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 掲載: 2008/04/03
ソース: 『bounce』誌 297号(2008/3/25) |
伝説的なデビューから15年……西海岸シーンのご意見番として精力的に動いてきたボス犬が、今回ばかりは自己陶酔? とんでもなく高密度な新作の秘密とは?
文/升本 徹 俺はファミリー・マンだ
「ネガティヴな人生を卒業したんだよ。俺は確かにギャングの一員だった。でも現在は〈Stop The Violence〉を掲げてるし、若者やギャングたちにも呼びかけて良い環境を作ることもしてる。俺は危ない生き様を経験してきたから、彼らのことは理解できるしね」。
CNNの「Larry King Live」にてこのように発言している(以降の発言はすべて同番組からの引用)ことからもわかるように、(いわゆる)ギャングスタ・ラッパー的なパブリック・イメージとは異なり、最近はヒップホップ・シーンはもとより社会に対しても非常に意識の高い活動が目立つスヌープ・ドッグ。確かにここ数年は、長く不仲状態だったダズ・ディリンジャーとコラプトを和解させ、みずからも加わった〈オリジナル・ドッグ・パウンド〉を復活させたのを皮切りに、〈Protect The West〉なるスローガンを掲げて西海岸シーンの結束を、前作『The Blue Carpet Treatment』収録の“Vato”では黒人とラティーノの結束をそれぞれ訴えて、シーンの牽引に力を注いでいた。また、昨年から家族ぐるみの出演で「Snoop Dogg's Father Hood」なるリアリティーTV番組を開始し、ファミリー・マンとしての一面も公にしているのも、その流れで捉えていいものだろう。
「俺は家族といっしょの番組にしたかったからね。俺が妻に話して、彼女は子供に話してくれた。番組を始めることは、いまから思えば必要不可欠だったのかも知れない。〈家族の一員としてのスヌープ〉、そして〈健全なスヌープ〉を世に見てもらうことが可能となったからね」。
そんな意識の高い活動が反映されたのか、前作から比較的短いスパンで届いた新作『Ego Trippin'』はこれまでのスヌープ作品中でもっとも高い音楽性を感じさせるアルバムに仕上がっている。『Ego Trippin'』――〈自己陶酔〉というタイトルは、意識の高い活動の反動ゆえか、単にみずからの嗜好に正直に取り組んだまでの結果だったりするのかもしれないが……。
「いまの俺は慎ましく生きようという域に達してるんだ。キャリアという面でね。ナイスガイになって、どんな人にも気さくに振る舞って。そこで、あえて〈自己陶酔〉するってわけ」。
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エゴの壁を崩壊させた
さて、そんな『Ego Trippin'』で最大のトピックと言えば、スヌープにDJクイック、テディ・ライリーで結成され、本作のトータル・プロデューサー的な役割を果たしたユニット、QDTが挙げられる。そういえば本作からの先行カットとして大ヒットを記録している“Sexual Eruption”ではトークボックスを用いてラップし、プロモ・クリップにてロジャー・トラウトマンの如くチューブを咥える姿も話題となっているが、トークボックス・プレイヤーとしても知られるクイックとテディをアルバムに招くというストーリーは、最初からスヌープの頭にあったことなのだろう。そのテディが手掛けたタイムのカヴァー“Cool”をはじめ、今作には地域/クルー/スタイルに関係なくホットなトラックメイカー(ポロウ・ダ・ドン、リック・ロック、ケイオ、ネプチューンズ、ラファエル・サディークなど)が招かれ、内容やサウンドは非常に雑多になっている。
「このアルバムで俺は他人に曲作りを委ねられるようになったけど、いままでなら俺のエゴがそうさせないよ。いつもの俺はエゴが強すぎるからね。しかし今回はエゴの壁をあえて崩壊させて、いろんな人に作曲してもらった。だから、俺の言う〈自己陶酔〉ってのはネガティヴな意味じゃなくて、まったくポジティヴなものなんだ」。
そんなポジティヴな〈自己陶酔〉の究極形とも言えるのがホワイティ・フォードことエヴァーラスト(元ハウス・オブ・ペイン)が手掛けた“My Medicine”だ。ここでスヌープが聴かせてくれるのは……カ、カントリー!?
