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第7回 ─ “ロング・ゴーン”ジョン――W・ストライプスのレーベルオーナー


掲載: 2003/01/23
更新: 2003/01/24

D.I.YスピリットあふれるUSインディーレーベル、Sympathy for the Record Industry。ホワイト・ストライプスを輩出したことでも知られる同レーベルのオーナーは、親日家にしてアートフィギュア・コレクターにして音楽マニアという幅広い顔を持つ。今回は、このレーベル・オーナーにキースがインタビュー。知られざる彼の半生とはいかなるものなのか…。

文/キース カフーン



「Sympathy for the Record Industry(以下Sympathyレーベル)」とは、あの伝説的反権力主義者、“ロング・ゴーン”ジョンが、たった一人で運営しているレコードレーベルだ。このレーベルでリリースされるものは「よそでは出さないけれど自分が聴きたいもの」というジョンの好みがダイレクトに反映されたものばかり。彼はこれを、「はみ出したソウルを持った人たちのための、音楽的救済手段」と呼んでいる。パンクやガレージロックなど、リリースされるものには方向性があるように見えるが、実際はこれまでリリースしてきた700以上ものアイテムには幅広いジャンルの音楽が入り混じっている。もちろん、その中には数百枚ほどしか売れなかったタイトルも存在する。しかしSympathyレーベルは、現在最もホットなバンド、ホワイト・ストライプスのオリジナル・レーベルとしても知られているのだ。

ジョンは音楽マニアであると共に現在アート界で急速にその名を広めている画家、Mark Rydenの活動を初期から支持するなど、熱烈なアート・コレクターとしても知られている。Mark Rydenは、大きな瞳の子供達をモチーフにした作品が特徴的な画家、Margaret Keane唯一の作品集を編集し、Sympathyレーベルのコンピレーション盤『Their Sympathetic Majesties Request』のジャケットを手掛けたこともあるアーティストだ。ジョンはまた親日家でもあり、ティーンジェネレイト、スーパースナッズ、5678'sといった日本のアーティスト達のアルバムをSympathyレーベルからリリースしている。長きにわたりSympathyレーベルのファンを続けてきた私は、運良くもタワーレコードのイベント“Hello From LA”のために来日していたジョンを捕まえ、ビール一杯の代償として質問攻めにあってもらった。

 ▼ Sympathyレーベルから作品を発表している、主な日本人アーティスト

 





Q:レーベルを始めようと思い立ったきっかけはなんだったの? レーベルの名前だけを見ると、どうも音楽産業の状況が哀れむべきものと思った(いまでも思っている)ようなんだけど。
そうだね…、この記事が日本で掲載されるということであれば本当のことを言ってもいいような気がするな。Sympathyレーベルはそのむかし俺がやっていた、極めてマニアックなブートレグレーベルが発展したものなんだ。当時はライブやレコードのレビューなんかを書くライターとして暮らしていたんだけど、ある日突然このお忍びレーベルを合法なレコードをリリースする方針に転換したんだ。俺はすごくマニアックなコレクターだったし、結局は自分でリリースするのがいちばん理にかなっていたんだよ。最初にSympathyレーベルから出したレコードは、レイジー・カウガールズで、当時は宙ぶらりんの状態で止まっていたプロジェクトをこの俺が取り計らったってわけだ。音楽業界が哀れなものかって? ああ、Sympathyレーベルを始めた14年前は確かにそうだった。それがいまにいたってはますますひどくなってきている。最近はレコードを売るのも、才能のある新人バンドに世間の目を向けさせるのもますます難しくなっているんだ。実に残念なことだよ。

 Q:初めて買ったレコードはなに。それから、初めて行ったライブはなんだったか憶えてる。
13歳の頃、俺はカリフォルニア・ベニスのビーチにある少年施設に住んでいたんだ。そこでは誕生日に25ドルがプレゼントされることになっていて、俺はその金で5枚のアルバムを買ったんだよ。モノラル・バージョンのやつを。ステレオ・バージョンだと1ドル高かったし、どっちみちプレイヤーも安っぽいものしかなかったからね。そのとき買ったのは、ヤードバーズ『Over, Under Sideways Down』、バーズ『5th Dimension』、ローリング・ストーンズ『Aftermath』、アニマルズ『Animalization』、あとの一枚はいま思えば誰かに言いくるめられたとしか思えないんだけど、サークルの『Red Rubber Ball』だったね。こいつは最悪だった。

 初めてのライブは15歳の時に見たマザーズ・オブ・インヴェンションだった。2回目も彼らなんだ。俺は本当にマザーズが大好きだった。彼らは俺の心をうまい具合に捻じ曲げてくれたんだよ。そのあと69年にローリング・ストーンズを見るまでライブは何も見なかったな。その年にストーンズを2度見てるんだけど、そのうち一度はオルタモントで開催されたんだ。俺はライブを見るために施設から抜け出して、帰りはヒッチハイクでカリフォルニアまで戻ってきたんだ。これは俺の人生において一大行事だったね。

 
Q:通常メジャーレーベルで交わされる契約書は平均70〜100ページはあるものなんだけど、Sympathyレーベルでは契約書はどうなっているの。
実は、うちのレーベルには契約書がないんだ。作ったこともなければ、今後も作ることはないだろうね。俺の契約のしかたは、握手ひとつだったり、電話で決めたり…。俺くらいの規模のレーベルだと、自分が契約したバンドがメジャーから誘いがあった場合に簡単に契約書の内容が覆されることがあるかもしれないからね。それに、よそに行きたがっているバンドに、契約上リリースしなければならないという理由だけで本人の意思に反してアルバム作りをさせてもいいものができるはずがないだろ?

