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D12

掲載: 2004/05/20
更新: 2004/06/24
ソース: 『bounce』誌 253号(2004/4/25)

デトロイトの闇で産声を上げたダーティー・ダズン──世界を吹き荒れるエミネム旋風のなか、着々と力を蓄えてきたD12がいよいよ世界征服宣言!! 3年ぶりのアルバム『D12 World』は6人のエナジーを結集した大作だ!

文/高橋 芳朗

固い絆で結ばれた仲間たち


「ワッツアップ、ヨー!! ちょっと黙ってくれないかな? 俺様が話そうとしてんだぜ! まったく、誰がリード・シンガーだと思ってんだ!? これからD12のレコーディング過程をこっそり教えてやるぜ!!」(エミネム)。

 2日間で8万人をも動員した初の単独来日公演の成功、興行成績で2週に渡ってNo.1に輝いた主演映画「8 Mile」の大ヒット、同サウンドトラックの洋楽ヒップホップ・アルバムとしては初のオリコン・チャート1位獲得など、それ以前は日本と欧米とでエミネムを取り巻く状況にあきらかに温度差があったけれど、それも2003年の快進撃を経てようやく肉迫してきた印象があるし、秋に通算4作目となるニュー・アルバムを控えた今年、その興奮は一気にピークを迎えることになりそうだ。そして、そんなエミネム一色に染め上げられるであろう2004年を予告する狼煙として機能するのが、前作『Devil's Night』から約3年を経ての、D12のセカンド・アルバム『D12 World』だ。エミネム以下、プルーフ、コン・アーティス、ビザール、スウィフト、クナイヴァの6名からなるD12は、いまとなっては「8 Mile」でエミネムが演じるラビットと彼の仲間たちのモデルとなったグループと紹介するべきなのかもしれない。

  「〈8 Mile〉は俺たちを描いたものだよ。まったくの真実に沿ってるわけじゃないけど、俺たちがどんなふうに育ってきたかとか、ヒップホップ・シーンはどんな状況だったかっていう部分は事実なんだ。でも、あの太ったキャラクターは俺じゃないからな」(ビザール)。
D12のセカンド・アルバム『D12 World』(Shady/Interscope/ユニバーサル)

「8 Mile」劇中でのラビットたちがそうであったように、固い絆で結ばれたD12はデトロイトでの下積み時代から続く6人の友情の証でもある。当時、誰かが先に成功したら必ず他のメンバーを呼び寄せて共にメインストリームに殴り込みをかけようと誓い合ったというエピソードは余りにも有名だが、その約束の結実こそがエミネムのレーベル=シェイディから第1回作品としてリリースされた2001年の『Devil's Night』になるわけだ。

  「そんなに複雑なもんじゃないよ。俺たちはファミリーみたいな感じで集まってるだけなんだ」(エミネム)。

  「俺たちは必ず有言実行を守る。それを続けていれば、俺たちは常にタイトな関係でいられるはずさ。そりゃあ納得いかないこともあるけど、それも理解し合ったうえで前に進んでいく。心から互いを思っているからこそ強い結束が生まれ、どんな困難にも共に立ち向かえるんだ」(スウィフト)。

よりクルーらしさを増した作品

 今回の『D12 World』には、数多くのツアーとレコーディングを重ねることによって人間としても表現者としても確実に成長した6人の姿が克明に焼き付けられ、それに伴ってグループとしての結束力もさらに高まったようだ。

  「『Devil's Night』ではエミネムがビートを選んでいたし、あの頃は俺たちも若かったからな。でも『D12 World』では俺たちがもっと主導権を握った。それに、もっとシリアスで大人になったね。声もディープになったし。この2年間でいろんな経験をしたから語りたいことがたくさんあるんだ」(ビザール)。

  「『D12 World』でいちばん進歩したことといえば、音楽をより自分たちの思うとおりにできるようになったことだな。お互いの絆も信頼も深くなったし、文句を言うならやってみせろってアティテュードなのさ」(スウィフト)。

 ヒット中のリード・シングル“My Band”は、D12の成長と余裕、強固な信頼関係を前面に打ち出した楽曲として、『D12 World』を象徴する存在となるだろう。そこでは、D12をエミネムのワンマン・グループと見なす意地の悪いメディアに先手を打つかのように、〈このバンドは俺様が主役!〉とわめき散らすエミネムに対して残りの5人が愚痴をこぼしていくという実にユーモラスな構成がとられている。それは自虐的で屈折した表現方法ではあるけれど、グループのタイトな関係性なくしてこんなテーマの楽曲を作ることは考えられない。また、エミネムの“Without Me”を彷彿とさせるキャッチーでメロディアスなフックにしても、前作の『Devil's Night』では見られなかった傾向だ。

