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capsule

掲載: 2007/12/27
更新: 2008/01/18
ソース: 『bounce』誌 294号(2007/12/25)

精力的なプロデュース・ワークによって時代を味方に付けた男が、いまいちばん表現したかったサウンドとは!? 2007年最後の衝撃が強烈でポップな光を放つ!!

文/リョウ 原田




 2007年12月4日、プライヴェート・スタジオ。中田ヤスタカは語る。

 「自分の場合、ただ要望に応えて作るっていうのはあんまり好きじゃないんですよ。変化に対して構えちゃう人が音楽業界には多いから、特にプロデュース仕事だとそれを望まれることが多い。だけど、ちゃんと自分の音楽を追いかけている人たちを退屈させたくないんです」。

 2007年に発表されたタイトルのうち、中田ヤスタカが携わった楽曲は70曲以上にのぼる。アイドル好きから90年代テクノ・ノット・デッド派までを巻き込んでブレイクしたPerfumeをはじめ、MEG、COLTEMONIKHAなど、女性ヴォーカル仕事における緻密なトラックメイクの影響力は、昨今のフォロワーの追随を見れば明白だろう。そしてそれらの裏方仕事を手掛ける中田にとって、自身の表現として重要な位置を占めるのが、こしじまとしことのユニット=capsuleだ。その通算10作目にして、2007年の3枚目となるアルバム『FLASH BACK』。プロデューサーとして周囲の評価を高めるなか、中田ヤスタカはcapsuleとしてどんな音楽を提案してきたのだろう?

自分のきっかけで

 「第一印象的に取っ付きやすいニュアンスというのは、他のプロデュース作品でけっこうやっているので、capsuleではそういう〈前置き〉要素というのは必要ないな、と思って。今回は、2007年最後の僕の作品で、〈自分のきっかけ〉で作るアルバム。本当に自発的に作る場合にしかできない良さを表現するためのアルバムだと思います。そういう意味で〈提案〉は入れやすい。自由でいてマニアックではない。それでいて〈普通にいい〉っていう感じには陥らない。つまり、それこそ本当の意味でのポップスだと思うんですけど。そういう、レヴェルが高い意味でのポップスをやれたら」。

 capsuleのサウンドに、それまでのボサノヴァやラウンジ・ミュージック的手法を介した楽曲と同居する形で、ニューウェイヴ回帰〜ニューレイヴ現象を通過したダンス・ポップ的な要素が見え隠れするようになったのは、2005年の『L.D.K. Lounge Designers Killer』あたりからだ。そして、プログレッシヴ・ハウスからフレンチ・エレクトロまでを下敷きにcapsuleのニューフォームは、2年半のうちに〈覚醒〉と呼びたくなるような変化をみせた。新作『FLASH BACK』はそんなモードを過激に推進した仕上がりだ。例えば、ヴィタリック流儀の転調処理が心地良い“MUSiXXX”や、ジャスティスばりのカットアップ処理を仕込んだ“FLASH BACK”など、時代の〈記号〉を絶妙のアレンジで忍ばせたフロア・キラーもある。しかしながら、アルバム全9曲を37分40秒で駆ける世界観には、他のcapsule作品同様に〈コンセプト・アルバムとしてのポップス〉を感じることができる。

 「自分のなかでは〈歌謡曲の構造をしてなくてはいけない〉という時期も〈DJに向けたフォーマットでなくてはいけない〉という時期も通り過ぎていて。曲としていちばんカッコイイ状態、っていうのがベストだと思うんです。みんなが〈フツー〉っていうものを作っちゃったら、ポップスが終わっちゃう。ポップスは〈衝撃〉があるから更新されていくもので、衝撃がなかったら、〈ポップス〉っていう言葉自体が過去のものになってしまうから」。
capsuleのニュー・アルバム『FLASH BACK』(contemode/YAMAHA)


