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掲載: 2003/04/03 更新: 2003/12/18
ソース:『bounce』誌 241号(2003/3/25) |
89年に故ロブ・ミッチェルとスティーヴ・ベケットが立ち上げたレーベル。大御所にして、まだまだ先鋭でありつづけるワープの今を徹底分析!
文/bounce編集部 レーベルのあらまし
89年、シェフィールドのレコード店から故ロブ・ミッチェルとスティーヴ・ベケットが立ち上げたレーベル、ワープ。ちょうどハウス・ブームが到来した時期にスタートさせたこのレーベル初期ヒット作が、LFOのデビュー・シングルである“LFO”だ。そしてブリープ・テクノ/ハウスの金字塔ともいえるアルバム『Frequencies』がアメリカでライセンスされるなど、LFOと共にワープの名も一躍世界に浸透しはじめた。
それからわずか数年後、現在のレーベル・カラーの基盤であり、まるで2000年代における電子音楽の潮流を予期したかのような〈Artificial Intelligence〉シリーズがスタートする。同シリーズは一時の快楽を貪るダンス・オリエンテッドなエレクトロニック・ミュージックとは異なり、ホーム・リスニングにも十二分に対応しうる高い音楽性と知性を感じさせてくれた。その代表作が、ダイス・マン(リチャードD・ジェイムス)、オウテカ、オーブのアレックス・パターソンらの楽曲を収録したコンピレーション『Artificial Intelligence』だった。さらに同シリーズからは、ポリゴン・ウィンドウやブラック・ドッグ・プロダクションのアルバムもリリースされている。しかし、90年代も中期にさしかかるとエキセントリックなラウンジ・ミュージックを聴かせてくれるジミ・テナー、バンド形態のレッド・スナッパーといった、純粋なテクノとは一線を画す面々も登場。当時は??だった人も多かったかもしれないが、その後のワープがさまざまなジャンルとの関係性を深め、幅広いリスナーからも支持を集めていく状況を考えると、いま思えばかなり重要な時期だったのかもしれない。
そして現在。これまで常に時代の先を見据えてきたワープの活動にはさらに拍車がかかっている。エイフェックス・ツインやオウテカのブレイク、ボーズ・オブ・カナダやプレフューズ73ら新世代のスター候補生の登場、ナイトメアズ・オン・ワックス、トゥー・ローン・スウォーズメンらヴェテラン勢など、そのラインナップは充実の極み。かつてはテクノ・レーベルというイメージがあったものの、そのヴァラエティーに富む音楽性と冒険心に魅了されたヒップホップやロックのリスナーの支持も獲得し、〈エレクトロニカ・ブーム〉の中心と目されることもあった。最近はサブ・レーベルのレックスも始動させるなど、大御所レーベルになってもまったく衰えない求道者ぶりは嬉しい限り!(青木正之)
| | ワープの最重要コンピレーション『Artificial Intelligence』(Warp) |
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ワープきっての危険なふたり
AUTECHRE
全世界のテクノ/エレクトロニカ・ファンは言うに及ばず、クリエイターたちにとっても待ちに待った巨星オウテカのニュー・アルバム『Draft 7.30』が、ついにその姿を現した。前作にあたる『Gantz Graf』は、DVD+CDのミニ・アルバムという変則的な形だったので、フル・アルバムとしては2001年の『Confield』以来となるわけだ。オウテカの1/2であるショーン・ブースは、以下のように語る。
「タイトルは7枚目のアルバムの30個目のヴァージョンって意味の仮題だったんだけど、それ以上に適したのを思いつかなかったんだ。今回は30個もヴァージョンを作ったんだよ。前までは、実際には僕だけで作ったトラックがあったり、ロブ(・ブラウン)が作った曲があったりしたんだけど、今回は2人で作ったトラックが多いんだ。意図的に曖昧にしているけどね(笑)。僕らはコラボレーションすることに満足してるから、相手が自分が作ったものを変更することは気にしないしね」。
