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曽我部恵一BAND

掲載: 2008/05/08

ソース: 『bounce』誌 298号(2008/4/25)

青春は10代だけのものだといったい誰が決めたんだ? 平均年齢30歳超えの新人バンド(!?)が放つ、とびきり『キラキラ!』した激情を聴いてみな!!

文/山内 史

音楽に対して同じ情熱を求める4人組


 曽我部恵一BANDを初めて目撃したのは3〜4年前だったろうか。開演前、その日の共演バンドであったLABCRYの三沢洋紀から「曽我部恵一BAND、カッコイイ!〈30代のブルーハーツ〉ですよ、あれは」という話を聞いていて、正直その感想にはいまひとつピンとはきていなかったのだが、実際に観て、聴いて、納得。そこには聴衆とのコミュニケーションを渇望し、シンプルなメッセージをこれでもかこれでもかこれでもかと熱い演奏で発するロックンロール・バンドの姿があった。10代でブルーハーツを初めて目撃したときを思い出させるような……。

 「3年くらい前だよ、たぶん。曽我部恵一BANDを始めてちょっと経ったくらい。ひたすらライヴを演ってたからね。あれから何百本もやった」と曽我部恵一(ヴォーカル/ギター:以下同)。世紀を跨ぐのとほぼ同時にサニーデイ・サービスを解散させてソロ活動を開始し、ほどなくして自身のレーベル=ROSEを設立――そして現在に至る。と、ざっくり言うとそんな人が曽我部恵一。曽我部恵一BANDでの立ち位置は、トム・ロビンソン・バンドでいうところのトム・ロビンソン。遠藤賢司バンドでいうところの遠藤賢司だ。

 「ひとつサニーデイをやったことで、いろんなことに対して諦めがついたところもあるし、完成したところもあるし……納得はいってたからね、ある程度。で、ソロになってやってきたなかで、やっぱりバンドが必要なんだなっていうところが必然的に出てきた」。

 そうして集まった4人。メンバーは曽我部のほか、一時はニール・ヤングとクレイジー・ホースのような幸福な関係を築いていたバンド、OO TELESA(現在は解散)から上野智文(ギター/ヴォーカル/元美少年)と大塚謙一郎(ベース/ヴォーカル)、そして空気公団などでその腕を振るってきたオータコージ(ドラム/ヴォーカル)。なにゆえこの4人なのか、と。

 「音楽に同じ情熱を求めてるかどうか。とにかく同じバンドワゴンに乗って日本中どこでもいっしょに回れるヤツら、っていうことだよね。自分と情熱が変わらなかった。で、(ライヴで各地を)回れば回るほど情熱や思いが大きくなっていった。やっぱり最初の頃は地方に行っても知らない人が多いじゃない? だから〈もっと認知されたいなあ〉とか〈もっと客来ないかなあ〉とか思うんだよね。でもそこから始められて良かった」。

 このバンドにとって、曽我部の言う〈そこ〉は非常に重要なのである。例えば、サニーデイ・サービスの世界を継承した歌を作り、歌い続けて、誠実なファンとの幸福な〈Grow Old With Me〉を果たしていく、という道もあったろうに。

 「それになりたくなかったの。だったらもう、1からやるしかないんだよ。理想としていつもファースト・アルバムを出したいってのはあるけど、それはムリじゃん。でもなんとかそれを具現化したい。そのためには、ファースト・アルバムにあるべきその前の期間をちゃんとやんなきゃいけない。スタッフもなく、4人でバンドワゴンに乗って、物販も片付けも全部自分らでドロドロになりながらやって3年間過ごすってことをまずやんないと、こういう作品はできなかったし、〈こんなことやりながらも輝いてんだ! みんな大変だけど輝こうぜ!〉っていうメッセージはできない。昔だったら〈名盤が完成しました。どうだ! これで世界が変わる!〉みたいなところがあったんだけど、いまはそういうふうに思わないんだよね。世界を変えるためには、またこのアルバムを持って回らなきゃいけないし、それをずっと続けていけば〈Younger Than Yesterday〉でいられるんじゃないかなと思うんだけどね」。

