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DJ KAWASAKI

掲載: 2008/01/24

ソース: 『bounce』誌 294号(2007/12/25)

イイ男の後ろにはイイ女がいる。イイ女の後ろではイイ音楽が鳴っている。そんな音楽を作り出すのは、2008年に最初のビートを撃ち込むのは……

文/池谷 修一

ハウス景気の立役者

写真/高岡 弘、モデル/大屋夏南(elite JAPAN)

 ハウスを芯に、ポップネスとクロスオーヴァーな要素が溶け合うダンス・ミュージック──DJ KAWASAKIが生むそんな新しいサウンドが人気だ。ファースト・アルバム『BEAUTIFUL』が、いま盛り上がっている日本のハウス・シーンを活気づける起爆剤的な作品になったこともよく知られたところだろう。クラブ・コアなオーディエンスからまったくのポップ・リスナーまでを揺さぶるその魅力とは? 新しい年の幕開けを飾るニュー・アルバム『YOU CAN MAKE IT』の制作大詰めというタイミングで彼に迫ってみた。

  「今回は前作よりソウルフルでエモーショナル、ドラマティックなものを作るように心掛けました。歌モノだけでなくインストでもそれが表現できたらいいなと思って」。

 切なく美しいメロディーとキャッチーな歌が詰め込まれた『BEAUTIFUL』は、ハウスやクラブといった枠を越えてブレイク。異例なほど多くラジオからも流れた。極端な話、ハウスという音楽にそこで初めて出会ったという若いリスナーも多いはずだ。

  「ポップなシーンとの垣根をなくしたいという気持ちはありましたね。例えばヒップホップやR&Bの人たちはアンダーグラウンドからメジャーなフィールドへどんどん進出していて、ポップ性もファッション性もあったりしますよね。そこはハウスにあまりなかったところで。だからメロディーの強さとか曲調のポップさはよく考えました。そこに藤井リナちゃんがジャケに出てくれたり、総合的な効果があって、多くの人が支持してくれたと思うんです」。

 一方で、ハウス界からの強力なフォローもあった。特に名曲“BLAZIN'”は、ティミー・レジスフォードやダニー・クリヴィットらの大物DJをも大いに唸らせている。

  「彼らが“BLAZIN'”をよくプレイしてくれたことが、半分手探りだった自分に、〈あのレヴェルのものを作っていけば世界へ行けるんじゃないか〉という確信を持たせてくれた部分はありますね」。

 DJとしてのKAWASAKIは、そのダニーたちに大きな影響を受けてきたという。トラックメイク面はフィル・アッシャー、またトータルなプロデュース・ワーク面ではKyoto Jazz Massiveの導きを語る。

  「MPC3000を使ったドラムにこだわるのはフィルの影響もあるし、デトロイトの音楽が好きだからでしょうね。あのザラついたローファイな感触というか。同じハウスでも、僕はソウルフルで土臭いものを通過してるんです」。
2008年1月1日にリリースされたDJ KAWASAKIのニュー・アルバム『YOU CAN MAKE IT』(コロムビア)


硬派なグルーヴの正体

 例えば生ピアノを使う美麗なリフは彼の本領だが、そこはフランキー・ナックルズらのデフ・ミックス一派とは大きく違うところだ。またTakuji a.k.a. GEETEKとのユニット=GK時代に学んだビートメイクのテクニックや、キックやハイハットの音色選びなどは、デトロイト勢に影響を受けているという。KAWASAKIの曲は〈乙女系〉などと括られたりするが、その実すこぶる硬派であることを強調しておきたい。例えばヒプノティックに繰り返される独特のフレージングは、爆音が渦巻くクラブの闇を大いに幻惑させるものだ。

  「そこはやはり自分もDJなので、まずフロアでOKなものをめざしているからです。ピアノのループ感にしてもそうで、セオ・パリッシュがやっているようなところですね。古いレコードから録ったフレーズもループにするからこそ新しく聴こえるわけで、そこは凄く考えましたね。そういう部分を出せなければ、逆に普通の歌モノになってしまうんです。“BLAZIN'”にしても、実は〈ワル〜いキック〉を使ってるんですよ(笑)」。