  「あれが多くの人間のD12像だと思うんだよね。エミネムが物凄い自己中心的なエゴイストで、残りのメンバーのことなんか屁とも思ってないみたいなイメージ(笑)。仲間内でそういう冗談を交わしていたところからエスカレートしたアイデアなんだ。まあ、巷の噂や邪推に対する挑戦でもあるかもしれないな」(コン・アーティス)。

 さらに、エミネムとコン・アーティス、ドクター・ドレーという身内のコンポーザーで統一されていた『Devil's Night』に対し、『D12 World』では『The College Dropout』が大ヒット中のカニエ・ウェストや、J・クウォン“Tipsy”で一気に認知度を高めたトラックボーイズなど外部プロデューサーの積極的な導入が図られ、それは各メンバーにさまざまなスタイルを試してみるだけのゆとりが出てきたことの表れでもあるのだろう。

  「それも俺たちの成長の一部っていうことになるんだろうな。これまでのパターンにひねりを加えるっていう意味でね。俺にしてもエミネムにしても、D12だけじゃなくて外部のプロデュース仕事を請け負うようになってきたし、それと同じで俺たちも外部のプロデュース仕事を受け入れるようにしたのさ」(コン・アーティス)。

  「『D12 World』では多様性を見せたかったんだ。だから、俺たちを違うアングルで見てもらえるような、そんなチャンスを与えてくれる外部のドープなプロデューサーにも入ってもらった。いろんなプロデューサーとやっても俺たちがドープだってことがわかってもらえるはずさ」(スウィフト)。

 こうしたグループの充実ぶりを伝える数々の要素を踏まえてみると、D12の本領が発揮されるのは、まさに今回の『D12 World』からになるのだろう。そして、これだけの傑作を作り上げたことはエミネムの次作にもきっと何らかの影響を及ぼすに違いないし、新しいステージに向かうにあたって苦楽を共にした仲間たちの成長と結束を確認できたことは、彼にとって他の何物にも代え難い貴重な経験になったんじゃないかと思う。

  「レコーディングの過程すべてが学習だったよ。なぜなら、毎日トラックメイキングについて新しいことを学んでたからね。毎日俺も良くなっていったし、トラックが良くなればなるほどラップも良くなっていく……逆も同様だね。俺たちはただやり続けたのさ。でも、まさかこんなクレイジーなアルバムになるなんて、きっと誰も期待してなかったんじゃないかな」(エミネム)。

 ▼『D12 World』に参加したアーティストの作品。
カニエ・ウェスト『The College Dropout』(Roc-A-Fella/Def Jam)
Jam)、オービー・トライス『Cheers』(Shady/Aftermath/Interscope)
サイプレス・ヒル『'Til Death Do Us Part』(Columbia)

文/出嶌 孝次

デナウン・ポーター……って誰だ!?

 D12はもちろんラッパー6人の集合体だが、そのなかの2名が優れたビート職人であることは捨ておけない。ひとりはもちろんエミネム、そしてもうひとりがコン・アーティスことデナウン・ポーターだ。エミネムのメジャー・デビュー曲“Just Don't Give A Fuck”にてドラム・プログラミングを務めたりしていた彼がプロデューサーとして本領を発揮しはじめたのは、D12の『Devils Night』から。その後はドクター・ドレーの抜擢によってイグジビット『Man Vs. Machine』からの先行シングル“Multiply”を手掛け、サントラ『8 Mile』では、ふたたびイグジビットの“Spit Shine”、ラキムの“R.A.K.I.M.”、そしてD12の“Rap Game”(エミネムと共同)の3曲を制作。さらにバスタ・ライムズの“Riot”では、J・ディラにも通じるような4つ打ち風ファンクにまで手を伸ばしている。これを前フリにスティールパンの音色を効かせた50セントの超特大ヒット“P.I.M.P.”、Gユニットの“Stunt 101”を送り出し、堂々たるヒットメイカーとして大成しつつある。ドレー譲りの立体的なビート作りと、独特のダークな音色選びにセンスを見せる手際は実に鮮やかだ。『D12 World』を聴く際にはそのあたりに留意してみるのもいいかも。
イグジビットの2002年作『Man Vs. Machine』(Columbia)
バスタ・ライムズの2002年作『It Ain't Safe No More...』(Flip Mode/J)
50セントの2003年作『Get Rich Or Die Trying』(Shady/Aftermath/Interscope)
Gユニットの2003年作『Beg For Mercy』(G Unit/Interscope)

文/出嶌 孝次

各メンバーに注目してD12の道程を再チェック!!


