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 掲載: 2008/04/17
ソース: 『bounce』誌 297号(2008/3/25) |
ビートメイカーとしてのデビュー作でキャリアを総括した彼が、今度はすべてを脱ぎ捨ててダンス・ミュージックの未来を提示! 今度のBAKUは肉体的です!!
文/荏開津 広 それは禅の考え方に近い
「このアルバムはけっこう素の自分。前のアルバム『SPINHEDDZ』には〈繋がりのある人は無視できない〉という気配りみたいなのがあったけど、今回はそういうことを何も考えずに作れた。東京ってすごい派閥があるじゃないですか? 僕は意外とその派閥に巻き込まれてない。例えばAとBという本気で争うような派閥の間に僕はいるんだな、ってことを1枚目に作る時には考えていたんですよね」。
いわゆる純粋な音楽以外のもの――ということ。僕の前にミリタリー風の黒いニットを着たDJ BAKUが座っている。文化人/作家のいとうせいこうが朗読を披露しているこのセカンド・アルバム『DHARMA DANCE』では、いわゆる音楽以外の事情はまったく考えずに作ったと彼は語る。
「いとうせいこうさんとはレコーディングの日まで会ってないんですよ。以前に大阪の鶴の間でせいこうさんがライヴをしてて、その音源をネットで聴いたんですが、それがカッコ良くて。最初手紙でコラボレーションの依頼をしたんですよね、そこにファースト・アルバムも同封して。そうしたら、〈全然OK〉みたいな感じで快諾してくれたんです。そうとう練習していたとは思うんですけど、当日スタジオに来たら2テイクでOK。忙しいのもあったと思うんですが、ぱっと帰っていって……」。
そうしたいとうせいこうをBAKUは「職人っぽいっていうか、プロフェッショナルだなぁ」と評す。この言葉は深く考えるべきだと、僕は思う。そして、深い思考を促すように(?)アルバム・タイトルには、誰でも知っている〈DHARMA(達磨)〉がついている。
「僕の友達に占い師がいて……」との発言に、〈当たりますか?〉と尋ねてみると、「初期は神懸かっていましたよね。周囲の人を占った時も、それが見事に当たってた。で、彼と〈宗教で戦争が起きるなんて……〉みたいな話をしていたんです。僕は〈神様に形も見た目もあって、それ同士がケンカをして、戦争が始まるのはくだらないな〉と思ってて。で、〈60億人の人間がいるんなら、60億の神様がいると思う〉って言ったら、その友達に〈それは禅の考え方に近い〉って言われたんです。で、BAKUっていうのも梵字でいまある仏像をすべて表す言葉らしいんですよ。それを知った時、僕が仏教用語を使うのも意味があることなんじゃないかな?と思ったんです」。
| | DJ BAKUの2006年作『SPINHEDDZ』(POPGROUP ) |
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凡では終われない
この国がふたたび閉じはじめた、鎖国状態に入りつつある――そう書いたのはロジャー・マクドナルドのブログが最初だったか。〈鎖国状態〉というのは情報をシャットアウトすることで、それは例えばTVをつけるだけで十分知ることができる。扇情主義とインターナルな冗談の氾濫、もっともらしいことが言われていたとしても、積極的な意味はない。例えば、中国の食品問題についてメイクアップをしたニュース・アンカーマン、古館伊知郎はその報道の最後に〈厳重にこの問題を追及してほしい〉と言ったが、この言葉は中国がどのような国なのか、どのような場所に工場があるのか、そこでどのような人間が労働者として働いているのか、その背後の状況をモニターのこちら側に伝えなければ何の意味もない。彼(と彼が象徴する怪物)は、目と耳を塞がれた受け手の身体に快適な〈情報のようなもの〉をマッサージのように受容させている。
(問題をはっきりさせるために誇張された言葉を使い続けるが)そんな〈鎖国状態〉は報道だけでなく、音楽業界にも応用できる。一方で楽観主義的かつ誇大妄想気味な〈世界で通用する日本の音楽〉が、音楽インダストリーで大袈裟に喧伝されるのはその反動。世界はひとつではないし、世界はひとつの家族でもない。では、音楽家がやるべきことは何か? それは少しずつでも、広まっていく音楽、開いている音楽を作っていくしかない。音楽とは異なった文化とそこに育った人々が出会うことであるのだから。
「アルバムに参加してくれたドーズ・ワンとは最初に曲のテーマをやりとりしたんですが、でも送ってきてくれたものにNGを出すことはなかったですね。ただ、アルバム全体のビートは何度も作り直した。全部出来たと思っても、何回もドラムを録り直したり……だからビート制作はけっこう時間がかかったんです。途中で、〈これじゃあ、普通に終わっちゃうな、(平)凡に終わっちゃうな〉と思ったんですよ。それはけっこう最近の話で、半分以上出来ていた段階だったんです。で、この後どうするか?って考えた時に生を入れていく――ギターの音が好きなんで、それを入れる、ってことを考えたんですよね。でも生の音を入れていくという発想は、むしろ昔に戻ったのかも。初期のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとかが好きだったんで」。
DJ BAKUとイヴェントの名前でもある〈KAIKOO(=邂逅)〉は、彼と彼の音楽を語るうえで切っても切り離せないものだろう。たまたま拾ったレコードの中にウォーレン・スミス&マサミ・ナガサワの“Kaikoo”というレコードがあったこと、映画「タクシー・ドライバー」のロバート・デ・ニーロのセリフ──〈自分はタクシードライバーだから、一生いろんな人に会って行かなければいけない〉──との運命的な出会いが〈KAIKOO〉の意味と合うということ、そして、そこから〈KAIKOO〉という言葉をミックステープのタイトルに使ったこと。彼の忘れられない音楽的な〈KAIKOO〉はかつてのDJシャドウであり、いまではグライムやダブ・ステップかも知れない。
「僕は身体性みたいなことに憧れているんですよ。僕にとって音楽は〈これしかないな〉と思って始めたものなんです。学校で運動ができたわけじゃないし、かといって勉強ができたわけじゃない、だからDJを始めた……というのもある。このアルバムに身体性を感じてもらえるのは嬉しいですが、めちゃくちゃ運動ができる人への憧れがあると思うんですよ。BMXをやってる友達とか、けっこう日本は凄いですからね」。
目を開き、耳を澄まし、外に裡に感じ、音楽を奏でればより世界は広がる。世界と音楽家は、たぶんそうしてしか〈KAIKOO〉しない。
| | 4月5日にリリースされたDJ BAKUのセカンド・アルバム『DHARMA DANCE』(POPGROUP ) |
▼『DHARMA DANCE』に参加したアーティストの作品を紹介。
| | いとうせいこうの89年作『MESS/AGE』(ファイ ル) |
 | | ドーズ・ワンの2005年作『Ha』(Anticon) |
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文/山西 絵美 DJ BAKUが主催するイヴェント〈KAIKOO〉が熱い!
