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DE DE MOUSE

掲載: 2008/05/08

ソース: 『bounce』誌 298号(2008/4/25)

シルエットの向こうに広がるエレクトロマンティックで雄大なサウンドスケープ……もっともアルバムを待たれていた才能が、ついにメジャー・デビューを果たした!

文/リョウ 原田




 耳元に飛び込む電子音、そのメロディーの塊が頭のなかを幾度も巡る。聴く人の記憶の断層を引っ掻き回し、めいめいの原風景を立ち上げるかのようなその旋律は、しばしば〈ノスタルジック〉〈ロマンティック〉と評される。このたび、セカンド・アルバムにしてメジャー・デビュー作となる『sunset girls』をリリースする29歳の青年、DE DE MOUSEことエンドウ・ダイスケ。彼の音楽は〈子供のためのフェロモン〉を携えた電子音とブレイクコアの折衷で知られている。その名が広く知れ渡ったのは2006年から2007年にかけてのこと。“baby's star jam”のフロア・ヒット、それに続く同曲収録のファースト・アルバム『tide of stars』のロング・ヒットがきっかけだった。

  「“baby's star jam”はハウスDJも含めて、いろんなDJがかけてくれた。あの曲は、リズムが後半ぐちゃぐちゃになるし、メロディーも同じことを繰り返している。こんなに崩れたポップスもないし、クラブ・ミュージックとして聴いてもフロア寄りでもアンビエント寄りでもない中途半端な感じで(笑)。これがここまで受け入れられるんだ、っていうのがいまだに凄い驚きで。恐らくメロディーが受け入れられたんだろうな」。


郊外の匂い

 初期ヨーロッパ産テクノを想起させる音色と、ニューミュージックの幻影を見せるオリエンタル&ポップな編曲、控えめに壊れてみせるブレイクコア的なビート……それぞれのピースが不思議なバランスで溶け合ったこの楽曲は、2006年の〈RAW LIFE〉を契機に瞬く間に広まり、アンセムとして記憶された。日本のポップスや童謡の情景を別の舞台へ水平展開する……例えるならSPECIAL OTHERSがジャム・バンドのフォーマットで奏でた〈うた〉世界のようなものを、彼も独自のやり方で実践したのかもしれない。かつてエイフェックス・ツインやROMZ周辺のテクノ〜ブレイクコアに共鳴していた彼が、この手法を確立する過程には、矢野顕子や松任谷由実、くるりからキリンジに至るまでの、ポップスの〈再発見〉があったという。

  「キリンジの“悪玉”のリミックスがお店で流れているのを聴いていたら、プロレスのヒールのことを凄いコーラスで歌っていて。そのセンスが凄いなって、突然思ってしまった。それに気付いたら、コード展開ももちろんだけどコーラスが素晴らしいんだ、っていうのがわかるようになって。(音楽的には)彼らがスティーリー・ダンとかが好きなんだな、っていうのはわかったけど、時期的にそういう掘り下げには興味がなくて。彼らの音楽に、郊外の匂いっていうのを感じたんです。団地や公団、田んぼ、街灯とか……歌詞に登場するちょっとした単語からそれを感じて。1年くらいはキリンジかユーミンばかり聴いていて、だんだんその頃から作るものもメロディーを前に出すようになってきた」。
▼文中に登場するアーティストの作品。
“悪玉(八百長MIX)”を収録したキリンジのリミックス盤『RMX2』(ワーナー)
松任谷由実のベスト盤『Neue Musik』(EMI Music Japan)


聴かせたいのはメロディー

5月7日にリリースされるDE DE MOUSEのニュー・アルバム『sunset girls』(avex trax)

郊外の団地だったり、裏山だったり……まるで中世の交響曲作家に倣うかのように、彼は音楽の背後に景色を思い描いている。宮沢賢治「銀河鉄道の夜」をモチーフに、主人公に少年を想定した前作『tide of stars』は、やんちゃなカットアップ・ビートの断片に、エレポップ的なメロディーが重ねられた作品だった。それに対してニュー・アルバムの『sunset girls』は、少女を主人公にした架空の物語がベースにあるという。夕暮れ時から夜にかけて、少女が少年と出会うまでの物語。新しい物語では、音像の中心にはソフト・シンセのメロディーが据えられる。