| | 4月5日にリリースされるオウテカのニュー・アルバム『Draft 7.30』(Warp/BEAT) |
こうして出来上がったアルバムは、最先端のコンピュータ・ソフトウェアを駆使した過去数作の実験的な作風からは微妙にシフト・チェンジし、斬新な音作りはそのままに、初期の独特なグルーヴ感と、ある意味ではポップとさえ呼べるような感覚が回帰した、目の覚めるような快作となっている。
「ポップ・ミュージックが普遍的な音楽だっていう概念には興味があるけど、コマーシャリズムは大衆が作り上げたもので、最終的には失敗するんじゃないかな。何がポップか、どんなものが良いポップ・レコードなのかっていうのは難しい。ミュージシャンのなかには、自由な音作りをしたくても、契約上の制限があったり、家賃を払わないといけないとか、そういう心配があってできない人がいる。僕らはそういうことに制限されず、自分たちの基準だけで曲を作ってきた。目を覚ましてみんなも自己表現したほうがいいよ。他の人のルールになんて従っちゃダメだよ。音楽とサッカーは違うんだ。僕らは好きなものを作ってるだけで、それをリリースする時には、まだリスナーは聴く準備ができてないかもしれない。でも、そんなことは心配できないよ。やりたいことは絶対に妥協できないからね!」。(佐々木 敦) ▼オウテカの近作を紹介。
| | 2001年作『Confield』(Warp/BEAT) |
| | CDミニ・アルバムとDVDをセットにした2002年作『Gantz Graf』(Warp/BEAT) |
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アヴァン・ヒップホップの雄がリ・スタート!
BEANS
ワープ所属アーティストのなかでも、ヒップホップとエレクトロニカ、ポエトリーとラップという4つのベクトルを結びつけたグループと言えばアンチポップ・コンソーティアム(以下APC)。97年にビーンズ、プリースト、サイードがポエトリー・イヴェントで出会って結成されたAPCは、カンパニー・フロウらと共にNYの新しいアンダーグラウンド・シーンを形成していく。グループは2002年に解散したものの、早速ソロ活動を開始したラッパー兼ビートメイカーのビーンズが、『Tomorrow Right Now』をリリースした。ビーンズによれば、「このアルバムは、いままでのアンチポップのアルバムと並行して制作してたんだ。だから、このアルバムは俺の成長を反映した曲の集合体だよ。APCのメンバーとは、個人的そしてクリエイティヴな衝突があったから解散したんだ。どんなグループでも、必ず妥協することになってしまうんだよ。APCではできないことを、独りでやることにしたんだ」とのこと。また、「それぞれの曲で違うスタイルを披露したかったんだ。同じような曲は繰り返したくなかった。みんなが期待してるスタイルに凝り固まらないように、バランスを取るようにしたんだ。一人のアーティストとして、どんなスタイルにもカテゴライズされたくないんだよ」とも語っているとおり、『Tomorrow Right Now』ではオールド・スクール・ヒップホップのドラム・マシーン・サウンド、ポエトリーのアカペラ、電子音が交錯するインスト・トラックなど、幅広いスタイルが内包されている。
| | ビーンズのファースト・ソロ・アルバム『Tomorrow Right Now』(Warp) |
「俺は、NWAもデ・ラ・ソウルも両方ともヒップホップだと言われてるような時代のなかで育ったんだ。また、オウテカは俺にとってマントロニックスの延長線上にある。俺は常にオープンでいたいんだ。でもいまのヒップホップにはユニフォームが多すぎるし、保守的になりすぎてるんだ」。
このフレキシブルなスタンスがあるからこそ、彼は常に型破りな曲を作れるのかもしれない。ビーンズは、ヒップホップとエレクトロニカ、そしてアヴァンギャルド・シーンの橋渡し的存在とも言える、要注意人物なのだ!(バルーチャ・ハシム)
| | アンチポップ・コンソーティアムの2002年作『Arrhythmia』(Warp/BEAT) |
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BOARDS OF CANADA
