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 掲載: 2002/06/27 更新: 2003/02/13 ソース: 『bounce』誌 233号(2002/6/25) |
プライマル・スクリームの最新アルバム、最新のロックンロールがやって来る。ドキドキする。それはもの凄いスピードで炸裂し、リスナーをノックアウトするだろう。準備ができたら呼んでほしい。そのタイトルは『Evil Heat』!!
文/村松太カヒRAW
 | | PHOTO:MITCH IKEDA |
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プライマル・スクリームは期待されてる。まずはロックンロールだ、それと……。 プライマル・スクリームが〈どんな話をするのか〉は、プライマル・スクリームが 〈どんな踊り方をするのか〉と同じくらい興味を惹く。彼らは7枚目の……新しいアルバム『Evil Heat』でどう振る舞ってるのか?
「(〈あなた方は無邪気だ、違うか?〉という問いに)どうかな。説明するのは難しいんだけど、プレイしてるときには緊張感が常にあるから、無邪気じゃない。セクシーなロックンロールなんだ、無邪気ではないよ。もちろん楽しんでるのはたしかだけど、無邪気ってのは違う」(ボビー・ギレスピー、ヴォーカル)。
わかったよ、無邪気でないロックンロール……。では、無邪気でないパンクは? アナーキズムは? この返答はどうだろう? 馬鹿馬鹿しかったかもしれないが、こんな質問をした──あなた方のファンの若い有権者に、次は選挙に行け、と言ってくれないか……?
「自分で決めるべきことだと思うけど。俺は、国民が投票しないのも彼らなりの主張だと思うよ。(問題は)それを理解できる感受性が政治家にあるかどうかだ。得票が過半数割れしても、奴らはそれが国民の支持だと思って、合法的にいろんなことをやる。実際やってることはギャングだ」(ボビー)。
僕はプライマル・スクリームを無邪気だと思ってる。彼らの85年のデビュー・シングル“All Fall Down”から数えて17年のキャリアを考えたなら奇跡的な……いってみれば、いまだに中学生の坊主みたいなパンク・アティテュードは(奇跡的。だって……セクシーだしね!)、だからこそ、この世界に楔を入れる、勇猛に。2000年の1月、音の届く範囲をくまなく、完璧に吹き飛ばした前作『Xtrmntr』は、その衝動……怒りと速度(それをパンクと言いたいわけなのだけれども)がパンパンに充填され、まったく生やさしいものじゃなかった。それこそ無邪気な言いぐさがここで許されるなら、それは音のテロリズムだった……いまではそんな形容に誰も頷いてほしくはないけれども。プライマル・スクリームは、たぶん適当ではないやり方を慎んだ。彼らの新しいアルバムでは、〈9.11〉より以前の曲“Bomb The Pentagon”が“Rise”として生まれ変わってる(もっとも、その曲はなんだか、P.I.Lみたいに響くのだけれど)。 |
プライマルはダンスする
このアルバムで彼らが踵を返したのではないし、腰が引けている、というわけでも ない。ただ、『Xtrmntr』に比べたら、やかましくやんちゃなガレージ・パンクの2曲が入ってるぶんを考えても、それは楽しげだ。“Skull X”は、ギターがぎゃんぎゃんいってて、聴いてると、自分がギターになってしまったように思えてくる──「ギターは、全部アンドリュー・イネスが弾いてる。やばいだろ?」(ボビー)。“Sick City”は、デヴィッド・ホルムズのアルバム収録曲の再演──「最高の曲だよね。あれより、〈これぞロックンロール〉な感じに仕上げた」(ボビー)。
さらに彼らは(いや! こっちのエレメントのほうが遥かに重要なんだけど)、数限りないファンを魅了してきた、さんざよろける踊り方──サイケデリアでダンス、という折衷──にも、新しい領域を設けた。“Deep Hit Of Morning Sun”と“Autobahn 66”、この2曲はボビー言うところの〈ノイmeetsビーチ・ボーイズ〉もしくは〈バーズ〉だ。
「もちろん俺たちはサイケデリックな感覚に自信があるし、“Deep Hit Of Morning Sun”は過去最高の表現ができた一曲だと思ってる。尋常じゃないサイケデリック感覚が横溢していると思うし。でも、君が言うような〈サイケデリックの愉楽〉とかそんなもんじゃない。(歌詞を軽く歌って)ほら、ぜんぜん違うだろ」(ボビー)。
| | 7月31日にリリースされる予定のプライマル・スクリームによる、通算7枚目となるニュー・アルバム『Evil Heat』(Columbia/ソニー) |
“Autobahn 66”は始まったとたん、20分くらい聴いていたいと思わせる。〈Autobahn〉とは、当時まだ珍しかった大型の電子楽器を持ち運んでいたことから警察にドイツ赤軍のテロリストだと疑われ捕まりかけたことがあるという(長い前置きだ、ファック!)、クラフトワークのヒット曲。〈66〉は?
