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電気グルーヴ×スチャダラパー

掲載: 2005/06/30
更新: 2005/07/07
ソース: 『bounce』誌 266号(2005/6/25)

衝撃のシングル×2発を経て……ま、まさかのアルバム・リリース!! 両者の持ち味が大大大炸裂した『電気グルーヴとかスチャダラパー』を引っ提げて、ステキな〈聖☆おじさん〉たちが大集合したぞっ!!

文/荏開津 広




“聖☆おじさん”という曲が入っている。このアルバム、電気グルーヴ(以下、電気)とスチャダラパー(以下、SDP)のコラボレーション・アルバム、その調子の乗りっぷりを理解するのに大切なのがこの曲である。おじさんは、基本的には控えめにするべきである。女子中学生ではないから、という理由だけで。しかし、2005年現在、新しい種類のおじさんが生まれており、それを彼らは(自分たち自身も含めて)、〈聖☆おじさん〉と呼んでみたのである。〈今後の日本の社会を理解するうえ〉で、とか、〈MA〉とか、〈OED〉とかと同じように重要な言葉になっていくだろう。では、本人たちの〈おじさん〉の自覚は?

普通のおじさんじゃないでしょ?

BOSE「スゲエ前からあるような気もするし、10代後半から変わらないな、っていう気もするし。暮らしぶりとかさ、おじいさんと変わらないな、とか思っていたりさ。でも、逆に中学生みたいな暮らしと言われれば、そうだし」

石野卓球(以下、卓球)「鼻毛に白髪があると、けっこうキますよね」

一同「あー(同意の声しきり)、けっこうねぇ、あれクルよねー」

ピエール瀧(以下、瀧)「車に異臭がするとか。加齢臭がね」

BOSE「あとさ、僕とか、ANIと学校の同級生なわけじゃん。で、ふとANIを見るとさ、〈同級生こんなんなっちゃったよ〉とかね(笑)」
電気グルーヴ×スチャダラパーのファースト・アルバム『電気グルーヴとかスチャダラパー』(キューン)

卓球「この間『スチャダラ大作戦』のジャケット見たんだけどさ、〈変わってないんだろうなー〉みたいな意識があるじゃない? でも、実際に見てみると、すげえ3人とも老けてるよね(笑)」

「……でも、僕そういうのあんまりないですよ。人生のなかでいちばん長いのがオッサンの時期だろうな、っていうのがわかっていたから、楽しめるオッサンになっていたほうが楽しい時期が長いとはわかっていましたからね。オッサン遊びに早くから手をつけておくと、長く楽しめるでしょ」

卓球「大橋巨泉とかのライフスタイルですよね。早くから、そういうことに手を染めていて、それから加齢するっていう」

BOSE「20代の頃から言ってたよね。仕事とかいっしょにする機会が多いと、仕事終わった後に、〈キャバクラとか行かなきゃダメだ〉とか〈だって、そっちのほうがおもしろいに決まってるもん〉とか、〈明日はゴルフなんだよね〉とか……誘われて。僕はそっちの方向には行かなかったんだけど」

「オッサンがやっていて楽しそうなことっていっぱいあるじゃないですか? ゴルフとかそうだし、磯釣りとかもそうだし……」

BOSE「磯釣りやってるもんね、そういえば」

「……あと薫製作ったりとか……それはさすがにやってないけど(笑)。でも、片っ端から手をつけるとおもしろそうだなって思ってたし」

BOSE「こういうのをさ、あと、もっと年輩の人でもさ、(高木)完ちゃんとかさ、僕らの周りにいる人とかさ、おじさんって言えばおじさんだけど、普通のおじさんじゃないでしょ。そういうのさ、〈聖☆おじさん〉と名前をつけちゃえばいいな、と」

その時代に思春期を送ったんで

このコラボレーション、こうした〈新しいおじさん〉たちが集まったわけだが、もともとは卓球がSDPに声をかけて始まったという。

BOSE「最初は〈なんかいっしょにやろうよ〉とか言っても、卓球さんが僕らの曲をリミックスしてくれるとか、逆にラップで(自分たちが)参加するとか、そういうイメージはすぐ湧いたけど、それ以上どうするかって別に決めてもなかった」

卓球「基本的に思いつきとその場の勢いでいろいろな活動をやっているんですけど(笑)、今回のやつは、お互いにタイミングも良かったですね。自分たちの活動のなかでもそんな忙しい時期じゃなくて、いっしょにやる余裕もあったし」
電気グルーヴ×スチャダラパーのデビュー・シングル“Twilight”(キューン)

BOSE「僕らもアルバム出して、夏に〈WIRE〉の楽屋で会って、それぐらいから〈やろうか〉って言い出したから、僕らの場合は周期的には〈裏〉っていうか、シーズン・オフ(?)だったからやれたっていうのもある」

――働き者ですね!!!

