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UNCHAIN

掲載: 2008/04/10

ソース: 『bounce』誌 297号(2008/3/25)

日本のロック・シーンでジワジワとその勢力を広げている〈グルーヴ・ロック〉の真打ちが登場! 進化を止めない彼らのサウンドをUNCHAINしてみよう!

文/岡村 詩野

自分たちらしくロックする自信がついた


 横揺れのブルーアイド・ソウルと縦揺れのロックの幸せな出会い。と、言葉にしてしまうとあまりにも陳腐だが、京都は日本海側に位置する京丹後市出身の平均年齢25歳の4人組であるUNCHAINは、そんな一見ありふれたクロスオーヴァーに果てしない可能性とロマンティシズムを見い出し、そこに有り余るほどの情熱を注ぎ込む連中だ。その愚直なまでの横顔は、まるでひと頃のスタイル・カウンシル(ポール・ウェラー)やジャミロクワイあたりを連想させるほどで、「こういう音楽を好きになったのは専門学校に通うようになってから」と正直に告白する谷川正憲(ヴォーカル/ギター)のカッコつけたり背伸びをしたりしないところは、素直に讃えられて然るべきだろうとさえ思ってしまう。

 「いまでこそブラック・ミュージックが好きですけど、高校の頃くらいまではメロコアとかばかり聴いていたんです。でも、ウチのベースの谷(浩彰)くんなんかはいまもそういうのが好き。今回のアルバムにはロック・チューンが結構入っているんで、彼の影響はかなりいいふうに出てると思います。ブラック・ミュージックの要素とロックっぽさを合わせるのがUNCHAINのコンセプトみたいなものなんで」(谷川)。

 彼らがステージで得意としている代表曲の多くはしなやかにグルーヴを転がしていくようなナンバーだが、一方でインディー時代の楽曲のリテイクや新録などを含むファースト・フル・アルバム『rapture』には、かなり前のめりなビート・チューンも多く含まれている。それも、両者を折衷するというより、その距離感をあえて楽しんでいるような印象を受けるほど、メーターが振り切れているのがいい。

 「今回のアルバムは、結果としてソウルっぽい曲は思い切りソウルっぽく、ロック・チューンはロックっぽく仕上がりましたね。作り方自体はこれまでとまったく変わってないんですけど、一歩踏み込む勇気があったんだと思います。いままではロック・チューンをやることにちょっと恥ずかしさもあったんですよ。ロックすぎるとちょっとなあ、みたいな。若いうちは大人ぶりたかったのかもしれません(笑)。でも、きっと自信がついたんでしょうね。いまは自分たちらしくやれるようになりました」(谷川)。

 「ジャンルっていうのが僕はよくわからないんですけど、わりと最近は素直になってきたかなって気がします。シンプルになってきたっていうか、余分なものがなくなってきてスッキリしてきたのかな?って感じますね。あまり〈○○っぽい曲にしよう〉とかってことを深く考えて曲を作ったりもしていないんですけど、それがかえっていいのかもしれないです」(佐藤将文、ギター)。
UNCHAINのニュー・アルバム『rapture』(fluctus/avex trax)


歌を聴かせようという意識

 とはいえ、たとえそれがソウルフルなナンバーでもエネルギッシュなビート・チューンでも、彼らの楽曲には一つ共通して貫かれているポイントがある。それは、歌だ。スティーヴィー・ワンダーに衝撃を受けたという谷川は、柔らかいのにしっかりと腰のあるハイトーンを聴かせることに腐心しており、単に黒っぽくあろうとするのとは別の意識を働かせていることが新作からも伝わってくる。すなわち、少しでもブラック・ミュージックに近づきたいという思いではなく、いかにして自分たちの音楽に自分の肉声で魂を注入しようとしているかという思い。それがあるからこそ、彼らは〈ブラック・ミュージックとロックの融和〉という、一見月並みな大義名分に対しても、限りない夢や可能性を見い出していられるのかもしれない。

 「ソウルっぽくてもロックっぽくても、ヴォーカルをどれだけ引き立たせるか。それが歌モノのバンドである僕らがやるべきことだと思うんですよ。歌をちゃんと伝えていかなきゃってことを考えた時に、〈歌と同じ音域のギター2人がバックでどういうところに位置すればいいのか?〉とか、〈その下のどこにリズムがいればいいのか?〉が凄く大事になってくるんですよね。会話といっしょで、ヴォーカルがこう歌ったら、ギターはそれにどういうふうに応えて、ベースはどう応えて……みたいなことをちゃんとやっていけば、絶対歌は引き立つんだって」(谷川)。