作り手が楽しんでいれば

 彼にとって、capsuleと外部仕事の決定的な違いは「デモテープもいらないし、制作プロセスにおいて誰かに確認する必要もない」ことにあるという。ヴォーカル録音とトラックの制作、編曲、すべてのプロセスを作曲と捉え、〈インストゥルメンタルなのか、ヴォーカルなのか〉や〈フックが必要なのか、ブレイクが必要なのか〉を適宜柔軟に判断する。そんな判断の結果、エレポップ・ディスコ“Eternity”も、capsule版“体操”ともいえそうな“Get down”などの〈歌モノ〉楽曲も完成したようだ。中田流ダンス・ポップはCHERRYBOY FUNCTIONら(ほぼ)同世代のテクノ・アクトとの音楽的な共通点を指摘されることもあるが、〈(なるべく)自分自身が用意した環境で完結させる〉という制作過程を聞いて、妙に納得してしまった。

 「〈器用〉っていう意味でのプロフェッショナルの仕事は、みんな聴き飽きていると思うんですよ。ソツがないというか、驚かない。空気が変わるような、違和感があるような音楽が少ないと思う。〈こういうエッセンスを足そうぜ〉っていうのと〈好きでやっている〉のは違いが出るし、作り手が思い入れを持って楽しんでいたら、いろんなジャンルで自由なものがたくさん出てくるんだと思います。どんなジャンルでもおもしろいものはおもしろいんで」。

 capsuleの劇的な変化に、違和感を感じてきた人もいるかもしれない。しかし、サウンド・デザイナーである中田ヤスタカ自身の〈いま、おもしろい〉〈いま、カッコイイ〉に忠実なモードを提案するのが、capsuleのポップスだとしたら……貴方が、大衆がそれを受け入れた時、capsuleとポップスの蜜月が始まる。

Perfume


 もはや説明不要のアイドル・ユニットで、全国区のインディー・デビューとなった2003年のシングル“スウィートドーナッツ”以降、すべての楽曲を一貫して中田がプロデュースしています。ユーロ調の“モノクロームエフェクト”やテクノ・ポップの“ビタミンドロップ”など、インディー時代の楽曲はゲーム・ミュージックにも通じるタイニーな可愛さを押し出したものが多かったのですが、メジャー移籍後のいわゆる〈エレクトロ3部作〉と、決定的な名曲“パーフェクトスター・パーフェクトスタイル”を収めた『Perfume〜Complete Best〜』以降の(楽曲のクォリティーの高さも含めた)快進撃はご存知のとおりでしょう。〈テクノ・ポップ・アイドル〉と呼ばれる彼女たちですが、メジャー以降のサウンドはいわゆるテクノ・ポップの懐古性とは無縁のものだし、中田も音楽としてのモダンさや強度を失うことなく、ここでもピュアな姿勢を貫いているのが頼もしい限りです。“ポリリズム”に続く両A面のニュー・シングル『Baby cruising Love/マカロニ』も期待できそう!
▼Perfumeの作品を紹介。
2006年作『Perfume〜Complete Best〜』(徳間ジャパン)
2007年のシングル“ポリリズム”(徳間ジャパン)
2008年1月16日にリリースされるニュー・シングル『Baby cruising Love/マカロニ』(徳間ジャパン)


COLTEMONIKHA


 アパレル・ブランドのMade in COLKINIKHAにてデザイナー/モデルを務める酒井景都がヴォーカルを務め、中田ヤスタカがサウンド・プロデュースを手掛けたユニットで、これまでに2枚のアルバムを発表しているCOLTEMONIKHA。中田のヴィジョンを直接的に体現するcapsuleとは異なり、ここでは作詞を担う酒井のガーリーで童話的な世界観が音に表出されているようです。ラウンジーなハウスや品の良いエレクトロ・ポップが快いのは当然ですが、『COLTEMONIKHA 2』では“NAMAIKI”などおきゃんな側面も見え隠れしてきて楽しめます。
▼COLTEMONIKHAのアルバムを紹介。
2006年作『COLTEMONIKHA』(contemode/YAMAHA)
2007年作『COLTEMONIKHA 2』(contemode/YAMAHA)


文/出嶌 孝次

中田ワークスを厳選紹介!! その1


鈴木亜美 joins 中田ヤスタカ 『FREE FREE / SUPER MUSIC MAKER』 avex trax(2007)
意外な顔合わせの両A面シングル。ブリーピーな“FREE FREE”も良いけど、歌声を丸ごと加工してダフト・パンク調のカットアップもブッ込んだ7分超の電化ディスコ“SUPER MUSIC MAKER”がカッコ良すぎ。彼女の〈joins〉中でも抜群の成功例です。アルバムを作ってほしい!