「断っとくけど、これはワーキング・タイトルなんだ、たぶん変更する。たんにふざけて付けてみたんだ。車で聴くといい感じの曲かなって思ったからさ、ちょうど、クラフトワークやノイみたいな70年代のドイツのバンドの音楽の多くが車で聴くタイプの音楽だったって話になってね。〈66〉はチャック・ベリーもやってる“Route 66”から取った。この曲は本当にサイケだよね、すごく」。 |
日本はセックスより最高さ!
それから……なんてこった、トピックが書き切れない。アンディ・ウェザオール、ケヴィン・シールズ、ロバート・プラント、それにジム・リードの参加、ケイト・モスとボビーのデュエット。……ここでは、シングル・カットの“Miss Lucifer”がとんでもなく楽しいエレクトロ・ブギーだっていうことだけ触れておこう──「盛り上がる曲だろ? セクシーなロックンロール・トラックだよね」(ボビー)。“Miss Lucifer”は跳ねまわる。何度でも床を抜きそうだ。
「そうさ、俺たちはロックンロール・バンドさ。しかも、すごくうまいぜ」(ボビー)。
「昨年の〈サマー・ソニック〉? 最高に楽しかったし、信じられなかった。ステージに立つと、会場全体が大暴れしててぶっ飛んだ。セックスなんかよりもよかった、それくらいよかったんだ。日本はセックスよりも最高さ(笑)。……(あなた方はロックンロール・スターで云々、という問いに)俺たちのほうが日本のファンを偶像視してるさ」(ゲイリー“マニ”モーンフィールド、ベース)。
「アッハッハッハ、イエーイ! それ、最高だね!」(ボビー)。
「バンドをやってく原動力だよ、自分たちの音楽にあそこまで感動してくれる人たちがいるってことがね。だから、日本のファンを俺は崇拝してる。彼らひとりひとりこそが、俺にとってのポップ・スターさ」(マニ)。
このやりとりは無邪気だし、それに、泣ける! では、この返答はどうだろう?
「〈9.11〉は……うん、それで何も変わっちゃいないさ、俺たちは。あの事件は起こるべくして起きたんだから。歴史をみればさ、どんな帝国だって必ず滅びる。だから俺はアメリカの滅亡を楽しみにしてる。もちろんアメリカの文化は大好きだ、アメリカでライヴするのもね。でも、その政府のやり口が大嫌いなんだ。……どこの国の政府も狂ってる。たんなるファシスト政権さ」(ボビー)。
これが無邪気、だ。だからプライマル・スクリームのロックンロールは楔を入れる。とにかく、楔の入ったあとでやれることはいくらでもある。……うまく書けた!? バカヤロ!? じゃあ、僕はもう、さっさと消えるさ! |
文/ロビ太 時代の名盤と比較するプライマルのロック道行き
プライマル・スクリームの歴史、それ即ちロックンロールの歴史なり。とにかく、プライマル=ボビーの出発時期がプッシー・ガロア=ジョン・スペンサーと同時期だということにはロックンロールの運命を感じるわけです。またマッドチェスター全盛期には、ストーン・ローゼスやマイ・ブラディ・ヴァレンタインの名盤に対し『Primal Scream』〜『Screamadelica』というラインナップで共闘。両バンドのキーパーソン、マニとケヴィン・シールズはいまやプライマル・ファミリーとして活躍しているというわけです。そして94年に当時全盛を誇ったアメリカ・オルタナ・シーンを象徴する一枚、ベック『Mellow Gold』が登場すれば、プライマルもジョージ・クリントンと共にアメリカ南部へと潜入。21世紀を前にレディオヘッドが時代のエッジをちらつかせて新旧交代を迫れば、『Echo Deck』と二本立てのダブ煙幕でトボケ顔。とはいえリンプ・ビズキットの熱い拳を突きつけられれば逆ギレ的ロックンロールが炸裂!!──って、ほんと大人気ない人たちですね。
87' プライマル・スクリーム『Sonic Flower Groove』(Warner Bros.)、プッシー・ガロア『Right Now!』(Matador)
89'
プライマル・スクリーム『Primal Scream』(Creation)、ストーン・ローゼス『The Stone Roses』(Silvertone)
91'
プライマル・スクリーム『Screamadelica』(Creation)、マイ・ブラディ・ヴァレンタイン『Loveless』(Sire)