 結果、完成した〈こういう作品〉こと『キラキラ!』は、まさしく〈ラモーンズの激情〉なファースト・アルバムとなった。ライヴを重ねた足跡を結実させた、コンパクトで強い音楽。

 「ライヴは絶対喜んでもらわなきゃいけない、ハズせないっていうのはメンバーみんなあるわけ。ツアーで地方に行って──お笑いといっしょなんだけど──ウケるためならなんでもやる、みたいなところはあるんだよね。ハンブルグ時代のビートルズみたいな、毎晩演奏やって、それで音がどんどんロックンロールにタイトになっていった、みたいなのがあるじゃん。それと変わらない。最初は長尺ジャムみたいな部分もあったんだけど、そういうのがなくなってきた。例えば、秋田とか行って子供たちの前で演ってさ、長尺ジャムはやっぱ響かないから(笑)。あと、銀杏BOYZとかとやると、お客さんはみんな即効性のある表現を求めてるから、ジャム部分とか長いソロとかはあんまり好かれないんだよね。あとで〈ウケなかったねえ……〉とか言ったりして」。

 
曽我部恵一がプロデュースを手掛けたOO TELESAの2003年作『ダブルオー・テレサ』(GENESIS WORLD)


ガツンとまっすぐ飛んでいけばいい

 いまやポップ・ミュージックは、カヴァー・アートも含めてアーティストの世界観を表出させる場ではなく、手のひらにも満たない再生機に収められた数百曲、数千曲からセレクトされる時代になった。そのなかでも響かせなければいけない音がある。

 「(デジタル・オーディオ・プレイヤーなどで)シャッフルされて、全然自分たちと関係ないミュージシャンの後でこのアルバムの曲がかかることもあるだろうし、ジャケットを見ない人もいるだろうし……それも含めて、伝わっていくものにしたかった。だから、〈アナログで録らなきゃいけない!〉とか昔は思ってたんだけど、そういうのはもういいや、と思って。音質も、聴けりゃいい、みたいな。とにかくガツンとまっすぐ飛んでいけばいい、ってとこだけを重視してる」。

 それにしても、安達哲の傑作コミック同様、〈キラキラ!〉というタイトルで描かれる青春像のなんと眩しいことか。

 
曽我部恵一BANDのファースト・アルバム『キラキラ!』(ROSE)


文/久保田 泰平

レーベル・オーナーとして、プロデューサーとしても大活躍!

 〈広告ひとつ出すお金があったら、12インチのアナログ盤をプレスできるんだよね……〉というようなことを、以前本人の口から聞いたが、インディー体制になってからの曽我部は、とにかく〈出そうと思ったときが出すとき〉とばかりに多作であった。ここで紹介しているディスコグラフィーに現在入手不可の12インチや限定盤、配信のみの作品も加えると、かなりの量である。さらに自身のレーベル、ROSEを立ち上げてからは自身の作品はもとより、彼のアンテナに触れるものであれば、ジャンルや派手さ地味さは関係なくさまざまなアーティストを輩出。静岡のアシッド・フォーク青年、tomohiro with music tape recordersを皮切りに、宅録スウィート・ソウル・スウィンガーのLANTERN PARADE、ガレージ・ギャル・バンドのTHE SUZAN、〈香川のジョアン・ジルベルト〉こと島津田四郎に結成18年目でアルバム・デビューしたThe COMMONSなど、4年半あまりで60以上というのは、アーティストが自身の活動と並行して運営するレーベルとしてはかなり活発だ。

 その一方、ROSE以外でのプロデュース・ワークや楽曲提供などもそこここに。小泉今日子、〈21世紀東京のハリー・ニルソン〉こと関美彦、ジャニーズ・クラシック“ブルドッグ”をハード・ロッキンにアレンジして提供したTOKIO、デビュー以来頻繁に曽我部マインドを注ぎ込む柳田久美子など。今年に入って発表されたものでは鈴木慶一のソロ・アルバムでの全面プロデュース・ワークが光った。また、2004年には映画「青い車」の音楽も手掛けている。
▼文中に登場したアーティストの作品を一部紹介。
tomohiro with music tape recordersの2002年作『DEAD ROCK MOVIE』(ROSE)
LANTERN PARADEの2007年作『とぎすまそう』(ROSE)
THE SUZANの2007年作『SUZAN GALAXY』(ROSE)
島津田四郎の2006年作『島津田四郎』(ROSE)


