/12/12

2003年、日本でも聴き放題サービスがスタート!?

文/津田 大介

音楽配信のこれまでとNapsterの終焉

一口に音楽配信といっても、米国と日本ではまったくといっていいほど、事情が違う。特に米国の場合、学生や低年齢層を中心に広まっていたNapsterの存在が音楽配信ビジネスに大きく影響を与えた。レコード会社が有料の音楽配信ビジネスを始めようにも、Napsterで無料の(違法)MP3ファイルがダウンロードできる状況がある限り、ユーザーはまったく有料サービスに見向きもしない。そこで、全米レコード協会(RIAA)はNapsterを運営するNapster社に対してサービス停止を求める大規模な裁判を起こし、昨年夏に事実上Napsterは敗訴することになった。

 Napster社は裁判の過程で著作権保護技術を盛り込むなどして、“合法的”な音楽配信サービスへの転換を目指していたが、RIAAは頑としてこれを受け付けず、つい先頃会社を清算させることとなった(今年の5月に訴訟の原告側にも名を連ねるBMGエンタテインメントの親会社独ベルテルスマンがNapster社を買収すると発表したが、9月に米連邦破産裁判所がNapsterの再建策を却下。その後、CD-Rの書き込みソフトメーカー米ロキシオがNapsterの資産を530万ドル相当の現金および株式で買収し、Napster社の技術特許を含むすべての知的資産を取得した)。

 しかし、Napsterがなくなったからといって、ファイル交換ソフトすべてがなくなったわけではない。Napsterがなくなった後もユーザーはP2P(ピアツーピア)技術を使うことで運営母体を持たずにファイル交換が行えるGnutellaや、KazaaWinMXなどに流れており、“音楽を無料でダウンロード”することに慣れてしまっている。実際、レコード業界はNapsterが登場した直後の99年6月に「マディソン・プロジェクト」と呼ばれる1曲ごとにダウンロード販売を行う形の音楽配信実験を行っていたが、結局そうした形の単曲ダウンロード配信がユーザーに定着することはなかった。

「聴き放題」型音楽配信サービスの登場

2001年に入ると、Napsterに代表されるP2Pサービスを訴える一方で、レコード会社もNapster的な「聴き放題」型の音楽配信サービスを模索するようになる。5大メジャー(米ソニー・ミュージックエンタテインメント、米ユニバーサルミュージックグループ、米ワーナーミュージックグループ、英EMIレコードミュージック、独BMGエンタテインメント)と呼ばれる大手のレコード会社は、それぞれグループを形成し、年末には「pressplay」と「MusicNet」と呼ばれる独自の音楽配信サービスを開始した。

 pressplayは、ソニー・ミュージックエンタテインメントとユニバーサルミュージックグループの合弁事業としてスタートした音楽配信サービス。毎月利用できる楽曲数に応じて4つの料金プランを用意し、プランや楽曲によってはCD-Rに楽曲を書き込むこともできる。一方のMusicNetは、ワーナーミュージックグループ、BMGエンタテインメント、EMIレコードミュージック勢が始めた音楽配信サービス。ワーナーミュージックの親会社でもある米AOLと米リアルネットワークス社と提携し、現在はリアルネットワークスの有料コンテンツ配信サービス「RealOne」を使ってサービスを提供している。

 古くからデジタル音楽配信サービスを提供してきた米Listen.comも、2001年末に「Rhapsody」と呼ばれる会員制の音楽配信サービスを開始。こちらはレーベルの垣根なく5大メジャーと提携し、楽曲を配信している。こうした流れを受けて、当初自陣営の楽曲のみを提供していたpressplayやMusicNetも現在では5大メジャーすべてと楽曲の提供で提携を行っており、「コンテンツ」という意味ではそれぞれのサービスの違いはなくなりつつある。今後は純粋にサービスの使い勝手や料金などで勝負が決まっていくのだろう。2001年は、Napsterのサービス停止や、5大メジャーによる本格的なサービス開始など、音楽配信にとって大きな「転機」となる年だったと言える。

聴き放題サービスは日本でも定着するの?