「エヴァーラストは俺がジョニー・キャッシュのファンだってことを知ってたし、いっしょにスタジオ入りした時にもジョニーみたいな曲を作ってみたかったと伝えた。ただの真似じゃなくて、ジョニーから感化された音っていう意味でね。ラップもカントリーも、抑圧を超えて自分の声を聴いてもらうよう求めてる音楽だろ? 自分たちのフィーリングをメロディーに乗せて表現する。カントリー・ミュージシャンとラッパーが経験する〈苦闘〉は似ているんだ。どちらも〈苦闘〉のストーリーさ」。
こうしてヒップホップを真の意味でネクスト・レヴェルへと上げようと試み、ヒップホップの可能性へ果敢にトライしようとするスヌープのような存在がある限り、ヒップホップ・ゲームは終わることはないし、そのゲームの醍醐味も尽きることがないだろう。
「現在のラップ・ミュージックの状況は素晴らしいポジションにあると思ってる。だって、どんなTV番組を観たって、どんなCMを観たって、もうヒップホップの影響をモロに受けてるだろ? 俺にとっては世界でNo.1の音楽なんだ。映画に関しても、NFLの〈スーパーボウル〉も、MLBのワールド・シリーズも、テニスでもゴルフでも、常にどこかでヒップホップから大きな影響を与えられてる。どんなホイールであろうと、ラップなしじゃドライヴできないのさ」。
| | スヌープ・ドッグのニュー・アルバム『Ego Trippin'』(Doggystyle/Geffen/ユニバーサル) |
▼『Ego Trippin'』に参加したプロデューサーの作品を一部紹介。
| | ラファエル・サディークの2004年作『Raphael Saadiq As Ray Ray』(Pookie) |
| | エヴァーラストの2004年作『White Trash Beautiful』(Island) |
| | ミスターFABの2007年作『The Baydestrian』(Faeva Afta/SMC) |
| | トゥー・ショートの2007年作『Get Off The Stage』(Short/Jive) |
| | チャーリー・ウィルソンの2005年作『Charlie, Last Name Wilson』(Jive) |
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文/出嶌 孝次 スヌープ史上最高に音楽的な大傑作『Ego Trippin'』を楽しむための、9枚のサブテキスト
DJ QUIK 『Trauma』 Mad Science(2005) 滑らかなラップとスムースな生音サウンドで定評のある西海岸の名匠、DJクイック。この最新作ではロジャーに捧げたトークボクシングもメロウに披露。『Ego Trippin'』のほぼ全曲でミックスを担当し、柔らかくとろけるような音像構築に尽力している。
ROGER 『The Saga Continues...』 Warner Bros./Wounded Bird(1984) 各方面でフィルター・ヴォイスが再流行する昨今、スヌープも憧れた偉人の肉感的なトークボックス・プレイは必聴である。ザップ名義作も含めてすべて重要だが、ここでは最近リイシューされたソロ2作目を推薦しておく。
WILL.I.AM 『Songs About Girls』 Will.I.Am /Interscope(2007) 著名なゲストをほぼ排した今作において、スヌープだけが“The Donque Song”に客演している。先鋭的なダンス・ビートをヒップホップに落とし込むウィルの手腕は“Sexual Eruption”に臨むスヌープを大いに触発したはずだ。
GUY 『Guy』 Uptown/MCA(1988) 80'sファンクにヒップホップのビート心を加えたテディ・ライリーの音作りとアーロン・ホールの激唱で一時代を築いたトリオの初作。『Ego Trippin'』で腕を振るうテディが、チャーリー・ウィルソンをアーロン風に機能させた数曲はほとんど疑似ガイだ。
JOHNNY CASH 『At Folsom Prison』 Columbia(1968) 本文にもあるように、彼を意識した軽快な“My Medicine”は当初まさに“Johnny Cash”という曲名だったそう。スヌープが彼のどこに憧れるのか、この刑務所ライヴ盤で、アウトローがアウトローに歌うアウトローの歌を確認すべし。
MARVIN GAYE 『Let's Get It On』 Motown(1973) 『Doggystyle』でのカーティス使い以来、アルバムの冒頭でたびたびオールド・ソウル趣味を出してきたスヌープ。今回の『Ego Trippin'』ではマーヴィンの“Distant Lover”をベタ敷きし、ゆらりと翳った哀愁味を配色してみせている。
