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 掲載: 2003/12/04
ソース: 『bounce』誌 249号(2003/11/25) |
崇高で近寄りがたく、同時に身を寄せたくなるほど愛らしい至高のヴィンテージ・ソウル……世界はいま、アリシア・キーズの〈日記〉を待ち焦がれているのだ!!
文/伊藤 なつみ
新人にしてグラミー賞を5部門受賞したほか、各賞を総ナメし、全世界で1,000万枚以上のセールスを記録した衝撃的なデビュー・アルバム『Songs In A Minor』から約2年半。R&Bとクラシック音楽を融合させるなど、そのオリジナリティー溢れる作風で一世を風靡したアリシア・キーズが、待望のニュー・アルバム『The Diary Of Alicia Keys』をリリースする。とはいっても、原稿を書いている現段階ではシングル曲“You Don't Know My Name”しか手元になく、あとは9月15日にNYで取材を行う前にラフ・ミックスをシングルの他に4曲聴かせてもらったのみだ。アリシア自身、最終的な収録曲を決定していない段階でのインタヴューとなったが、少しでもご参考になれば幸いである。 |
一瞬たりとも退屈させない
――最新作は、どんなアルバムになりそうですか?
「自分のハートやソウルが詰まっているっていう意味では前作と同じね。自分で曲も書いたし、プロデュースもしたし。自分の人生や考えていること、感情がすべてここにあるの。だけど前よりもずっと進歩したから、前と同じではないわ。自分自身もそうだし、声ももっと強くなったと思うし、演奏も上達した。すべてが一歩前進した感じよ。いろいろなスタイルやアイデアがミックスされた、とてもパーソナルなアルバムに仕上がったわ」
――具体的にどういうスタイルがミックスされているのでしょうか?
「60年代や70年代を思い出させながらも現代風であったり、ナズやラキムが参加した“Streets Of New York”みたいに、ハードでダークなヒップホップがあったり。だけどそこにピアノを加えたりして変化を持たせたわ。ひょっとしたらロックの影響を感じることもあるかもしれないわね。私がピアノを弾いているだけのシンプルでパーソナルなものもあるし、リリック的にもいろいろな角度から捉えてみたわ。一瞬たりとも退屈なことがないようなアルバムに仕上がったと思っているの」
――アルバムのタイトルは“Diary”という曲が出来てから付けたものですか?
「そうなの。アルバムをこうしたい、っていう明確なヴィジョンがあったの。私の日記の抜粋みたいになる予定よ。私がずっと日記を書き続けてきたっていうこともあるし、日記は、私にとって自分を表現するのに最良の方法なのよ」
――今回もクルーシャル・ブラザースと一緒にやっているのですか?
「もちろん。このメンバーでアルバムの大半のプロダクションを手掛けたわ。それからカニエ・ウェストといっしょにやったのが“You Don't Know My Name”。それからイージー・モー・ビーという素晴らしいプロデューサーともコラボレートしたし、トニ・トニ・トニのドゥウェイン・ウィギンスともいっしょにやった。いまのところコラボレートしたのはそのくらいかな。あとはハロルド・リリーという素晴らしいライターとも」
| | 12月3日にリリースされるアリシア・キーズのセカンド・アルバム『The Diary Of Alicia Keys』(J/BMGファンハウス) |
――サンプリングも楽しんでますか?
「ヒップホップを聴いて育ってきたし、それがいまの私の大きな一部でもあるのよ、クラシックやソウル・ミュージックの他にもね。だけどおもしろいのは、そのサンプリングに少し手を加えてみたことなの。ピアノを加えて、上へ下へと変調させてみたりしたのよ。ビギー(ノトーリアスBIG)のサンプルに関しては、ずっと同じ調子が続くんじゃなくて、コードやキー・パターンに合わせて変えてみたりしたの。ノーマルなサンプルの仕方じゃないし、とても新しいやり方だと思うわ。キー・チェンジやコード進行、ヒップホップ的なサンプリングやハードなドラムとか、私らしさをすべて反映できたものに仕上がったと思うわ。聴いていて力強く感じるようなものになったわね。全部の曲がそういう感じだと思うし」
――ヴォーカルのキーも高くなりましたね?
「ありがとう。これまでは温かみのある低音域の曲を自分でも好んで歌いがちだったけれど、今回は表現したいと思うトピックを考えていた時に、いままでよりもっと強さが必要だから、ちょっと音域を上げていかなきゃならないわ、と思ったのよ。これまではハードすぎると思っていたことも、今回は自分の感情や表現法を制限したくなかったの」 |
伝えたいメッセージ
――他にも冒険したことはありました?
「ピアノ・プレイヤーという面では、スティーヴィー・ワンダーが使っていたようなムーグやエルトン・ジョンが使っていたようなメロトロンなど、古いキーボードが奏でる独特のサウンドを使ってみた。それに、キーボードを使って自分だけのオリジナルの音と呼べるような、歪んだ感じのギター・サウンドも創り出したのよ」
――カヴァー曲としてグラディス・ナイト&ザ・ピップスの71年のヒット曲“If I Were Your Woman”を取り上げていたり、他にも70年代を思わせる曲がありますが、そういった音楽の魅力とは何でしょう?
