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第29回 ─ ドゥー・ユー・リメンバー?


掲載: 2008/03/13

ソース:『bounce』誌 296号(2008/2/25)

数々の名バンドを渡り歩いたアル・マッケイの知られざる偉業を再確認!

文/林 剛



 ギターの名手はソウル・ミュージックの世界にも数多い。そのなかでもファンク系のリズム・ギター、とりわけカッティング奏法の名手としてシックのナイル・ロジャーズと肩を並べたのがアル・マッケイ。そう、アース・ウィンド&ファイア(以下EW&F)のヒット“September”(78年)でコロコロと軽快なギターを弾いていた、あの人だ。みずからも作者に名を連ねた同曲で、彼の存在はソウル史において絶対的なものとなった。現在はアル・マッケイ・オールスターズを率い、来日公演のステージを収めたライヴ盤を発表したこともある彼。この3月、またまた日本にやってくるレフト・ハンドのギタリストは、今年めでたく還暦を迎える。

 48年、ルイジアナ州ニューオーリンズで生まれたアル・マッケイ(本名アルバート・フィリップ・マッケイ)。彼がプロとしてのキャリアをスタートさせたのは、かのアイク・ターナーに見初められ、アイク&ティナのバンドに参加した時だったと言われている。時は66年、18歳のアルはいきなりタフな現場に首を突っ込むことになったわけだが、その後はワッツ103rdストリート・リズム・バンドに加入し、そこで数年間ジェイムズ・ギャドソンらと共にLAファンクの地固めを行う。かと思いきや、ほどなくしてバンドを去った彼は、続いてサミー・デイヴィスJr〜アイザック・ヘイズのバック・バンドに順次加入。その途中にはシルヴァーズのツアー・ディレクターも務めていたというから、たった数年の間に〈一流〉の現場を渡り歩いていたことになる。

 だが、続いて73年頃に加入したEW&Fは、ワーナーからコロムビアに移籍して間もない新進バンドだった。当時のアルにとって、EW&Fへの参加が〈栄転〉だったか否かは知る由もない。ところが、ギタリストとしてだけでなくソングライターとしてもアルが頭角を現しはじめると、バンドは上昇気流に乗っていく。そして、先述の“September”で絶頂期を迎えるわけだ。その後はモーリス・ホワイトとの意見の対立が原因で、80年作『Faces』を最後にグループを去ってしまうが、アル脱退後のEW&Fサウンドからあの小気味良さが減退したことを思うと、アルのサポートがEW&Fにとっていかに大きいものだったかがよくわかる。

 EW&F脱退後はプロデューサーとしてシーンに貢献し、90年代には自身のLAオールスターズを結成。現在はアル・マッケイ・オールスターズ名義で活動を行う傍ら、ブリジット(・マクウィリアムズ)やドニーらのセッションにも参加している。伝説にして現役のギタリストでもあるアル・マッケイは、いまもギターの快音を放ち続けているのだ。
“September”を収録したアース・ウィンド&ファイアのベスト盤『Greatest Hits』(Columbia)
ワッツ103rdストリート・リズム・バンドの68年作『Together』(Warner Bros./Rhino)


▼アル・マッケイ・オールスターズの作品。
2002年作『Al Dente』(ビデオアーツ)
2003年リリースのライヴ盤『Live At Mt. Fuji Jazz Festival』(ビデオアーツ)


▼近年のアル・マッケイ参加作を一部紹介。
ブリジットの2005年作『Starlight Lounge』(Expansion)
ドニーの2007年作『The Daily News』(Soulthought)


文/林 剛

ESSENTIALS ギタリズムに溢れた名作たち


THE WATTS 103rd STREET RHYTHM BAND 『In the Jungle, Babe』 Warner Bros./Rhino(1969)
EW&F加入以前にアルが正式メンバーとして参加していたのが、チャールズ・ライト率いるこの〈103丁目バンド〉だ。ウィルソン・ピケットやスライのカヴァーでもアルはファンキーにギターを刻むが、当初乗り気ではなかったというオリジナル・ナンバー“Love Land”での小気味良いプレイこそ、いま思うと彼の真骨頂という気がしてならない。リイシュー盤には8曲を追加。



MIKE JAMES KIRKLAND 『Hang On In There』 Bryan/Pヴァイン(1972)
上掲の〈103丁目バンド〉に在籍していた頃に同僚のジェイムズ・ギャドソンらと参加したマイク・ジェイムズ・カークランドの初作。3人のギタリストがクレジットされている本作でアルのプレイを特定するのは難しいが、彼らしいリズム・ギターのフレーズはところどころで聴ける。CD化に際して追加されたシングル曲“The Prophet”でのファンキーな刻みは、あきらかにアルのものだ。



