取材日の前日にチャート番組を見ていたら、“天体観測”がなんとまだシングル・
チャートのトップ100に入っていて仰天してしまった。あのシングルは、たしか1年前
……2001年3月リリース。まるで演歌のような売れ方だ。
考えてみれば、新作『jupiter』は2年ぶりとなるアルバム。賞味期限の短いバンド
、周囲のスピードに流されがちなアーティストが増えているようななかで、このBUMP
OF CHICKEN、実は自分たちでペース配分を考えながら活動できる連中であることが、
そんなヒットの仕方やリリース間隔からもよくわかる。そして、『jupiter』の内容
が驚くほど良いということからも。単純な言い方しかできないのが悔しいが、全10曲
、とにかく曲がどれもすごく良いとしか言えないくらいによく練られている。しかも
、そのポップさに嫌味がまったくない。
「今回は制作期間がバラけてたってこともあって、アルバムって意識があまりないんですよ。全部、曲単位。〈アルバムを作ってるんだ〉という意識が芽生えてきたの
も、最後の2曲を録っている時だったしね。だから、自分たちとしてはシングルが10
曲入っているアルバムって感じ。まさにベスト・アルバム状態。でも、いつだって俺
らはそういう気持ちでいる。だから、今後あえてベスト・アルバムを出す必要がない
ってことですかね(笑)」(藤原基央、ヴォーカル/ギター)
3年ほど前、彼らが千葉県佐倉市から出てきたばかりのころに取材をしたことがあ
る。その時はやんちゃで落ち着きのない、でも決して憎めない連中という感じだった
のに、今回ひさびさに再会してみると、対等に話し合える大人に成長していた。だが
、音楽に対する姿勢はもちろん変わっていないし、それを追い求める情熱も失われて
いない。むしろ、今のほうがよりピュアになった印象さえある。
「周囲の人たちをシビアに見るようになりましたね。俺ってイヤなヤツだなあってくらい(笑)。でも、それによって俺たちにも最初はわからなかった〈アルバムの全
体像〉とかが見えてきたりすることもあって。ただ、こっちとしてはやりたいことを
素直にやっただけ。そういう意味では前の『THE LIVING DEAD』の時と変わってない
。今回もすごく緻密にやったつもりなんですけど、結果的には感覚で作ってましたか
ら。〈あっ、またこんな感じだよ〉ってみんなで苦笑したりしてね」(藤原)
「ずっとその曲のBPMを考えたりして、曲と生活をともにしている感じでしたね。それって、昔と同じなんですよ」(升秀夫、ドラムス)
「楽器とか機材とかだって全部自分たちで買いに行くしね。スタジオなんて、むしろ前のほうが良かったくらい。こういうのって豊かになってお金があれば良くなるっ
て問題じゃないんですよね」(直井由文、ベース)
「でも、プレイヤーとしてはまだまだ。感覚としてうまくなってるのかもしれないけど、自分たちではわからないですね」(増川弘明、ギター)


BUMP OF CHIKEN
「jupiter」
トイズファクトリー
TFCC-86101
2,857円

|
|
自分たちの曲は「童謡のようなもの」と冷静に分析する藤原。しかし、その一方で「最終的に自分たちはただの音楽好きな兄ちゃんたちの集まり」とも言う。たしかに
、当初はトラッド・パンクにするつもりだったというアルバムのラスト・ナンバー“
ダンデライオン”が、升の誤解によってカントリーになってしまった経緯などをジャ
レ合いながら話してくれる様子は子供のように屈託がない。
「BUMP OF CHICKENの曲は情熱的だ、とか、雑誌で大袈裟に書かれることが多くて、うっとうしいなあって思ってた時期、たしかにあったんですよ。でも、俺たちは俺た
ちでやりたいことをやってるからいいか、って最近は思うようになった。結局、伝え
たいことは歌の中にしかないってことに気付いたんです。俺たちは和音とメロディー
とリズムで、いちばん気持ちのいいところを探しているだけ。そういう意味でBUMP
OF CHICKENの曲は童謡なんです。〈あなたの生活のBGMになりたい〉って意味でも、
聴く側はその人なりのエゴで聴いてほしいって意味でもね。でも、だからこそ今は一
人でも多くの人に聴いてほしい。いままでそんなこと思ったこともないけど、今回は
とくにそう強く思いますね」(藤原)