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Madonna

掲載: 2005/12/01
更新: 2005/12/08
ソース: 『bounce』誌 271号(2005/11/25)

ミラーボールに照らされて、女王がふたたびフロアに舞い降りた! このハイパー・ポップなダンス・アルバムで、またしても世界は彼女に踊らされてしまうのか?

文/伊藤 なつみ

ダンス・ミュージックへのオマージュよ


 マドンナから届いた2年半ぶりのニュー・アルバム『Confessions On A Dancefloor』は、NYのクラブ・シーンからデビューしたマドンナにとって原点回帰ともいえる作品となった。今作ではジャック・ル・コント名義でDJとしても名を馳せるスチュワート・プライスが、大部分のプロデュースを手掛けている。そもそもスチュワート・プライスは2001年の〈ドロウンド・ワールド・ツアー〉と2004年の〈リ・インヴェイション・ツアー〉で音楽の総指揮を担当していて、すでにマドンナとの間に信頼関係が築かれている。そんな2人は〈ディスコ〉というキーワードのもと、楽しみながらアルバムを制作していったと言う。

 「トータルで見ると、今回はスチュワート・プライスとの仕事だったわ。彼はDJだし、アルバム全体をディスコで流れるような音楽の構成にしたかったのよ。もちろんすべての楽曲が最初からうまく繋がるタイプの曲ではないから、その曲間の部分を作る必要があったけど、それがまた楽しかった。前の楽曲の断片を引っ張ってきて繰り返したりしてね。でも、とてもクリエイティヴで楽しい作業だったわ」。

 もちろんクラブ・ミュージックへの思い入れも強いようで……。

 「クラブでみんなが踊る音楽っていう意味でいえば、ずいぶん発展してきたと思うわ。ひとつだけ変わらないのはベース・サウンドの大きさね。70年代末のディスコ・ミュージックといえばジョルジオ・モロダーやビージーズだった。それが80年代初頭に入ると共に大きく変わって、90年代にはよりテクノ的なサウンドが出てきて……。そういった流れは変化とも捉えられるけど、継続的でもあると思うの。今回の私のアルバムでは、それらすべての時代を採り込んで自分の音楽にしたかったのよ。つまり、ダンス・ミュージック全般へのオマージュといったところね」。
マドンナのニュー・アルバム『Confessions On A Dance-floor』(Warner Bros./ワーナー)

 そんなマドンナの〈エレクトロニックmeetsディスコ・ミュージック〉を、スチュワート・プライスは〈フューチャー・ディスコ〉と命名。これに対してマドンナも、「あら、いいじゃない! 〈古臭いディスコ〉って呼ばれるよりよっぽどいいわよ(笑)」と歓迎する。確かにこのテのサウンドは、ダフト・パンク、ロイクソップ、ゴールドフラップ、シザー・シスターズ、それにマドンナの“Everybody”をサンプリングして“Greatest Hit”をヒットさせたアニーなど、ここ数年でヨーロッパのクラブ・シーンを中心に席巻しているもの。そして今回マドンナが珍しくサンプリングとして取り上げているのが、最新シングル“Hung Up”で使っているアバの79年作“Gimmie Gimmie Gimmie”である。

 「子供の頃からダンス・ミュージックが好きで、その中でもアバは特にお気に入りのグループだったわ。チアリーダーをやっていた高校生の頃や、ダンス・スクールに通っていた時も、よくアバの曲で踊ったりした。だからあの時代の音楽へのオマージュとして彼らの曲をサンプリングするのは、ごく自然なことに思えたの。私はアバの男性メンバーであるベニー(・アンダーソン)とビヨルン(・ウルヴァース)に手紙を書いて懇願したのよ。また、現地に行ったマネージャーからも、私がいかに彼らの音楽を敬愛しているか伝えてもらった。すべて本心よ。で、彼らはしばらく考えていたわ。〈ノー〉って言われる可能性もあった。でも幸いなことに、そうはならなかったの」。

 アバといえば、なかなか楽曲を使用させてくれないことでも有名なグループとして知られている。ベニーは、今回の使用について〈僕たちの曲を使いたいというリクエストは物凄く多い。でも、普通はノーと言っている。許可したのは今回で2度目。 今回イエスと言ったのは、僕たちもマドンナを崇拝しているからだ。彼女にはガッツがあるし、デビュー以来、第一線で活躍してきた。 悪いものになるわけがない。もし良くなければOKしないよ。これはいいトラックだ。100%ポップ・ミュージックだ〉とコメントを出している。

 ちなみに、これまでにマドンナ以外で許可が降りたのは、フージーズが“Rumble In The Jungle”で使用した“The Name Of The Game”だけだ。

スウェーデンに恋してしまったみたい

 アバはスウェーデンのグループだが、マドンナの新作にはスウェーデンの作曲家も加わっていて、どうやらマドンナは最近スウェーデンに傾倒している様子。

 「いつからかスウェーデンと名のつくものすべてに恋をしてしまっているみたいなのよね(笑)。スウェーデン出身の監督とは何回も仕事しているし、このアルバムではスウェーデンのソングライターにもたくさん参加してもらった。それに、ヨガの先生もスウェーデン人よ(笑)。スウェーデンに惹かれる理由? あの人たちの感性とは、とても馬が合うみたい。それがなぜなのかは、はっきり指摘できないけど、ある種のユーモアというか、不思議な奇抜さというか。太陽があまり照らないせいかもしれないわ。奇妙なパラドックスがあるのよね。一面ではとても明るい人たちなのに、別の面で妙に暗いところがあって。私はそういう二面性に惹かれる傾向があるみたいなのよ」。

