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HY

掲載: 2008/05/08

ソース: 『bounce』誌 298号(2008/4/25)

初の武道館ライヴ〜USツアーを経て、さらに絆を深めた彼らの新作が完成! 大きな愛に溢れた5人のメッセージは、ますますスケールアップしているぞ!

文/青木 優

楽しくいろいろなものを詰め込めた


 HとYが囲む『HeartY』――〈心のこもった〉〈愛情の深い〉という意味のHY通算5枚目となるアルバム・タイトルは、このイノセントな沖縄の音楽集団の作品に、そしてさまざまな形の愛を表現した新作に相応しい名前だ。

  「この5枚目で、ようやく自分たちがやりたいことを出し切れました。音楽をやるうえで自信が付いたっていうか」(新里英之、ヴォーカル/ラップ/ギター)。

 やっと、という表現はいささか意外に感じるが、考えてみれば同い年のこの5人はまだ24歳。デビュー作『Departure』の頃は高校生だった。

  「1枚目の頃は、ただただ音楽が好きで、がむしゃらにやってましたね。『Street Story』はたくさんの人に聴いてもらえたけど、そこからプレッシャーも感じて。でも次の『TRUNK』は忙しいなか、みんなで乗り越えて作り上げたアルバム。『Confidence』ではコミュニケーションも取れてきて、レコーディングも楽しかった。そこからまたたくさんの経験をして、もっと楽しくいろいろなものを詰め込めたのが『HeartY』ですね」(新里)。

  「最初の頃のレコーディングはピリピリしたり、緊張してた。それからいろんなことがわかってきて、こうすればもっと楽しくなるんじゃないか、ちゃんと自分を出していけるんじゃないかな、と思えるようになりました」(宮里悠平、ギター)。

 昨年USツアーも経験し、演奏スキルを高めたうえで作られた新作は、優しくてふくよかな音が印象的。アレンジは練り込まれ、アンサンブルには信頼し合う同士だからこその絆が窺える。また仲宗根泉が主導する“Cheaters”は当初からミクスチャー・ロックを標榜してきたバンドと、R&B志向を持つ彼女の交差点だ。

  「いままでは〈これはHYらしくないから出せない〉とか〈こういうのはみんな弾けないんじゃないかな〉とか溜めてた部分があったんですけど、今回はそれを受け入れてもらったから、すごく楽しかったです」(仲宗根泉、ヴォーカル/キーボード)。

  「音楽の面でもプライヴェートの面でもみんなと近いから、気持ちもわかるんです。で、曲をいろいろ出すなかで、〈あ、こういうふうに思ってたんだ〉って、また改めてみんなを知るっていうか。外れてたら、みんなちゃんと言うと思いますし……まあ、そういうこともなかったけど(笑)」(許田信介、ベース)。

 この“Cheaters”が彼らにとってもうひとつ画期的なのは、恋愛における男性側のズルさ、汚さを告発する歌であること。実体験ではないようだが、一昨年に発表した詩集「あなたへ」での赤裸々な恋愛感情が多くの共感を集めた仲宗根だから書けたものなのだ。

  「ファンの人は〈泉の書く歌はいつも純粋〉とか〈キレイな恋愛で、一途〉みたいな印象を持っていると思うけど、それだけじゃないんだよって言いたくて。他人から聞いた話を〈それがこんなだったら〉〈これはきっとこういう考えでこうきてるんだな〉って想像を膨らませて、ドラマみたいになったものを描き映したんです」(仲宗根)。

  「明るい曲よりも、普段言えないことを書いた時の共感のほうがデカいですよ。“Cheaters”に男はドキドキすると思うし、その影の部分での共感の力があると思いますね。まあ泉が俺のこと書いてるって勘違いする人が出てくるかもしれないけど(笑)」(名嘉俊、ドラムス/ラップ)。


5人が心を込めた尊いメッセージ

 さらに言えば、無垢なイメージの強いHYの歌にこうしたシビアでシリアスな視点を持ち込んだことは、バンドの表現領域を拡大させたはず。そしてシリアスさという点では、今作の大きな傾向である未来への視点は見逃せない。“この子達のために”“青い地球”では自然の大切さや環境破壊の深刻さを訴えつつ、将来を担う子供たちへの思いを表明している。

  「昔は地元の海で泳げたのに、いまはヤバいなあっていう状態で、ホントに悲しい。海だったところが埋め立てられて平たい土地になってて、その土も山を削って持ってきてるんです。土を運んでる何台もの大きいトラックがゴーゴーって通ってて……」(新里)。

  「自分たちもこれから結婚するだろうし、子供好きだし。ちっちゃい子供たち、いまから生まれる子供たちがどういう幼少期を過ごして大人になっていくのか……。人間性っていうのも自然をとおして作られると思うんですよ。いろんな事件が多くあるけど、ゲームばっかりやってたら、ヴァーチャルの世界と現実の世界の区別ができなくなる思うんですよね」(名嘉)。

  『HeartY』を聴いてもっとも関心をそそられたのは、まだ親にもなっていない彼らが子供たちに対して特別な感情を抱く理由だったのだが、どうやらそこには沖縄という風土が関係しているようだ。豊かな自然があるからこそ、それが損なわれつつある現状への危機感。どの世代も生を謳歌する日々のなかで、受け継がれていくものが保たれている土地だからこその次世代への思い……。