  「セカンド・アルバムはファーストへの反抗という意味で作っている。確実に比較されるじゃないですか。だったら、自分のやりたいことをやろう、っていうので作りはじめた。前のイメージが宇宙だったから、〈次は空だな〉って。みんなが反応するのはビートだったけど、自分が凄く聴かせたいのはメロディー。『tide of stars』で自分の音楽に対する耳ができたから、このリズムを少し引っ込めてもついてきてくれるだろうって。あとは、80年代のオリエンタルな感じの音ってフュージョンからきてるなって思いついて、今回はフュージョン的なものを意識して。非整数倍音の音はわりと多く使ってますね、チャイムやガムランやマリンバのような、アジアっぽい感じ」。

 昨夏にEPでリリースされていた“east end girl”の別ヴァージョンに始まり、ワルツと祭囃子の中間を行くような“hill girl steps”や“sunset slope”、ビート感のある前作での手法を継承した“swallowtail bridge”、映画のエンドロールを思い起こさせるような終局の“blue & green waves”まで。シミュレートされたチャイムやフルートの音色が散りばめられ、〈胸キュン〉な少女性が広がる10曲の物語。エピローグとして、大沢伸一とアイ・アム・ロボット・アンド・プラウドそれぞれのリミックスも収録されている。決してアカデミックな狂気はないし、マッチョなビート感もないけれど、極めて日本的でセンティメンタルなDE DE MOUSEのセンスが爆発したアルバムだと言えるだろう。

  「このアルバムを作っているとき、僕が凄く待ちわびていたものがあって。それは台風。以前、台風が昼間に通り過ぎて、窓を開けたら外の景色が一面ピンク色になっていた。何だこりゃ、と思って近くの川にいったら増水していて、公園が半分水で埋まっていて。空には星が見えるのに、夕暮れのほうを眺めるとメチャクチャな感じになっていて。その時のことが忘れられなくって、もう一度それを体験したかった」。

 DE DE MOUSEのメロディーは、あなたの情景をどう変調させるのか? 夕暮れ時に、ぜひ確かめてみてください。
▼『sunset girls』に参加したリミキサーの作品。
大沢伸一の2007年作『The One』(avex trax)
アイ・アム・ロボット・アンド・プラウドの2006年作『Electricity In Your House Wants To Sing』(Darla)


文/出嶌 孝次、リョウ 原田

で、振り幅の広いDE DE MOUSEワークスをいまのうちにチェックしておこう!


DE DE MOUSE 『tide of stars』 ExT(2007)
フロアに愛された“baby's star jam”から、リフレックス好みの片鱗が窺える“raven”までを収録し、チャント使いやフュージョン的な作法、ブレイクコアのロウ・エンド・セオリー……多彩な原石が渾然一体になった、緑柱石のように輝く処女作だ。
(原田)



DE DE MOUSE 『east end girl』 ExT(2007)
ペット・ショップ・ボーイズの“West End Girl”をもじってみせた昨夏のアンセムを表題に掲げた5曲入りのミニ・アルバム。その“east end girl”はメロウな『sunset girls』収録版と異なり、16ビートで跳ね回る仕様のもの。CHERRYBOY FUNCTIONのリミックスも収録。
(原田)



KAADA 『Music For Movie Bikers + Remixes』 ROMZ(2006)
ノルウェーの才人による穏やかな疑似フィルム・ミュージック作品に、ROMZ勢中心のリミキシーズを付けた豪華な2枚組。Olive Oilやpianaら多彩な顔ぶれと並んで、DE DE MOUSEが“Mainstreaming”のリミックスで参加している。
(出嶌)



FQTQ 『FUNKY WEAPON』 FQTQ(2007)
ポスト・ブレイクビーツ〜テック・ハウス世代ならではのポップ感覚を体現するエレクトロ・ポップの貴公子に、DE DE MOUSEは“the guitar sings”のリミックスを提供。原曲のドタバタ的な楽しさを、“tide of stars”に通じるブレイクビーツ使いで拡張してみせた。
(原田)



amtm 『恋はビヨーン』 ビクター(2007)
ピーター・ビヨーン&ジョンの〈口笛ソング〉をAimiとブラザートムの即席デュオが日本語カヴァーするという、良い意味でユルユルな企画シングル。カジヒデキ製の軽妙な原曲も最高だけど、そのフワフワ感を活かしてエレポップに仕立てたDE DE MOUSEのリミックスも抜群!
(出嶌)



『TOKYO PUDDING presents TOKYO SOUNDSCAPES』 avex trax(2007)
ハヤシベトモノリやYMCKらが参与した東京プリン監修のコンピ。DE DE MOUSEの手による“TOKYO HELLO GOOD-BYE”は、感傷的なメロディーをItscoとhiroko(mihimaru GT)がドラマティックに歌い上げた注目の逸曲だ。
(出嶌)



