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ALGEBRA

掲載: 2008/04/17

ソース: 『bounce』誌 297号(2008/3/25)

注目すべき才媛がまたひとり登場した。自分の言葉で自分の歌を自分の心のままに歌うアルジェブラは、ポスト・ネオ・ソウル世代の新たなR&Bスタンダードだ!

文/林 剛




 キダー・マッセンバーグの元から送り出されたR&B界の新しい歌姫、アルジェブラは数年前からキダーのオフィシャル・サイトに姿を現していた。すでに“U Do It For Me”など数曲もネットを通じて多くの人の耳に届いていたのだが、アルバムのテーマを決めるうえで、早くからのリスナーの反応は大きなヒントになったようだ。

 「私の曲を聴いて、〈人生を変えた〉とか〈同じような経験をした〉とかメッセージを貰ったわ。それで、私の人生の目的/意図(purpose)は、誰かの心を癒す歌を歌うことだと思ったの。このアルバム『Purpose』は私の第一子。いま、ようやくその子を手放す時が来たの」。

 その生みの親であるアルジェブラ(・ブレセット)は、アトランタ出身の24歳。ゴスペルと同時に、ホイットニー・ヒューストンやアレサ・フランクリン、ダニー・ハサウェイ、ニーナ・シモンなどを聴いていたという。

 「一音歌うだけで私を笑顔にしてくれるようなシンガーが大好きなの。マドンナも大好き。マドンナ、プリンス、ジャネット・ジャクソン……彼らも本当に歌うのが好きなんだなってわかる人たちだわ。そんな人たちに影響を受けてきた。グループではガイとジョデシィね!」。

 レーベル仲間で共演歴のあるジョーもそのひとりだ。

 「高校の頃からジョーのCDを聴いていた。すべてが大好き! もし私がマイクだったら、たぶん蕩けてるわ!」。

 プロの歌手になろうと思ったのは高校1〜2年ぐらいの時だそうで、この頃に地元でベース・ミュージックのレコーディングに参加し、112のバックでも歌っていた。シンガーになった理由を「自分で何かをコントロールできるってことが嬉しかったのかも」と話す彼女だが、その後ダラス・オースティンのレーベルと契約した頃から「自分自身の言葉で歌うということにこだわりはじめた」という。

 そう、実は彼女、アトランタの音楽シーンにはかなり前から身を置いていて、ジョイやローネイ、インディア・アリーのバックでも歌っていたのだ。今回アルバムにプロデューサーとして名を連ねているブライアン・マイケル・コックスやダニー・スキャンツらも、そんなアトランタの仲間である。と同時に、「いつも私の内に秘めたものを引き出してくれる」と言うエリック・ロバーソンとも旧知の仲で、今回はエリック一派ともコラボレート。アイヴァン&カルヴィンの起用も含めて、ここらへんはミュージック・ソウルチャイルドの作品に関わっていた彼女ならではといった感じがするが、とはいえ、クワメにもプロデュースを仰いだアルバムの内容は、キダー発というレッテルから連想されるネオ・ソウル然としたものではない。

 「キダーが関わったディアンジェロやエリカ・バドゥを聴いた時の衝撃は大きかった。このシーンに欠けていて、必要とされていた何かをもたらしてくれたと思うの。でも、それは幸運でもあり、呪いでもある。私が関わってきたものから私も〈ネオ・ソウル・アーティスト〉だと決め付けられて、そういう音楽しかやらないと思われることもあるから。ただ、いまは、いわゆるネオ・ソウルの曲と(いわゆるメインストリーム調の)R&B曲が同じアルバムに入っていてもおかしくない時代になって、ディアンジェロみたいな曲とアッシャーやジョーのような曲が同じアルバムで聴けるようになった。私のアルバムもまさにそんな感じだと思う」。

 ギターを弾きながら、もしくは歌いながら曲を作っていくというアルジェブラ。アルバム曲の多くは彼女自身による作だが、例えばアイヴァン&カルヴィン作の“Happy After”などは「自分にとって大切な想いがそのまま言葉にされていた」ということで、歌う側に徹している。

 「ムードも次々と変わるじゃない? そんな感じでアルバム全体がジェットコースターに乗ってるみたいに楽しいものになったと思うの」。

 アルバムを聴く限り、彼女の〈purpose〉はひとまず達成されたようだ。
アルジェブラのファースト・アルバム『Purpose』(Homeroom/Kedar/BMG JAPAN)


▼アルジェブラの参加作を一部紹介。
ミュージックの2003年作『Soulstar』(Def Soul/Def Jam)
エリック・ロバーソンの2007年作『...Left』(Dome)
PJモートン・バンドの2007年作『Perfect Song』(Brash)


文/狛犬

アルジェブラの仕掛け人はあのキダー・マッセンバーグ!