米国のように「オンデマンド&聴き放題」というサービスモデルが主流になった米国と異なり、日本はいまだに楽曲ごとに購入するダウンロード配信が主流だ。1999年12月に大手レコード会社の中で一番初めにダウンロード型の音楽配信サービスを開始したソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)の「bitmusic」は、開始から3年が過ぎようとしているが、ダウンロード(購入)数は思った以上に伸びていないようだ。他社もこうしたダウンロード型音楽配信サービスに追随したが、どこも結果は似たようなもの。1曲あたりの価格が300〜400円程度とレンタルCDと比べて「割高感」があるということや、曲を購入するごとに決済を行わなければならないなど、利便性の面での問題が多いことも不振の原因なのだろう。もちろん、ヘビーなネットユーザーの中にはファイル交換ソフトを使って違法なMP3ファイルをダウンロードしている人もいる訳で、それが影響が与えている面もあるのだろう。

 ただし、こうした“停滞感”も今年の後半になって、エイベックス、SMEJが1曲あたり200円まで値下げしたことで、変わりつつある。実際に、価格が下がってからはダウンロード購入数も増えているそうだ。結局のところ、ユーザーにとって購入を決断する一番のポイントとなるのは「価格」なのだろう。SMEJは、価格を下げるだけでなく、bitmusicの登録曲数を現在の500曲から廃盤のCDを中心に年内に2000曲まで増やし、新たなユーザーの獲得を目指しているとのことだ。

 興味深いのは、今年の11月に米国で自ら聴き放題型のサービス(pressplay)を運営するユニバーサルミュージックが、ダウンロード型の単曲販売サービスを開始したことだ。提供される楽曲数は、同社が保有するほぼすべての楽曲となる4万3000曲にも及び、1曲単位だけでなく、アルバム単位でも販売される。楽曲の価格は1曲99セント、アルバムは9.99ドルと、格安とまでは言えないものの、なかなか戦略的な価格設定だ。また、ダウンロード購入した楽曲はCD-Rに記録することもでき、日本のサービスと比較してもユーザビリティーの高いサービスになっている。ヘビーな音楽リスナーは、会員制サービスのpressplay、毎月会費を払うまではいかないライトな音楽リスナーは、会費のいらないダウンロード販売というように、同じ音楽配信サービスでもユーザー層の「棲み分け」を狙っているのだろう。

 現在はダウンロード販売型の音楽配信サービスしか存在しない日本だが、来年には聴き放題型のサービスも登場する見込み。先日ソニー系のプロバイダーSo-netは、会員向けの会報誌で来春に定額制のオンデマンドストリーミング音楽サービス「So-net Juke」をスタートさせると告知した。楽曲数は年間で5万曲を予定しており、スタンダードなクラシックから最新のJ-POPまで幅広くカバーするとのこと。当面は系列のSMEJの音源が中心になると思われるが、レーベルの垣根を越えた動きに期待したい(ただし、現在のところ具体的な月額料金やサービス開始時期は今のところ明らかになっていない)。

 ほかにも、リアルネットワークスが米国で提供している有料会員制サービス「RealOne SuperPass」(MusicNetもこれに含まれている)の日本版が年内中から2003年初頭に開始される予定(現在、リアルネットワークス社が国内のレコード会社などと調整作業を行っている)。また、listen.comが米国で提供している「Rhapsody」も、同様のサービスを日本で始めることを検討中という話だ。
 日本と米国ではネット上の楽曲配信の著作権料や、法律などが異なっており、米国のように一気に音楽配信の普及が進むということは考えにくいが、So-net JukeやRealOne SuperPassがユーザーにとって魅力ある価格で提供されれば、一気にブレイクする可能性もある。来年は日本で本格的に音楽配信がブレイクする年になるかもしれない。音楽ファンはレコード会社やコンテンツプロバイダーの動向を要チェックだ。



Kazaa
WinMX
pressplay
MusicNet
RHAPSODY

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