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the ARROWS

掲載: 2008/01/10

ソース: 『bounce』誌 294号(2007/12/25)

笑顔の裏にある孤独や不安――誰もが抱える内なる感情を明るく照らした新作で、彼らが作る〈スタンダード〉を垣間見た!

文/宮本 英夫




 the ARROWSと言えば、クラブ・ミュージックのダンサブルな要素をロックに持ち込み、明快な曲調でストレートな恋の歌を歌う良質なダンス・ポップ・バンド。そういう認識は間違いじゃない。が、楽しさの背中にはいつだって悲しみが貼り付いているし、笑顔の裏には人に言えない孤独感もあるのだ。ニュー・アルバム『GUIDANCE FOR LOVERS』で坂井竜二(ヴォーカル:以下同)が描いたのは、人間の多面性であり、〈自分はなぜ音楽を作るのか?〉という根源的な問いへの答えだった。

 「シングルはノリの良いものばかり選んで出したので、自分たちで狙ったこととはいえ、イメージが固定されるのがストレスだったんです。〈底抜けに明るい奴ら〉というイメージを付けて、なぜそうしているのか?という、その裏側にあるやり切れなさや不安みたいな部分を出さないと、チャラチャラしたままで終わっちゃう。結果的に、それがアルバムのコンセプトになりました」。

 “月光の街”という曲がある。これは誰が何と言おうと、彼らの現在の最高到達点であり、坂井の一世一代の魂の叫びである。延々と続く〈君にね、会いたいんだ〉というリフレインが、どんな美麗な言葉よりも深く強く、聴き手の心に揺さぶりをかける。

 「僕たちはそんなに野心もなく、ずっとゆっくりやってきて、甘えてる部分もあったんです。だからメジャーになってインタヴューをしてもらっても、いい歳して全然答えが固まってない。そんな時にマネージャーからメールが来て、〈なぜ竜二くんが女の子を好きになるのか、なぜ踊るのが好きなのか、なぜ歌うのか、しっかり突き詰めてほしい〉って。〈ポップスは勉強すれば誰でもできるけど、ロックには生まれ持った才能が必要で、竜二くんにはそれがあると思う〉って言ってくれた。それで、自問を繰り返せば答えが出るはずだと、いま自分が訊かれたら困ることを全部書き出したんです。それがこの曲の前半で、スタジオに持って行ってバンドと合わせた時、だんだんスピードが上がってきたなかで出た言葉が〈君にね、会いたいんだ〉だった。僕はいつも誰かに会いたくて手を伸ばしていたんですね。音楽は、コミュニケーションの最初の手段だった。それで〈答えはコレだ〉と」。

 “月光の街”が重い核となることで、一曲ごとのヴァリエーションがより強調された。ラテンのリズムが楽しい“渚でKISS”、得意の4つ打ちで攻める“マストピープル”、強烈なインストのディスコ・ファンク“DRAGON BEAT”、そしてフィッシュマンズ的な宇宙空間サウンドを表現した“六月は眩暈”など――どの曲も個性に溢れ、明るさの内側に深い切なさを湛えて脈打っている。

 「暗い曲を明るいメロディーとリズムの曲調に変えるのと、辛いことがあってもこれまで生きてきたってことが似てる気がして。僕らを取り巻くはっきりしない曖昧な部分を歌詞とメロディーに変えてやることが安心感を生むと思うんです。僕がやりたいのはそれなんです」。

 究極の目標は、あらゆる世代が無条件に楽しめる「スタンダードを作ること」だという。『GUIDANCE FOR LOVERS』は、その夢への着実な一歩だ。
the ARROWSのニュー・アルバム『GUIDANCE FOR LOVERS』(ROCKER ROOM/ポニーキャニオン)


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 ここでは彼らの過去作を紹介。まずは坂井竜二のイノセントな歌声が鮮烈な印象を与えた2003年作『東ファウンテン鉄道』(Nomadic:1)。淡い叙情性と疾走感が上手くブレンドされた、ロックの初期衝動を感じさせるフレッシュな一枚です。そして2004年作『スターサーカス』(Nomadic:2)は裏打ちのリズムが心地良い楽曲が並んだ、ルーツのひとつであるフィッシュマンズの影響も色濃いもの。とくに表題曲のキラキラとした浮遊感は絶品です! また、2005年の『昨日 今日 トゥモロー』(ラストラム:3)は彼らの真骨頂であるダンサブルなロックはもちろん、よりアコースティックな質感の曲が耳に残る作品に。メランコリックなメロディーラインが特徴的な名曲“BGMの向こう側”も収録されています。そしてメジャーに移籍した2006年には、インディー時代の音源の再録を中心にした『ARROW HELLO WONDERFUL WORLD』(ROCKER ROOM/ポニーキャニオン:4)を発表。サウンドの振り幅を感じるベスト盤的な選曲で、これ一枚でthe ARROWSの本質に迫れます。誰しもの心と共鳴する歌詞と、センティメンタルなメロディーを核に進化する彼らに今後も注目!
(編集部)

 
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