 仮にアルジェブラって誰じゃブラ?とか思われようと、少なくともR&Bファンならば〈キダー〉の刻印を無視できようはずがない。マネージメント会社にしてレーベルの機能も持つ、そのキダーを運営するのはキダー・マッセンバーグ。ディアンジェロを売り出して知られるようになった辣腕マネージャーの彼は、続いて発掘したエリカ・バドゥにスピリチュアルなイメージ戦略を施し、その存在自体を現象化させた名仕掛け人でもある。99年にはモータウンのCEOに就任。老舗の再建にあたってはキダー所属の面々をそのままモータウンに移籍させ、さらにインディア・アリーを見い出してブレイクに導く。他にもグレニークやドニーなどネオ・ソウル寄りの逸材を数多くモータウンに引き入れたが、一方ではインディーからケムをフックアップしたり、10年以上に渡ってジョーのマネージメントを手掛けてもいる。2005年にモータウンを去ったキダーは、今年に入ってインディーでレーベルを再興したばかり。アルジェブラの後には、以前キダーと組んでいたチコ・デバージの新作も登場するようで、またまたシーンを揺るがせてくれそうだ。
ディアンジェロの95年作『Brown Sugar』(EMI)
エリカ・バドゥの97年作『Baduizm』(Kedar/Universal)
インディア・アリーの2002年作『Voyage To India.』(Motown)
ケムの2005年作『Album II』(Motown)


ジョーの2007年作『Ain't Nothin' Like Me』(Jive)
2008年リリースのサントラ『Welcome Home Roscoe Jenkins』(Kedar)

文/池谷 昌之

ERYKAH BADU
オリジネイターが世に問う、新しいアメリカのわたし



 音楽性のみならず、ファッションやマインドなどトータルな自己演出に長じることで独自の世界観を築いたエリカ・バドゥ。かつてネオ・ソウルと呼ばれたそのスタイルがシーンに大きく波及したのは衆知のとおりだ。そして、その後も自身の美意識に忠実な音楽を作り続けた彼女が、ライヴ盤を含めて通算5枚目となる新作『New Amerykah Part One(4th World War)』を完成させた。

 前作『Worldwide Underground』から4年半の間、特にここ最近はストーンズ・スロウ一派との関わりやサー・ラーの楽曲への参加など、アンダーグラウンド・ヒップホップへの歩み寄りが強まっていた。ルーツやボブ・パワーが手掛けて話題を呼んだ97年のデビュー以降、ソウル・クエリアンズやフィリー勢との蜜月などサウンド面での進化も常に耳目を集めてきたが、今回はほぼ全編をアンダーグラウンド・シーンの担い手たちと作り上げたことになる。LA地下マナーそのままの煙たいトラック上でエリカがさえずる“The Healer”、ミニマル感が呪術的でさえある“My People”という、マッドリブによる才気走った2曲も聴きものだが、本作のキーとなるのはサー・ラーの面々だ。スペイシーさと猥雑さとが混在する彼らのサウンドが核となり、特にカーティス・メイフィールド“Freddie's Dead”を引用した“Master Teacher”でのPファンク的に粘るグルーヴは眩暈を誘う。そしてアルバムは、デビュー時を思わせるジャジーな曲調でJ・ディラに捧げられた“Telephone”にていったんクローズ。その後、インタールードを挿んで華やかに始まるのは、9thワンダーによるノスタルジックな出来が話題となった“Honey”だ。シーンを総括するかのような内容は、エリカの求心力が生んだマジックなのだろう。

 最後に、今作も彼女一流のコンセプトを携えていることを付け加えておきたい。同胞に向けて綴られた歌詞のメッセージ性、そして変革を迎えるアメリカを示したであろうこの表題も、時勢を捉えたシリアスなアティテュードを強く感じさせるものだ。本作はネオ・ソウルが手本としてきた70年代の古典のヴァイブを備えつつも、現代にこそリアルに響く、2008年のニュー・ソウル・ムーヴメントを担う一枚と呼べるだろう。エリカ・バドゥの先鋭性と訴求力は、これからも音楽史に重要な道標を示し続ける。
エリカ・バドゥのニュー・アルバム『New Amerykah Part One(4th World War)』(Motown/ユニバーサル)


▼関連盤を紹介。
エリカ・バドゥの2003年作『Worldwide Underground』(Motown)
サー・ラーの2007年作『The Hollywood Recordings』(Babygrande)
ジェイリブの2003年作の新装盤『Champion Sound』(Stones Throw)


▼近年のエリカ・バドゥ客演作を一部紹介。
ウータン・クランの2007年作『8 Diagrams』(SRC/Universal)
ファロア・モンチの2007年作『Desire』(SRC/Universal)