〈邂逅〉=偶然の出会い、巡り会い――本文にも触れられているように、この言葉はDJ BAKUにとって重要な意味をなす。始まりはいまから10年ほど前のこと。たまたま〈邂逅〉したレコードにインスパイアされてミックステープ「KAIKOO WITH SCRATCH」を制作し、同時にストリートでさまざまなアーティストと〈邂逅〉していくようになる(その模様はドキュメンタリーDVD「KAIKOO/邂逅」で確認可能)。そして彼はこれまでの〈邂逅〉をひとつのカタチにしたイヴェント〈KAIKOO〉を立ち上げた。グラフィティ・ライターあり、ハードコア・バンドあり……とスタイルに囚われないラインナップが話題を呼び、着実に規模を拡大している状況だ。
しかし、東京中心&超人気パーティーなだけに、なかなか足を運べない方も多いことだろう。そんな人にも嬉しいコンピ『KAIKOO PLANET』がこのたび登場する。同作は〈KAIKOO〉に出演したメンツとBAKUがガチでコラボった曲を一枚にまとめたものなのだが、ダブ・ステップを意識したドープなビートにMIC JACK PRODUCTIONが絡むオープニング・トラックや、(スケジュールの都合で未聴なのだが)GOTH-TRAD、BLACK GANION、BAKU&TUCKERの書き下ろし曲などが収録された内容で、新作『DHARMA DANCE』とは別の角度からBAKUの魅力を知ることがきる逸品となっているはず。なお、次回の〈KAIKOO〉は横浜を中心に人気沸騰中のイヴェント〈MEETS REVOLUTION〉と〈邂逅(合体)〉して4月26、27日に開催されるとのこと。出演者はGOTH-TRADら馴染みの顔に加えてOKI DUB AINU BANDに、YOUR SONG IS GOODに、THE ZOOT16に……ってどこまでノーボーダーなんだよ!
| | DJ BAKUのドキュメンタリーDVD「KAIKOO/邂逅」(FIVE D) |
| | 4月5日にリリースされたコンピ『KAIKOO PLANET』(POPGROUP) |
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文/山西 絵美 無限に広がるBAKUの交友録をチェック!
ヒップホップを出自としながら、その枠に留まらないサウンドメイクでリスナーを驚かせてくれるDJ BAKU。新作『DHARMA DANCE』でも生のドラムを活かしたロック〜ドラムンベース、BPMをぐっと押さえたアンビエントなどめくるめく音世界を展開しているのだが、そのスタンスは般若としての活動初期から凄腕ターンテーブリストが揃ったwhakhakha、そしてダンスホール風のアプローチも斬新な別名義のNOIZED PHUNKに至るまで、個別のプロジェクトにも如実に表れている。それを裏付けるように彼の交友録は実にボーダレスなのだから興味深い。また近年は、海外アクトのリミックスを手掛ける機会も増えてきたBAKU。今後さらに食指を伸ばし、世界中のアーティストと自由にリンクしていくことだろう。
▼共に、日本盤のみBAKUのリミックスを収録!
| | フィラスティンの2006年作『Burn It』(Soot/ROMZ) |
| | アル・ハカの2008年作『Family Business』(Kilo/entak) |
▼DJ BAKUの参加作品。
| | oakの2007年作『one』(POPGROUP) |
| | dj KENTAROとのコラボ曲を収録したコンピ『BOYCOTT RHYTHM MACHINE II:VERSUS』(ラストラム) |
| | DJ HIDEの2005年作『SCULPTOR』(JAG Project) |
| | RUMIの2004年作『HELL ME TIGHT』(Sanagi) |
| | B.I.G JOE 'N' EL SADIQの2007年作『2 WAY STREET』(ILL DANCE) |
| | ギターウルフ Vs. DJ BAKUの2006年作『ウルトラ クロス VOL. 3』(キューン) |
| | G.RINAのリミックス盤『A GIRL FROM A CIRCUS -REMIXES-』(Angel's Egg) |
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