MEG
エレクトロ・ポップのBaby Doll(資料より)ことMEGと中田のコラボは、2007年春に限定リリースされたシングル“甘い贅沢”で始まり、レーベル移籍作の“OK”を経て、リリースされたばかりのアルバム『BEAM』に結実しました。その“OK”(作曲は蔦谷好位置)はYUKIみたいだったりしますが、それも含めてエレポップやテクノ・ポップ、健気な歌声を活かしたミディアム、活かさないディスコ・パンクなど、中田がサウンド・デザイナーとしての腕を振るって統一感をもたらした安定感のある仕上がりです。



m-flo 『electriCOLOR -COMPLETE REMIX-』 rhythm zone(2007)
遊び心を忘れない姿勢が中田に通じる気もするm-floのリミックス集。中田はMINMIの歌う“Lotta Love”をベースがブギブギ唸る電気ハウスに再生! あまり絡まないタイプの歌声だけに興味深い出来です。



RAMRIDER 『きみがすき+REMIX TUNES』 rhythm zone(2007)
石野卓球やi-depら人気クリエイターが集った一枚で、中田は“Sun Lights Stars”をリミックス。歌を加工しまくりつつもどこか爽やかな電気工事という感じ。



dorlis 『Swingin' Street 3』 SUPALOVE/SUPANIPPA(2007)
〈スウィンギー・ポップ〉を標榜する彼女の“ラブ◎○△▲ダービー”を中田がリミックス。スキャットで始まるヴォーカルも含めて、原曲のイメージを優先した出来映えですね。



KALEIDO 『New Sessions!』 Irma/IRMA JAPAN(2007)
日本のクリエイターたちにトラック面を委ねたブラジリアン・デュオの企画アルバムで、中田は人気曲“Meu Sonho”をリミックス。マイペースなイイ仕事ぶりです。

文/出嶌 孝次

中田ワークスを厳選紹介!! その2


SARINA 『Violin Diva -2nd set-』 ビクター(2007)
ヴァイオリンにダンス・ビートを組み合わせる帰国子女、だそう。中田が手掛けた“CYBER GIRL”は、キリキリと歌う弦に対して前ノメリなビートをぶつけたディスコ・パンク調でございます。



嘉陽愛子 『cosmic cosmetics』 avex trax(2006)
A-MUSIC界の清純派アイドル(資料より)、あいぴーのシングルで、表題曲の作曲とアレンジを中田が担当。少し甘えた歌声にもフィットするユーロ・ポップ・チューンです。オリエンタルなメロディーが印象的!



井上麻里奈 『ビューティフル・ストーリー』 アニプレックス(2007)
人気声優のシングルで、ポジティヴな中田節がハウシーに躍る表題曲のキュートな眩しさは、もはや説明不要といった感じ。で、スウィンギーなカップリング曲の“変な恋”がひときわ秀逸!



リア・ディゾン 『Destiny Line』 ビクター(2007)
本作の通常盤にのみボーナス収録されたのが、シングル曲“恋しよう♪”のリミックス。トライバルなビートに極太のベースをブチ込んで豪快にアッパー化したゴージャスなアレンジで、オリジナルよりも格段に格好良く仕上がっています!



dahlia 『musics for my funeral』 Happiness(2004)
capsuleの『CUTIE CINEMA REPLAY』などに参加していたKaoriのソロ・ユニット。今作で中田は“maxima!”をプロデュースし、contemodeのコンピでも“水色ジーナ”を制作。



土岐麻子 『TOKI ASAKO REMIXIES WEEKEND SHUFFLE』 LD&K(2007)
彼女のカヴァー曲をさらにリミックスするという企画ミニ・アルバム。中田が手掛けたのはYMOの“君に胸キュン”で、極東ディスコな感触を湛えたユーモラスな仕上がりはオリジナルと聴き比べたいです。オートチューン声が沖縄民謡風に聴こえたり!