1. EMINEM 『The Marshall Mathers LP』 Aftermath/Interscope(2000) D12としての“Under The Influence”でもえげつないマイク回しが楽しめるが、ホラー映画のタイトルにもなったデトロイトの俗称を曲名にした“Amityville”に単独で登場するビザールがヤバい。ド変態すぎて内容は書けません。



 

2. D12 『Devil's Night』 Shady/Interscope(2001) ライヴでも定番だった“Pistol Pistol”や“Purple Pills”など、重苦しさが渦巻く初のアルバム。当然エミネムがメインながら、プルーフが要所でしっかりとキメ、アホなスキットで変態ビザールが悪目立ち……という役割分担(?)もよくわかる一枚。



 

3. OUTSIDAZ 『The Bricks』 Rufflife(2001) ラー・ディガを輩出したことで知られるニュージャージーのソロ・マイカー集団で、エミネムと変態ビザールも(準)メンバーに名を列ねるアウトサイダーズ。今作ではコン・アーティスが“State To State”を友情プロデュース。



 

4. BONES 『Soundtrack』 Doggystyle/Priority/Virgin(2001) スヌープ主演映画のサントラに、D12として“These Drugs”を提供。エミネムからスウィフト、プルーフ、変態ビザールと4人がリレー。鬱蒼としたムードがじっとり充満したエミネム制作の悪夢的トラックがクセになりそう。



 

5. PROMATIC 『Promatic』 Contra/In The Paint/Koch(2002) デトロイト・ラップの生き証人(Living Proof)であるプルーフが同郷のドグマティックと組み、地元をレペゼンしつつ好き勝手にやった一枚。ドレー風のビートにはD12からのフィードバックも窺える。変態ビザールも友情出演。



 

6. BAD COMPANY 『Soundtrack』 Hollywood(2002) ゴリラズとのダークな共演曲“911”を収録。〈9.11〉直後に録音されたらしく、陰鬱なトラックを漂うアラビックな旋律も思わせぶりだ。プルーフ〜コン・アーティスと順番にマイクを回し、テリー・ホールの重々しいコーラスでシメ。



 

7. 8 MILE 『Soundtrack』 Shady/Interscope(2002) 言わずと知れたヒット映画のヒット・サントラ。出ずっぱりのエミネムはオービー・トライスと50セントのセットアップで手一杯(?)ながら、D12の集団感がうまく出た“Rap Name”が良い。コン・アーティスの成長著しい手捌きが見事。



 

8. KILLAH MIKE 『Monster』 Aquemini/Columbia(2003) アウトキャストが後見するアトランタのハードコア・スピッター。どういう縁かわからないが、“Creep Show”にはビザールが客演。シュグ・ナイトとアイク・ターナーをダシにして自身の乱暴ぶりをアピールしたり、ここでも変態丸出し!



 

9. DJ KAYSLAY 『The Streetsweeper Vol. 2』 Columbia(2004) 〈ドラマ・キング〉ことケイスレイの最新リーダー作。D12は『D12 World』未収録のデナウン・ポーター制作曲“Census Bureau”で地べたを這うように大騒ぎ(?)。ちなみにGユニットも登場するので聴き比べてみましょう。

文/出嶌 孝次

THE ROAD 2 DETOX #1
ドクター・ドレーがついに引退!? 2004年のシーンは……


 情報が日々更新されて確定しないんだけど……この〈The Road 2 Detox〉では、来るべきドクター・ドレーの最終作『Detox』へと向かうこの軍団の動きを不定期で追っかけていく予定なのだ。んで、この軍団……というのはドレー主宰のアフターマス、エミネム主宰のシェイディ、50セント主宰のGユニットという3レーベルのこと。なんと!今回の『D12 World』をキックオフに、Gユニットからロイド・バンクスとヤング・バックそれぞれのソロ・デビュー作が春過ぎに、50セントの新作が夏頃に、そして初秋にはエミネムの新作が登場し、それらの錚々たる陣容を前フリにして、ドレー本人のラスト・アルバム『Detox』が年内に登場する……というプランがあきらかにされたのだ!! 実現すりゃ、もう2004年はドレー・イヤー!って感じでワクワクしまくりなんだが、そう簡単にはいかんのよ。

 というのも、シェイディはアトランタ出身の新人スタット・クオ(この名前は覚えといて!)と、Gユニットはコンプトン出身の超新星ゲームと契約し、さらにアフターマス本体はバスタ・ライムズ、イヴと大物を獲得し、ずっとウワサのあったドレーの朋友アイス・キューブともようやく正式契約を交わす……というメチャクチャ豪華で困る事態に。彼らの作品も順次登場し、いずれもドレーが大きな役割を果たすはず。ゆえにドレーは早くも仕事疲れの様子で、「ラスト・アルバムはもう作らへん!」とこぼしているとのウワサも。そうなるとこの連載は早くも終了!? てな感じで、続報は次回(あるのか?)!
ドクター・ドレーが99年にリリースした現時点での最新作『2001』(Aftermath/Interscope)

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