The COMMONSの2007年作『BRAiN DREAMS』(ROSE)
小泉今日子の2003年作『厚木I.C.』(ビクター)
関美彦の2004年作『スピルバーグ』(Pヴァイン)
2005年にリリースされたTOKIOのジャニーズ名曲カヴァー・アルバム『TOK10』(ユニバーサル)


柳田久美子の2005年作『リトル・バイ・リトル』(トイズファクトリー)
鈴木慶一の2008年作『ヘイト船長とラブ航海士』(ソニー)

文/久保田 泰平

曽我部の幅広い音楽性も垣間見られる、参加トリビュート作品

 サニーデイ時代には不思議と少なかったけれど、ソロ以降は数多くのトリビュート系コンピへ顔を見せるようになり、幅広い音楽性を具体化してきた曽我部。ここではその一部を紹介しよう。まず、〈直系〉と呼ばれるほど多大な影響を受けてきたはっぴいえんど(“空色のくれよん”)や大滝詠一(“A面で恋して”)、あがた森魚(“赤色エレジー”)のトリビュート盤はいずれもある程度アレンジが想定できるものではあったが、聴けばやはりシビレるもの。また、サニーデイと共に90年代をサヴァイヴしたフィッシュマンズ(サニーデイにも同名の曲がある“BABY BLUE”をカヴァー)やピチカート・ファイヴ盤にも登場している。そして海外アーティストでいうと、ビートルズの子守歌カヴァー・コンピではランデヴーバンドのテイストとも繋がる“Grow Old With Me”を披露し、『STRAWBERRY』収録のレゲエ調曲“LOVE-SICK”で“No Woman, No Cry”の1フレーズを拝借したボブ・マーリーのトリビュート盤では、レニー・クラヴィッツがやったらこんな感じかも?的な“I Shot The Sheriff”を曽我部恵一BANDでカヴァー。さらにアントニオ・カルロス・ジョビン盤で聴かせた“The Girl From Ipanema”の厳かな弾き語りは、DVD『NAKED SONGS』の空気感ともシンクロする。

 知識量という点では彼より上はいくらでもいるけれど、その幅広い引き出しから選び出す際のセンス、料理法、世の中とのフィット感、消化具合はカヴァーにおいても非常に高いレヴェルで表れている。どんなものに〈なりきって〉もオリジナリティーとタフさの揺るがない曽我部の歌、歌声の進化はやはり素晴らしいと言わざるを得ない……言わずもがなだけど。
▼関連盤を紹介。
はっぴいえんどのトリビュート盤『HAPPY END PARADE』(スピードスター)
大滝詠一のトリビュート盤『Niagara SUMMER 〜Niagara Cover Special〜』(NMNL)
フィッシュマンズのトリビュート盤『SWEET DREAMS for fishmans』(SUZAK)
ビートルズのカヴァー・コンピ『Apple of our eye りんごの子守唄』(ビデオアーツ)


ボブ・マーリーのトリビュート盤『JOINT FOR BOB MARLEY』(Formula)
アントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュート盤『ジョビニアーナ〜愛と微笑みと花』(ソニー)

文/久保田 泰平

とめどなく溢れる創造性が爆発し続ける、曽我部恵一ワークスをプレイバック! その1


曽我部恵一 『曽我部恵一』 ユニバーサル(2002)
サニーデイ・サービス、ピチカート・ファイヴ、フィッシュマンズの終焉でその収束が決定的となったスウィンギン90's。その喧騒に別れを告げるかのように、私的な世界観を穏やかなアコースティック・サウンドで紡ぎ上げたソロ第1弾作品である。