文/出嶌 孝次、林 剛

自作自演自立ソウル・レディーはまだまだ豊作なのです! その1


ANGELA JOHNSON
 クーリーズ・ホット・ボックスの一員でソロでも活動するアンジェラ・ジョンソンは、真に才媛という言葉が似合う女性だ。凛としたこの人の楽曲からは、本当に自分の言葉で曲を書き、歌っている姿が伝わってくる。そんな才能を知らしめる一枚が、アンジェラがコンポーズした曲をゲスト・シンガーが歌った企画盤の新作『Woman's Touch Vol.1』。アンジェラ同様にインディー・ベースで良質な作品を作り上げてきた才能が結集し、生音メインで70〜80年代ソウルのグルーヴを再現したものだが、実直なメロディーとサウンドが評価され難いこの時代に、あえて正攻法で挑むアンジェラには清々しささえ感じるほどだ。
(林 剛)
アンジェラ・ジョンソンのニュー・アルバム『Woman's Touch Vol. 1』(Purpose/VAA URBAN)



TIOMBE LOCKHART 『Tiombe Lockhart #1』 OCTAVE(2007)
プラティナム・パイド・パイパーズ一派の歌姫。ジル・スコットぽい人懐っこさがあり、エリカ・バドゥをキュートにしたようなシンガーで、その歌には自分の足で立ち上がった強さがある。ビラルも入れ込む才は確かだ。
(林)



MAYA AZUCENA 『Junkyard Jewel』 Purpose(2007)
ファンクも匂ったデビュー盤から一転、今作ではフォーキーな装いで自己の内面を綴ったマヤ・アズシナ。〈掃き溜めのツル〉とでも解釈したい表題の如く、主張を込めた彼女の声は腐った地球の片隅で気高く響き渡る。
(林)



ERIKA ROSE 『Rosegarden』 Intinity La Monde(2007)
こちらのエリカは曲調から唱法まで表現のオルタナ化を恐れず、芯の強さを伸びやかに聴かせる。自由度の高い多彩なアレンジを全面援護したのがサー・ラーのオンマス・キースというわけで、あちらのエリカも刺激されたはず。
(出嶌)



ZAP MAMA 『Supermoon』 Heads Up(2007)
前作『Ancestry In Progress』でエリカやルーツと共演しているマリー・ドルヌだが、この最新作ではその経験に血肉化したうえでのアフロピアンらしさを表現。ここに並ぶR&B作品以上にR&Bらしさを弁えた歌モノ作品として楽しむべし。
(出嶌)



DAVINA 『Return To Soul』 Pヴァイン(2007)
〈自作自演派〉とは、作詞/作曲/演奏/プロデュース/ミキシングをマルチにこなすこの人にこそ捧げたい。デトロイトを拠点に漆黒のグルーヴを紡ぐR&B才女は、この10年ぶりの新作でも自己のスタイルを貫いていた。
(林)



G&D THE MESSAGE 『Uni Versa』 Look(2007)
最上級のプログレッシヴ・ソウルをスモーキーに聴かせる才女といえば、ジョージア・アン・マルドロウしかいない。ダドリー・パーキンスと組んだこのデュオ作も、エリカ様がイキきれない真っ黒な宇宙からファンク電波を飛ばす怪作!
(出嶌)

文/出嶌 孝次、林 剛

自作自演自立ソウル・レディーはまだまだ豊作なのです! その2


MUHSINAH
 〈ヒップホップ世代のロータリー・コネクション〉なんて、ジャイルズ・ピーターソンさんあたりを支持する人ならイチコロの惹句だろう。このムスィーナーはいわゆる〈ネオDC〉周辺から登場した、ウェイナに続く才女だ。同じロウ・バジェット・クルーに属するロディ・ロッドの諸作で歌声を聴かせ、昨年はヘゼキアの『I Predict A Riot』にもフィーチャーされていた……というのは後から気付いたのだが、日本でのみ発表されたファースト・アルバム『Pre.lude』を聴く限り、彼女のカラーはすでに傑出している。しかも、その個性を個性たらしめているのが彼女自身によるトラックメイキングだというのも、この界隈では案外珍しいことだ。サー・ラーやディーゴにも通じるサイケなコズミック感覚を操る才能が出てきたら、そりゃエリカ様も煽られるって。
(出嶌孝次)
ムスィーナーのファースト・アルバム『Pre. lude』(CIRCULATIONS)

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Amerykahn Promise / Erykah Bad…  from K’s 今日の1曲
Promise I'll love you till the day I die♪ http://www.bounce.com/interview/article.php/4191/2/  ネオ・ソウルの旗手ERYKAH BADUの…
Tracked on 4月18日 15時32分

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