「あの時代の音楽が素晴らしいのは、とても自由なところね。お決まりのパターンもないし、当時の人たちはいろいろなことにチャレンジしていたわ。“You Don't Know My Name”の中盤で、私がただ話をしているだけの部分があるんだけど、ああいう音楽は長い間聴いたことがなかった。でも、あの頃にはそういう曲があったでしょう? ひと息つける曲というか、じっくりとストーリーに耳を傾けられるような。それが私の好きなところなの。実験的だし、社会的にも当時の人々はもっとコンシャスで政治的だったわ。意見っていうものを持っていたし、伝えたいというメッセージがあった。私にとってもそれは大切なことだと思っているの」
――今回のアルバムにメッセージの強い曲はありますか?
「“Nobody Not Really”。マーヴィン・ゲイの『What's Goin' On』に入っている“Flyin' High(In The Friendly Sky)”のスピリットが生きていると思えるような感じの曲で、自分の考えていることや気持ちを伝える声を持っていない、人々は自分が何を思っているかを立ち止まって尋ねてくれたりはしない、と感じている小さな子供が、〈私はただここにこうして無力なままでいるのかしら、それとも私にはそれよりももっと大きな意味があってここにいるのかしら? そもそも誰が私のことなんか気にかけてくれるの?〉と自問しているような感じの曲よ。あともう1曲、二重の意味を持った曲があるの。愛やそれにまつわる苦悩についてにも、国が味わう苦悩についてにも聴こえるような曲。それがどの曲かは自分自身で聴き取ってね」
結局、最後の最後までミックスやヴァージョン違いを含め、収録曲についてやり取りが繰り広げられていたらしく(アリシアが語っていた“Streets Of New York”は日本盤のみ収録のボーナス・トラックとなった)、その全貌は直接作品を聴いて確かめてほしい。でもそれだけに、完璧主義者のアリシアがどんな自信作を新たにミュージック・シーンに提示してくるか、楽しみだ。
▼関連作品を紹介。
| | ドゥウェイン・ウィギンス率いるトニーズ『The Live @ Chocolate City』(Orpheus) |
| | カニエ・ウェストの参加したジェイ・Z『The Black Album』(Roc-A-Fella/Def Jam/Def Jam Japan)。なお、アンドレ・ハリス&ヴィダル・デイヴィス(!)、ティンバランド(!!)の参加も判明!! |
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文/林 剛 ピアノと私、ピアノとソウル
〈ピアノと私〉――アリシア・キーズのデビュー作は、そんなタイトルの曲(“Piano & I”)で幕を開ける。つまりそれはピアノと彼女自身が一心同体だという所信表明。鍵盤楽器を弾くR&B系の女性シンガー・ソングライターは多数存在するが、ピアノ、しかも生ピアノを弾くことをウリにしているのは、近年ではアリシアぐらいだろう。だが振り返ってみれば、昔からそうした〈ピアノと私〉な知的な佇まいの才媛は少なからず出現しており、時に裏方に回りつつ静かにシーンを牽引していたことに気付く。古くはニーナ・シモン、それに何といってもロバータ・フラックはその先駆的存在で、特にアリシアと同じく正規の音楽教育を通過したロバータは、シンプルなピアノ弾き語りで新しいソウルの時代を歩み始めた。同じくジャズ方面から登場したパトリース・ラッシェンもアリシアに並ぶ美貌で鍵盤楽器をプレイし、メロウな名曲を連発。他にも、“Piano In The Dark”をヒットさせたブレンダ・ラッセルなどもピアニストである自分をアピール……と、いずれもピアノと我が身を一体化することで美しい音世界を築き上げてきた。そして……新作のジャケットで右半身を鍵盤で覆ったアリシアは、そんな先達に負けじと(?)今回もピアノに自身の命を託している。
| | ロバータ・フラック『Killing Me Softly』(Atlantic) |
| | パトリース・ラッシェン『Haven't You Heard : The Best Of Patrice Rushen』(Rhino) |
| | ブレンダ・ラッセル『Paris Rain』(Hidden Beach/Epic) |
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文/出嶌 孝次 珠玉のアリシア・ワールド
Songs In A Minor 『J』(2001)ブルージーな“Fallin'”や神々しい“Girlfriend”などのヒット曲のみならず、“A Wo-man's Worth”など名曲だらけ! 同時代的なネオ・ソウルのヴィンテージ感とコマーシャルなR&Bのキャッチーな肌触りを、ソウルの系譜の上で見事に融合させた超・超名作。
Remixed & Unplugged In A Minor 『BMGファンハウス』(2003)本国の限定新装盤に付いていたボーナス・ディスクを単体リリースした表題どおりの嬉しい一枚。ネプチューンズらによるリミックスもいいが、自身のピアノ演奏のみを寄り添わせた粋なアンプラグド・ライヴがやはり圧倒的!!
Produce Works 破格の成功を噛みしめた2002年、アリシアは、ケリー・ブラザーズと共にいくつかのプロデュース仕事に取り組んでいる。まず、レーベルメイトであるマリオのデビュー作で2曲制作。特に“2 Train”はピアノを軸に凝ったアレンジで聴かせる好曲だ。続いてはクリスティーナ・アギレラに熱いバラード“Impossible”を提供。熱唱を引き出すオールド・ソウル風味は自作以上だ。そして、ナズの“Warrior Song”は打楽器のようなピアノとブルージーな歌を添えたアグレッシヴな名曲に。その手腕には今後も期待できそうだ。
| | クリスティーナ・アギレラ『Stripped』(RCA) |
| | ナズ『God's Son』(Ill Will/Columbia) |
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