THE TIME 『The Time』 Warner Bros.(1981) 先だってのグラミー授賞式でもパフォーマンスしたミネアポリスのファンク・バンドで、プリンスの舎弟格だったのがこのタイム。スヌープが今回カヴァーした“Cool”など、分厚いシンセが醸し出す独特のダイナミズムを堪能できる一枚だ。
PRINCE PHILLIP MITCHELL 『Make It Good』 Atlantic/Rhino(1978) プリンスはプリンスでも、こちらは滋味たっぷりな歌唱を披露する王子。最近リイシューされた本作からはカニエも別曲をサンプルしていたが、スヌープは“One Chance”にて表題曲をやるせなくネタ使いしている。
FEDERATION 『It's Whateva』 Southwest Federation/Reprise(2007) 今回の『Ego Trippin'』にて特に刺激的なのは、リック・ロック製のエグいハイフィー曲“Staxxx In My Jeans”だろう。彼とスヌープの好相性は、リックの肝煎りグループが本作で披露した“Happy I Met You”でも確認できる。
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文/出嶌 孝次、升本 徹 音盤で辿るスヌープの15年史 その1
1. SNOOP DOGGY DOGG 『Doggystyle』 Death Row(1993) 説明不要のクラシック。アートワークからスキットまで、デビュー作とは思えぬコンセプチュアルな内容で余裕の全米1位獲得。“Who Am I(What's My Name)?”“Gin And Juice”や名ポッセ・カット“Ain't No Fun”収録。 (升本)
2. SNOOP DOGGY DOGG 『Tha Doggfather』 Death Row(1996) ドクター・ドレーとの別離により、自立を促されての2作目。Gファンクの典型から離れたDJプーの簡素なビートは賛否両論だったが、いま聴けば普通に格好良い。チャーリー・ウィルソンとの初顔合わせもここで実現。 (出嶌)
3. SNOOP DOGG 『Da Game Is To Be Sold, Not To Be Told』 No Limit/Priority(1998) 衝撃のノー・リミット移籍第1弾。当時のサウス最高峰たる制作チーム、ビーツ・バイ・ザ・パウンド主導のギラついたバウンスを飄々と乗りこなす姿は圧巻で、ソルジャーズとの競演も新鮮だった。 (升本)
4. SNOOP DOGG 『No Limit Top Dogg』 No Limit/Priority(1999) 前作よりもやや西風味に揺り戻し、DJクイックやアント・バンクス、ラファエル・サディークらがプロデュースに参画。なかでも再合体したドレーとの“B Please”は、ポストGファンク時代のアンセムとなった。 (出嶌)
5. SNOOP DOGG PRESENTS THA EASTSIDAZ 『Snoop Dogg Presents Tha Eastsidaz』 Doggystyle/TVT(2000) LBCの叔父貴キャラであるトレイ・ディー、若手のゴールディ・ロックと組み、LA東側をレペゼンしたトリオの処女作。肩の力が抜けたオーセンティックな西海岸サウンドを気心の知れたメンツと聴かせ、“G'd Up”がヒット。 (升本)
6. SNOOP DOGG 『Dead Man Walkin』 Death Row(2000) 同時期の『Tha Last Meal』に合わせてデス・ロウが嫌がらせで発表した編集盤。とはいえドッグ・パウンドやスーパフライらとの共演曲も当然あるので侮りは禁物だ。ラファエル・サディークとの共演曲“Head Doctor”が人気。 (升本)
7. SNOOP DOGG 『Tha Last Meal』 No Limit/Priority(2000) ノー・リミットでの〈最後の晩餐〉。ドレーをはじめとする制作陣やゲスト、アートワークも含め、南部色を払拭して西への帰還を果たすのみならず、ティンバランドによる新機軸の“Snoop Dogg(What's My Name II)”も話題に。 (升本)
8. SNOOP DOGG PRESENTS THA EASTSIDAZ 『Duces N' Trays』 Doggystyle/TVT(2001) 前作に続いて、フレッドレックやバトルキャットら西の精鋭職人が中心となって制作された、ソリッドで重厚な2作目。ファンキーなコケインの歌声が響き渡る“I Luv It”がシングル・ヒット。 (升本)
9. SNOOP DOGGY DOGG 『Death Row's Greatest Hits』 Death Row/Priority(2001) デス・ロウ主導のベスト盤ながら、12インチのみの曲や未発表モノが多いのでスルー不能。ラファエル作のメロウな“Midnight Love”、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのリミックスなども。 (出嶌)