「何を言っているんですか? でも、まりん(砂原良徳)よりは(僕たち)働き者ですよ」

BOSE「だから、最初は〈どうやってやる?〉とかなって、メシ喰いに行って、〈どうする?〉とか話し合って。で、その時卓球さんのスタジオ行って、いろいろレコード見たりして」

卓球「普通にニューウェイヴとかと、あと海援隊とかも聴いたりして。iPodに普通に入ってて、〈何入れてンの?〉とか言ったりして」

ANI「まずはマーズの“Pump Up The Volume”ぐらいから始まって。お互いに好きだからさ。あと、(ゴダイゴの)“モンキー・マジック”とかも」

卓球「ニューウェイヴもダンスっぽいやつですよ。ゴシックとか、そういうのではなくて。ちょうどね、ウチのスタジオのDJブースの下にニューウェイヴ箱があって。そこに普段DJで使わないようなレコードが入っていて(笑)」

――そうして始まった制作。

BOSE「で、卓球さんのスタジオでビートを作るんだけど、最初はそこに集めてあるドラムマシーン触らせてもらったり……〈やっぱり、これ音いいねぇ〉とか言ったりして」

ANI「でもそうやってると、急に〈マイク要る?〉とか訊かれたりとかして」

卓球「こうさ、マイクを奪い合って、ラップするのかな?とかさ(笑)、そう思ったりしていて(笑)。でもね……」

BOSE「ないない……そこまでやらないから(笑)」

ANI「やるわけないって(笑)」

――どうしても80'sの音楽を想起させる要素がこのアルバムには混ざっている。

卓球「80'sみたいなものは、意識しなくてもその時代に思春期を送ったんで、自然と出てしまうっていうか。あと、使っている機材が80年代のものが多いんですよ。だから、それで意識しなくても使っている機材の音でそういうふうに聴こえてしまう」
セカンド・シングル“聖☆おじさん”(キューン)

SHINCO「サンプリングっていうと、80年代も70年代もどこも関係なく音を拾ってこれるけど、今回はサンプリングじゃないんで。あと、やっていることが同じとは言わないけど、(アフリカ・)バンバータの“Planet Rock”とかって、どっちもどっちじゃないですか? (テクノでもありヒップホップでもあるという意:筆者註)そういうどっちもいいな、という音になると、もう関係なくなってくるし。909の音が鳴り出せば、ね……」

卓球「あの時期のドラムマシーンって本当に楽器としての完成度が高いから。それは本当にそう思う」

――では、この2つのグループ、5人の〈聖☆おじさん〉の共通点は何だったのか? それは例えば、昔の漫画であったり、ドラマであったりしたという。そのへんは、本人たちも認める宇川直宏さん監督のプロモ・クリップ“治外法権”を観てもらってもいいかも知れない。

「普通知らないようなところをお互い知っていたり、あのコマ気持ち悪いよね、とか」

卓球「あの頃の80年代ガロ系漫画のすべて、丸尾末広とか全部、あとつげ義春とかもそう。で、〈ゲンセンカン主人〉のあのコマがどうの、とか。普通、そういう会話ありえないでしょ。それから、ANIが見せてくれた、当時のTVを録画したヴィデオ。アニメとか、ドラマとか、そういうの、お互い、全部知ってたから」

 
1、2、3、“聖☆おじさん”ARE GO!!!

文/aokinoko、出嶌 孝次、リョウ 原田

〈夢のコラボ〉ってなにゆえに!? ジャンルは違えど、90年代から闊歩した両者の足取りを追ってみよう

結成〜1992

 電気+グルーヴという名前を思いついた時点で勝ったも同然。人生で〈♪キンタマが右に寄っちゃった〜〉とか歌っていた石野卓球を中心に89年結成。スチャダラパーと同じ90年に『662 BPM BY DG』でデビュー。同作はメジャー契約後の名曲“ウィー・アー”や“無能の人”(“N.O.”の原曲)も収録しており、当時の音は同時代のUKロックなどの大胆なサンプリング・ビーツにラップ/歌を乗せたものだった。翌91年にマンチェ録音の『FLASH PAPA』(キューン)でメジャー・デビュー。YMOのカヴァーも含むテクノ・ポッピーな91年作『UFO』、まりん(砂原良徳)正式加入後の92年作『KARATEKA』(キューン)と順調にリリース。この頃はまだコミック・バンド扱いだった彼らも、続いての……。(出嶌)



 スチャラカ+スーダラ+ラッパーという名前を思いついた時点で勝ったも同然。デザイン学校で出会った3人が88年に結成。電気グルーヴと同じ90年に『スチャダラ大作戦』(MAJOR FORCE)でデビュー。同作は初期の代表曲“N.I.C.E GUY”などを収録しており、人懐っこい2MCの掛け合いや、メジャー契約後には聴けなくなる奔放でお茶の間寄りな大ネタ使いの数々でも話題となった。翌91年に『タワーリング・ナンセンス』(エピック)でメジャー・デビュー。シングル・リリースされた“スチャダランゲージ〜質問:アレは何だ?”や“ゲームボーイズ”がヒットし、〈渋谷系〉的な業界ノリ感も巻き込んで順調に活動していく。この頃はまだ〈オモロラップ〉扱いだった彼らも、続いての……。(出嶌)