 そして、マドンナは言葉を続ける。

 「このアルバムは、単なる新しいタイプのディスコ・アレンジメントな作品にはしたくなかったのよ。それが『Confessions On A Dancefloor』というタイトルの意図するところなの。ほとんどの人は、ダンス・ミュージックを単に楽しむだけのもの、表面的なものと考えているかもしれない。それはそれで結構なことよ。でも、私には意味を持っていない12曲を書くことなんてできなかった。私のフィーリングや物の見方から考えると、曲についてはどうしても意味のあるものにしたかったのよ」。

 そう、このアルバムには、これまでのキャリアを振り返っての告白(コンフェッション)が含まれている。デビュー22年目、紆余曲折の人生を経て富も名声も幸せな家庭も手に入れたマドンナが、大好きなダンス・ミュージックに乗せて、自分自身について語っている。〈フューチャー・ディスコ〉サウンド、そのへんのところにもぜひ注目していただきたい。
マドンナの最新シングル“Hang Up”(Warner Bros.)
“Gimmie Gimmie Gimmie”を収録したアバのベスト・アルバム『Gold Greatest Hits』(Polydor)

文/青木 正之、出嶌 孝次

女王様がこれまでに指名してきた最新鋭のクリエイター! その1


『Madonna』 Sire(1983)
マーク・カミンズや当時最先端のDJだったジェリービーン(彼氏)も参加するなど、ディスコ人脈が活かされたファースト・アルバム。ジェリービーンは“Borderline”のリミックスも担当。(出嶌)



 

『Like A Virgin』 Sire(1984)
MTV時代の波に乗ったブレイク作。本編はナイル・ロジャースの手によるダンサブルなNYサウンドながら、当然フロアとの距離感は広がった。リミックスは引き続きジェリービーンによるエクステンデッド的なものが中心。(出嶌)



 

『True Blue』 Sire(1986)
新世代のマリリン・モンロー扱いされてポップスター度もピークに。一方では表題曲のリミキサーにシェップ・ペティボーンを抜擢し、翌年にはリミックス集も残すなど、ダンスフロアがより一般化する時代を見越したような動きも。(出嶌)
マドンナのリミックス集『You Can Dance』(Sire)




 

『Like A Prayer』 Sire(1988)
ヴァラエティーに富んだポップ・アルバムとして、マドンナ作品の中でも人気の本作。シングルのリミックスでは、シェップ・ベティボーンのもとで修行していたジュニア・ヴァスケスがいよいよ存在感を発揮しはじめ、表題曲を見事料理!(青木)
ジュニア・ヴァスケスのミックスCD『ageHa vol.4 Mixed by JUNIOR VASQUEZ』(GATE)




 

『I'm Breathless』 Sire(1990)
出演した映画「ディック・トレイシー」のムードを活用した作品だけにシックな佇まいながら、ヴォーギングを流行させた“Vogue”は次作への礎となった重要曲。また、同年のシングル“Justify My Love”ではリミキサーにウィリアム・オービットを初登用。(出嶌)



 

『Erotica』 Sire(1992)
シェップ・ペティボーンがアルバムを手掛け、マドンナのエロティック路線に拍車をかける一方、リミックスではNYハウスの大物たちが参加。期待どおりの王道ハウス・サウンドがやたらかっこいいです。(青木)
マスターズ・アット・ワークのミックスCD『The King Of House:Compiled By Masters At Work』(BBE)
デヴィッド・モラレスの2004年作『2 Worlds Collide』(DMI)


文/青木 正之、出嶌 孝次

女王様がこれまでに指名してきた最新鋭のクリエイター! その2


『Bedtime Stories』 Maverick/Warner Bros.(1994)
ベイビーフェイスやダラス・オースティンらが参加し、しっとりとしたR&B風の曲を用意。マドンナも神々しい歌声でそれに応えていますが、シングルでは対極に位置するハードでタフなズンドコ・ビートをジュニア・ヴァスケスやダニー・テナグリアが炸裂させます。ヴォーカルとの相性も完璧!(青木)
ベイビーフェイスの2005年作『Grown & Sexy』(Arista)
ダニー・テナグリアのミックスCD『Back To Basics』(React)




 

『Ray Of Light』 Maverick/Warner Bros.(1998)
ウィリアム・オービットがメイン・プロデューサーを務めたこのアルバムは、アトモスフェリックな空間を構築し、重厚なアンビエト/チルアウト的方向性へとシフト。また、シングルではクラブ69、ヴィクター・カルデロンを起用し、相変わらずハウス・ファンにアピールして話題をさらいました。(青木)
ウィリアム・オービットの98年作『Strange Cargo』(EMI)
ヴィクター・カルデロンのミックスCD『Resonate』(Statra)




 

『Music』 Maverick/Warner Bros.(2000)
リミックスではティモ・マースやアバヴ&ビヨンドが参戦し、トランス方面へも進出。しかし最大のポイントはマドンナと初の絡みを見せたミルウェイズ! シンセがウニョウニョしたエレクトロや80'sのテイストを爆発させ、のちのエレクトロ・ブームを先取り!(青木)
ティモ・マースの2002年作『Loud』(Perfecto)
ミルウェイズの2000年作『Production』(Naive)




 

『American Life』 Maverick/Warner Bros.(2003)
エレクトロクラッシュ旋風真っ只中に、表題曲でシーンの親玉=家猫先生をリミキサーとして起用。また“Hollywood”では、最新作でプロデュースを担当したジャック・ル・コントがリミックスを披露。80'sドップリのジャックをここで選ぶセンスに感激です!(青木)
フェリックス・ダ・ハウスキャットの2004年作『Davin Dazzle And The Fever』(Emperor Norton)
ジャック・ル・コントのミックスCD『Fabliclive.09:Japues Lu Cont』(F Communications)


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