スコットランド出身のマイク・サンディソンとマーカス・イオンの2人からなる、ボーズ・オブ・カナダ。彼らが大きな注目を集めたのがデビュー・アルバム『Music Has The Right To Children』だ。アンビエントにも通じる浮遊感とエモーショナルかつあまりに美しすぎるメロディー、さらにはヒップホップ・テイストのデジタル・ビートがそこに加わり、独創的な感覚がアルバムを支配している。そのファースト・アルバムの延長線上にあるセカンド・アルバム『Geogaddi』もヒットを記録し、ワープではいまやエイフェックス・ツインやオウテカに負けない人気を誇り、エレクトロニカ・シーンを代表するアーティストのひとつとして熱い視線が注がれている。また彼らの普遍的なサウンドが、幅広いリスナー層を惹きつけている点も特筆に値するだろう。(青木正之)
▼ボーズ・オブ・カナダの近作を紹介。
| | 98年作『Music Has The Right To Children』(Skam/Warp/BEAT) |
| | 2002年作『Geogaddi』(Warp/BEAT) |
| | 同年のミニ・アルバム『Twoism』(Warp/BEAT) |
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奥様は魔女!?
MIRA CALIX
96年の10インチ・シングル『Ilanga』、ボーズ・オブ・カナダのリミックスが話題になった98年の“Pin Skeeling”を経て、2000年の初アルバム『One On One』とそれに続くEP『Prickle』でそのポテンシャルを露にしたミラ・カリックス。簡素で無垢で純情で仄かに有機的な音世界や、マシンガンまたはミシンのようなエレクトロニクスの連なりも実に刺激的だ。間もなく登場する新作『Skimskitta』は、そのようなエッセンスをより高純度に精製したさらさらのひとつまみ。毒か薬かはわからない。
ミラ・カリックスことシャンタル・パッサモンテ(オウテカのショーン・ブース夫人でもある)は南アフリカ生まれ。90年代初頭にロンドンへ移り、やがてワープ一家に加わっている。ただ、他の面々と大きく異なるのは「私はソフトウェア・タイプの人間ではない」ということ。いわく「ヴィンテージの楽器や古いアナログ・サンプラーを使ってる。機械のキャラクターに愛着を感じて、それらとの関係が音を作り出すのよ」。
邪気と無邪気がキラキラした世界観に縁取られ、わずかばかりのヴォーカルも効果的に通り過ぎる。
「(歌も)楽器のひとつだと思ってる。たまに人に何者か尋ねられたら〈シンガー・ソングライターです〉って答えるけど」。
もしくは言葉を使わない吟遊詩人。それが回りくどければ、答えは『Skimskitta』でどうぞ。(柚木晶代)
| | 4月5日にリリースされるミラ・カリックスのセカンド・アルバム『Skimskitta』(Warp/BEAT) |
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文/青木 正之、柚木 晶代 Discguide その1
PLAID 『Double Figure』 Warp/BEAT(2001) エド・ハンドリーとアンディ・ターナーのコンビで、ブラック・ドッグなどの名義でも活躍してきたプラッドの通算5作目。柔らかく肉感的なブレイクビーツからシンセティックでけたたましいものまで、全19曲/70分に及ぶ長さも飽きさせない手札の多さが魅力か。(柚木)
PREFUSE 73 『Vocal Studies Uprock Narratives』 Warp/BEAT(2001) スコット・ヘレンの本名義でのデビュー作は、デジタル・ヒップホップの代表作にして傑作! さまざまな電子音やカットアップされたヴォーカルが飛び交い、またジャズ・サンプリングによってメロウで有機的なグルーヴを獲得している点も魅力。(青木)
TWO LONE SWORDSMEN 『Further Reminders』 Warp/BEAT(2001) アルバム『Tiny Reminders』収録曲を、キャレキシコ、ディキャル、DRY & HEAVY(!)ら一筋縄ではいかない連中がリミックスした好企画盤。ハード・ミニマル、ポスト・ロック的音響作品、ダブ、エレクトロなど、まさにやりたい放題です!(青木)