 各曲のプロダクションは気心の知れたプレイヤーたちの演奏をサンプリングを使うように録って、組み上げているという。

  「思いついたメロディーを口で歌ってはストックしておくんです。それを曲作りを始める時に選ぶ。その時点で〈こんな音色で、歌はあの人かな〉というのが自分のなかでできてるんですよね」。

 ピアノの音がなぜか昔から好きなのだそうで、新作では3人の鍵盤奏者を使い分け、最適なシンガーと組み合わせている。

  「僕のなかではキーボーディストとシンガーの組み合わせは絶対なんですよ。菱山翔太くんはポップで華やかでソウルフルな演奏なので、女性が似合う。UKのタシータ・ドムールは可愛くもあるしソウルフルでもあって、そのへんのニュアンスはいちばん好きなところです。SWING-Oさんの鍵盤はアーバンな感じで、ソウルフルな歌がバッチリ合いますよね」。

 R&Bの名ソングライター/シンガーのゴードン・チェンバースや、ガラージ・ハウスのディーヴァであるキャロリン・ハーディングも歌っているが、そこに繋がってくる黒くソウルフルな音楽こそがKAWASAKIのいちばん大きなバックボーンだ。

  「ラリー・レヴァンがプレイしたような、ハウス前夜の黒いディスコやソウル。そして現在のクロスオーヴァーなサウンド。ハウスそのものよりも、実はそういう音楽に影響されています。そうしたものを採り入れたうえで自分が考える〈ハウス〉を作っているので、ストレートにハウスをやっているわけではないんです。今後はもっと〈DJ KAWASAKIの音楽〉を打ち出していきたいですね」。

 スティーヴィー・ワンダーとダイアナ・ロスをこよなく愛するという男が作る、歌心に溢れたダンス・グルーヴは、いまもさらなる進化を続けている真っ最中だ。
▼文中に登場したアーティストの関連作を一部紹介。
フィル・アッシャーが制作した2005年のコンピ『A Restless Soul Collage Vol. 1』(Village Again)
タシータ・ドムールが参加したリール・ピープルの2007年作『Seven Ways To Wonder』(Papa)
ラリー・レヴァンのプレイしたトラックやリミックス曲を集めたアンソロジー『Journey Into Paradise : The Larry Levan Story』(Rhino)


文/出嶌 孝次

HE MADE IT! 自身のグルーヴを追求してきたDJ KAWASAKIのジャイアント・ステップをおさらい! その1


GK 『GK SOUND』 クルーエル(2003)
2000年にTakuji a.k.a. GEETEKの“Mensole of Sound”を共同リミックスし、それを契機に結成されたコンビによる唯一のアルバム。テッキーなハウス、ブレイクス、ダブなどをゴッタ煮にしたこのサウンドにKAWASAKIが加担していたことはもっと知られていい。なお、このコンビではSUITE CHICのリミックスを手掛けたことも。



『THE ROOM -10th Anniversary-』 ソニー(2003)
東京は渋谷のクラブ、THE ROOMの10周年記念コンピ。KAWASAKIはMONDO GROSSO“CENARIO”のサウダージなドラムンベース・リミックスを披露し、THE ROOM ALL STARS名義の“ANGER”ではブギーなプログラミングを担当している。



Kaori 『Oasis』 クルーエル(2005)
GK盤でも歌っていた彼女の初EPにて、“New Day”をDSKと共同プロデュース。粋なブロークン・ビーツに仕上がっている。



瀧澤賢太郎 『IMPRESSIVE TIME REMIXES』 HIGH CONTRAST/ヴィヴィド(2005)
シーンを共にリードする俊英の“Feel Your Emotion”を爽快にリミックス。自作でも組むKARINのヴォーカル曲だけに好相性も当然。



吉澤はじめ 『Echo from Another Side of the Universe』 ジェネオン(2006)
敏腕キーボーディストのリミックス盤に、“Sweet Way”の洒脱なアーバン解釈で参戦。