LIAR GAME 『Soundtrack』 contemode/YAMAHA(2007)
中田が丸ごと手掛けたTVドラマのサントラ。疑心と疑念が渦巻く作中にあって、緊迫感を煽るアッパーなトラックが多く、ヒプノティックな聴き心地です。

文/出嶌 孝次

服用前にお読みください……capsuleがばらまいてきたポップなカプセルの成分分析


『ハイカラ ガール』 YAMAHA(2001)
結成から約4年を経て登場した初のアルバム。ボサノヴァからハッピー・チャーム系までを行き交うアレンジの幅はすでに広いが、作りはあくまでもスケール感のある歌と和風のメロディーを中心に据えたものだ。男女ユニットの典型においての、高品質なポップス。



『CUTIE CINEMA REPLAY』 contemode/YAMAHA(2003)
和風の翳りが後退し、チープな電子音とキュートな歌声がカラフルなアレンジで大暴れするオシャレ盤。〈ネオ渋谷系〉と呼ばれた界隈にも通じるという点で、(二重の意味での)レトロ・フューチャー志向が全開で楽しい! EeLなどゲストも多数。



『phony phonic』 contemode/YAMAHA(2003)
COPTER4016882やHazel Nuts Chocolateのゲスト参加もあって、前作の延長線上にあるファンシーでグルーヴィーな味わいながら、レトロな楽器の響きを活かしたスウィングやボサノヴァ寄りの曲が中心。しかし、メチャメチャ完成度が高いね〜。



『S.F. sound furniture』 contemode/YAMAHA(2004)
〈音の家具〉をテーマに、20世紀から見た未来のような仮想世界を背景に設定したコンセプチュアルな野心作。ボッサ・ブレイクスやポータブル・ロック、フレンチ・ポップ調など、サウンドもここまでの集大成のような印象だ。装丁も贅沢に!



『NEXUS-2060』 contemode/YAMAHA(2005)
世界初のリゾート用宇宙ステーションが完成した2060年……と、前作の世界観を発展させたようなコンセプトを敷きつつ、半数近くの曲がラウンジやハウスなどのインストとなり、ヴォーカルの加工も際立ちはじめた。次作での飛躍を予感させた一枚。



『L.D.K. Lounge Designers Killer』 contemode/YAMAHA(2005)
モロにアンダーワールドな表題曲をはじめ、ロッキン・エレクトロやハウスなどクラブ仕様のスタイリッシュなアレンジが格好良い一枚。泣ける“グライダー”など、Perfumeの素地を思わせるアイデアも楽しいので万人にオススメ!



『FRUITS CLIPPER』 contemode/YAMAHA(2006)
前作を踏み台に、エレクトロ・ディスコ〜プログレ・ハウス方面へと一気に振り切れた大いなる転換点で、ハウス路線を決定付けた名曲“jelly”はここに収録。世のオッサンの90年代回顧が始まった時期に、中田が真逆にハンドルを切ったのも興味深い。



『Sugarless GIRL』 contemode/YAMAHA(2007)
キツネなど同時代の海外勢にリアルタイムで呼応し、ジャスティスを思わせるエッジーなロッキン・ハウス“Starry Sky”などアッパーな攻めのビートがひしめき合った大傑作。こしじまの歌声が妖艶に歪みまくるヴォーカル・トラックも副作用強め!



『capsule rmx』 contemode/YAMAHA(2007)
古くは4作目収録の“ポータブル空港”から、“Lounge Designers Killer”“jelly”、前作の表題曲まで、各時代のダンス・トラックを容赦なくアップデートしたセルフ・リミックス・アルバム。新作『FLASH BACK』へと至るアイデアも随所に聴ける興奮作だ。



Capsule/CUTIE CINEMA REPLAY
Capsule/phony phonic
capsule/nexus-2060
capsule/FRUITS CLiPPER<初回特典封入>

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