 「特にウチのベースとドラムはロックっぽいビートを得意としているんです。でも、リズム2人がそういう指向で、僕と谷川がどちらかと言えばソウル指向であるという組み合わせがかえってバンドをおもしろくしているんじゃないかって気がしますね。でも、メンバー全員、歌を聴かせようって意識だけは共通していると思うんですよ」(佐藤)。

 オルナタティヴ・ロックの時代を通過し、その経験を底辺に従え、そこからさらに前へと歩み出て黒人音楽への憧憬をダイナミックに伝えていこうとする、言わば〈オルタナ・グルーヴ〉。夏冬のフェス中心に回転するようになった現在の日本の音楽シーンでも、そんな彼らが温かく迎えられているのは彼らが最初に好きになった音楽=Hi-STANDARDなどに代表されるメロコアやパンクに対するリスペクトを決して捨て去っていないからだ。いたずらに融和や折衷をめざしているのではなく、UNCHAINはいまも自分たちを音楽に向かわせてくれたルーツに忠実だ。その実直さが聴き手に伝わっているのだろう。

 「どうあがいても黒人の歌には敵わない。それに気付いた時に、ちょっと違うアプローチをしたいと思ったんですよね。ソウルのフィールドではなく、あくまでロックのフィールドに立ってソウルを採り入れていく、みたいなことをやろうって。その時に思ったのが、やっぱり歌をしっかり聴かせるってことなんですよね」(谷川)。
▼UNCHAINのミニ・アルバムを紹介。
2005年作『the space of the sense』(ozmosis/Gland Slam)
2006年作『THE MUSIC HUMANIZED HERE』(osmosis/two thums up)
2007年作『departure』(fluctus/avex trax)
2007年作『rejoice』(fluctus/avex trax)


文/bounce編集部

UNCHAINを形成する音楽的背景を自己分析!

谷川「新作で影響されたっていうとインディア・アリーですね。フォーキーなソウルを歌う人ですが、ライヴは物凄くロック。あんなライヴやったらホンマカッコ良いな〜と思って。僕らの新作に入ってる“Life Is Wonder”は彼女にモロ影響されてます。で、唯一メンバー共通して好きなのがジャミロクワイ。とても洗練されたダンス・ミュージックで、ヴォーカルに対するギターとベースの絡み方も彼らから学んだところが大きかったと思いますね」

佐藤「山弦は僕が好きなんですが、凄く聴きやすいけどギターのフレーズが斬新なところに惹かれます。アコースティック中心ですが、特にエレキを使ってる曲が良くて。僕が弾くフレーズは山弦に影響されたものも多いです」

谷川「フュージョンだとフォープレイやラリー・カールトンのギターもそうですね。それからREACHはメロコアなんですが、高校の時にほぼ全曲カヴァーしました。吉田(昇吾、ドラムス)が好きで、いまでもドラムの柏倉(隆史)さんを崇拝しています。大阪に来てからも、自分らのオリジナルの曲かってほどライヴで演りました(笑)」

佐藤「僕はUNCHAINに入る前だったんで、ライヴ観ててオリジナルやと思ってました(笑)」

谷川「その頃はブラック・ミュージックを好きになる前で、メロコアの進化系というか、プログレ的なものに興味があったんです」

佐藤「そしてジョージ・ベンソンは僕が加入してから谷川に教えてもらって。ギターで歌うっていうのにホンマ憧れます」

谷川「完全に歌ですよね、ギターが。圧倒的」

佐藤「最後のAIRは高校の時に初めて聴いたんですが、一枚のCDにさまざまなジャンルのサウンドが詰まっているのに衝撃を受けましたね。僕らも一枚の作品でいろんな音楽を聴かせたいと思ってやっているので、かなり参考になります」
インディア・アリーの2006年作『Testimony: Vol.1, Life & Relationships』(Motown)
ジャミロクワイの2001年作『A Funk Odyssey』(S2)
山弦の98年作『JOY RIDE』(ポリドール)
REACHの2000年作『TRICHROMATIC』(CARNAGE)


ジョージ・ベンソンの76年作『Breezin'』(Warner Bros.)
AIRの97年作『MY LIFE AS AIR』(ポリスター)

文/加藤 直子、土田 真弓

新感覚ミクスチャー!? 〈グルーヴ・ロック〉って何なのでしょう?