DJ KAWASAKI 『BEAUTIFUL』 コロムビア(2006)
ブロークン・ビーツとラテン・ハウスのハイブリッド的な独特のビートメイクを確立した初のソロ作。オシャレ系コンピで重宝されまくった表題曲、キング・ストリートからUSリリースされた“BLAZIN'”、とKARINの歌う2曲が国やシーンの内外で話題を振りまいた。アーネストやアンジェラ・ジョンソンら贅沢なゲストの布陣が凄い。



沖野修也 『UNITED LEGENDS』 ジェネオン(2006)
THE ROOMを運営するボスのスタイリッシュな初ソロ作にて、“SHINE”のトラックを担当。デトロイトから招いたディヴィニティの伸びやかな歌声を力強いビートで迎えつつ、シャイニーな鍵盤使いで洗練された印象を残す。



DJ KAWASAKI 『BEAUTIFUL TOO』 コロムビア(2007)
新曲や未発表曲、リミックスした/されたトラックなどを豪勢に盛り込んだ、『BEAUTIFUL』のサブテキスト的な一枚。LENA FUJIIがシンガーに起用された“BRIGHT LIKE LIGHT”はここで初披露されている。

文/出嶌 孝次

HE MADE IT! 自身のグルーヴを追求してきたDJ KAWASAKIのジャイアント・ステップをおさらい! その2


PORT OF NOTES 『Joint Adventure 2』 クルーエル(2007)
旧知のDSKらによるユニットの新旧リミックス集。直球のKAWASAKI節が冴え渡った“You Gave Me A Love”は本作に先駆けた12インチ・リリースでも話題となった。



Kaori 『In My Head』 クルーエル(2007)
このダンス・トラック集で久々に合体。職人的な手捌きを感じさせながらも前回の絡みとは様相を変え、表題曲のリミックスは超アッパーなハウス・トラックで押しまくる痛快な仕上がりに! 



JAZZ JUICE 『52nd Street』 Freestyle/X-TOY'S(2007)
ラテン・ジャズやブラジル音楽のフロア解釈を志向するUKのユニットで、本作の日本盤にのみ“Atravessar”のKAWASAKIリミックスを収録。そもそも原曲がラテン寄りのムードを湛えていることもあり、親和性の高い手合わせとなっている。



GORDON CHAMBERS 『Love Stories』 Dome/コロムビア(2007)
『YOU CAN MAKE IT』における“BELIEVE”に先駆けたKAWASAKIとの共演が、本作の日本盤にのみ収録された“If You Love Me”のリミックス。名ソングライターの主役がブラウンストーンに提供した名曲をよりアーバンに飛翔させるソウルフルな出来映えだ。



VICTOR DAVIES 『Hear The Sound : Remixed』 Afro Gigolo(2007)
フォーキー・ソウル野郎のリミックス集に登場。西岡ヒデロウ(CENTRAL)のティンバレスとSWING-Oのピアノを加え、ボッサな原曲を明快な夏色ハウスに変えた“Gold & Diamonds”が爽やかで最高! 



JAZZIDA GRANDE 『Felicia』 MAICO(2007)
ヴォーカルにMONDAY満ちるを迎えて生音を活かしたサンバ・ハウス“Release The Light”を、骨太なグルーヴを増強してフロア対応へとリミックス。SWING-Oの鍵盤も軽快に転がるアッパーな出来映えが素晴らしい。



『Blue Note Street』 EMI Music Japan(2007)
ブルー・ノートの名曲カヴァー企画盤にて、ハービー・ハンコック“Maiden Voyage”を取り上げ、一気にハウスへと舵を切る斬新なアレンジで再航海! メイン・フィーチャーされた中村新史のピアノも楽しげに躍動しまくる好曲だ。



『The Room Weekender 15th anniversary special edition compiled by DJ KAWASAKI』 コロムビア(2007)
4枚登場したTHE ROOMの15周年記念盤のひとつとなる、KAWASAKI選曲のコンピ。スピリット・キャッチャーやオンリー・フリーク、ニーズといった振り幅のあるチョイスからは、現状のイメージに安住することを良しとしない意志も窺える。

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