  「お父さん、おじいちゃんから〈昔はこの町にもウズラがいっぱいいたよ〉とか聞くんですよ。それを守るんだったらいましかない、自分たちしかいないなって思う。親は子供たちに目を向けてほしいし、自然に連れ出してほしい。子供はホントに素直で純粋だから、言葉によっていろんな方向を向いちゃう。だからちゃんと……教えてあげたいなって」(新里)。

 そう、それこそ〈純粋さ〉が代名詞だったHYというバンドは、こんなにもスケールの大きなテーマを歌うほど表現の幅を広げた。5人が心を込めた尊いメッセージ、いまを生きるすべての人たちに向き合ってほしいと思う。
HYのニュー・アルバム『HeartY』(東屋慶名建設)


メンバーが公開してくれた五者五様のお気に入り盤!


 吉井和哉さんは昔から尊敬しているアーティストなんです。彼独自の世界観があって、僕も同じミュージシャンとしてとても勉強になります。そして昨年リリースされた『Hummingbird in Forest of Space』(EMI Music Japan)はラストの“雨雲”がとても印象的でした! 本当にカッコ良すぎなんです。〈なにが良い?〉って訊かれても、〈すべてが良い!!〉としか言えません!
(新里英之)



 〈世界観とは? 表現力とは?〉ということを僕に教えてくれたのがTHA BLUE HERBでした。この『STILLING, STILL DREAMING』(REAL LIFE)は高校生の頃から聴いているアルバムです。ILL-BOSSTINOさんが語る詞は〈耳で聴く映画〉だと思います。そして地元・北海道を誇りに思っているところが沖縄のHYとの共通点かな♪♪ ライヴに行きたいー!!
(名嘉 俊)



 初めて聴いた時に、ものすごく衝撃を受けたのが、ジョン・メイヤーのファースト・アルバム『Room For Squares』(Columbia)。彼の声も、ギター・プレイも、曲も、全部が完璧でカッコイイ! 自分が持ってるいろいろなアルバムのなかでも、いちばん聴いている作品なんです。なかでも6曲目の“City Love”が大好きでよく聴きますね。ぜひ皆さんも聴いてみてください!
(宮里悠平)



 以前アメリカへ行った時に、初めて観たブロードウェイ・ミュージカルが「RENT」でした。そして、その劇中で歌われていた曲たちにすごく衝撃を受けまして、さっそくこのサントラ『Rent』(Dreamworks)を手に入れたのです。日本に帰ってからのアルバム作りにも影響したくらい聴き込んだ、お気に入りの一枚となりました。
(仲宗根泉)



 洋楽を聴くようになったキッカケの一枚がニルヴァーナ『Nevermind』(DGC/Geffen)。いまでも気分がノってくるとドライヴをしている時に聴いたりします。昔、よく沖縄のクラブで流れていた印象。やっぱり“Smells Like Teen Spirit”はサビの盛り上がりがたまらない。実はカート・コバーンのフィギュアを持っていたりします。でも箱からは出していません……。
(許田信介)


文/bounce編集部

たくさんの愛を発信してきたHYのこれまでを振り返ってみよう!


『Departure』 東屋慶名建設(2001)
沖縄先行でリリースされるやいなやチャートを席巻し、一気に全国区へ躍り出た初作。ギターも歪みまくり、まさにミクスチャー・ロック!といった感じのハードな楽曲が中心で、“My Life”のギター・ソロなんて最高。



『Street Story』 東屋慶名建設(2003)
冒頭の“AM11:00”でも顕著なように、仲宗根の味のある歌声や鍵盤の存在がHYの音楽のスパイスであり、肝でもあることが表面化した2作目。初めて三線を導入した表題曲は愉快なカチャーシー・アンセム!



『TRUNK』 東屋慶名建設(2004)
ロックで骨太な楽曲は徐々にマイルド&ソフトになり、より〈HY流ポップス〉の磨き上げが進んだ3作目。〈幹〉を意味するタイトルが表すように、HYが表現の〈根幹〉とするラヴ&ピースなメッセージが詰まっている。



『Confidence』 東屋慶名建設(2006)
どこか肩の力が抜けた感じというか、非常に伸び伸び作られている様子が窺える4作目。サーフ調のイントロが抜群に心地良いナンバー“(Te to Te)”をはじめ、心がふわっと軽くなるような聴き心地の楽曲揃い!



『仲宗根泉 あなたへ』 東屋慶名建設(2006)
恋愛がテーマの歌詞で女性からの共感度も高い仲宗根。沖縄の美しい風景や友人らの写真と共に送る、この恋する乙女の詩集は胸キュン度300%超え。〈わかる! その気持ち!!〉なんて女子たちの声が聞こえてきそう。



『HY 2007 AMAKUMA A'CHA document TOUR〜from OKINAWA to the WORLD〜』 東屋慶名建設(2007)
昨年のUSツアーを収めたドキュメンタリーDVD。勝手の違う状況に葛藤する彼らにドキドキしつつ、ライヴを重ねるごとに逞しさを増す姿が印象的だ。

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