94'
プライマル・スクリーム『Give Out But Don't Give Up』(Creation)、ベック『Mellow Gold』(Geffen)
97'
プライマル・スクリーム『Vanishing Point』(Creation)、レディオヘッド『OK Computer』(Parlophone)
00'
プライマル・スクリーム『Xtrmntr』(Creation)、リンプ・ビズキット『Chocolate St★fish And The Hot Dog Flavoed Water』(Flip/Interacope)
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文/村尾泰郎 『Evil Heat』をさらにヒートアップさせるためのポケット人名辞典
JAGZ KOONER 90年代よりアルーフのメンバーとして活躍、『Xtrmntr』よりプライマル関係者となったDJ/クリエイター。今回、『Screamdelica』以来久しぶりにプライマルのアルバムに関わるアンディ・ウェザオールとはセイバーズ・オブ・パラダイスでともに活動した仲でもある。また彼がエンジニア他で関わったデヴィッド・ホルムズ『Bow Down To The Exit Sun』でボビーは“Sick City”を披露、それを発展させたものが新作に収録された。
KRAFTWERK 70年代よりコツコツとテクノ〜エレクトロ・ミュージックの基礎を築いてきたマン・マシーンな人たち。プライマルの“Autobahn 66”は、そのタイトルからしてクラフトワークの代表作『Autobahan』を連想させる、というかそのまま。発言中に登場するノイともども、ループするリズムの快楽をポップ・ミュージックに持ち込んだ。
ROBERT PLANT いわずと知れたレッド・ツェッペリンのヴォーカリスト。今回は“The Lord Is My Shotgun”にハーモニカで参加。勢いにまかせて、たった3テイクで収録を終えたとか。ジョージ・クリントン〜オーガスタス・パブロらに続く大物共演についてボビーは「俺たちほど、共演でマジックを起こせるバンドはいないんだ」と大威張り。
P.K. DICK 60年代アメリカ・カウンター・カルチャーのなかで支持されたSF小説家。彼の代表作「暗闇のスキャナー」にインスパイアされて生まれたのが“Substance D”。小説の内容は、ドラッグ〈物質D〉をめぐって破滅していく麻薬捜査官についての話。「麻薬中毒者の日常をかなり正確に描写している」とボビーは言うけど、ディック自体はドラッグの経験はなく、国家の陰謀と神の問題に頭を悩ませ続けた。
JIM REID かつてボビーが在籍したジーザス&メリー・チェイン。その中心だったリード兄弟、その弟ジムをメイン・ヴォーカルに迎えて収録したのが昨年の〈サマー・ソニック〉でも披露した新曲“Dresden”を発展させたその名も“Detroit”。この勢いに乗ってソロ・プロジェクト、フリーヒートも再始動させて下さいね。
NANCY SINATRA フランク・シナトラの娘にしてアメリカが世界に誇るプッシー・キャット。彼女がリー・ヘイゼルウッドとデュエットした“Some Velvet Morning”を、ボビーはケイト・モスと歌う。ケイトの歌声を「若いころのニコみたい」と形容するボビー。しかもこの曲をジョルジオ・モロダー(!)にリミックスさせると息巻いていたようだが、どうやらボツったらしい。残念!!
上段左から、デヴィッド・ホルムズ『Bow Down To The Exit Sighn』(Go! Beat)、クラフトワーク『Autobahn』(EMI)、ジミー・ペイジ&ロバート・プラント『Wailking Into Clarksdale』(Mercury)。下段左から、P.K.ディック「暗闇のスキャナー」(創元SF文庫)、フリーヒート『Don't Worry, Be Happy』(Hall Of)、ナンシー・シナトラ『Movin' With Nancy』(Sundazed) |
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