ISAAC HAYES 『At Wattstax』 Stax/Concord 
サミー・デイヴィスJrのバンドを脱退した直後、アルはアイザック・ヘイズのバック・バンド=ムーヴメントに招かれ、5〜6か月在籍していた。しかも、ちょうど〈Wattstax〉のコンサート開催(72年)が加入時と重なったことで、アルはあの“Theme From Shaft”のギターを刻んでいるのだ(演奏シーンは映画でも観られる)。ライヴの全貌が明かされた本盤でアルの勇姿に触れてほしい。



DENIECE WILLIAMS 『This Is Niecy』 Columbia(1976)
モーリス・ホワイトの主宰するカリンバ・プロダクションがエモーションズと同時期にバックアップした、このデニース・ウィリアムズのデビュー作にもアルはもちろん参加。彼が頭角を表しはじめたEW&F上昇期の作品ということで、ギターを中心としたEW&F流のリズミカルで小気味良いグルーヴが全編で展開されている。著名な“Free”以外にも名曲だらけで、まさにアルがいてこその内容だろう。



BLUE MAGIC 『The Very Best Of Blue Magic : Soulful Spell』 Rhino 
フィリー・ソウルの名門グループ、ブルー・マジックにもアルは関与していた。当時EW&Fに楽曲提供していたスキップ・スカボロウがプロデューサーとして関与した77年のアルバム『Message From The Magic』に、アルは他のEW&Fメンバーたちと参加したのだ。このベスト盤に収録されているのはフィリップ・ベイリーらが書いた“I Waited”のみだが、アルらしいプレイは十分に楽しめる。



EARTH, WIND & FIRE 『I Am』 ARC/Columbia(1978)
かの“September”のヒット後にリリースされたアルバム。ここで外部メンバーの大幅起用に踏み切ったモーリス・ホワイトと衝突するアルだが、スティーヴ・ルカサーらが入ってこようと、どうしたって目立つのはアルのカッティング・ギターだ。しかもエモーションズをフィーチャーした本作からのヒット“Boogie Wonderland”はモーリスとアルの共同制作。やはりアルはEW&Fの重要ブレーンだった。



FINIS HENDERSON 『Finis』 Motown/ユニバーサル(1983)
〈夏の定番AOR〉といった趣の本作は、EW&Fを抜けて間もないアルの全面プロデュース作品だ。このフィニス・ヘンダーソンは、父親がサミー・デイヴィスJr一派だったことをきっかけに芸能活動を始めたそうで、アルもかつてサミーのバックを務めていたから、繋がりがあったのだろう。ボサノヴァまで飛び出す軽快で爽快なスキップ感は、まさしくアルならではのセンスだ。



THE TEMPTATIONS 『Gold』 Motown 
フィニス・ヘンダーソンの上掲作から数年後、アルはふたたびモータウン仕事を手掛けている。EW&Fの元同僚であるラルフ・ジョンソンと共同制作したテンプテーションズの86年作『Truly For You』がそれ。特に本ベストで聴ける歯切れの良いダンス・ナンバー“Treat Her Like A Lady”は80年代テンプスの代表曲となり、アルのリズム感の良さを証明した。なお、同曲のリードを務めたアリ・オリとの絡みはその後も続いていく。



SHIRLEY JONES 『Always In The Mood』 Philadelphia International/Edsel(1986)
ジョーンズ・ガールズきっての美声の持ち主、シャーリーのソロ作にもアルは関わっていた。テンプス作品で同席していたアタラ・ゼイン・ジャイルズと共同で“I'll Do Anything For You”“Caught Me With My Guard Down”というミドル80'sらしい重厚なダンス・チューンを制作している。クォリティーはフィリー勢による他曲に軍配が上がるものの、この勢いを買いたい。

文/出嶌 孝次

恋人たちに捧げないリイシュー流星群!!


 まずは、マーヴィン・ゲイの78年作をリマスター&デラックス化した2枚組『Here My Dear : Expanded Edition』(Motown/Hip-O Select)。未発表テイクなどをリオン・ウェアやサラーム・レミらがオーヴァーダブなしで再構築したDisc-2も良いけど、〈離婚伝説〉という邦題そのままに夫人への慰謝料として作られた作品だけに、愛憎入り交じる感情の揺れを体現した混沌サウンドの幻惑性を味わってほしいね。

不倫ソウル(?)ということでは、昨年他界したルーサー・イングラムのシングル集『I Don't Want To Be Right : The Ko Ko Singles Volume 2』(Ace/Kent)にて名曲“(If Loving You Is Wrong)I Don't Want To Be Right”も堪能しておきたい。

あるいは変態っぽいのが好きなら、ボビー・ナンが84年に発表したアーバンな佳作『Private Party』(Motown/Blue Bird)をどうぞ。

そして、ブラウニーな甘さが爽やかに吹き抜ける60年代チカーノ・ソウルのレア曲を集めた『'Hood Dreams... Rare Chicano Group Harmony』(BARRIO GOLD)で泣きながら溶けてしまえ!

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