 bounceで勝手に〈御三家〉と呼んでいるriddim saunter、ala、UNCHAINが良質な作品を次々と発表したこともあってか、昨年あたりから頻繁に目(&耳)にするようになった〈グルーヴ・ロック〉というキーワード。ロックを触媒としてジャズ、ソウル、ファンク、ラテンなどのブラック〜ワールド・ミュージックをスマートにミックスし、都会的かつフィジカルなバンド・サウンドに仕立てる彼らの最大の特徴は、その名のとおりフレッシュなグルーヴだ。パンクやエレクトロなどアグレッシヴな音楽性が表に出ている場合もあるが、耳触りはとにかく爽やか。ライヴで鍛え上げられた快楽性とピースフルな昂揚感が自然と五感を反応させるダンス・ミュージックとも言えるだろう。そんなグルーヴ・ロックの黎明期バンドとして捉えられるのは、FRONTIER BACKYARDやthe band apart(さらに遡ればalaがその影響を公言しているSCAFULL KING)だ。そこから近年は、含有成分もさまざまな個性溢れるフォロワーが続々と派生している。ここでは、それらの新世代バンドたちもまとめて一挙に紹介しよう。
(土田真弓)
FRONTIER BACKYARDの2006年作『BASIS』(Niw!)
the band apartの2006年作『alfred and cavity』(asian gothic)



 

asphalt frustration
メロコア×エレポップ? 2ビートのファストなドラムの上をキラキラの電子音が跳ね、スムースなメロディーが乗ったアンバランス感を完璧に聴かせる彼ら。初作『UNDO, PLAY』(P.O.S)はalaやriddim saunterらゲスト勢の名仕事も聴きもの。
(加藤)



riddim saunter
FRONTIER BACKYARDも所属するNiw!より2005年にデビュー。メンバー交代を経て昨年9月にリリースされた『Think, Lad & Lass』(Niw!)では、ゴー!チームやラリキン・ラヴに対する渋谷からの回答的な一面も見せつつ、ソウル〜ヒップホップをDJ感覚でブレンドしたダンス・ロックを披露した。その後は別掲のour favorite fabとのスプリット盤や過去作のアコースティック・アレンジ盤、そしてこのたびリリースするKiiiiiii & DJ CodomoやAVALON、マティアス・テレスやソフトライツなど国内外の俊英によるリミックス盤『BRIGHTEN OURS FROM THE REMIXIES』(Niw!)などを立て続けに発表し、驚異的な創作意欲でわが道を邁進中。
(土田)




MJ-Classical
『Still Sequence』(AIRSPORT)でデビューした、〈御三家〉に続く逸材と謳われる彼らは、ネオアコからブルーアイド・ソウル、〈人力ジャスティス〉といった感じのクラブ・テイストまでを気持ち良くポップになびかせる。その器用な手捌きは見事。
(加藤)



our favorite fab
riddim saunterとのスプリット盤『LATETHINGS』(Niw!)で昨年お目見えした、男女ヴォーカルのハーモニーも麗しいファンキーな6人組。同作で聴けるほのぼのシンセに先導されたスペイシーなボッサ風の佳曲でいまや期待値No.1だ。早くアルバムを!
(加藤)



Fed Music
〈グルーヴ・ロック〉ならではの黒っぽさはこのなかにあって薄めだが、『I call your name』(Niw!)でのロックの攻撃性に北欧ポップスの透明感を溶かして生み出すグルーヴや昂揚は無視できない。riddim saunterが好きな人なら確実にヒットでしょ。
(加藤)



ala
2003年に結成された2MC+2サックスを擁する7人編成の彼らは、軽快なメロディーと美麗なハーモニー、ジャズやソウルを採り入れた躍動的なバンド・アンサンブルで風通しの良いパーティー・ミュージックを鳴らす。なかでも2006年12月に発表したファースト・フル・アルバム『Jam Of The Year』(FREEKOUT)は、〈グルーヴ・ロック〉という呼称を幅広いリスナーへ広める契機となった名盤中の名盤。その勢いは止まらず、今年1月に発表したミニ・アルバム『SEVEN COLORS SAUCE WITH YOU』(fluctus/avex trax)でメジャー進出を果たすも、翌2月にはMC両名の脱退に伴い、6月をもって活動休止することを発表した。残念……。
(土田)




SCAM-EIGHTS
レゲエからパンク、テクノまでを取り込んだ、ホーン隊を擁する6人組の最新作『THE THIRD VALUE』(HOPPING)は、alaにも通じるパーティー感を濃く出したスカ・ナンバーがイチ押し。躍動するリズムに身体がウズウズしちゃうこと間違いなし!
(加藤)

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