1993〜1995

 テクノ・ブーム全盛期の金字塔的アルバム『VITAMIN』(キューン)では、全トラック中半分がインストという、当時のシーンでは考えられなかった構成に度肝を抜かれた人も多い。それまでのパブリック・イメージとしてあった〈おもしろい〉路線は若干影を潜め、フロアでの機能性をも考え抜かれたであろうトラックの数々に、キッズは失禁状態! 翌年発表の『DRAGON』(キューン)も前作の流れをさらに深化させた感のある作品で、美しくトリップ感のある名曲“虹”で締め括られるラストは特に印象的だ。また、この頃にコンピ〈電気グルーヴのテクノ専門学校〉や〈MIX-UP〉シリーズなどのテクノ系音源が多数リリースされ、シーンは一気に活気づいた。(aokinoko)



 パーティー・ムード満点なスカパラ&LBネイションとのセッション、名曲“今夜はブギーバック”での小沢健二との共演など、94年のコラボ・アルバム『スチャダラ外伝』(キューン)は、彼らのアイデアとセンスが十分に発揮された好盤。この勢いに乗った翌95年の『5th wheel 2 the coach』(東芝EMI)も、中期SDPの頂点を感じさせるような素晴らしい出来に。キャッチーなトラック、日常を切り取るユルめなライムはもはやお家芸と化した。またこの頃、TV番組〈ポンキッキーズ〉にてBOSEと瀧が共演したり、ラジオ番組〈オールナイトニッポン〉のパーソナリティーを電気/SDP共に担当するなど、両者のシンクロ率は当時から高かった。(aokinoko)

文/aokinoko、出嶌 孝次、リョウ 原田

〈夢のコラボ〉ってなにゆえに!? ジャンルは違えど、90年代から闊歩した両者の足取りを追ってみよう

1996〜2000

 電気の多様化を暗示する傑作となった砂原のソロ作『Cross Over』が象徴的な、三者三様充実の季節。96年、“POMATO”他ピエール瀧が大活躍する『ORANGE』を発表。97年、メンバーの多様性を丸々コラージュし、電子変調して鳴らした『A』(キューン)で新しい局面へ。シングル“Shangri-La”ではシルヴェッティ“Spring Rain”を大胆に引用して大ヒット。〈MAYDAY〉へDJ出演を果たした卓球はテクノに原点を見い出し、砂原はテクノではない〈何か〉に惹かれ出して……99年春に脱退。その後、卓球は〈WIRE〉を主宰し、新生電気は初期のユーモアに回帰した『VOXXX』(キューン)へ。(原田)



 97年、ANI30歳に。ヒップホップを巡って周囲が騒がしい季節。ベスト盤発表後、レーベル移籍を経て98年『fun-key LP』(ワーナー)をリリース。“アーバン文法”ほかでファンキーな局面、タイトなワードプレイを提示。同年、SHINCOはDEV LARGE、KZAらと渋谷HARLEMでイヴェントを開始。2000年作『ドコンパクトディスク』(ワーナー)は、トゥルーゴイ(デ・ラ・ソウル)参加の“5W1H”、SHINCOの隙間を活かしたビート作りが光る“ドリジナルコンセプト”などでさらにタイトな作りに。〈そして我々は前進しなくてはいけない〉――とか、音楽的な前進と共に、大人(?)&クールな意識が目立ち出した時期。(原田)



2001〜2005

 CMJK、まりん、コーネリアスやDJ TASAKAといった電気に所縁の深い面々が参加した、デビュー10周年を記念したリミックス・ベスト・アルバム『THE LAST SUPPER』(キューン)。意味深なタイトルにさまざまな憶測が流れるなか、2001年9月に一時活動休止のコメントを発表し、個人活動期間へと突入する。久々のリリースとなった2004年のベスト盤『SINGLES and STRIKES』(キューン)では新曲が披露され、いよいよ復帰を匂わせた同年夏、〈WIRE04〉にてついに電気グルーヴの復活ライヴを敢行。この時の模様と、瀧&天久聖一制作によるプロモ・アニメを収めたDVD「ニセンヨンサマー」が大きな話題になったのは記憶に新しい。(aokinoko)



 21世紀に入ってからのSDPは、個々の活動と並行して脱線3のロボ宙のソロ・アルバム『銀河飯店』(Recording School/キューン)や、HALCALIのプロデュース・ワークを手掛ける一方、SDPプレゼンツのライヴ・ツアーを開催するなどマイペースに活動を続ける。そして2004年、ついに4年ぶりのアルバム『The 9th Sense』(COMPACTSOUNDS/ラストラム)をリリース。いつも以上にブッといSHINCOのトラックに、あのノリは健在なれど確実に男の階段昇ってる感のある、ワビサビすら匂わすANI&BOSEのフロウに思わずニンマリ。そして、このアルバムを気に入っていたという卓球とSDPが〈WIRE04〉の楽屋で再会。コラボに繋がったというエピソードも、なんとも彼ららしくていいですなー。(aokinoko)

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