『キラキラジブリ』 ハピネット(2007)
かつてジブリ映画「耳をすませば」のヒロイン=月島雫に恋焦がれるほど入れ込んだというDE DE MOUSEは、本トリビュート盤でその声優/歌手の本名陽子と共演。彼の〈郊外感〉と電子ロマンに溢れた“カントリーロード”は、数少ないヴォーカル仕事のひとつ。
(原田)



『POP UP!!』 Rambling(2008)
ボッサ・カヴァーされた洋楽の人気曲を気鋭のクリエイター陣がさらにリミックスしたコンピ。Latin Quarterやpeechboyの名前も並ぶなか、DE DE MOUSEは〈君の瞳に恋してる〉を惜しみないシンセの奔流でアッパーなエレクトロ・ハウス調に展開している。爽快!
(出嶌)



木村カエラ 『+1』 コロムビア(2008)
石野卓球やAxSxEらが起用された意欲的な最新アルバムにおいて、クロージングの“Humpty Dumpty”をDE DE MOUSEがプロデュース! 唱歌のように純朴なリフレインとピアノを中心に据えたドリーミーなアレンジが、アルバムを深い余韻と共に締め括っている。
(出嶌)

文/出嶌 孝次、リョウ 原田

DE DE MOUSEの音世界に通じる、日本で生まれた新しい音の風景を紹介しよう!


YMCK 『ファミリージェネシス』 avex trax(2008)
チップ・チューンの手法で、渋谷系直系のダバダバなスウィングを展開した3人組。そのポップ感はCapsuleにも通じるが、レトロな電子音を志向した表現という意味ではDE DE MOUSEに近しい手触りを感じたりもする。
(原田)



NOMAK 『Calm』 huge soul/GOON TRAX(2007)
日本情緒をオーガニックな響きと優美なメロディーで表現するNOMAK。郷愁すら感じさせる彼のグッド・ループは、DE DE MOUSEにも通じる穏やかな物語性を秘めている。もう少し強めのビートがお好みなら、P81で紹介のリミックス盤をどうぞ。
(出嶌)



Gutevolk 『グーテフォルクと流星群』 ミディクリエイティブ(2007)
簡素にして濃密な作品を毎回届ける西山豊乃。ジャケそのままのハーモニーが揺らめく今作の雰囲気は、日常に浮かぶファンタジーをすくい取ったかのよう。この無垢な少女性はDE DE MOUSEにも近いかも。
(出嶌)



CHERRYBOY FUNCTION 『SOMETHING ELECTRONIC』 ExT(2007)
ExTでの盟友でもあるグルーヴ・マスターの初作。シャッフル・ハウスの隙間から隆起するメロディーセンスやシティー・ポップ感は、DE DE同様にダンスフロアをセンティメンタリズムで包む効用がある。
(原田)



Q;indivi 『ivy;』 avex trax(2007)
YUKIのプロデュースやTVCM音楽の制作で知られるユニットの隠れた話題作。うっすらオートチューン加工されて不思議な言語のように響く女声と上品な電子音が紡ぐ、温もりを帯びたノスタルジックな未来感覚は、DE DE MOUSE同様に胸キュン度も高い。
(出嶌)



SUBSTANCE 『SUBSISTENCE』 THISTIME(2007)
岡山のエモトロニカ集団による初作。フィルター声やキラキラな音色使いはエレポップ調だが、メロの情感や楽曲のフォルムはバンド感強めでおもしろい! DE DE MOUSEの無邪気で利口なバランス感覚に近しい雰囲気もアリ?
(出嶌)



TRAKS BOYS 『Technicolor』 SWC(2007)
その鮮烈さがDE DE MOUSEと共振した〈新世代〉アクトのひとつ。当然ながら各々の音は個性的で、ここではテクノ・ポップにディスコ趣味を加味した電飾感を独特のアーバン・マナーで聴かせる。ハウシーな“Radiation”は名曲。
(出嶌)



AIRA MITSUKI 『Daring Wondering Staring /STAR FRUITS SURF RIDER』 D-topia(2008)
渋谷系マナーがもはや和製ポップスの前提になった現在、〈未来生まれ〉のテクノ・アイドルはこのタワレコ限定シングルでコーネリアスをカヴァー! メイン曲も含めて電子のロマンスへと誘われる。
(出嶌)



『Jazzin' for Ghibli』 more(2008)
教授の〈戦メリ〉や久石譲を引き合いに出した癒し気味の作品が急増している昨今、ついに登場した本作はジャジー(?)系ヒップホップによるジブリ名曲集! 健やかなメロディーが求められる時代性を反映した点ではDE DE MOUSEにも近いか。
(出嶌)

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