SQUAREPUSHER 『Go Plastic』 Warp/BEAT(2001) 驚異的なペースで作品を次々に送り出すトム・ジェンキンス。機材を一新し、よりエレクトリックな印象を受ける本作は、忙しない高速ブレイクビーツや歪んだ音使い、常人の想像を越えた破天荒な曲展開など、非日常的な世界が相も変わらず繰り広げられている。(青木)
CHRIS CLARK 『Clarence Park』 Warp(2001) エイフェックス・ツインを思わせる先鋭性と牧歌的なムードがキリキリした冷たさのなかで入り混じる、デジタルの針葉樹林。美しいのに不安感を孕んでいるのは、ジャケットを飾る写真からもわかる。いい意味で実にワープらしいアルバムだと言えるだろう。(柚木)
VINCENT GALLO 『When』 Warp/BEAT(2001) 世界有数のヴィンテージ機材コレクターでもあるヴィンセント・ギャロ初のソロ・アルバムは、コレクションを駆使した、美しくも儚いセンシティヴな作品。フォーク、ジャズ、プログレをミックスして昇華させた音からは、彼の音楽に対する造詣の深さが滲み出ている。(青木)
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文/青木 正之、柚木 晶代 Discguide その2
BROTHOMSTATES 『Claro』 Warp/BEAT(2001) ブロッサムステイツはフィンランド発のエレクトロニクス独り遊び。〈IDM〉という言葉から浮かぶイメージがそのまま似合う風情の、クリアでクールで角張ったサウンドが心地良いが、なぜか朴訥とした温もりも同時に感じさせるのが耳新しいかも。次作が待たれる。(柚木)
NIGHTMARES ON WAX 『Mind Elevation』 Warp/BEAT(2002) これまでのスモーキーなテイストが若干ながら後退し、ソウルやレゲエの影響をストレートに表現した最新作。R&B風女性シンガーの起用や、キャッチーなメロディー・ラインを採り入れたことで、ポップ度数が格段にアップし、非常に取っつきやすい。(青木)
VINCENT GALLO 『Recording Of Music For Film』 Warp/BEAT(2002) ヴィンセント・ギャロの自作スコア集。収録曲の録音年代は79〜98年と幅広く、もちろん「バッファロー66」のスコアも収録。アンビエントな手触りのなかに、プログレなどのエッセンスが無造作に滲み出る拙さは、何かイノセントで微笑ましくもある。(柚木)
REQ 『Sketchbook』 Warp(2002) ダウン・ビートの化学者、レック。渋めの洞窟系アブストラクトなサウンドで、そのなかに薄明るいエレクトロニカ、あるいは薄暗いヒップホップの輪郭がぼんやり浮かぶ重ためのブレイクビーツが圧巻。スキントから移籍してきた人だけれど、ワープのほうが肌に合うことは間違いない。(柚木)
SQUAREPUSHER 『Do You Know Squarepusher?』 Warp/BEAT(2002) エレクトロニカ寄りのアプローチも見せる2枚組アルバム。作風の変化もさることながら、ジョイ・ディヴィジョン“Love Will Tears Us Apart”のまんまなカヴァーに度肝を抜かれる。Disc-2には臨場感抜群の日本でのライヴを収録。(青木)
MORVERN CALLAR 『Soundtrack』 Warp/BEAT(2003) ワープが初めてリリースしたサントラは、新進気鋭のリン・ラムジー監督作「モーヴァン」のもので、作中でも重要な役割を担うもの。カン、エイフェックス・ツイン、リー・ペリーらを収録し、エレクトロニック・ミュージックの歴史を凝縮した選曲が光る。(青木)
| | リリースされたばかりの、エイフェックス・ツインのリミックス・ワーク集『26 Mixes For Cash』(Warp/BEAT)。 |
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