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文/出嶌 孝次、升本 徹 音盤で辿るスヌープの15年史 その2
10. BONES 『Soundtrack』 Doggystyle/Virgin(2001) スヌープが主演したホラー映画のサントラという性質上、ダークで仰々しい楽曲が並んでいるが、メル・マン作“Dogg Named Snoop”やコケイン“Raise It Up”など佳曲揃い。 (升本)
11. 『Doggy Style Allstars Welcome To Tha House Vol.1』 Doggystyle/MCA(2002) Pファンクばりの賑やかさとドロドロ具合が楽しいレーベル・コンピ。コケイン、スーパフライ、E・ホワイト、ラトイヤ・ウィリアムスという4人の精鋭を立てつつ、ボス犬も余裕の振る舞いを見せる。 (出嶌)
12. SNOOP DOGG 『Paid Tha Cost To Be Da Boss』 Doggystyle/Virgin(2002) 引き続きPなムードの強い名ファンク盤だが、ドラマティックスとのメロウ系やDJプレミアとの刺激的な絡みもあり、楽曲の振り幅は過去最高に豊かだ。ネプチューンズのアッパーな“Beautiful”が特大ヒットに! (出嶌)
13. 213 『The Hard Way』 Doggystyle/TVT(2004) ウォーレンG、ネイト・ドッグと組んだ伝説的トリオの再結成盤。LBCマナーなサウンドをベースにカニエ・ウェストらの参加効果もあって多彩な内容に。テレイス・マーティンも初登場。 (升本)
14. SNOOP DOGG 『R&G (Rhythm & Gangsta) : The Masterpiece』 Doggystyle/StarTrak/Geffen(2004) ネプチューンズによる究極のスカスカ・ファンク“Drop It Like It's Hot”にブッ飛ばされる圧倒的な傑作。一方で、スヌープ主導のリラクシンなソウル志向もいよいよ顕著に。カーティス・メイフィールドのカヴァーがユルくて良好。 (出嶌)
15. 『Snoop Dogg Presents Welcome To Tha Chuuch Da Album』 Doggystyle/Koch(2006) 西海岸シーン決起のため、スヌープが音頭を取ったレーベル・サンプラー的なクルー・アルバム。オリジナルDPGCによる“Real Soon”やラッパー復帰したレディ・オブ・レイジ曲を収録。 (升本)
16. THA DOGG POUND 『Cali Iz Active』 Doggystyle/Koch(2006) 仲違いしたダズとコラプトのデュオに自身も加わり、総監督を担う形で発表した一作。6曲の登場ながらも息の合ったコンビネーションは流石だ。 (出嶌)
17. SNOOP DOGG 『Tha Blue Carpet Treatment』 Doggystyle/Geffen(2006) クリップス・カラーの青を全面に用いたことでらもわかるようにゴリゴリの西仕様で、ゲームを筆頭にカリフォルニア全土から著名アクトが参加。Bリアルとの“Vato”ではブラックとラティーノの団結を訴えている。 (升本)
18. 『Snoop Dogg Presents The Big Squeeze』 Doggystyle/Koch(2007) またまた舎弟連中を集めたレーベル・コンピだが、現在の右腕であるテレイス・マーティンとのコンビ=ニガラッチ名義で、スヌープがほぼ全曲のプロデュースに関与する様子はリーダー作の趣。新作『Ego Trippin'』のリラックス・ムードにそのまま通じる佳作だ。 (出嶌)
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 ・Original Soundtrack/「BONES」オリジナル・サウンドトラック ・Snoop Dogg/ペイド・ザ・コスト・トゥー・ビー・ザ・ボス ・213/ザ・ハード・ウェイ ・Snoop Doggy Dogg(Snoop Dogg)/R&G Rhythum & Gangsta: The Master; Piece ・Snoop Doggy Dogg (Snoop Dogg)/Welcome To Tha Chuuch - Da Album (Bigg Snoop Dogg Presents)
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