曽我部恵一 『瞬間と永遠』 ユニバーサル(2003)
艶やかにブロウするサックスがインパクト大なタイトル・ナンバーや、4つ打ちのメロウ・トラック“White Tipi”など、ツカミの強いアレンジを施した楽曲が目立つ2作目。ライヴではアクメ顔で絶叫するスロウ・ブルース“FIRE ENGINE”もハイライト・チューン。



曽我部恵一 『STRAWBERRY』 ROSE(2004)
ROSEを立ち上げて、自身1発目となる本作は現バンドのプロトタイプであるOO TELESAをバックに従えて、眠っていた〈やんちゃネス〉を全開に。ライヴ映えするナンバーが並ぶなか、メロウ・マインドが冴える名曲“ブルーのこころ”が豊潤な甘いメロディーを奏でる。



曽我部恵一 『無政府主義的恋愛』 ROSE(2005)
ひょんな縁で繋がった下北沢のヤング・ジェネレーション、OO TELESAと共に、全国40か所を巡った同名ツアー。そのなかから曽我部の故郷である香川県での愛と笑いと熱狂の夜を完全収録したDVDがこちら。2時間40分にも及ぶやけっぱちパワー全開のステージで、その後の作品を下ごしらえ。



曽我部恵一 『ラブレター』 ROSE(2005)
前作から9か月。引き続きパワフルなテンションで驀進する4作目。愛娘のやんちゃっぷりを歌った“ハルコROCK”、クワイアさながらの一体感を生み出す“ジュークボックス・ブルース”など、ハイエナジーなロックンロールに乗せて歌い上げていく12編。

文/久保田 泰平

とめどなく溢れる創造性が爆発し続ける、曽我部恵一ワークスをプレイバック! その2


曽我部恵一 『sketch of shimokitazawa』 ROSE(2005)
下北沢ゆかりのアーティストが、再開発によって変えられようとするこの街を守ろうと立ち上がったプロジェクトの一環。慣れ親しんだ街並みを憂うように、彼の歌は温かく、そしてメロウ。将来、古き良き下北沢の記憶と共に残るであろう、思い出のスケッチ。



曽我部恵一BAND 『LIVE』 ROSE(2005)
現バンドでのライヴ・アルバム。年間100本を超えた2005年のライヴ・イヤーを締め括るものでもあり、このバンドとガッツリ組んでいける自信が確信に変わった証でもあるだろう。まったくもってスマートじゃないジャケも、曽我部の熱意を雄弁に表している。



曽我部恵一 『LOVE CITY』 ROSE(2006)
バンドと共に突っ走ってきた歩を一旦休め、ちょっと振り向いてみたところで手に触れたものは、恋人同士で耳を傾けたくなるような甘いメロディー。ここでの〈LOVE〉は家族や友人に対するものではなく、男子と女子の世界。ジャケがオザケン『LIFE』にも似ていて……。



曽我部恵一 『NAKED SONGS』 ROSE(2007)
サニーデイ・サービス『愛と笑いの夜』全曲再演を含む、3部構成、実に50曲以上を弾き語った、2007年1月21日に東京・新宿LOFTで行われたステージから16曲を抜粋したDVD。全編モノクロで記録されたシンプル極まりない映像で、装飾を剥いでも輝きの鈍ることはない曽我部の〈歌ごころ〉を見事に記録している。



曽我部恵一 『blue』 ROSE(2007)
曽我部の〈恋する〉モードは引き続き。『LOVE CITY』からわずか7か月後ということもあってその延長線上にある世界観だが、こちらはいわゆる〈春夏モノ〉。炭酸水の泡が弾けるような爽やかさと、瑞々しくも〈蒼い〉メロディーが10曲。現バンドでの楽曲も6曲収録されている。



曽我部恵一ランデヴーバンド 『おはよう』 ROSE(2007)
前作から4か月……って、それはそれは曽我部の多作ぶりに驚かされるわけだが、本作は4人のプレイヤーを従えたドラムレスのアザー・セッション。これまでになくしなやかで、平熱だけどアツいグルーヴを聴かせる逸品。ハルコちゃんとのデュエットも微笑ましく。



曽我部恵一/sketch of shimokitazawa(リマスター)
曽我部恵一バンド/LIVE

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