 
Q:ホワイト・ストライプスはSympathyレーベルの中でもビックヒットを記録したけど、彼らはどうやって見つけたの。
68カムバックに所属するジェフ・エヴァンスに薦められて、デトロイト・コブラズのアルバムをリリースしたんだ。そのときコブラズのメンバーのひとりが、ホワイト・ストライプスを薦めてくれたんだよ。その後ホワイト・ストライプスのメンバーのジャック・ホワイト(ボーカル)がサンプルを送ってくれたんだ。ジェフ・エヴァンスは俺がいま、最も気に入っているマイ・エアプレーン・マンも持ち込んでくれたんだよ。

 ▼ “ロング・ゴーン”ジョンが初めて買ったレコード、一部ご紹介。



Q:リリースするアイテムはどうやって見つけるの。マニアックなものやアメリカ以外のバンドも多いみたいなんだけど。
デモテープを郵便なんかで受け取ることはあまりないね。時間を割いてまでデモテープを聞く気もないし。たいていなんらかのプロジェクトが次につながっていくんだよ。自分でバンドを探しに行くようなこともしない。いつも忙しいんだ。もちろん、知ってるバンドのライブに行くこともあるけど、知っているもの全部を見ようとするときりが無いし、そんな気も毛頭ない。どちらかといったら出不精なほうだから、家にいるほうが好きだね。

 
Q:アメリカでは最近日本のポップ・カルチャーに対しての関心が高まってきているみたいなんだけど、LAでもそういう傾向は見られるのかな。
全てを熟知しているわけではないんだけど、個人的には日本のカルチャーには以前からずっと興味があったよ。おもちゃとか音楽とかにね。おもちゃなんかは何年も前から集めているんだ。とくに好きなのは少女アニメ系のフィギュアだね。ファンタジーものやヒーローものではなく。あとは、むかしのモンスターものや鉄腕アトムなんかも気に入ってる。バンドでいうと…、そうだね、このあいだ日本のバンドのライブをふたつ見たんだ。ゴー・デビルズとジャッキー&ザ・セドリックだったんだけど、どちらも最高のショーだった。多分こっち(LA)では、外国のものであるということだけでアピールすることができるんじゃないかな。頻繁に目にすることができないからね。でもそれは、日本でのアメリカバンドに対する受け止め方も同じなんだろうね。

 
Q:数多くの日本のバンドと契約を交わしているけど、最初はどうやって彼らを見つけたの。
最初のアーティストは、ティーンジェネレイトの前身バンド、アメリカン・ソウル・スパイダーズだった。89年にすごく気合の入ったデモを送ってくれたのがきっかけでね。当時は、他にも小さいバンドのシングルも沢山リリースしたんだ。あと、大阪のTIME BOMBレーベルにいた友人のケンジを通じて、5,6,7,8's、スーパースナッズやマッド3のレコードをリリースした。最も気に入っているバンドのひとつに、山口出身のバナナ・エレクターズというのがいるんだよ。凄いバンドで、ボーカルのメイ・レモネードには惚れていたんだ…。メイ、これを読んだら連絡をくれよ。

 
Q:あなたはアートファンとしても有名だけど、とくに好んでいる日本のアーティストは誰?
唯一本当に知っていると言えるのは、ロッキン・ジェリー・ビーンだね。彼は素晴らしいアーティストだよ。それとはまた他の分野ですごいと思うのは、ハンドメイドでオリジナルフィギュアを作っているアーティスト達だね。ここで一から説明するわけにはいかないけど、ゴシック調で少し気味悪くて、とても美しい人形を作るアーティストの作品を集めるのが好きなんだ。

 
Q:どんなアーティストの作品をコレクトしているの。
自分を「コレクター」という枠に当てはめるのはあまり好きじゃないんだけど…、まあそれが的確なのかな。そうだね、集めているアーティストを何人か挙げるなら、todd schorr、alex gross、eric white、the pizz、camile rose garcia、coop、margaret keane、neon parks、robert williams、xno, olivia、lennie mace、donald roller wilson、the clayton brosやmark rydenのものがたくさん。

 
Q:あなたが好きなアートには、アメリカン・コミックの要素を含んだものが多いようなきがするんだけど。
とくにアニメやコミックが好きというわけではないよ。ただ、レン・アンド・スティンピー(Ren and Stimpy)とパワー・パフ・ガールズ(The Power Puff Girls)は好きだね。あと日本のアニメだと、カウボーイ・ビバップ(Cowboy Bebop)にも愛着はある。

 
Q:数あるリリースアイテムのほかに、ロッキー・エリクソンやニューヨーク・ドールズなどの素晴らしい再発盤があるけれど、これらを手掛けようと思ったきっかけは?
ニューヨーク・ドールズは、俺の歴代の本命バンドだったんだ。マネージャーから『Live in Paris』のアルバムの話を持ちかけられたんだけど、そのときは本当に興奮して取引に応じたね。ロッキー・エリクソンも同じように、俺がずっと大好きだったんだ。彼のアルバムのボーナス・トラックにはデモ曲を収録したんだけど、あれは俺のリリースしたものの中で最も好きな作品になったよ。





Sympathy for the Record Industry

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