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オンライン掲載:2001/12/13
初出:2001年12月25日『bounce』228号


IRISH BURNING HEART
北国の燃ゆる想いをビートに乗せて


文/桑原シロー
 アイルランドには、多種多様なロック・ミュージシャンがいるのだけれど、どうし ても彼らの音楽から嗅ぎとってしまうのは〈寒さ〉である。音楽を鼻で嗅ぎ分けるこ とができる人ならわかると思うが、アイルランド産の銘品に顔を近付けると鼻腔の奥 にひんやりとしたものがつーんとくるのである。U2の大先輩、ヴァン・モリソンの初 期作品『Astral Weeks』なんか、聴いた後には鼻毛に霜がついてなかなかとれなかっ たりする。思えば、アイリッシュ音楽家とソウル音楽の相性のよさは、たとえば共通 した信仰心の深さからくるものなのかもしれない。そして、身体の底からじわりと熱 を興させるソウル・ミュージックの力が、彼の地の生活者にとってどれだけの必需品 となりうるかは、アラン・パーカー監督の「ザ・コミットメンツ」を観て(聴いて) もらえればわかるだろう。

 また、一度火がついたら一気に燃えさかる炎のようになってしまうミュージシャン が多いのも特徴で、U2前史にアイルランド出身として名を馳せたテイストのロリー・ ギャラガー、シン・リジーのフィル・ライノットといったミュージシャンは〈情熱系 〉として人々に記憶されている。この2人が思い入れたっぷりに哀愁に満ちたプレイ をすれば「やっぱりアイルランド人だね」なんて言われたものだ。そんななかで、熱 を起こすには押しくら饅頭がいちばん、と庶民的知恵を与えてくれたのがポーグスだ った。彼らが来日を果たした88年は、我が国でアイリッシュ音楽への注目が高まって いた時期。ヴァン・モリソンがチーフタンズと組んで名作『Irish Heartbeat』を発 表したり、ホットハウス・フラワーズがこれまた名作『People』でデビューしたりと シーンが沸き立った。シニード・オコナーのセンセーショナルな登場もこの年だ。以 後、アイリッシュ音楽の温度はロック・ファンにとって馴染み深いものとなっていく 。そして今日もまた中毒者は増え続けているのだ。



左上から、ヴァン・モリソン『Astral Weeks』(Warner Bros.)、サントラ 『The Commitments』(MCA)、シン・リジー『Black Rose』(Mercury)、ホッ トハウス・フラワーズ『People』(Mother/London)、ポーグス『If Should Fall From Grace With God』(Island)、シニード・オコナー『I Do Not Want What I Haven't Got』(Ensign)
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